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なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

「一歩一歩、歩いていれば必ず着く」 あばれる君の青春時代は山とともに

2021年03月15日 06時12分15秒 | 登山
石丸謙二郎の山カフェ

放送日:2021/02/27

山岳部のキャプテンとしてインターハイに出場
山本: 早速ご紹介いたしましょう。お笑い芸人のあばれる君です。
あばれる君: よろしくお願いします!
石丸: こんにちは~! わぁ、頭が光ってる~!
あばれる君: ありがとうございます~! テッカテカですね。
石丸: きょうは上下黒のジャージを着ていますね。
あばれる君: ジャージじゃなくて、パーカーとパンツですけれども。
石丸: パーカーね。僕、古い人間で、すぐジャージって言ってしまう(笑)。
山本: きょうはカフェにある別の個室にお迎えして、画面越しにお話ししております。
石丸: (身長が)大きいね!
あばれる君: 179センチメートルあります! 会うたびに「大きいですね」って言われて、羨ましがられますね。
石丸: 頭はそっているの?
あばれる君: 毎日そっていますね。
石丸: 頭がテッカテカで、光り輝いている……!
あばれる君: どんなときも遭難することはありません。
山本: GPS代わりですね(笑)。ちなみに「あばれる君」という芸名の由来は何ですか?
あばれる君: お笑い芸人を始めたときに舞台付きの居酒屋で修業していたんですけど、ビールやお皿を運ぶときにたくさん割っちゃって、店長から「お前、あばれる君だな」ってあだ名を付けられました。それから舞台に立っていたので、芸名となりました。
山本: あばれる君のプロフィールをご紹介しましょう。
福島県のご出身で現在34歳、身長は179センチメートルです。小学生時代から目立ちたがり屋だったそうで、その後、NHKの<爆笑オンエアバトル>を見てお笑い芸人を目指します。2008年から芸人活動をスタート、「何事にも全力」というスタイルで体を酷使するようなロケを中心に老若男女に大人気。また、高校時代は福島県の白河高校山岳部のキャプテンとしてインターハイに出場されています。
石丸: きょうは、どこからどうやって来たの?
あばれる君: 雪山から帰ってきました。
石丸: やっぱりね! いつも過酷なことをやっているんだね。
あばれる君: 顔が雪焼けで日焼けしちゃってカッピカピですよ。乳液ありますかね(笑)。
石丸: 無人島脱出とか過酷なロケが多いじゃない。
あばれる君: とても楽しいですね! 昔から自然が大好きだったので。
石丸: やりたかったことができているわけだね。
あばれる君: こういうことをやるために東京に出てきたと思っていますね。
石丸: 白河高校山岳部に入ったきっかけはなんだったんでしょう?
あばれる君: 野球部を辞めちゃって時間が余っていたところ、とある先生にトントンと肩をたたかれて「そんな時間があるなら山岳部に入ってみないか」って言われて入ったんですよ。だから最初は山に興味があるわけではなかったんですね。でも、山岳部に入って一生懸命練習したりしていたらインターハイに出られたんですよ! 47都道府県中36位だったんです。
石丸: インターハイってそうそう出られない。県の予選とかあるし、出られるのは県で1校でしょ?
あばれる君: そうですね。2004年に僕はキャプテンで行きましたよ。
石丸: キャプテン!? その山岳部って何人ぐらいだった?
あばれる君: そこまで人数が多くなくて、13人ぐらいですね。
石丸: しっかりいるよ、それは。
あばれる君: 男女比は9:1です。いや完全に9.9:1くらいですね!
石丸: なんだそれは(笑)。僕の時代って50年ぐらい前だから、山岳といえばしごきみたいなものが常態化していたんだけど……。
あばれる君: 例えばどういう…かなりつらかったってことですか?
石丸: しごきといっても、殴られるとかじゃないよ。先輩の荷物を全部背負って、やっと着いたと思ったら「忘れ物したからあそこまで取りに戻れ」とか。
あばれる君: うわ~! その先輩が変わっていたのかもしれませんね。僕らのときは本当に楽しくて。でも、トレーニングは25キログラムを背負って学校の周りを2周ぐらい走るっていうのをやってましたね。
なにより、部室を使えるっていうのはすごくよかったですね。山岳部専用の部室でみんなと放課後しゃべるのが楽しかったですね。
石丸: 汗臭かったろう(笑)。
あばれる君: 臭かったですね~!(笑)

