父の日記 昭和17年

昭和17年の日記 
ようやく召集解除 神武屯を発ち東京へ向う

昭和17年10月12日

2005-10-12 | 昭和 (父の日記 昭和17年) 
12日 (月) 晴れ 暖かし

今日は神武屯最后の日、聯隊へ行くのも最后だ。
今朝はⅠstから貨車が出て荷物を駅迄運ぶ。僕は
黒河郵便局へ電報為替を取りに行かねばなら
ないのでR本からも貨車を出す。乗用車は秋季演習
で使用中。神武屯駅で東京迄の切符を買ふ。料金
75円程。手荷物が三ヶ135㎏で一人分では多すぎる
とて二人分に駅でやって呉れる。料金15円程。
十時頃木村中尉と一緒に黒河へ行く。本部から来た
のは斎藤軍曹、細谷伍長、下垣上ト兵。黒河では
先づ郵便局へ行き100円也を受け取る。本人が行
けば簡単に取れるのだ。満州国の100円紙幣を
呉れた。始めて見る。其の後二、三の買物をして一龍
及び兵士ホームで中食。黒河駅へ寝台券を買いに
行ったがもう売り切れ。帰りは僕が運転して一時半
頃官舎へ帰る。官舎で一休み。入浴してから二時半
頃隊へ出かける。第一中隊の鈴木伍長
に会ひ、別れて来る。又三中隊へも行き
榊原曹長等にも別れて来る。里村軍曹等は演
習后の手入れでゐなかった。経理室で旅費
其の他を450円程貰ふ。此の間200円前借
したので手取り250円許り。 五時からは将校集会
所で将校団の送別会がある。会に先立って聯隊 
長に申告、将校団に挨拶、支那料理のなかなか
盛大な宴会で僕と飯田中尉は聯隊長の傍に
座らされ窮屈だった。よく酒をのまされる。一人宛
杯を受けても70名余の盃を受けねばならぬ。よく
酔った。七時頃一人ぬけて帰る。官舎へは八時ごろ。
其の儘ゴロ寝をしてしまったが十二時頃眼がさめて
からなかなかねられず、四時頃から眠る。
神武屯最后の夜、もう再びは見ぬと思はれる神武
屯最后の夜、合同官舎最后の夜だ。静かな夜。
感慨無量。

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