サラ☆の物語な毎日とハル文庫

『若草物語』4人姉妹が出くわす4つの試練

 

ルイザ・メイ・オルコットの『若草物語』の最初の見出しは「巡礼ごっこ」だった。

ジョン・バニヤンの『天路歴程』(欧米では聖書の次に読まれている本、などと言われているらしい)を

ベースにもってきて、

「4人姉妹が重荷を担いで自分磨きの旅に出る」というようなことを告知する内容。

それぞれの重荷とは、自分が抱える欠点や弱点だ。

 

4人が自分に課せられた課題にどうぶつかり、どう受け止め、どう乗り越えていこうとするのか…は

第6章から一人ずつのエピソードとして語られる。

 

4人姉妹のそれぞれの性格もわかり、これがけっこうおもしろい。

第6章は「ベス、『美の宮殿』を見出す」

第7章は「エイミーの屈辱の谷」

第8章は「ジョー、魔王に会う」

第9章は「メグ、虚栄の市に行く」(角川文庫の吉田勝江版)

 

これらの見出しの中の「美の宮殿」「屈辱の谷」「魔王(アポリオン)」「虚栄の市」は

どれも『天路歴程』に登場する建物だったり、場所や名称だったりする。

4人姉妹はエピソードの中で、『天路歴程』のシーンになぞらえた試練に会い、自分を見つめなおし、問題を克服しようとする。

 

ベスにとっての「美の宮殿」はお隣りのローレンス家だし(そこには、ベスがあんなにあこがれていたピアノがある)、

ライオンはローレンス氏。

人見知りが強くて、新しい人と接するのが苦手なベスが、

そのシチュエーションをどう乗り越えて自由にローレンス家に出入りし、ピアノを弾けるようになったのか…。

この章のエピソードは感動もので、思わず涙が出る。

 

エイミーの塩漬けライム事件は有名だと思う。

いろんなところで引用されているのを読んだ記憶がある。

学校で禁止されている塩漬けライムを、これまでさんざんもらったからお返しをしなくっちゃと

メグにお金をもらって買い、学校にもっていったのだ。

 

エイミーの欠点はうぬぼれ屋なところ。

学校で褒められクジャクのように気取ったところ、仲の悪い女の子がそれを面白く思わず

先生に、エイミーがライムを持ってきたことを言いつける。

 

先生はエイミーに、窓からライムをすべて捨てさせ、その手をムチ打つ。

こんどライムを持ってきた生徒がいたら、そうすると宣言していたからだ。

これまで何人もの生徒が学校に塩漬けライムをもちこんだにも関わらず、よりにもよって。

生まれてはじめてムチで打たれ、辱めを受けたエイミー。

 

結局そのまま学校をやめることになる。

体罰には賛成できないからと、その決断をすぐにくだしたお母さまには、頭が下がる。

 

魔王アポリオンに会ったのはジョー。

「川の真ん中あたりはまだちゃんと凍っていないので危ない」というローリーの忠告を

後ろから追いかけてくるエイミーはきいただろうか?

魔王はささやくのだ。

「きこえようがきこえまいが、知ったこっちゃない」(講談社、谷口由美子版より)

 

自分が数年にわたって書き溜めた物語の原稿を、エイミーは暖炉にくべて焼いてしまった。

ジョーはエイミーのことを「許せない」と怒っていた。

エイミーがなんでそういうことをしたかというと、

ローリーに誘われてメグとジョーがお芝居に行くとき、自分も連れて行ってほしいと頼んでも

連れていってくれなかったから。

エイミーのジコチュウが少しばかり鼻につく成り行きだけど、それでも命が関わるとなると、話は違ってくる。

その判断を「怒り」で見誤ったジョー。

悪魔のささやきは、妹の命の危険を心配する心をわきに追いやってしまう。

 

エイミーは、ずっとおくれて川のまんなかの水面に突進した。

バリバリと氷が割れて…

 

ジョーがどんなに後悔し、心を震わせたことか。

ローリーのおかげで無事エイミーは救い出され、

何事もなく(風邪すら引くこともなく)やりすごすことができたのだけど。

 

そしてメグ。

友人の家のパーティにお呼ばれし、泊りがけで出かけていく。

 

質素な服しかもっていないメグに、

友人たちはパーティのドレス(胸元のあいたもの)が余っているから貸すといい、

アクセサリーやメイクをほどこして、着せ替え人形のように着飾らせる。

 

パーティではシャンパンを飲み、青年たちに囲まれているメグ。

そこに登場したのがローリーで、メグは自分のそういう姿を見られて、強い恥ずかしさを感じるのだ。

「虚栄の市」とはよく言ったもので、若く美しいメグにとっては、その思いは苦い薬だった。

 

さて、この4つのエピソードを読むことで、4人姉妹の性格もわかるし、結びつきもわかる。

生き生きとしたエピソードはストーリー性も高く、ここまでですっかり、4人姉妹のファンになる。

ちょっとしたファンではなく、永世ファンクラブ会員になるってわけ。

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