山岳部だけどネタを披露……?
石丸: 山岳部って山に行かないとダメなのに、学校の中では走るだけ?
あばれる君: 次の大会に向けての登山計画書を作ったりしました。
石丸: 大会について教えてくれる?
あばれる君: 競い方としては、山の登り方とかテントをたてる速さ、登山計画書の出来のよさ、献立のバランスなどで競います。持ち点が100点ぐらいなのかな…そこから減点されていって、持ち点が高かったチームが勝ちっていう。
山本: 調べてみたので、改めてルールをご紹介しましょうか。そこに補足説明をお願いします。
1パーティー4人の団体戦。速さを競うものではなく、3泊4日の競技中に高校生として安全な登山を行ううえで技術・体力・知識がどれほど身に付いているかということを100点満点の減点方式で総合的に審査します。
項目としましては、山を歩く体力、歩行技術、装備、天気図の書き方、読図(どくず)という地図の読み取り方。テントの設営、記録や計画書の作成、炊事などが審査項目にあります。みんなでいかに減点を避けて高得点を取れるかというのを競う。しかし、競うといってもほかの高校との競争ではなく、日頃どれだけ培った実力があるかというのを審査されるそうで、競技というよりは登山大会と呼ばれることもあるそうですよね。
あばれる君: あからさまに蹴落としてやろうということではないですね。大会としては、死にもの狂いで1位を取るというよりは、山を楽しみながら評価してもらうっていう感じですかね。
石丸: 大会のときに、他の県の人たちと仲よくなることも?
あばれる君: ありますね。夜に懇談会があります。すごく楽しいんですよ。うちの山岳部はネタ見せみたいなものをやったりしてね。
石丸: ネタ見せって何?(笑)
あばれる君: うちは山岳部でありながらコント部でもあったので。懇親会とかでは積極的にみんなでコントをやっていましたね。
石丸: 山岳部の中には、あばれる君だけじゃなく、おもしろい人がいたんだね!
山本: そのときの副部長が最初の相方ですね、高校時代の。
石丸: そこから始まっているんだ! 世が世なら漫才をやっていたかもしれないんだね。
あばれる君: 必死に誘ったんですけど、副部長はお笑い芸人にはならなかったですね。その副部長、五十嵐くんを山岳部に誘ったのは僕なんですけれども。
山本: あばれる君は立候補してキャプテンになったんですか?
あばれる君: 最初、副部長の五十嵐くんが部長になるって話だったんですけど、さすがに「僕が五十嵐くんの下は嫌だ」ということで、僕がキャプテンになったんです。

