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音曲日誌「一日一曲」#295 ラウル・ミドン「State Of Mind」(State Of Mind/Manhattan Records)

2024-01-25 05:54:00 | Weblog
2013年11月23日(土)

#295 ラウル・ミドン「State Of Mind」(State Of Mind/Manhattan Records)





アメリカのシンガー/ギタリスト、ラウル・ミドンのメジャーデビュー・アルバムより。ミドン自身の作品。アリフ・マーディン、ジョー・マーディンのプロデュース。

ラウル・ミドンは66年、ニューメキシコ州生まれ。アルゼンチン出身の白人の父、黒人の母をもつ。未熟児として生まれ、生まれながらの全盲となる。母が早世したため、父に育てられる。

5才でパーカッションを始めて音楽に目覚め、その後アコースティック・ギターを弾くようになる。

マイアミ大学に進学、ジャズを専攻。卒業後は、ジェニファー・ロペス、フリオ・イグレシアス、シャキーラ、アレハンドロ・サンツといった、おもにラテン系ミュージシャンのバック・シンガーをつとめるようになる。その一方で、バーやクラブでソロの弾き語りもやっていた。

本格的なソロ活動は、2002年にニューヨークへ移住してからだ。スパイク・リー監督の映画「セレブの種」の音楽に自作曲を提供したことで注目され始め、ジェフ・ベックの前座をつとめてベックに絶賛されるなどクロウト筋の評価も高かった。

2005年、ハービー・ハンコックのアルバム「Possibilities」制作に参加。スティービー・ワンダーの「I Just Called to Say I Love You(心の愛)」を歌い、ハーモニカ担当のワンダー本人とも共演するというビッグ・チャンスを獲得する。

また同年、マーディン父子(ノラ・ジョーンズなどのプロデュースで著名)のプロデュースでメジャーデビュー盤「State Of Mind」をリリース。こちらでもワンダーと共演している。

さて、ミドンのサウンドの説明は、やはり実際の曲を聴いていただくにしくはない。まずは、ライブステージの模様を観ていただこう。アルバムのタイトルチューンの、ロングバージョンである。

皆さん、聴いてみて、たちまち度肝を抜かれたのではないだろうか。

伸びやかでソウルフル、ワイドな声域をもつボーカルは、まずまずの出来ばえ。ワンダーに大きな影響を受けただけあって、非常に似た雰囲気をもっている。

が、それだけじゃない。スラップ・ギターともよばれるパーカッシブなギター・プレイがまずスゴい。そのリズム感の絶妙さは、さすがパーカッションを幼少時からやって来ただけのことはある。

そして、ボイス・トランペットとよばれる、ボーカルでのトランペット風アドリブ。これまた、ハンパでなくカッコよろしい。リズム、メロディ、ハーモニー。いわば、一人だけで全てのサウンドを構築できる、究極のソロ・プレイヤーなのだ。

先日取り上げたボビー・マクファーリンもスゴいソロ・プレイを聴かせてくれたが、ミドンも負けず劣らず、余人に真似の出来ない世界を創り出している。真の才能とは、こういったものを指すんだろうなあ。ホンマ、脱帽もんやで。

彼の音楽には、白人系、黒人系、ラテン系、ジャズ、ソウル、ファンク等々、ありとあらゆるアメリカン・ミュージックの要素が、混在している。基本はソウルフルな音楽だが、その要素を解析することが愚かしく思えるほどに、なんでもありな「ミドン・ミュージック」なのである。

「State Of Mind」リリース後は2年に1枚ほどのペースでアルバムを発表、日本にも何回かライブで訪れている。この11月30日から12月2日には、カメルーン出身のフュージョン・ベーシスト、リチャード・ボナとともにブルーノート東京のステージに立つことになっている。

この顔ぶれだから、最少人数でも、ものスゴいサウンドを聴かせてくれることは、間違いなさそうだね。

盲目であること、またその歌声の印象から、「スティービー・ワンダーの再来」とよばれること専らのミドンだが、ワンダーの単なるフォロワーってレベルではない。新しい時代の音楽を生み出す旗手たりうる、10年にひとりぐらいの逸材だろう。ミドンのこれからの活動、目が離せないぞ。

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