不眠閑話

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【再掲】石川啄木「一握の砂・悲しき玩具」

2022-06-26 08:25:32 | 文学
石川啄木「一握の砂・悲しき玩具」。
    
専門家からは、あくまで「入門者向きの歌集」と位置づけられ、あまり評価しない人もいる。が、たまに読み返したくなる一冊ではある。暗記している歌も多いが、ここでは個人的に好きな作品だけ簡単に紹介しておく。
    
※   ※   ※
東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる
  
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草にねて
おもふことなし
わが額(ぬか)に糞して鳥は空に飛べり

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腕くみて
このごろ思ふ
大いなる敵目の前に踊り出でよと

※   ※   ※
死ね死ねと己を怒り
もだしたる
心の底の暗きむなしさ

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はたらけど
はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり
ぢつと手を見る

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死にたくてならぬ時あり
はばかりに人目を避けて
怖き顔する

※   ※   ※
あたらしき心もとめて
名も知らぬ
街など今日もさまよひて来ぬ

※   ※   ※
人といふ人のこころに
一人ずつ囚人がいて
うめくかなしさ

※   ※   ※
クリストを人なりといへば、
妹の眼がかなしくも
われをあはれむ

※   ※   ※
叱られて
わっと泣き出す子供心
その心にもなりてみたきかな

※   ※   ※
不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて
空に吸われし
十五の心

※   ※   ※
ふるさとの山に向ひて
言うことなし
ふるさとの山はありがたきかな

※   ※   ※
白き蓮沼に咲くごとく
かなしみが
酔いのあいだにはっきりと浮く

※   ※   ※
どうなりと勝手になれというごとき
わがこのごろを
一人恐れる

※   ※   ※
話しかけて返事のなきに
よく見れば、
泣いていたりき、隣の患者

※   ※   ※
かかる目に
すでに幾度(いくたび)会えることぞ!
成るがままに成れと今は思うなり





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