いまだって、200万部を超えるというと、ハリー・ポッターに並ぶバケモノ的大ベストセラーですよね。
当時は、いまみたいに情報が加速度をつけて行き渡る時代でもなかったろうと思うのですか、それで200万部というのは、いかに人々の人気を博したかということでしょう。
日本では、「知る人ぞ知る」珠玉の一冊といったところだと思います。
なぜか、同じ村岡花子さんの翻訳なのに、『赤毛のアン』ほどは認知されていません。
認知度には、雲泥の差があります。
きっと、材木泥棒、恋愛といった小説的要素が強いために、子供向けの文学全集に採用されなかったせいだと思います。
ベストセラーとはいえ、流行小説のひとつという認識だったのではないでしょうか。
とんでもない!!
こんなに惹きつけられて、こんなに心を揺さぶられる一冊は、めったにありません。
物語の冒頭、片腕をなくした孤児である少年〝そばかす〟は、リンパロストの森で木を切り出している一団のもとにやってきます。
原生林から家具にする材木を切り出して加工し、世界中に販売する会社の作業員たちです。
そばかすは、「仕事がほしい」と頼み込みます。
支配人のマクリーンは、少年の気概に引かれ、大の男でもひるむような過酷な仕事である、森の番人として、少年を雇い入れます。
リンバロストの森は、インディアナ州にある手つかずの湿原の中の原生林です。(いまは開発が進み、100年前の面影はないらしいです。残念!)
ガラガラ蛇、さまざまな動物、底なし沼、生い茂る木々。
そこには、家具にすると莫大な儲けを生む貴重な大木か、たんさん植わっています。
凶悪な材木泥棒がいつなんどき、木を盗みにくるか分かりません。
その番をして、境界線の鉄条網が切られていないか、目を光らせるのが仕事。
毎日11キロの外周を、二回、回ります。
たしかに過酷な仕事で、少年が森のさまざまな音や様子に、どんなにビクついたことか!
読んでいるほうも、思わず身を乗り出して、リンバロストの森に分け入っていくのです。
圧倒的な自然と、人々の開けっぴろげな善意。
その善意を受けるにふさわしい資質を備えた少年。
バードレディ(村岡花子役では「鳥のおばさん」)、エンジェルといった、魅力的なキャラクターが登場して、物語は感動的に展開していきます。
息をもつけぬ面白さ。
この面白さがわかる人は、間違いなく心豊かな人です。
人生の真実に肉薄している人です。(きっと…。じゃあ、何が真実というと、喧々ごうごうの異論が飛び出しそうですが。)
もし、読んでみたいと思ったら、迷わずすぐ読んでみると、新しい輝きが人生に加わると思います。
ぜひっ!
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花山院 光
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