大嫌いだった天気図の作成
石丸: インターハイのときに47都道府県中36位。上位に行かなかった原因って何だろう。
あばれる君: 結構減点されたことが多かったんですけど、一番覚えているのは、どんな夕ごはんを食べているのか。テントの中に審査をしに来たんですけど、そのときに「君たちのチームに足りてないものは分かるか?」って言われて「何だろう?」と思ったんですけど、「サラダ」って言われて減点されたんですね。サラダが足りてなかったんですよ、うちのチーム。
山本: 何を作ったんですか?
あばれる君: カレーだけです。
石丸: 栄養が偏っているね。
あばれる君: 野菜が足りていなかったんでしょうね。
石丸: そういうところを見られるんだね。天気図を作成するというのは。
あばれる君: すごく難しいんですよ! 僕、等圧線がうまくつながらないんですよ。壁画みたいになっちゃって……。
石丸: NHKラジオを聴きながらやるんだよね。
あばれる君: そうなんですよ。「南南東の風、風力4」とか……。
山本: 私、その仕事をやっていました! 気象通報の仕事を長らくやっていてね。あばれる君に書いてもらっていたかと思うと今さらながら緊張しますね。
石丸: 山本さんの声で気象通報を!?
山本: 「南南東の風 風力4」って読み上げていました。
あばれる君: これだ……。この声だ……! 今、一致しました!!
山本: 「千島列島の南」とか「ヘクトパスカル」とか。長いものを1つも漏らさず20分ぐらいで読むというのは、結構プレッシャーがありましたね(笑)。
あばれる君: 山本さんの声を聞いていて懐かしいなと思っていたんですけど、今、合致しました。ラジオで聴いている声だったんだ!
山本: あばれる君がこの声を聴き取って書いていたと思うと感無量ですよ。
石丸: 君たちすごい通信をしているな!
山本: そのときは知りませんでしたけどね。
あばれる君: 僕が当時18歳だから、16年前ですよ。16年をもって再会ですね!
山本: でも、得意ではなかったんですよね?(笑)
あばれる君: 天気図は大嫌いでした(笑)。
山本: でも、遭難しちゃいけないから重要ですよね。
あばれる君: だから天気図を書いて、天気を読んだりして答えたりするっていう。あと、読図も難しかったですね。
山本: 地図を読むということですか?
あばれる君: 今、自分たちがどこにいるかっていうのを示せっていうのがあるんですよ。
山本: 地図を読むのは得手、不得手があるのですか?
あばれる君: いきなり抜き打ちで言われるので……。正確じゃないとまた減点されるんです。
山本: 実際に中国地方の山の地図を見せられたりとかするのですか?
あばれる君: 山の等高線があるじゃないですか。あの一部分を渡されるんですよね。コンパス一つで読み解くんですけど、今どこにいるのか線を引けって言われて。やり方忘れちゃったなぁ…結構難しいんですよ。読図やったことあります?
石丸: もちろん。今もやっているけど、山に行ったら読図ができないと、どこにいると分からないから。
あばれる君: 僕、登山ルートしか登らないからな……。
石丸: 今、山を登るときは地図を見ない?
あばれる君: 地図よりは看板を見て登りますかね。
山本: 看板ね。確かといえば、確か。
石丸: 看板って言ったから、“勘”で登るのかと思っちゃったけど。
あばれる君: いや、そんなことはない……(笑)。僕、そんなうまいこと言えないので。

得意種目は料理! 雪山でのすき焼き
山本: 得意な種目はありましたか?
あばれる君: 料理ですかね。
石丸: でも、料理で減点されてるじゃないか(笑)。
あばれる君: そうですけど(笑)。 味は確かでしたよ。
石丸: カレー以外に何かあるの?
あばれる君: すき焼きを作りましたね。
石丸: 山ですき焼き!?
あばれる君: 実は簡単なんですよ!
山本: すごい豪華!
あばれる君: 雪山の初日は必ずすき焼きでしたね。刻んでいった具材を袋から出して、お米を炊いて、あとは煮込むだけですね。それをごはんに乗っけて食べるのがうまいんですよ。
石丸: それはうまいだろうね。山ですき焼きか~。食べるところは、ふもと? それとも途中で?
あばれる君: 途中ですね。雪山で泊まっていました。寒くて寝られなかったですね。
山本: どれぐらいの寒さですか?
あばれる君: ずっと背中に雪がある感じ。
山本: どこの山です?
あばれる君: 那須・甲子山(なす・かしさん)です。
石丸: お便りでね、「私はあばれる君のふるさとにある檜山(ひやま)を毎日見ながら仕事をしています」と来ています。檜山ってあります?
あばれる君: ありますよ~!
石丸: 「檜山に白く煙ってくると雨が来るのでワクワクしています」と書いていますね。
あばれる君: そういう楽しみ方もあるんですね。
石丸: きのうも雪山にいたんでしょ?
あばれる君: そうなんですよ。でも、雪山は嫌いじゃないですね。静寂があり……雪山はお好きですか?
石丸: 僕も好きですよ。
あばれる君: とてつもない静寂というか、極限の無音じゃないですか。
石丸: 音が雪に吸われちゃうのかな。
あばれる君: 自分が別世界にいるようですよね。雪洞を掘って中で過ごす時間がたまらないんですよ。
石丸: もともと雪の多いところで育ったからね。
あばれる君: そうですね。福島県出身ですので。
山本: テント張りはお得意ですか?
あばれる君: テントは全国大会では時間が限られているんですよ。速ければ速いほどよかったような気がするので、すごく速かったですね。学園祭では4人で1分に挑戦したこともありました。
山本: 普通はどれぐらい時間がかかるのですか?
あばれる君: どんなに急いでも3分ぐらいかかりますね。
石丸: それ、破れたりしなかったかい?
あばれる君: ポールがビリリッっていっちゃったりしましたね。みんなで握って隠しましたけど(笑)。

