鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2022/9/4

2022年09月04日 15時25分17秒 | ゲーム・コミック・SF
ぼちぼち「読書の秋」と言って差し支えのない時期ですかね。・・・しかし、今日は暑い・・・(^_^;
評価の高いこんな作品を読みました。

なめらかな世界と、その敵 /伴名練(ハヤカワ文庫JA)

ここ最近、飛ぶ鳥を落とす勢いの伴名練。この第一短編集は単行本として出されたときに「SFの新星登場」と騒がれ、アンソロジストとしても腕を奮って多くのSF短編集を世に送り出してきました。アンソロジーの方は鴨もいくつか読んだことがあり、このたび満を持して本作を手に取ってみました。

・・・うーん、なんと言ったらいいんでしょう。
SFとしての完成度がとても高く、間違いなく面白いのですが、「閉じている」。そんな印象です。

並行世界を駆け抜ける少女たちの青春。改変歴史における日本SF第一”女流”世代の生き様。伊藤計劃へのオマージュを込めた精神改造恋物語。特殊能力を持つ姉と平凡な妹の相克。AIが幻視する人智を超えたソヴィエト連邦。超低速現象に見舞われた新幹線の乗客を救うべく奔走する者の悔恨。
今風に言うと、「エモい」です。求めても得られないモノを、得られないと分かっていても手を伸ばさずにいられない心の痛みを、熱量の高い筆運びでドラマティックに描き出します。熱量が高い、と言っても、日本SF第一世代のような暑苦しいまでの熱気ではなく、スマートな語り口の行間から熱量を感じさせるところが、これまた今風、ではあります。

が、鴨の率直な感想を述べさせていただきますと・・・
SF好きで、SFの歴史やファンダムやマーケット等もよくわかっている人が、同じSF好きに向かって「みんな、こういうSF読みたいんでしょ?ほーらほらほら」と書いた作品、という印象が強烈過ぎて、それを拭えないのです。
とても地頭の良い人なのだと思います。あとがきを読むと、SFへの果てしない愛情と該博な知識を強く見せつけられます。そんな「SF大好きでSFをわかっている人」が書いたSFを「そうそう、こんなSFが読みたかったんだよ!!」と熱狂的に受け入れる読者層も、間違いなく相当います。
ただ、その読者層は、かなり、かーなーりー、狭い。一SF者としての、鴨の率直な感想です。

これからSFを読んでみようと思っている人には、オススメしやすいと思います。エモさをトリガーにして、作品世界に没入することができます。
ただ、このエモさにあざとさを感じずに読み進められるのは、20代止まりかなぁ・・・とも思います。
SFとしての完成度の高さは間違いありませんので、これからも読みたい作家さんではあります。なお、鴨的には、女性キャラのリアリティの無さがとても印象的で(SFとして欠点ではありません、念のため)、女性SF者の感想をぜひうかがってみたいです。
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