サラ・パレツキーの新作『セプテンバー・ラプソディ』(山本やよい訳・ハヤカワ文庫)を読んだ。
原題は CRITICAL MASS(臨界質量)
パレツキーの作品のなかで、もっともページ数の多い作品だそうだ。
読み終えるのに丸々2日かかった。(間に用事を済ませたり、寝たりする時間も含まれるけど。)
パレツキーの作品にはタフな女性が多数登場する。
そもそもヒロインの女探偵V.I.ウォーショースキーからして、むちゃくちゃタフだ。
今回「それ以上にタフだ」と驚いてしまう女性が登場する。マルティナ・ザギノール。
光のプリズムに驚きの声をあげ、天体を愛し、普通の人が小説を読むように、夢中になって物理の理論を読み解く女性。
難解な数式も苦にならない。
つまり、物理・数学の世界に秀でた天才なのだ。
そのマルティナの存在をめぐり、ナチスドイツのユダヤ人迫害の歴史を絡ませ、100年というタテの時間軸と、今起きている現実の事件というヨコの時間軸でもって、物語は展開していく。
短い文章の中にも、しっかり物語空間を埋め込むのだから、本当に小説を書くのがうまいのだろう。
678ページの分量でも、まったく長さは気にならない。
どの部分も面白い。
活劇あり、推理あり、展開の意外さがあり、ミステリーの面白い要素がびっしり詰まった本である。