最近急成長の「メタヴァース」に乗っかって、こんなSFが復刊されました。
旧版は、ポップで軽薄なけばけばしいカバーアートが印象的でした(たぶんあえてそのようにしてたんだろうなと)。カバーアートのイメージばかり強過ぎて、旧版は手に取ったことがありませんでしたが、せっかくの復刊なので読んでみましたー。
スノウ・クラッシュ〔新版〕 上/ ニール・スティーヴンスン、日暮雅通訳(ハヤカワ文庫SF)
スノウ・クラッシュ〔新版〕 下/ニール・スティーヴンスン、日暮雅通訳(ハヤカワ文庫SF)
世界的地位の低下でもはや国家が国家としての体裁を失い、資産家や宗教家がそれぞれの縄張りを「フランチャイズ国家」として分断・支配する近未来のアメリカ。凄腕のハッカーにして高速ピザ配達人のヒロ・プロタゴニストは、「スノウ・クラッシュ」と呼ばれるドラッグの噂を耳にし、友人がそのドラッグのために活動不能になる現場に立ち会う。ピザ配達の途中で偶然知り合った聡明で生意気な<特急便屋>の少女Y・Tの助けを借りながら、「スノウ・クラッシュ」の謎を追うヒロ。ガラスの武器を操る謎の大男、訳知り顔の美女、マフィアのボス、新興企業のトップ・・・怪しげな人物が次々と関わる中、フランチャイズ国家の国境も、現実と仮想空間の違いもものともせず、ヒロとY・Tの冒険が始まる!
この作品、新版発売時は「あの『メタヴァース』を初めて取り上げた歴史的作品!最近流行りのIT企業のトップたちがこぞって絶賛する、これからのビジネスパーソン必読の書!」といった、ビジネスに役立つインスピレーション満載!というイメージで売り出されていました。
・・・が、あらすじまとめてみると、そんな雰囲気しないでしょ?だって、そういう作品じゃないもん。それが、読了後に鴨がこの作品に下した評価です。
愉快痛快しっちゃかめっちゃか、スピーディな展開と全編に溢れるユーモアで楽しく勢いよく読み進められる、一大エンターテインメント作品です。
確かに「メタヴァース」という言葉を初めて使った作品、ではあります。が、SF者にとって仮想空間を主な舞台とする世界観は80年代のサイバーパンク・ムーヴメントですっかりお馴染みで、アイディア自体は特に新鮮味はありません。これまでのサイバーパンク作品との大きな違いは、仮想空間の組み立てがより現実的でビジネスライクなところ、日本語表現的にちょっとアレですが「地に足のついた仮想空間」であるところ。そして、何よりもユーモアが前面に出ていること。SFを読む時は、聞いたこともないような言葉や斜め上の理論にも自己の想像力を駆使してなんとなくイメージしながら食らいついていく「SFリテラシー」的な能力が必要な場合があります。でも、この作品にはそうした能力は不要です。現実社会と地続きの世界で、私たちと同じような物の考え方をする登場人物たちが生きています。
ただ、決して「読みやすい」作品ではありません。ストーリー展開がスピーディーな分、次々変わる場面、次々登場する登場人物についていくのがやっとで、特に上巻はかなりとっ散らかった印象を受けました。下巻に入って、主要な登場人物の思惑や関係性がわかってくるのですが、そうするに至った経緯や情熱が正直なところ鴨にはよくわからず、特に二人の主役、ヒロとY・Tがなぜそこまで全力でこの謎を追う必要があるのか?が最後まで理解できませんでした。明かされる謎の真相も、そこまで驚きのあるものではありませんでしたし。
というわけで、ストーリー展開という面では、鴨は正直いまいちでした。
が!読んでいるときの、このワクワク感!何がワクワクするって、この圧倒的な「映像力」ですね。特に後半に入ってからの、ヒロとレイヴンのバトルであったり、Y・Tのハイウェイ疾走シーンであったり、そして何よりも、ラストシーンのファイドーーーーー!!!まるでハリウッドの超娯楽大作が眼前で繰り広げられるが如き、ニール・スティーヴンスンの絢爛華麗でハッタリ満載の筆力の素晴らしさよ(※鴨注:褒め言葉ですヽ( ´ー`)ノ)。いやほんと、この作品を映画化したら、すっごく面白くなると思うんですけど。仮想空間のシーンを如何に映像で表現するか、が監督の腕の見せ所になりそうな気がします。
