東京美術倶楽部で開催中の正木美術館開館四十周年記念展”禅・茶・花”に行ってきました。2008年9月23日~10月12日。
戦後の名コレクター、正木孝之(1895-1985)が一代で築きあげた国宝3点、重文12点を含む1200点のうち、正木美術館開館四十周年を記念して名品約70点を紹介する初めての展覧会。
私は大阪にあるという正木美術館の存在すら知りませんでしたが、茶に関する珍しく見事な美術品が拝見できると聞いて足を運びました。
もともとは水墨画の魅力から古美術の世界に入って行った方のようで、会場は全体に落ち着いた雰囲気にあふれていました。印象に残った作品について書きとめておきます。
「一休宗純墨蹟 滴凍軒号」
滴凍とは、一休が弟子の絶天□紹が構えた住まいに与えた軒号で、大きくその文字が書かれた下に、こうあります。
看よ看よ/曹源の要津に通ずるを /涓を宗海に導くは/是れ何人とぞ /水消瓦解/三千界 /一片の開/一片の春
(一滴の存在も、あのかたくなに凍った氷を消し解かすことができる。その時、三千世界に花は開き、春は訪れ、悟境が開ける)
正木孝之はこれを気に入り、昭和27年に新築した自邸の茶室を滴凍軒とし、自らの雅号も滴凍としたそうです。
一滴の水が氷を解かし、春が訪れ、悟りに至るという言葉が如何にも禅らしく、心に残りました。
「千利休図 伝長谷川等伯筆 古渓宗陳賛」
長谷川等伯が自刃後5年の遺像である利休を描いたということは、表千家本の千利休像(文禄4年 春屋宗園賛)によって確かだが、この作品は62歳の寿像として、古渓宗陳の添えた賛”当世以茶術為務”を秀吉の茶頭になったことを指すと解釈すれば等伯が描いた可能性が高いと指摘されているもの。
眼力のあるどっしりと落ち着いた利休像でした。今年2月に武者小路千家でこの像をまつり、献茶がとり行われたようで、その様子がビデオで放映されておりました。
ちょうど一人でじっくり拝見する機会に恵まれ、私自身もこの像に手を合わせ、益々茶道精進できますようお祈りしてきました。
武者小路千家の献茶で使われた南宋時代の天目茶碗も飾られていましたが、今や金彩のはげた天目台とのバランスがなんともしっくりしていて、素晴らしかったです。
「大名物 肩衝茶入”有明”」「瀬戸真中古茶入”狭筵”」
2つ飾られていた茶入。仕覆はなし。”有明”はたっぷりと大きく、”狭筵”は小さく肩と底が丸みを帯びてかわいらしい、全く対照的な茶入でした。
「蒔絵桜平棗」(絵葉書の写真参照)
江戸時代の作品で、たっぷりとした平棗。”滴凍軒”での初茶会の際に替茶器として使用されたもの。象牙の蓋は既に飴色に変わっていて、本体の蒔絵の色とマッチしていい味わい。本体の素材が木なのか、焼き物なのか、学芸員さんにも聞いてみましたがわかりませんでした。手に取ってみたかった。
「蓮図 能阿弥筆」
能阿弥の晩年の絵で、優しい穏やかな絵に引き込まれるようでした。
「君台観左右帳記 原本」
足利将軍家の同朋衆の能阿弥・相阿弥により唐物を中心とする室礼や座敷飾りについて書かれた室町時代の茶の湯の故実書です。
茶道関係の本を読んでいると出典として見る名前ではありましたが、実物を拝見できました。あまりにきれいだし、ガラス越しではなくそのまま飾られていたので、これは複製ですか?と聞いてみたところ、銀閣寺に伝わる現存する本物とのことでした。横には箱も飾られていました。
個人でこれだけのものを持っているとは驚きでした。掛物には普段あまり興味がないのですが、どれも味わいのある美しいものが多く、私にしては結構ゆっくり拝見しました。期間が短いのが難点ですが、この3連休に時間のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。充実した時間を過ごせるのではないかと思います。
戦後の名コレクター、正木孝之(1895-1985)が一代で築きあげた国宝3点、重文12点を含む1200点のうち、正木美術館開館四十周年を記念して名品約70点を紹介する初めての展覧会。
