旧ブログからの転載。町田康の詩集。
町田康は芥川賞を獲ってからダメになった気がする。無名時代の方が良いものを書いていた気がする。以下は無名時代の詩集より。
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「下りみち」
夢も希望も無い者どおしで商店街へゴー
最後の金を握りしめて爆笑しながらゴー
手を取りあって足を踏みなして
我々の怒りと喜びを道行く人に浴みせかけて
肥りまくって食いまくれ
おいしい豆を買いにゴー
最上のエイズ女を買いにゴー
俺らの為だけに用意された快楽をゴー
幸福な気分を確認しあってゴー
諸君 同じ場所であがいているより
前々から決まっていたその場所へ
我々と一緒に行ってみんかね?
※ ※ ※
「きりきり舞い」
前進せよと謂う声がする俺は歩いて 立ち止まる
愚民が樹木の下で愛し合っている
後退せよとおっしゃる声がする
犬はすべて氷河に走っていってしまった
そのまま居れとおっしゃるか?
大仏が建立され 陛下が地球の長さを測る
きりきり舞いをしています
汝 我が民に非ず
きりきり舞いをしています
もはや慈悲なし
俺はブラウン管のむこう側で何度も何度も死ねる
※ ※ ※
「蓄財のうた」
誰と話しても殺されるときに
誰と遊んでも狂わされるときに
ただ一人の熱いおまえらと
ただ一人の憎いおまえらと
何もかもを呪いつくそう
恥の中で焼け死んでしまおう
銭をもうけて遊び呆けよう
嬉しさをかみしめてはしゃぎまくろう
※ ※ ※
「あさましかりける」
あの栄光はどこへ行った
背中の苦しみの針を降ろして
ちょっと一服しようか
誰の罪でもないことを
うまそうに食ったあの人も
今は見張っていまへんぜ
私の眼球におまえは
青と黄にしかはりつかず
私は繰り返しあさましく狂う
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