七夕でございます夏でございます
季節に関わらず順調に刊行し続けているハヤカワ文庫「日本SF短編50」そりゃまぁSFに季節感は基本無関係ヽ( ´ー`)ノ、鴨も順調に読み進めております。先月刊行された第3巻を読了。
日本SF短編50(ハヤカワ文庫JA)
「交差点の恋人」山田正紀
「戦場の夜想曲」田中芳樹
「滅びの風」栗本薫
「火星甲殻団」川又千秋
「見果てぬ風」中井紀夫
「黄昏郷 El Dormido」野阿梓
「引綱軽便鉄道」椎名誠
「ゆっくりと南へ」草上仁
「星殺し」谷甲州
「夢の樹が接げたなら」森岡浩之
第1巻から読み進めてきましたが、このあたりから、鴨的には読んだことのない作家さんが増えてきますね。つくづく自分は古参のSF者になってしまったのだなぁ、としみじみする今日この頃。
欧米のSFに肩を並べようとパワフルに貪欲に突き進んでいった60年代、日本人にしか描けない世界観をSFに取り込み始めた70年代ときて、SFというジャンルが日本の文化土壌に根付いてきたのでしょうね。80年代以降の作品は、良い意味で肩の力が抜けた気取らない作品が多いと感じました。おそらく、この時代になるとことさらに欧米SFを意識して書く作家はいないと思われるのですが、それでも欧米SFを彷彿とさせる筆致の作品が散見されるのは、日本SFが「こなれてきた」ということか?草上仁「ゆっくりと南へ」はフレドリック・ブラウンが書いたと言われても違和感のない作風ですし、栗本薫「滅びの風」はジョン・ヴァーリィあたりが書いていそうな感じ。森岡浩之「夢の樹が接げたなら」は「ヘタレ男と傲慢な女」の組み合わせが実にグレッグ・イーガンそのもの(笑)。
面白く読めたのは、山田正紀、川又千秋、中井紀夫、椎名誠の4編。いずれも独自の世界観を前面に押し出し、詳細な説明抜きでぐいぐいと、あるいは淡々とストーリーを押し進めていくタイプの作品ですが、受けるイメージは4編全て異なります。
山田正紀「交差点の恋人」は、猥雑にして先鋭的な「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語。ワイドスクリーン・バロックといって差し支えのない作風かと。川又千秋「火星甲殻団」は、80年代にもなって西部劇ですか!?と突っ込みたくなる、ある意味チャレンジングな作品(笑)でも一周してきて面白いんだなぁこれが。中井紀夫「見果てぬ風」は、筒井康隆「旅のラゴス」を思い起こさせる、異世界を舞台にした爽やかな成長譚。
インパクトがあったのが、椎名誠「引綱軽便鉄道」。この世界観は、ワン・アンド・オンリーですね。ほのぼのしたエッセイを書く人、というイメージだったので、情感を一切排したドライな筆致にも驚きました。
それから、ある意味興味深いのは、この第3巻から、どうしても「合わない」作品が出てきたことです(笑)
第1巻・第2巻は、イマイチかなぁと思いつつもそれなりに楽しく読み進められたのですが、第3巻は読んでるうちから「うわー、ダメだわこれ」と思ってしまう作品がぼちぼち登場。それだけ、作家の個性が強く打ち出される時代になってきた、ということなんでしょうね。因みに、鴨がダメだったのは田中芳樹と野阿梓です(^_^;
第4巻以降の「合わない作品」数が増加しないことを願いつつ、続刊も楽しみにしてます!
季節に関わらず順調に刊行し続けているハヤカワ文庫「日本SF短編50」そりゃまぁSFに季節感は基本無関係ヽ( ´ー`)ノ、鴨も順調に読み進めております。先月刊行された第3巻を読了。
日本SF短編50(ハヤカワ文庫JA)
「交差点の恋人」山田正紀
「戦場の夜想曲」田中芳樹
「滅びの風」栗本薫
「火星甲殻団」川又千秋
「見果てぬ風」中井紀夫
「黄昏郷 El Dormido」野阿梓
「引綱軽便鉄道」椎名誠
「ゆっくりと南へ」草上仁
「星殺し」谷甲州
「夢の樹が接げたなら」森岡浩之
第1巻から読み進めてきましたが、このあたりから、鴨的には読んだことのない作家さんが増えてきますね。つくづく自分は古参のSF者になってしまったのだなぁ、としみじみする今日この頃。
欧米のSFに肩を並べようとパワフルに貪欲に突き進んでいった60年代、日本人にしか描けない世界観をSFに取り込み始めた70年代ときて、SFというジャンルが日本の文化土壌に根付いてきたのでしょうね。80年代以降の作品は、良い意味で肩の力が抜けた気取らない作品が多いと感じました。おそらく、この時代になるとことさらに欧米SFを意識して書く作家はいないと思われるのですが、それでも欧米SFを彷彿とさせる筆致の作品が散見されるのは、日本SFが「こなれてきた」ということか?草上仁「ゆっくりと南へ」はフレドリック・ブラウンが書いたと言われても違和感のない作風ですし、栗本薫「滅びの風」はジョン・ヴァーリィあたりが書いていそうな感じ。森岡浩之「夢の樹が接げたなら」は「ヘタレ男と傲慢な女」の組み合わせが実にグレッグ・イーガンそのもの(笑)。
面白く読めたのは、山田正紀、川又千秋、中井紀夫、椎名誠の4編。いずれも独自の世界観を前面に押し出し、詳細な説明抜きでぐいぐいと、あるいは淡々とストーリーを押し進めていくタイプの作品ですが、受けるイメージは4編全て異なります。
山田正紀「交差点の恋人」は、猥雑にして先鋭的な「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語。ワイドスクリーン・バロックといって差し支えのない作風かと。川又千秋「火星甲殻団」は、80年代にもなって西部劇ですか!?と突っ込みたくなる、ある意味チャレンジングな作品(笑)でも一周してきて面白いんだなぁこれが。中井紀夫「見果てぬ風」は、筒井康隆「旅のラゴス」を思い起こさせる、異世界を舞台にした爽やかな成長譚。
インパクトがあったのが、椎名誠「引綱軽便鉄道」。この世界観は、ワン・アンド・オンリーですね。ほのぼのしたエッセイを書く人、というイメージだったので、情感を一切排したドライな筆致にも驚きました。
それから、ある意味興味深いのは、この第3巻から、どうしても「合わない」作品が出てきたことです(笑)
第1巻・第2巻は、イマイチかなぁと思いつつもそれなりに楽しく読み進められたのですが、第3巻は読んでるうちから「うわー、ダメだわこれ」と思ってしまう作品がぼちぼち登場。それだけ、作家の個性が強く打ち出される時代になってきた、ということなんでしょうね。因みに、鴨がダメだったのは田中芳樹と野阿梓です(^_^;
第4巻以降の「合わない作品」数が増加しないことを願いつつ、続刊も楽しみにしてます!