#161 クイックシルバー・メッセンジャー・サービス「フレッシュ・エア」(Just For Love/One Way Records)
クイックシルバー・メッセンジャー・サービス、70年リリースの4thアルバムより。メンバー、ディノ・ヴァレンティの作品。
若いリスナーはまずご存じないだろうが、このバンド、70年代ロックをリアルタイムで聴いてきた人間には「おぼろげながら記憶として残っている」、その程度の存在だと思う。大ヒットがあるわけでもなく、スーパースターを輩出したということもない。ごくごく地味なバンドであった。
しかしながら、今聴いてみると、意外といい仕事を残していたことに気づかされるのだ。たとえば、きょうの一曲またしかり。
クイックシルバー・メッセンジャー・サービス(長いので以下クイックシルバーと略す)は65年、サンフランシスコにて結成。グループ名は、メンバー4人全員が乙女座であったことから付けられたらしい。
フォーク系シンガー/ソングライターのディノ・ヴァレンティが加わり、キャピトル・レーベルの目にとまって、68年にレコードデビュー。以来、75年までに8枚のオリジナル・アルバムをリリースしている。3枚目からは、英国の著名なセッション・プレイヤー、ニッキー・ホプキンスがピアノで加入している。
クイックシルバーは同じ西海岸のバンド、ジェファーソン・エアプレインやグレイトフルデッドと同様、サイケデリック・ロックとよばれることが多いが、そのサウンドは非常に多様性に富んでいて、フォーク、ブルース、R&B、ジャズ、ラテンなどの要素を含んでいる。
きょうの「フレッシュ・エア」はディノ・ヴァレンティ(本名チェット・ウィリアム・パワーズ、コンポーザーとしてはジェシ・オリス・ファーロウとも名乗っていた)の作品で、実にソウルフルかつラテン・フレーバーあふれる佳曲だ。
聴きどころとしては、ヴァレンティの熱唱はいうまでもないが、中間部の官能的なギター・ソロ、そしてそれに続くホプキンスのピアノ・ソロがまことに素晴らしい。
ホプキンスといえば、ジェフ・ベック・グループ(第一期)のセカンド・アルバム「ベック・オラ」における好演がいまも語り草となっているが(たとえば「プリンス」は、ハードロックにおいてもピアノが主役たりうることの、見事な証明になっている)、それにも匹敵する出来ばえだと思う。
JBG同様、クイックシルバーにおいても、ホプキンスの果たした役割は極めて大きかったといえるだろう。
リズム・セクションの弱さを補って余りある、ボーカル、コーラス、ギター、ピアノパートの充実ぶりが、このバンドの身上だったと思う。
このアルバム発表後、ホプキンス、ジョン・シポリナ(g)、デイヴィッド・フライバーグ(b)と相次いでメンバーの脱退が続くなど、クイックシルバーはトラブルが多かった。結局、73年頃には活動停止に追い込まれ、75年に再結成するもアルバム一枚で後が続くことなく終ってしまった。
それでも、セカンド・アルバム「Happy Trails」(邦題「愛の組曲」)は、ジャングル・ビートを前面に押し出した意欲的なサウンド作りが高く評価されて、ローリングストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500に選出されている。派手な人気こそ獲得できなかったが、ロック史上にしっかりその名を残しているのだ。
先鋭的なサイケデリック・ロックにカテゴライズされてはいたものの、今聴くと、実にオーソドックスな王道サウンドという気もする。ぜひ、その充実した歌と演奏を味わってみてくれ。
クイックシルバー・メッセンジャー・サービス、70年リリースの4thアルバムより。メンバー、ディノ・ヴァレンティの作品。
若いリスナーはまずご存じないだろうが、このバンド、70年代ロックをリアルタイムで聴いてきた人間には「おぼろげながら記憶として残っている」、その程度の存在だと思う。大ヒットがあるわけでもなく、スーパースターを輩出したということもない。ごくごく地味なバンドであった。
しかしながら、今聴いてみると、意外といい仕事を残していたことに気づかされるのだ。たとえば、きょうの一曲またしかり。
クイックシルバー・メッセンジャー・サービス(長いので以下クイックシルバーと略す)は65年、サンフランシスコにて結成。グループ名は、メンバー4人全員が乙女座であったことから付けられたらしい。
フォーク系シンガー/ソングライターのディノ・ヴァレンティが加わり、キャピトル・レーベルの目にとまって、68年にレコードデビュー。以来、75年までに8枚のオリジナル・アルバムをリリースしている。3枚目からは、英国の著名なセッション・プレイヤー、ニッキー・ホプキンスがピアノで加入している。
クイックシルバーは同じ西海岸のバンド、ジェファーソン・エアプレインやグレイトフルデッドと同様、サイケデリック・ロックとよばれることが多いが、そのサウンドは非常に多様性に富んでいて、フォーク、ブルース、R&B、ジャズ、ラテンなどの要素を含んでいる。
きょうの「フレッシュ・エア」はディノ・ヴァレンティ(本名チェット・ウィリアム・パワーズ、コンポーザーとしてはジェシ・オリス・ファーロウとも名乗っていた)の作品で、実にソウルフルかつラテン・フレーバーあふれる佳曲だ。
聴きどころとしては、ヴァレンティの熱唱はいうまでもないが、中間部の官能的なギター・ソロ、そしてそれに続くホプキンスのピアノ・ソロがまことに素晴らしい。
ホプキンスといえば、ジェフ・ベック・グループ(第一期)のセカンド・アルバム「ベック・オラ」における好演がいまも語り草となっているが(たとえば「プリンス」は、ハードロックにおいてもピアノが主役たりうることの、見事な証明になっている)、それにも匹敵する出来ばえだと思う。
JBG同様、クイックシルバーにおいても、ホプキンスの果たした役割は極めて大きかったといえるだろう。
リズム・セクションの弱さを補って余りある、ボーカル、コーラス、ギター、ピアノパートの充実ぶりが、このバンドの身上だったと思う。
このアルバム発表後、ホプキンス、ジョン・シポリナ(g)、デイヴィッド・フライバーグ(b)と相次いでメンバーの脱退が続くなど、クイックシルバーはトラブルが多かった。結局、73年頃には活動停止に追い込まれ、75年に再結成するもアルバム一枚で後が続くことなく終ってしまった。
それでも、セカンド・アルバム「Happy Trails」(邦題「愛の組曲」)は、ジャングル・ビートを前面に押し出した意欲的なサウンド作りが高く評価されて、ローリングストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500に選出されている。派手な人気こそ獲得できなかったが、ロック史上にしっかりその名を残しているのだ。
先鋭的なサイケデリック・ロックにカテゴライズされてはいたものの、今聴くと、実にオーソドックスな王道サウンドという気もする。ぜひ、その充実した歌と演奏を味わってみてくれ。