NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音盤日誌「一日一枚」#476 PINK「PINK」(Alfa Moon 32XM-5)

2023-03-08 05:14:00 | Weblog
2023年3月8日(水)



#476 PINK「PINK」(Alfa Moon 32XM-5)

日本のロック・バンド、PINKのデビュー・アルバム。85年リリース。福岡ユタカ、PINKによるプロデュース。

PINKはボーカルの福岡ユタカ、ベースの岡野ハジメ、キーボードのホッピー神山、ドラムスの矢壁アツノブ、パーカッションのスティーブ衛藤、ギターの渋谷ヒデヒロの6人により83年結成。89年の活動凍結に至るまでに、5枚のアルバムをリリースしている。

ビブラトーンズ、東京ブラボーといった、いくつもの既存バンドのメンバーが合流して出来たバンドであり、いってみればスーパー・グループだ。

そのサウンドも、多くの駆け出しのバンドとは一線を画した、超ハイレベルなものだった。

40年近く前、PINKを初めて聴いた時の筆者の感想は「何、これ?」「これ、本当に日本のロック・バンドなのか」、そして「新人バンドとは、到底思えない」だった。

それまでの日本のバンドといえば、リズムにおいて明らかに本場の英米バンドのそれに劣っていたが、彼らの登場によってその差は完全に埋まったのだと、筆者は感じた。

デビューして間もない彼らを聴いた桑田佳祐が衝撃を受けて、サザンオールスターズのために「開きっ放しのマッシュルーム」という曲を書いたというのも、納得できる。

「DANCE AWAY」は福岡と實川翔の共作詞、福岡の作曲。

PINKは3枚目のアルバムまで、大半の曲を彼が作詞・作曲しており、アレンジは各メンバーが行っている。

長くうねるようなメロディ・ラインの果てにたどりつくクライマックス。実にカッコいい。

福岡のメロディメーカーとしてのセンスは一級だと思う。そして、歌い手としても。

間奏のスピーディなギター・ソロは、おそらくゲストの布袋寅泰。これもなかなかの出来ばえだ。

「ILLUSION」は福岡の作詞・作曲。

この曲も、哀感を帯びたメロディ・ラインが実にいい。

福岡のシャウトを盛り立てるバックの、ドラマティックなアレンジも完璧な出来ばえだ。

「YOUNG GENIUS」は福岡、岡野、清水一登の共作詞、PINKの作曲。

筆者的には、このアルバムで一番気に入っているナンバーだ。ブギウギの強力なリズム、そして福岡の野太いボーカル。

日本のバンドとはとても思えないダイナミズムがそこにはある。バンドの「動」のサイドを象徴する一曲。

福岡の声質には、他のシンガーにたとえようのない独特のものを感じる。高音ではスティングに通じる雰囲気もあるが、野性動物のような猛々しさも兼ね備えていて、また一方では繊細な「ゆらぎ」もある。他では得難い才能だ。

「ZEAN ZEAN」は福岡の作詞・作曲。

前のめりに突っこむようなビートを持つ、ファンク・ロック・ナンバー。サンプリングも使った意欲作。

生音とデジタルが見事に融合したサウンド。PINKならではの音世界だ。

「SECRET LIFE」はSAGE UWEの作詞、福岡の作曲。

福岡のもうひとつの側面である、繊細なボーカル表現が光るナンバー。吉田美奈子、坪倉唯子の女声コーラス、横山英規のサックスがメロウな曲調をさらに高めでいる。

「SOUL FLIGHT」はSAGE UWEの作詞、福岡と沖山優司の共作曲。

こちらも、福岡の抑えめのボーカルが印象的なビート・ナンバー。静かな中にも、野性を秘めたサウンド。

「RAMON NIGHT」は福岡の作詞・作曲。

ボーカル、コーラスをメインにフィーチャーしたロックンロール。福岡の遠吠えにも似たワイルドな歌声が、耳にこびりついて離れない。

シンセサイザーのミステリアスな響きがボーカルに絡みついて、深い夜を演出している。

「人体星月夜II」はSAGE UWEの作詞、福岡の作曲。

幻想的な曲調のゆったりとしたテンポのバラード。福岡の優しいボーカルが、聴くものを別世界へと誘う。

PINKの「静」の魅力を代表するような作品である。

活動終了後のPINKの各メンバーの活躍ぶりは、いまさらここに書く必要もないだろうが、それぞれが常に高い水準の作品を世に出し続けている。

ことにラルクアンシエルのプロデューサーとしての岡野、ボウイ・吉川人脈を中心とした数多くのアーティストのアレンジャーとしての神山の活躍は、音楽通なら誰でも知っていると思う。

いってみれば、今日のジャパニーズ・ロックは彼らに負うところが大きい。

バンドとしてのブレイクには成功しなかったが、アーティストの音作りという根幹の作業において、彼らの先進的なセンスが果たした役割は高く評価できる。

そんな才能集団、PINKの出来すぎともいえるファースト・ワークを、いま一度チェックしてみよう。

<独断評価>★★★☆

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音盤日誌「一日一枚」#475 GA... | トップ | 音盤日誌「一日一枚」#477 氷... »
最新の画像もっと見る