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サラ☆の物語な毎日とハル文庫

『精霊の守り人』はイケてる☆

なんだか最近、書店で平積みになってるのを見かけることが多い上野菜穂子という作家。
文庫で『精霊の守り人』(新潮社)という本が出ていたので買いました。
ハリー・ポッターが化け物のように世界中を魅了してからというもの、ファンタジーの作品が、これでもかというほど出版されたけど、そのブームは、相変わらずなのでしょうか。
大人も児童向けファンタジーに夢中になることが実証されたわけで、これは、売れる市場だということになったのでしょう。

でも、『精霊の守り人』は、日本の平安期以前を思わせる世界観が、ブームとはちょっと一線を画すような…
作家が文化人類学者でもあるので、仕掛けなどがなかなか面白い。
ル=グィンのゲド戦記などに影響を受けてるらしいけど。
でも、王朝活劇といった感じもあって、独特。
イケてるかも、とちょっと嬉しくなります。

「バルサが鳥影橋を渡っていたとき、皇族の行列が、ちょうど一本上流の、も山影橋にさしかかっていたことが、バルサの運命を変えた。
 鳥影橋は平民用の粗末な吊り橋で、ところどころ板が腐り落ちて、隙間から青弓川の流れが見える。ふだんでもあまり気持ちのよい光景ではないが、今日は、ここのところの秋の長雨が続いたせいで川の水かさが増え、茶色く濁った水が、白く泡立ちながら、さかまいて流れていて、とくに恐ろしい光景だった。
 すりきれた旅衣をまとい、頭陀袋を短めの手槍(短槍)にひっかけてかついだバルサは、しかし、眉ひとつ動かさずに、ゆらゆら揺れる鳥影橋を渡りはじめた。
 バルサは今年三十。さして大柄ではないが、筋肉のひきしまった柔軟な身体つきをしている。長い脂っ毛のない黒髪をうなじでたばね、化粧ひとつしていない顔は日に焼けて、すでに小じわが見える。
 しかし、バルサをひと目見た人は、まず、その目にひきつけられるだろう。その黒い瞳には驚くほど強い精気があった。がっしりとした顎とその目を見れば、バルサが容易に手玉にはとれぬ女であることがわかるはずだ。──そして、武術の心得のある者が見れば、その手強さに気づくだろう。………」

これが、この本の書き出し。
読みたいと思うでしょ?
語り、冒険、危機、救いの手、魔術、戦い、自然の息吹etc. 物語の要素がすべて詰め込まれたような本です。
この本はシリーズになっていて、10冊完結らしい。楽しませてくれます。

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