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最近読んだSF 2019/8/19

2019年08月19日 20時50分44秒 | ゲーム・コミック・SF
破滅SF、古典中の古典。
子供の頃にジュブナイルで読んだ記憶がありますが、大人になって新訳で読んで、こんなにエレガントな作品だったんだー、と改めて評価いたしました。

トリフィド時代〜食人植物の恐怖/ジョン・ウィンダム、中村融訳(創元SF文庫)

緑色の流星群が地球を覆い、その一大イベントに大多数の人々が酔いしれていたその夜、ウィリアム・メイスンはトリフィドに教われた目の治療のために流星群を目にすることが出来なかった。その翌朝、視力を回復したウィリアムが目にしたものは、失明して右往左往する大群衆の姿。緑色の流星群を観測した人々は、漏れなく失明していたのだった。
視力を持つ限られた者の一人として、思いがけない使命を課せられたウィリアムの前に立ちはだかる影。それは、良質な油を取るために人為的に生み出された植物・トリフィドの群れ。腐肉を糧にし、自ら動くことが出来るトリフィドにとって、動きの鈍い人間は格好のエサになるのだった。生き残った人々を守りつつ、トリフィドに立ち向かうウィリアムの命運は・・・!?

1951年発表作品。SFとしては極めてオーソドックスで手垢がついていると言っても過言ではない、「破滅SF」というジャンル作品です。
が、21世紀の今になって読んでも、全く古びていないこの端正さ。一番の要素は、主人公のウィリアムが極めて知的で自制的な、語弊を恐れずに言えば近代的な価値観を体現したキャラクターだから、という点に尽きると思います。

自分がおかれた立場を把握したウィリアムは、一時は投げやりな態度を取ったりしますが、自らを省みて反省すべきところは反省しつつ、最善の策を模索し続けます。そんな理性的な彼が最後までエモーショナルな態度を取るのは、愛するジョゼラを守るため。誰もが共感できる、シンプルにして普遍的な価値観が提示されます。
破滅SFとしては、「奇麗過ぎる」のかもしれません。それでも、この極めて前向きなラストシーンは、SF史に残る名作だと思います。タイトルにもなっているトリフィドは、この先の困難を示す要素の一つに過ぎません。作品のテーマは、人間社会です。この先も古びない作品だと思います。

子供の頃に読んだ印象と、これだけ変わるもんなんだなー。
これだからSF読みは止められませんよ!
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