私は大阪にあるという正木美術館の存在すら知りませんでしたが、茶に関する珍しく見事な美術品が拝見できると聞いて足を運びました。
もともとは水墨画の魅力から古美術の世界に入って行った方のようで、会場は全体に落ち着いた雰囲気にあふれていました。印象に残った作品について書きとめておきます。
「一休宗純墨蹟 滴凍軒号」
滴凍とは、一休が弟子の絶天□紹が構えた住まいに与えた軒号で、大きくその文字が書かれた下に、こうあります。
看よ看よ/曹源の要津に通ずるを /涓を宗海に導くは/是れ何人とぞ /水消瓦解/三千界 /一片の開/一片の春
(一滴の存在も、あのかたくなに凍った氷を消し解かすことができる。その時、三千世界に花は開き、春は訪れ、悟境が開ける)
正木孝之はこれを気に入り、昭和27年に新築した自邸の茶室を滴凍軒とし、自らの雅号も滴凍としたそうです。
一滴の水が氷を解かし、春が訪れ、悟りに至るという言葉が如何にも禅らしく、心に残りました。
「千利休図 伝長谷川等伯筆 古渓宗陳賛」
長谷川等伯が自刃後5年の遺像である利休を描いたということは、表千家本の千利休像(文禄4年 春屋宗園賛)によって確かだが、この作品は62歳の寿像として、古渓宗陳の添えた賛”当世以茶術為務”を秀吉の茶頭になったことを指すと解釈すれば等伯が描いた可能性が高いと指摘されているもの。
眼力のあるどっしりと落ち着いた利休像でした。今年2月に武者小路千家でこの像をまつり、献茶がとり行われたようで、その様子がビデオで放映されておりました。
ちょうど一人でじっくり拝見する機会に恵まれ、私自身もこの像に手を合わせ、益々茶道精進できますようお祈りしてきました。
武者小路千家の献茶で使われた南宋時代の天目茶碗も飾られていましたが、今や金彩のはげた天目台とのバランスがなんともしっくりしていて、素晴らしかったです。
「大名物 肩衝茶入”有明”」「瀬戸真中古茶入”狭筵”」
2つ飾られていた茶入。仕覆はなし。”有明”はたっぷりと大きく、”狭筵”は小さく肩と底が丸みを帯びてかわいらしい、全く対照的な茶入でした。
「蒔絵桜平棗」(絵葉書の写真参照)
江戸時代の作品で、たっぷりとした平棗。”滴凍軒”での初茶会の際に替茶器として使用されたもの。象牙の蓋は既に飴色に変わっていて、本体の蒔絵の色とマッチしていい味わい。本体の素材が木なのか、焼き物なのか、学芸員さんにも聞いてみましたがわかりませんでした。手に取ってみたかった。
「蓮図 能阿弥筆」
能阿弥の晩年の絵で、優しい穏やかな絵に引き込まれるようでした。
「君台観左右帳記 原本」
足利将軍家の同朋衆の能阿弥・相阿弥により唐物を中心とする室礼や座敷飾りについて書かれた室町時代の茶の湯の故実書です。
茶道関係の本を読んでいると出典として見る名前ではありましたが、実物を拝見できました。あまりにきれいだし、ガラス越しではなくそのまま飾られていたので、これは複製ですか?と聞いてみたところ、銀閣寺に伝わる現存する本物とのことでした。横には箱も飾られていました。
個人でこれだけのものを持っているとは驚きでした。掛物には普段あまり興味がないのですが、どれも味わいのある美しいものが多く、私にしては結構ゆっくり拝見しました。期間が短いのが難点ですが、この3連休に時間のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。充実した時間を過ごせるのではないかと思います。
>全く対照的な茶入
まったくその通りですね。
僕も、その取り合わせ、そのコントラストを面白く感じました。
熊川茶碗が好きなので、「たちばな」も嬉しかったです。
ご覧になりましたか。添っている仕覆があるなら一緒に拝見したかったですね。
”有明”にはすごい量の抹茶が入りそうです。
お茶碗も詫びた味わいのあるものが多かったですね。どれを拝見しても静かな気持ちになりました。