NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

#219 ズー・ニー・ヴー「ひとりの悲しみ」

2012-06-03 08:47:16 | Weblog
#219 ズー・ニー・ヴー「ひとりの悲しみ」(ズー・ニー・ヴー ゴールデン☆ベスト/日本コロムビア)

日本のグループサウンズのひとつ、ズー・ニー・ヴーのシングル曲。70年リリース。阿久悠、筒美京平の作品。

ズー・ニー・ヴーはもともと「キャッスル&ゲイツ」という学生フォーク・グループにいた町田義人(ボーカル)と上地健一(ボーカル、パーカッション)がそこを68年に脱退して、新たに結成した6人組バンド。

同年、アルバム「ズー・ニー・ヴーの世界 R&Bベスト・ヒット」、シングル「水夫のなげき」でデビュー。翌年のセカンド・シングル「涙のオルガン」のB面「白いサンゴ礁」がスマッシュ・ヒットとなり、一躍名前を知られるようになる。

しかしその後は目立ったヒットが出せず、町田が70年に脱退した後も新たなボーカルを加えて活動するが、あえなく 71年に解散となってしまう。その後町田はソロシンガーとなり、しばらく低迷を続けたが、78年の「戦士の休息」のヒットでようやく日の目を見ることになったのは、皆さんもご存じではないかな。

ズー・ニー・ヴーのバンドとしての特徴は、リードボーカルに絡む高音のハミングコーラス、ギターよりもむしろオルガンなどのキーボードをフィーチャーした、R&B系のサウンドにあったと筆者は思う。

で、きょうの一曲だが、オルガンによるイントロを聴けばどなたも、瞬時に「あぁ~、あの曲かっ!!」と手を打つに違いない。

そう、71年春に大ヒット、ミリオンセラー目前までいった尾崎紀世彦のナンバー「また逢う日まで」そのものなのである。つまり、この「ひとりの悲しみ」がオリジナル。タイトルと歌詞の大半を変えて、「また逢う日まで」として生まれ変わったのだ。

オルガンをホーンにかえただけで、基本的にアレンジまで同じこの二曲、チャートではどうしてこうも明暗が生まれてしまったのだろうか。

町田の歌唱力は、尾崎のそれと比べてけっして遜色があるとはいえないと思う。ともにかなりの実力派だ。

となると、やはり、二曲の一番の相違点である、タイトルと歌詞の違いによるものという気がする。

二曲ともテーマは共通して「同棲していた恋人との別れ」であるにもかかわらず、「ひとりの悲しみ」という曲名がいかにもネガティブな印象を与えるのに対し、「また逢う日まで」は、いつかはわからないけれど、いつの日にか二人は再会するであろうことを前提にしていて、どこかポジティブさ、つまり「希望」を感じさせる。

起きた出来事はまったく一緒なのに、前者は「今生の別れ」のように見えるし、後者は「再び逢えばまた愛し合うかもしれない」可能性を十分残している。

このニュアンスの違いが、曲に対するイメージをほぼ180度変え、ヒットの有無にもつながったのではなかろうか。

そういえば以前、「Fly Me To The Moon」や「Blue Moon」を取り上げたとき、タイトルや歌詞を変えたことによって、最初はまったくヒットしなかった曲が信じられないほど売れた例を見てきた。

「ひとりの悲しみ」と「また逢う日まで」のケースもまた、そういうことだと思う。

タイトルや歌詞(ことに冒頭の一節)は、曲の「つかみ」としてホントに重要なんだなと思う。

そして、どんな曲も最初っから完璧なかたちで生まれてくるわけではない。改題・詞の改作等を経て初めてヒットに至るパターンも、意外とあるのだ。

もしズー・ニー・ヴーが「また逢う日まで」のかたちとなった曲をそのままもらって、世に問うて大ヒットになっていれば、彼らのバンドとしての生命は、もっと長かったかもしれない。

そして、もしそういうことになり、「また逢う日まで」を自分のレパートリーとしてもらうことがなかったならば、尾崎紀世彦は歌手としてまったく名を残せなかったかもしれない。

そういうふうに考えていくと、まことに感慨深いものがある。この一曲はまさに、人生の明暗をわけた一曲なんだという気がする。

最後に、先日肝臓がんで亡くなられた尾崎紀世彦さんの、ご冥福をお祈りいたします。日本人らしからぬダイナミックな歌声は、当時かけだしの歌い手であったワタシにとっても、大きな憧れの対象でした。合掌。

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6月2日(土)のつぶやき

2012-06-03 03:39:14 | Weblog
09:43 from gooBlog production
尾崎紀世彦さん、逝く。日本では数少ない本格派のシンガーだっただけに残念。 goo.gl/1j0ra

by Mac_Nakahira on Twitter

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