不眠閑話

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【再掲】芥川龍之介の自殺

2022-06-30 18:41:25 | 文学
私の知り得る限り、最も哲学的な自殺をしたのは、芥川龍之介である。
   
こういっていいか知らんが、芥川の自殺は深い。少なくとも、芸術的である。
       
何が深いか? 芥川の自殺は、実は完璧に「論理武装」されているのである。
       
実際、芥川は自分に与えられた才能を、100 %使い切った。そうして、生きられるだけ、生きた。他人を愛せるだけ、愛そうとした。彼なりに正しい道を見つけ、それを守り続けた。その結果、自殺以外の選択肢がなくなってしまったーー芥川はそういう人である。
      
従って、芥川の自殺は、論理的にも、道徳的にも、批判しようがないものだ。
     
私がもし閻魔大王で、芥川みたいな人が目の前に来たら、随分困るだろう。
      
芥川を自殺した罪などで、地獄に落とすか?しかし、芥川は「私を地獄に落とす気なら、なぜ最初からそんな風に私を造ったの?」と反論してくるだろう。私が閻魔大王なら、そうした芥川の反論を、論破出来ないだろう。
        
芥川の自殺は、被造物の造物主に対する、強烈な復讐になっている。
      
「神はなぜ人間(私)を造ったか?」「なぜ人間(私)を苦しめるのか?」という、人間の側からの神への痛烈なプロテストになっている。
        
芥川の自殺には、そういう哲学が含まれている。
       
「自殺はいけません」などという、薄っぺらい言葉など、簡単に吹っ飛ばす程の重みである。分かる奴には分かる。



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