「釣魚大全」といえば、イギリスの作家アイザック ウォルトンですが.アメリカの作家では「老人と海」のヘミングウエイ、日本の作家では井伏 鱒二や開高 健などの作品も有名です。高校時代に読んだ「老人と海」で大魚と対峙し,孤独な格闘をする老人とその心境、そして釣れた釣れないよりも、魚と対峙するときの緊張感や純粋な感性は、釣った経験の上に,釣れなかった経験やバラした経験や失敗した経験を上積みしないと持ち得ないかも知れないと思います。釣りの醍醐味とは、魚がかかってそれを取り込むまでの魚と人間の対峙の仕方だと思います。
鯉釣りをしていて、大物を釣り上げた時や,野鯉の形をした鯉を釣り上げた時,そこに一種の征服感や達成感を味わうのは、まだ経験が浅いと言わざるをえない。マットの上で優しくハリをはずし、優しくリリースする迄の一連の過程を堪能できてこそ、本当の鯉釣りの醍醐味を味わえるのではないだろうか.数を釣るだけになったら、そこに楽しみも味わえない自分の釣りを感じるかも知れません。自分で自分の釣りを楽しめる、その気持ちを大事にしていきたいものです.
時に先達の著書を読むこともあります.最近は雑誌が情報源になり,情報源としてしか記事を感じないアングラーも多いのではないでしょうか.釣りをしながら知り合いのアングラーと談笑をする中で感じる楽しさ,それは情報を得るだけではなく、釣りの面白みを共有できたり,新たな面白みを教えてもらうことではないでしょうか.「情報」と「自己主張」でしかない記事には何度も読む気は起こらなくなります.同様にそういう類いの話ししかできないアングラーにはなりたくない、時にそう感じる時があります.
日本の鯉釣りのスタイルを考える時、その一つに山田 勳氏の影響は大きいと考えられる。氏の系譜を今も伝えるアングラーも多くいる中で,氏の技術をまとめた本として、
があるのではないでしょうか。この本だけでは解らない部分は多いとは思いますが,手垢で汚れる程、折に触れて読まれたアングラーも多いのではないでしょうか。この本に先立って出版された本としては,同じ著者の
があります。読みすぎて,表紙が汚くなっているが申し訳ないのですが,下の裏表紙の釣り姿がそのかっこよさを表しています。
フィールドは後ろの背景からして、芦ノ湖と思われる。やり取りの姿が様になって本当のベテランと言えるのではないでしょうか.鯉釣りにしても,人の真似をしても切りがありませんが,こういう名著を参考にしながら自分のスタイルを作り上げていくことが本当の鯉釣りの神髄かもしれない。
他にも以下のような本もあります.山田氏の対談も含めてざっくばらんに書いてあります。
これらの著書の山田氏とは一線を画していたというか、山田氏の以前に著書も多い、故小西 茂木氏も鯉釣りに関しては著書を通じて思いだされる方も多いのではないでしょうか.小西氏と言えば,六角のバンブーロッドの鯉竿に両軸リールアブの6500Cを使い、Y字ハリスに、練り餌を使い音で寄せる方法を紹介されて有名です.その具体的な著書としては、以下のものがあります.
私が鯉釣りを始めた頃は、上記で紹介した山田氏の著書はまだ出版されていなく,小西氏の著書はありましたが,実際に友人のアングラーと1年間くらい小西式のやり方を試してみましたが,釣果は殆ど出ませんでした.そこで、友人が山田氏の著書が出版されたのを機にその仕掛け、竿(サーフパワー)も全て同じもので試したところ、第1投目で鯉が釣れました.その時,私は隣で小西式で当たりが出ずに苦悶していました.まぐれもあるだろうと思っていたら,2投目にもまた山田式の仕掛けに当たりがあり,それ以降私も仕掛けタックルを見直すことになリました。もう30年以上も昔の話しですが、いまだに鮮明に記憶が残っています.その後小西式の両軸リールを使っての釣りに関しては振出の石鯛竿を使っての釣りに進化していったと考えられます。両軸リールは使いにくいということでスピニングに変えたアングラーもいる中で,山田式の釣り方はその後も連綿として受け継がれていると考えられます.
更に両軸リールと石鯛竿というタックルを使っていた人達の中から,ヨーロッパでのCarpFishingが紹介導入されて一気に日本の鯉釣りにも変化が起きたと考えられます.その中で,時代とともに情報源として書籍から、インターネットや雑誌でのタイムラグの少ない情報が得られる時代になり,鯉釣りの本もあまり出版されなくなりましたが,ヨーロッパのCarpFishingと日本式の鯉釣りの両方をバランスよく紹介しつつ、自身のフィールドワークの結集とも言える本として、山本和由氏の
を上げることができます。雑誌「CarpFishing」も同じような記事内容で構成されることが多いと思われます.
ここでは、少し昔を思いだしつつ本棚の整理も兼ねながら、昔の書籍をめくりながら、静かなオフの一時を過ごしています.