井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

「生前退位」論に、なぜ「女性天皇擁立論」が抱き合わせとなっているのか

2016年08月20日 | 日記

どなたと、お名指しは致しませんが保守言論界では著名なお方で
わたくしも、常日頃お考えには賛同している方が
天皇陛下の「生前退位」「お気持ち」について、
こう発言されている、とコメント欄にお知らせ頂き、
いささか困惑いたしました。

言葉全体に及ぶ反論は、範囲が広くそのための考証も多岐に渡り、
ブログの域を超えるので、数行に対してのみ反駁致します。

>「憲法」は昭和二十二年五月三日に施行された「法的世界」の問題である。
 「天皇」は、クロード・レブィストロースが指摘する
 「太古の神話から発する権威の世界」におられる。
 従って、「お気持ち」は、「権威の世界」に在り「法的世界」に在るのではない。
 よって、「法的世界」の憲法は、「権威の世界」の「お気持ち」に及ばない。
 つまり、そもそも「お気持ち」に
 「憲法」に違反するか違反しないかの議論はあり得ないのだ。
 これが「日本」なのだ。

フランス人の文化人類学者の言を用いずとも、
天皇陛下がわたくしども日本人にとって、「理屈」の埒外にある

お方でおわすことは、つとに承知しています。

たとえば、神武天皇が形而上の存在にせよ、あるいは実在のお方で
あったにせよ、三笠宮殿下のようにそこを否定されると
天皇陛下という、護るべき「神話」が総崩れしてしまいます。

それゆえ、「法的世界」(形而下)と、「権威の世界」(形而上)の価値観と
分けられる心情は、大変良く理解できるのですが・・・・

ただ、法は法です。天皇陛下ご自身が、皇祖神と代々先帝の御前にて
そう宣言されていらっしゃいます。

即位の礼、正殿の儀において、「即位を内外に闡明致します」という
国内外への誇らかな宣誓に続き、

「日本国憲法を順守し、日本国および日本国民統合の象徴としての務めを果たすことを誓い」

と、明確に述べておられます。これを否定なさるなら、陛下が皇祖神の前で
誓われた言葉が、嘘であったという甚だ心苦しい矛盾が生じませんでしょうか?

そして、天皇陛下御自らが平和憲法は守るべきもの、とお誕生日談話で仰せです。

「戦後,連合国軍の占領下にあった日本は,平和と民主主義を,守るべき大切なものとして,日本国憲法を作り,様々な改革を行って,今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し,かつ,改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し,深い感謝の気持ちを抱いています。また,当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います。」
天皇陛下お誕生日に際し(平成25年)

実情は日本が作ったわけではなく、GHQ製です。

以下は釈迦の耳に説法ですが、


「日本国憲法では、天皇を『象徴』として定め(1条)、

『憲法の定める国事に関する行為のみ』を行い、

『国政に関する権能』を有しないと定めています(4条)。

国政に関する権能を剥奪したのはGHQです。明治憲法下において、軍部が「統治権」の総覧者であらせられる天皇陛下を盾に暴走。そのために剥奪された「統治権」です。

憲法改正派は、それを是とせず改正を唱えているわけですが、それに
アンチのお立場が天皇陛下(と皇后陛下)ではいらっしゃらなかったでしょうか?

改正派の思惑とは真反対に、天皇陛下が「立法権、行政権、司法権」を行使すること、またそこに影響を及ぼすことを、一方で拒否なさっていることではないでしょうか。

宮内庁の風岡典之長官は、今回の「おことば」を受けた8日の記者会見で、「憲法上の立場を踏まえたご発言」として政治的メッセージではないと、説明していますが、お言葉を受けて政府が動き始めている以上、政治的メッセージであることは、明白です。そのことの是非はさておくとして、お言葉が立法権と、行政権に現実、及んでいます。

憲法違反を違反と明確に認めないと、何かの「都合」で曖昧にするなら
日本国民の遵法精神に悪しき影響を及ぼしかねません。

天皇陛下は、ご自身が護持を主張なさる「平和憲法」においては
「象徴」という偉大な権威でおわしても、権力者ではありません。

国民がお言葉を聞けば、どうぞお心のままに、となるのが現実で
事実、90%の人が「生前退位」に賛成だと伝えられています。

ただ、お気持ちで一点明確でないのが摂政や代行でなぜ
いけないのか、という点です。
摂政や代行が可能であると国民が知れば、賛成の数は
相当数減る可能性があります。

摂政も代行も順位の必然で皇太子殿下となります。
それに対して否定するなら、次期天皇であるべきお方を
拒絶という、はなはだ矛盾した論理になりはしないでしょうか。

それと、非常に厳しく見据えねばならぬのが、「生前退位」論と
なぜか、「女性天皇擁立論が」あたかも抱き合わせのごとく
澎湃として湧き上がっている点でしょう。

内々政府も水面下で知りつつ、宮内庁は国民を欺いてまでの
(この点もいかがなものでしょうか)公共放送を使っての
計略的発表、リークという形を装った練りに練られた計画ですが、
そこになぜ唐突なまでに女性天皇擁立論がくっついてくるのか、
慎重な考察が必要でしょう。