旧版は、ポップで軽薄なけばけばしいカバーアートが印象的でした(たぶんあえてそのようにしてたんだろうなと)。カバーアートのイメージばかり強過ぎて、旧版は手に取ったことがありませんでしたが、せっかくの復刊なので読んでみましたー。
スノウ・クラッシュ〔新版〕 上/ ニール・スティーヴンスン、日暮雅通訳(ハヤカワ文庫SF)
スノウ・クラッシュ〔新版〕 下/ニール・スティーヴンスン、日暮雅通訳(ハヤカワ文庫SF)
世界的地位の低下でもはや国家が国家としての体裁を失い、資産家や宗教家がそれぞれの縄張りを「フランチャイズ国家」として分断・支配する近未来のアメリカ。凄腕のハッカーにして高速ピザ配達人のヒロ・プロタゴニストは、「スノウ・クラッシュ」と呼ばれるドラッグの噂を耳にし、友人がそのドラッグのために活動不能になる現場に立ち会う。ピザ配達の途中で偶然知り合った聡明で生意気な<特急便屋>の少女Y・Tの助けを借りながら、「スノウ・クラッシュ」の謎を追うヒロ。ガラスの武器を操る謎の大男、訳知り顔の美女、マフィアのボス、新興企業のトップ・・・怪しげな人物が次々と関わる中、フランチャイズ国家の国境も、現実と仮想空間の違いもものともせず、ヒロとY・Tの冒険が始まる!
この作品、新版発売時は「あの『メタヴァース』を初めて取り上げた歴史的作品!最近流行りのIT企業のトップたちがこぞって絶賛する、これからのビジネスパーソン必読の書!」といった、ビジネスに役立つインスピレーション満載!というイメージで売り出されていました。
・・・が、あらすじまとめてみると、そんな雰囲気しないでしょ?だって、そういう作品じゃないもん。それが、読了後に鴨がこの作品に下した評価です。
愉快痛快しっちゃかめっちゃか、スピーディな展開と全編に溢れるユーモアで楽しく勢いよく読み進められる、一大エンターテインメント作品です。
確かに「メタヴァース」という言葉を初めて使った作品、ではあります。が、SF者にとって仮想空間を主な舞台とする世界観は80年代のサイバーパンク・ムーヴメントですっかりお馴染みで、アイディア自体は特に新鮮味はありません。これまでのサイバーパンク作品との大きな違いは、仮想空間の組み立てがより現実的でビジネスライクなところ、日本語表現的にちょっとアレですが「地に足のついた仮想空間」であるところ。そして、何よりもユーモアが前面に出ていること。SFを読む時は、聞いたこともないような言葉や斜め上の理論にも自己の想像力を駆使してなんとなくイメージしながら食らいついていく「SFリテラシー」的な能力が必要な場合があります。でも、この作品にはそうした能力は不要です。現実社会と地続きの世界で、私たちと同じような物の考え方をする登場人物たちが生きています。
ただ、決して「読みやすい」作品ではありません。ストーリー展開がスピーディーな分、次々変わる場面、次々登場する登場人物についていくのがやっとで、特に上巻はかなりとっ散らかった印象を受けました。下巻に入って、主要な登場人物の思惑や関係性がわかってくるのですが、そうするに至った経緯や情熱が正直なところ鴨にはよくわからず、特に二人の主役、ヒロとY・Tがなぜそこまで全力でこの謎を追う必要があるのか?が最後まで理解できませんでした。明かされる謎の真相も、そこまで驚きのあるものではありませんでしたし。
というわけで、ストーリー展開という面では、鴨は正直いまいちでした。
が!読んでいるときの、このワクワク感!何がワクワクするって、この圧倒的な「映像力」ですね。特に後半に入ってからの、ヒロとレイヴンのバトルであったり、Y・Tのハイウェイ疾走シーンであったり、そして何よりも、ラストシーンのファイドーーーーー!!!まるでハリウッドの超娯楽大作が眼前で繰り広げられるが如き、ニール・スティーヴンスンの絢爛華麗でハッタリ満載の筆力の素晴らしさよ(※鴨注:褒め言葉ですヽ( ´ー`)ノ)。いやほんと、この作品を映画化したら、すっごく面白くなると思うんですけど。仮想空間のシーンを如何に映像で表現するか、が監督の腕の見せ所になりそうな気がします。