鴨が行く ver.BLOG

鴨と師匠(ベルツノガエル似)と志ん鳥のヲタク全開趣味まみれな日々

最近読んだSF 2021/2/7

2021年02月07日 17時24分45秒 | ゲーム・コミック・SF
この週末は、穏やかで春のような陽気ですね。我が家のベランダの梅も、本日1輪咲きました
緊急事態宣言発令中なので、ベランダでのんびりしておりますヽ( ´ー`)ノそんな中、先日読了したSFをレビュー。

アメリカン・ブッダ/柴田勝家(ハヤカワ文庫JA)

いやいや、これは面白い。
「文系SF」と言って差し支えのない作風だと思います。「文系SF」と言ってもその肩幅はとても広く、SFの手法を用いて社会の変容をシミュレーションする「社会科学SF」は巨匠・小松左京をはじめとする先達の傑作が多数ありますが、ここまで直球ストレートな「人文科学SF」ばかりを集めた作品集はこれまでなかったのでは。新鮮な驚きをもって読了することができました。

柴田勝家氏の作品は、以前に「ニルヤの島」にチャレンジしたことがあります。この作品も、今にして思えば「人文科学SF」そのもので、鴨にはちょっとハードルが高く、構成の複雑さもあってそこまで嵌り込めず、物語の世界観をよく掴めないまま読了してしまった作品です。
今回、この短編集を本屋の店頭で手に取った際も、「また難しくて読みきれなかったらどうしよう・・・」と半分不安だったんですが、読んでみたらまぁ面白いこと。引き締まった短編の方が、アイディアのユニークさ含めた個性を生かしきれる作風なのかもしれません。

収録されているどの作品も、どこから出るんだこのアイディア、と驚くべき方向から奇想の本流が押し寄せてくる感じ。
特に心に残ったのは、書き下ろしの表題作。
生きるとは、それだけでどうしようもなく苦しいこと。でも、だからこそ、生きることには価値がある。
こうして文章にするとどこぞのチープな自己啓発本にでも出てきそうな、当たり前といえば当たり前なことを、SFとして表現するとこんなに深く温かみのある世界が広がるのだな・・・と、目からウロコがバラバラと落ちてきそうな衝撃を受けました。現実世界と仮想世界との対比を通して描く手法も、ラストのオチも、鮮やかの一言。
鴨は、SFとは「変容を描く」文学ジャンルだと思っています。柴田勝家氏の作品は「魂の変容」を描くSFだな、と、鴨は理解しました。

そんな素晴らしい作品なのに、巻末の解説がなぁ・・・(^_^;内輪受けのオンパレードで下品極まりない。それでちょっと読後感が悪くなりましたが、作品だけを純粋に評価するなら☆5つです!
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