今回の天皇陛下の「お気持ち」発表を擁護する保守は、
女性天皇を是とされるのでしょうか。

 

摂政設置

摂政は,皇室典範の定めるところにより置く(憲法第5条)。

天皇が成年に達しないときは,摂政を置く。また,天皇が,精神・身体の重患か重大な事故により,国事行為をみずからすることができないときは,皇室会議の議により,摂政を置く(皇室典範第16条)。

 

順序

摂政は,次の順序により,成年に達した皇族が就任する(皇室典範第17条)。

  • 1 皇太子(皇太孫)
  • 2 親王・王
  • 3 皇后
  • 4 皇太后
  • 5 太皇太后
  • 6 内親王・女王

 

権能

摂政は,天皇の名でその国事行為を行う。この場合には,摂政は日本国憲法の定める国事行為のみを行い,国政に関する権能を有しない(憲法第5条)。

 

訴追の禁止

摂政は,その在任中,訴追されない。ただし,これがため,訴追の権利は,害されない(皇室典範第21条)。

 

 

お願い 匿名とかUnknownでの投稿は、発言への責任担保という意味で
おやりにならないでください。無記名の2ch的書捨てに場がなることを
好みません。常連の方はどうぞ一つの名前で押し通されますように。
ありがちのHNはかぶるので、避けたほうが無難です。

なお皇室へのご発言に関しては、内容は過激なもの以外は自由ですが、言葉遣いに最小限の敬意を持たれますよう。

名と顔を晒しつつ、発言には100%の責任を負う覚悟のブログです。
ご配慮をお願いします。

これまで、全てのコメントを公開して参りましたが、アクセス数が
急激に増えて来ていますので、念のため。礼節を逸脱した
コメントは公開しかねます。ご了承ください。


9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (美絵理)
2016-08-20 07:32:30
今上は、皇太子が摂政にはふさわしくないと、おっしゃってると思われても仕方ないですね。
論理の矛盾 (夢見心地)
2016-08-20 07:47:00
>今上は、皇太子が摂政にはふさわしくないと、おっしゃってると思われても仕方ないですね。

そうですね。
しかし、その一方、皇太子を私が目の黒いうちに、天皇に即位させてくれ、という文脈だから変なんですわ・・・・。海外公務はとりわけ、ほとんど単純なことしかお出来にならないことは、国民が・・・・あるいは海外の人のほうが存じあげているのに・・・・。
公務のまっとうとおっしゃりながら、皇太子殿下を生前に即位させよという言い分には無理があります。



平和憲法と女性天皇 (ねねこ)
2016-08-20 10:20:20
陛下が遵守すると仰せの『平和憲法』とは『憲法9条』の事だけではないかと勘ぐってしまいます。


中国ご訪問といい、李明博への親書といい、今回のお気持ち発表といい


中国の機関のようなマスコミを味方につけながらジワジワと政治に近づいてます。

李明博の親書の結果は、調子に乗りすぎた李明博の暴言で明るみに出ましたけど…

あれが明るみに出ずに取り込まれてたらと思うと恐ろしいです。

もうすでに『象徴』ではあられないですね。

皇太子さまと雅子さまは国連ベッタリで国連に『女性が天皇になれないのは人権侵害だ』と声明出させてます。


民間妃二代でここまで政治に巻き込まれてしまうようでは、考えものですね。


悠仁様がおられるのに、しつこく女性天皇にこだわるのか…、それ以前に悠仁様がお生まれになる前、十年以上もお若いお二人に出産を『ご遠慮』させた事実の方がよっぽど人権侵害でしょう


話は変わりますが、秋篠宮両殿下と悠仁親王さまがおいでになった津南町の博物館なじょもんに行ってきました。広々とした素敵なところでした。

悠仁様も、土器だけでなく水辺の生き物沢山のふれあい水槽などにもご興味を示され『目をかがやかせながら大層お喜びのご様子でした』と館内スタッフも嬉しそうでした。

Unknown (ピピ)
2016-08-20 12:45:54
確かに、摂政や代行を否定しつつ、生前退位して皇太子の即位を促し、更に女性天皇 (勿論、愛子内親王を念頭に置かれているのでしょう) 擁立に道を開く、というのが目的と思われても致し方のないお気持ち発表と感じました。
陛下のお気持ちを忖度するのは不敬だと感情的になる方も多いと思いますが、東宮に関しての批判については決して少なくない現状ですよね。
これまで、さしたるお仕事もされていない東宮の(失礼) 、陛下のお気持ち発表から、公務とも言えないご家族でのお出まし連発が気持ち悪く、落ち着きません。
何より、お三方で移動される時、ワゴン車の荷物席から乗り出してお手振りされる方を天皇陛下として仰ぎ見ることは出来ません。
ついでに皇太子も生前退位してください (ネコ太郎)
2016-08-20 13:31:06
オリンピックのメダルラッシュ報道に憲法違反の玉音放送事件も影をひそめていますね。でも宮内庁に巣食っているOWDの工作員が何かやらかしているかもしれないので不安は続きます。

