NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#198 山下達郎「シーズンズ・グリーティングス」(MOON AMCM-4180)

2022-05-31 05:00:00 | Weblog

2003年12月21日(日)



#198 山下達郎「シーズンズ・グリーティングス」(MOON AMCM-4180)

circustown.netによるディスク・データ

クリスマスも近いので、今回は「季節モノ」。山下達郎のクリスマス・アルバムである。93年リリース。

彼が83年にリリースしたシングル、「クリスマス・イブ」がいまだに売れ続けており、わが国における「ホワイト・クリスマス」並みのスタンダード・ナンバーになりつつある。

その英語詞版「CHRISTMAS EVE」、そしてア・カペラの「ホワイト・クリスマス」を中心に構成された、クリスマス・ソングの集大成盤がこれである。

多重録音によるア・カペラあり、オーケストラ&コーラスのゴージャスなバッキングによるものあり。いずれにせよ"凝り性"な彼の真骨頂がタンノウできます。

<筆者の私的ベスト4>

4位「SMOKE GETS IN YOUR EYES」

実はこれはクリスマスとは関係ないナンバーだが、出来がいいのでピックアップ。いうまでもなく、プラターズのビッグ・ヒット、「煙が目にしみる」である。

元々はジャズ作曲家、ジェローム・カーンが1933年に作った古~い曲。これを戦後プラターズがR&Bとして蘇らせ、さらに達郎が新しい衣を着せて歌い継いでいるのだ。70年の年月を越えて生き続ける、究極のスタンダード・ナンバー。

優雅なストリングス、ホーンの演奏に乗せて、いかにも心地よさげに、高らかに歌う達郎。

プラターズの絶唱にもひけをとらない、快唱であります。

3位「HAPPY HOLIDAY」

多重録音による、ドゥ・ワップ・コーラスが印象的なナンバー。58年、シェルズなる黒人コーラス・グループによるヒット、といっても日本ではほとんど知られていないが。

達郎はおなじみの「ON THE STREET CORNER」シリーズで、この手のコーラスにたびたびトライしているが、これもその延長線上のサウンド。

いかにも生きがよく、キャッチーなハーモニーに、心底ハッピーな気分になってしまう。

こういう「勢い」のある曲のほうが、シナを作って甘~く歌うタイプの曲よりも出来がいいと思ってしまうのは、筆者だけ?

2位「CHRISTMAS EVE」

これは「MELODIES」のオリジナルのバック・トラックを使い、アメリカのシンガー・ソングライター、アラン・オデイによる英語詞で歌うヴァージョン。オデイは「YOUR EYES」「BIG WAVE」なども作詞しており、達郎と係わりが深い。

原曲のイメージにほぼ近いドラマが展開される歌詞に、思わず落涙してしまうリスナーも少なからずいるだろう。かくいう筆者もそのクチ!?

クリスマスといえば楽しく、ハッピーな日、こういう一般的なイメージの逆をついて、大失恋、大悲劇の日にもしてしまった達郎。

日本では、クリスマスにデートできるひと、できないひとと、はっきり色分けされてしまう文化が、このヒット以来できてしまったような印象がある。(特にバブル期以降。)

なんだかな~。彼の曲も、功罪半ばという気がするね(笑)。大体、日本人はクリスマスという神聖な祭典を、何だと思ってんだ!

それはさておき(笑)、そういう悲しい、後ろ向きの内容の歌なれど、やっぱりいい曲だと思う。

アーティストは誰でも、「会心の一作」をものするために、ああでもない、こうでもないと試行錯誤を繰り返すものだろうが、これは「神が降りてきた」、そういう一曲だと思う。今後も、多くのひとびとに愛され続けていくことは、間違いないだろう。

1位「WHITE CHRISTMAS」

1位はやはり、これしかあるまい。数々のスタンダード曲をものした大作曲家、アーヴィング・バーリン、42年の作品。

第二次大戦中に書かれたこの一曲が、稀代のクルーナー、ビング・クロスビーという歌い手を得たことで、世界一売れたシングルとなったのである。

60年以上、米国内のみならず、世界中で歌いつがれているのだから、達郎の20年というロング・ヒットもまだまだスケールが小さい、小さいってことやね。

ヤマタツさんもまだ50そこそこだろうから、これからも30年、40年、よぼよぼのジイサンになるまで、「クリスマス・イブ」を歌い続けていって欲しいもんだ。「日本一のロング・ヒット」ぐらいには、認定されるかもね。

余談はともかく、このア・カペラ版「ホワイト・クリスマス」、その多重録音に対する凝りかたはハンパではない。

何十回も執拗にコーラスを重ねていくことで、この曲にクロスビー版とはまったく違った、聖歌のような厳かさを与えることに成功している。

音の求道者・山下達郎の、まさに面目躍如なトラックである。必聴。

他にもクリスマスがらみの、有名曲、シブめの曲、各種満載であります。ハッピーなクリスマスをお迎えのかたも、残念ながらそうでないかたも、BGMにぜひどうぞ。

<独断評価>★★★☆


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