あばれる君流 ラーメンの作りかた
石丸: お便りが届いています。
60代・大阪府
私も高校時代は山岳部でした。一番の思い出は1年生の夏合宿。当時、朝食は必ずインスタントラーメンと決まっており、約1週間の北アルプスの合宿中、毎朝みそラーメンとなりました。みそラーメンが苦手だった私は3日目あたりで10分も歩くと胸焼けのような状態になり、そのうえ30キログラムを超す重い荷物。当然、景色は覚えていません。それから20年くらいはみそラーメンは全く受け付けませんでした。

あばれる君: すごい話ですね。分かりますわ~! 朝ごはんは必ずインスタントラーメンでした。そこに薄い餅を入れると、ボリュームと炭水化物が増えて栄養がいっぱいとれるんですよ!
石丸: あばれる君のテーブルの上に大きなカップがあるけれども。
あばれる君: こちらですね、僕がいつも愛用しているマグカップです!
石丸: でかいね~! 中にこぶしが入るでしょう?
あばれる君: こぶしどころか、頭も入っちゃうくらいで。(と言って、頭に乗せるが、入らない…)
石丸: そんなマグカップがあるんだ! どうやって使うの?
あばれる君: これはいろんなものが飲めるんですけど、ラーメンも作れちゃうんですよ。味付きの砕いていったインスタントラーメンを入れてお湯を注ぐだけで、お箸使わないで飲めるという。
石丸: なるほどね! スープみたいになるんだ! それ、金属のマグカップだよね。
あばれる君: はい!
石丸: いいアイデアだね!
あばれる君: 雪山のときは、雪を入れてちょっと温めて水を作っちゃったりして。なんでも併用できます。そして頑丈なので、適当に扱っても文句言わないんですよね、この子は。
石丸: いつから持っているんでしょう?
あばれる君: 5年くらい前にポロっと金物屋さんで見つけたんですよ。
石丸: そんな大きなマグカップ初めて見たなぁ……。
あばれる君: 石丸さん、どれくらいの容量か分かります?
石丸: 僕、そういうのすぐ分かる人でね、ペットボトルをマグカップに入れるふりをすると……。だいたい360ミリリットルをちょっと超えるくらいかな?
あばれる君: すごいな~! メスシリンダーが体に入っているんじゃないですか?
石丸: かもしれないね(笑)。
「一歩一歩、歩いていれば必ず着く」
山本: インターハイって3泊4日だったようですけど、その準備に何日もかかったようですね。
あばれる君: 3か月ぐらい前から準備を始めて、1か月前は登山計画書を書くのに必死ですけど、なにより3泊4日お風呂に入れないじゃないですか。しかも8月だから真夏。すごいですよ、それはそれは……。
石丸: 聞きたくないね。
山本: ……ちょっとつらいですね、話を掘り下げるのがね。
あばれる君: 2人とも一気に顔しかめたじゃないですか! 僕の思い出話を!
山本: いえいえいえ! ちょっと共感してしまったという(笑)。
石丸: 考えてみれば、あばれる君は今も同じようなことをやり続けているわけだな。
あばれる君: 続けていてよかったと思いますね。
山本: 体を張ったお仕事で、山岳部の経験が息づいているんでしょうね。
あばれる君: 山岳部は粘り強くなりますね。山を登り始めたときって「いつ頂上に着くんだろう」と思いませんか? 登っているときは、何を考えています?
石丸: 「きょうはもう頂上に着かないな」と思って……。
あばれる君: 大丈夫ですか、それ!(笑) でも、そういう感じになるけど、一歩一歩、歩いていれば必ず着くじゃないですか。それがどの仕事にも似ているのかなと思いますね。
山本: いい話……!
石丸: あばれる君がやっている番組を観るとそう思うよ! いつ終わるんだろうっていう気がしちゃうね。いつか終わるんだ。
あばれる君: 足元をちゃんと見て、一歩一歩進めていれば必ず着くっていうのを山に教えてもらったかもしれないですね。
石丸: ツルツルの頭の神々しさを見ていると、お坊さんからお説教をたれてもらっている気がしますね。いい話をいただきました。ありがとうございます。
山本: マスターはさっきから頭のツヤが気になっちゃってしょうがないんですって(笑)。
あばれる君: 僕の頭ばっかり見ているじゃないですか!!


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