船の乗組員は助かりたい一身でボートを下ろし、全員乗り組んで陸地をめざすのですが、小ぶりのボートは大波にひとたまりもない。
ボートはあっという間に転覆し、クルーソーは次の瞬間、水の中でもがいていたのでした。
そして、次から次へと襲いかかってくる波にもてあそばれながらも無我夢中で陸地に向かい、ついに無事陸地の草を踏むことができました。
助かったのです☆
『ロビンソン漂流記』がいまでも世界中の人たちに読み継がれている大きな理由は、まるでその場にいるかのような臨場感あふれる描写、ディテールを詳しく描いたことにあると思います。
この遭難のシーンなど、まるでこちらが波に呑まれるような感じを抱かせるものです。
「再びおそいかかった波のために、私はたちまち水中深く2、30フィートもたたきつけられた。
そして、ものすごい力と速さでかなり遠く岸のほうへおしやられているのが感じられた。
私は息をつめて全力をふりしぼって、なおも陸のほうへ泳ごうとした。呼吸ができず、今にも死にそうになった。
が、ちょうどそのとき、自分の体が浮き上がる気配を感じたかと思うと、まもなく、ありがたいことに頭と両手が水面の上に出た。
私が水面に浮かんでいたのはものの2秒もたつかたたないかの間ではあったが、その間に息もつけたし新しい勇気もわいてきた。
それが、どれだけありがたいことであったか。
私は再びかなり長い間波にのみこまれたが、なんとかもちこたえることができた。
波の力が急に減じて、沖のほうにしりぞいていくのが感じられた。
私はその波に必死になって逆らって泳ぎだすと、再び足が底についた。
ほっと一息をついてちょっとの間、そこに立っていた。
水がざあっと引いていった。
私は残っていたあらんかぎりの力をふりしぼって陸にむかって逃げ出した。
だが、こんどもまた、海の怒りから抜け出ることはできなかった。
私のあとを追ってくる激浪のために、さらに二度までも巻き込まれては流され、流されては打ちあげられた。…」
この部分は岩波文庫の『ロビンソン・クルーソー』(平井正穂訳)からの抜粋ですが、新潮文庫の『ロビンソン漂流記』のほうが読みやすいです。ただ、どこかに行っちゃってて…。
でも、なんにしても、ほんとに細かいディテールまで臨場感あふれる描写がされている一例です。
いかにも自分自身が体験しているような緊迫感がなんともいえない。
世の中、面白い本は数限りなくあるけれど、『ロビンソン・クルーソー』は冒険小説のジャンルではピカイチです。
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