やはり国体破壊者たちの目論見は女帝だったのですね。
悠仁様という正統な日嗣の御子がいらっしゃるのに諦めていなかったんだ。
安倍総理には踏ん張っていただきたいところです。

以下どこかのコメント欄で紹介されていましたブログですが、卓抜した見識で一読をお勧めします。コメント欄のないブログなので筆者のご許可を得たわけではないので、タイトルの紹介だけで。
午後の雨やどり
伝統の破壊者
Unknown (ぬかった)
2016-08-20 13:39:18
井沢先生、毎回のご教示を感謝して拝読しております。

某氏の引用部分ですが、

>「お気持ち」は、「権威の世界」に在り「法的世界」に在るのではない。よって、「法的世界」の憲法は、「権威の世界」の「お気持ち」に及ばない。

というのは、「お気持ち」が正しく胸中の「お気持ち」であるうちはその通りでしょうが、国民に向けて大々的に「お気持ちの発表」と表出なさった段階で、明確に形而下の「法的世界」に転位されたのではないでしょうか。某氏の説明は詭弁以前でしょう。

ところで私の父は、外地の捕虜収容所に配属された将校で、B級戦犯を危うく逃れた人間です。最近、亡父の手記を読み返しまして、戦況はなぜか捕虜の方が正しく知っており、逆スパイして情報を収集し、敗戦を察知していた、というくだりに注目いたしました。(父の記憶違いもあるのかも知れませんが、パシバール、ウェンライト、キングといった最高幹部が収容されていたそうです。)

昨今のマスコミの、諸手を挙げて皇太子ご一家を報道し、心身のご病状など一切触れないのを見ておりますと、大本営発表そのものです。海外の機関の方が、日本国民より正確に情報を掴んでいるのだろう、とつい嘆息してしまいます。
生前退位という言葉からして異常なのに (桃代(百代))
2016-08-21 01:39:29
これは個人の推測域ですが、書いてtいいものか迷いましたが「お気持ち」で摂政を置くのは象徴としてどうかと仰ってるくだりが矛盾しているのを見て、陛下は言わせられてるのではという感じがしてました。
陛下のお気持ちを汲み取りそれをすれば、皇室の格が下がり尊敬の対象から離れ国民の心が離れていくというのも何もわかっておいででない、陛下に愕然とします。
天皇両陛下は自虐史観(東京裁判史観)のまま
であり正しい歴史認識をお持ちでないと思います。

そうであればこそ両陛下は女系天皇を既に容認しており「お気持ち」を表明した。
それが皇室の滅亡に繋がることすらもわかっておいでではないと思います。
皇室に工○が入ってる可能性濃厚です。
雅子妃が入内後にご実家全員が入ってる(この話は有名)○○の関係者が自由に皇居に出入りしてると聞いたことがありますがそれと関係してる可能性はあると…

そしてマスコミはサヨクと繋がってますから
東宮が即位すれば必ず女系を容認するように
舵を取る報道をするのは目に見えています。
国民はみな賛成しているという風にね

(国民はそれに騙される。生前退位にしても賛成してる保守ジャーナリストが多いのですから)
今の状態で東宮が即位すれば終わりでしょう。
そこまでの用意周到な計略謀略戦ではないかと踏んでいます。
最悪な状況の日本です

Unknown (toko)
2016-08-21 03:39:58
>「お気持ち」が正しく胸中の「お気持ち」であるうちはその通りでしょうが、国民に向けて大々的に「お気持ちの発表」と表出なさった段階で、明確に形而下の「法的世界」に転位されたのではないでしょうか。

その通りですね!もやもやがすっきりしました。
どうして (大碇門太郎)
2016-08-30 19:34:39
おかしなコメントが多いですが、一人の方のコメントでしょうか。

陛下のご意思は「人間天皇」ですがら、当然のように女性天皇も抱き合わせだし、古い伝統とも決別するのでは?

そもそも陛下ともあろうお方が軽率であったと思います。国論二分を公認するかのような・・・

まあ、安倍政権が政治利用、というのと、平和を守るために陛下が安倍政権をけん制、という意見については、取るに足らないと思いますが。