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音曲日誌「一日一曲」#192 the pillows「When You Were Mine」(Swanky Street/キングレコード)

2023-10-10 05:17:00 | Weblog
2011年11月5日(土)

#192 the pillows「When You Were Mine」(Swanky Street/キングレコード)





先週のARBほどではないが、1989年結成とこれまた息の長い日本のロック・バンド、the pillows(ザ・ピロウズ)の7枚目のシングル(96年リリース)より、カップリング曲を。プリンスの作品。

ピロウズはギターの山中さわお、真鍋吉明、ドラムスの佐藤シンイチロウの3名によるオルタナティブ・ロック・バンド(レコーディング等では、ベースの鈴木淳がサポートで入っている)。

格別のヒットがあるわけではないが、どちらかといえばクロウト受けのする幅の広いサウンドで、現在も根強い人気を保っている。

近年ではアニメ「けいおん!」の中で山中・真鍋を意識して作られた山中さわ子、真鍋和というキャラクターが登場したこともあってか、固定ファン以外にもその存在を広く知られるようになってきた。

商業バンドとしての「成功」は果たしていないが、一時休止期はあったものの、その22年という歴史は、彼らの確たる実力の証明であるといっていいだろう。

そう、22年間にシングル34枚、アルバム17枚(ベスト盤を除く)を生み出したそのパワーは、ホンモノだ。

さてきょうの一曲は、15年前に出したシングルに収録されたカバー・ナンバー。オルタナ・バンドのピロウズが黒人アーティストのプリンスをカバー? なんだか不思議な感じもするが、聴いてみると意外とイケるのだ、これが。

原曲はプリンスのサード・アルバム「Dirty Mind」(1980)に収録。当然、プリンスのあの挑発的な声、そして耳を刺激するエレクトリカルなアレンジがそこでは聴けるのだが、ピロウズ版は一転、まるで自分たちのオリジナルであるかのように、山中の素朴な歌声になじんだ一曲になっている。

まさにアレンジの妙。もともとギター・バンド用に作られた曲のようにさえ聴こえる。

まあこれは、元の曲の懐の深さをしめしているといえるし、また、ピロウズの引き出しの多さをしめしているともいえる。

プリンスは、マイケル・ジャクスンなどとともに、黒人でありながら、白人のロックも取り込んで従来の黒人音楽を越えた音楽を作り出したスーパースターのひとりだ。マイケルが輝かしい「光の王子」的な存在ならば、プリンスは常に毒をはらんだ「闇の王子」的な存在といえよう。このふたりは表裏一体、インアンドヤンみたいな関係にある。

プリンスの作る音楽世界は、明らかにレース・ミュージックとしてのブラック・コンテンポラリーを越え、黒人以外のリスナーの心をとらえた。

そしてその曲をピックアップしたピロウズもまた、従来のロック・バンドのフォーマットにこだわらない柔軟な音作りの出来る稀有なバンドだと思う。

この曲以外にも、サイモン&ガーファンクル、ルースターズ、コレクターズ、Mr. Childrenの曲をカバーレコーディングしているほか、ステージではビートルズ、ニルヴァーナ、バグルスの曲なども演奏してるとか。とにかく、守備範囲が広いのだ。

2004年には彼らへのトリビュート・アルバム「SYNCHRONIZED ROCKERS」もリリースされていることからわかるように、多くの後発バンドにも影響を与え、また慕われているピロウズ。強烈な個性があるというタイプではないが、ソウル、ロカビリー、ボサノバなどさまざまなジャンルの音楽をベースにした曲作りのセンスのよさは、さすがのものがある。ミュージシャンズ・ミュージシャンとは彼らのことだな、うん。

惜しむらくは、ヒットらしいヒットがないということ。。この2年ほどはコンスタントにシングル・リリースをしているのだから、ここいらでガン!とヒットを飛ばして欲しいものだ。

「邯鄲の枕」のような、イマジネーションに満ちた音世界をもつピロウズ。日本にもこんなハイセンスなバンドがあるんだから、ぜひ耳を傾けてほしい。

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