国家戦略室 (アンダーグラウンド)

日本本来の政治、統治、歴史についての研究

統帥権干犯

2014年01月22日 | 大日本帝国憲法

統帥権干犯を軍が主張し始めたために日本が軍にひきずられた。だから統帥権が悪いという議論は誤りがある。統帥権は天皇の権利であるにもかかわらず、統帥部が勝手に動き、聞かなければ辞めると脅迫したがために、統帥部が暴走することになった。統帥部が陛下のいう事を聞かなかった。

統帥権はいわば天皇親政の名残ではあったが、天皇親政は天皇と軍部の意思が一致し、軍部が天皇を大元帥として従わなければ実現しない。ところがそもそも軍部が天皇という制度は尊んでも、天皇の意思というものを軽んじたがために、関係がぎくしゃくし始めた。

きっかけは張作霖爆殺事件で、これは陸軍の陰謀であったが、天皇が首相田中義一に調査を命じたところ、田中が部下をかばうため何もしないのに苛立ち、辞表を出してはと、天皇は強い語気でいった。その直後田中内閣は総辞職し、田中自身は程なくして死んだ。

この件の後、天皇は直接介入がもたらすマイナス面を知り、立憲君主としてのお立場をより一層保持することになった。

 


 


上杉慎吉

2012年05月27日 | 大日本帝国憲法


父上杉寛二は元大聖寺藩(現、石川県加賀市)藩医。
旧制四高補充科予科、旧制四高[1]を経て、1898年に東京帝国大学法学部に進学し、憲法学教授で天皇主権主義の穂積八束に師事して憲法を学んだ。1903年帝大法学部政治学科卒(卒業時恩賜の銀時計を授与される)、同年には同大学助教授に就任した。1905年には師匠の穂積説を批判するようになったが、1906年からの「西遊研学」で穂積説の後継者を自任するようになった。
1910年代に入ると、同じく東京帝国大学の美濃部達吉が打ち出した天皇機関説を批判するようになる(天皇機関説論争)。1916年には吉野作造の民本主義を批判。

一時国体運動に参加したため国家社会主義との誤解を受けたが、
すぐに国体運動から遠ざかった。



憲法述義

憲法

帝国憲法遂条講義








穂積八束

2012年05月27日 | 大日本帝国憲法

 明治時代の憲法学者。宇和島藩(愛媛県)出身。父は穂積重樹。陳重の弟。明治16(1883)年東大文学部政治学科卒。井上毅に嘱望され,17~22年ドイツ留学,ラーバントの影響を受けて,憲法発布直前に帰国,東大初代の憲法教授となる。「天皇即国家」であるとして天皇機関説を攻撃,祖先崇拝論によって天皇主権を基礎づけ,「民法出テテ忠孝亡フ」とボアソナード民法に反対した。天皇主権を「国体」としてその絶対不変を唱え,政党内閣を憲法違反とするなど,保守的・権力的憲法論は学界で孤立したが,貴族院勅選議員,宮中顧問官,また教科書執筆者としても影響力を持った。明治44~45年の天皇機関説をめぐる美濃部・上杉論争に際しては,奥田義人文相に介入を働きかけ,新聞に匿名の美濃部攻撃文を掲載した。

憲法

憲法講義

憲法大意


大日本帝国憲法

2012年05月26日 | 大日本帝国憲法
大日本帝國憲法

上諭

朕租宗ノ遺烈ヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ踐ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ即チ朕カ租宗ノ惠撫慈シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ健福ヲ増進シ其ノ懿徳良能ヲ發達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼贊ニ依リ興ニ倶ニ國家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履踐シ玆ニ大憲ヲ制定シ朕カ率由スル所ヲ示シ朕カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所ヲ知ラシム
國家統治ノ大權ハ朕カ之ヲ租宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ傅フル所ナリ朕及朕カ子孫ハ將來此ノ憲法ノ條章ニ循ヒ之ヲ行フコトヲ愆ラサルヘシ
朕ハ我カ臣民ノ權利及財産ノ安全ヲ貴重シ及之ヲ保護シ此ノ憲法及法律の範圍内ニ於テ其ノ享有ヲ完全ナラシムヘキコトヲ宣言ス
帝國議會ハ明治二十三年ヲ以テ之ヲ召集シ議會開會ノ時ヲ以テ此ノ憲法ヲシテ有效ナラシムルノ期トスヘシ
將來若此ノ憲法ノ或條章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ繼統ノ子孫ハ發議ノ權ヲ執リ之ヲ議會ニ付シ議會ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ
朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ爲ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及將來ノ臣民ハ此ノ憲法ニ對シ永遠ニ從順ノ義務ヲ負フヘシ

第一章 天皇

第一條 大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第二條 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ繼承ス
第三條 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス
第四條 天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ
第五條 天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ以テ立法權ヲ行フ
第六條 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
第七條 天皇ハ帝國議會ヲ召集シ其ノ開會閉會及衆議院ノ解散ヲ命ス
第八條 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲緊急ノ必要ニ由リ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ發ス
②此ノ勅令ハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出スヘシ若議會ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ將來ニ向テ其ノ效力ヲ失フコトヲ公布スヘシ
第九條 天皇ハ法律ヲ執行スル爲ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ進スル爲ニ必要ナル命令ヲ發シ又ハ發セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ變更スルコトヲ得ス
第十條 天皇ハ行政各部ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ條項ニ依ル
第十一條 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第十二條 天皇ハ陸海軍ノ編成及常備兵額ヲ定ム
第十三條 天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ諸般ノ條約ヲ締結ス
第十四條 天皇ハ戒嚴ヲ宣告ス
②戒嚴ノ要件及效力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條 天皇ハ爵位勳章及其ノ他ノ榮典ヲ授與ス
第十六條 天皇ハ大赦特赦減刑及復權ヲ命ス
第十七條 攝政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
②攝政ハ天皇ノ名ニ於テ大權ヲ行フ

第二章 臣民權利義務

第十八條 日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第十九條 日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ應シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得
第二十條 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ從ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第二十一條 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ從ヒ納税ノ義務ヲ有ス
第二十二條 日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ居住及移轉ノ自由ヲ有ス
第二十三條 日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問處罰ヲ受クルコトナシ
第二十四條 日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ權ヲ奪ハルヽコトナシ
第二十五條 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及捜索セラルヽコトナシ
第二十六條 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第二十七條 日本臣民ハ其ノ所有權ヲ侵サルヽコトナシ
②公益ノ爲必要ナル處分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第二十八條 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第二十九條 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス
第三十條 日本臣民ハ相當ノ敬禮ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ從ヒ請願ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 本章ニ揚ケタル條規ハ戰時又ハ國家事變ノ場合ニ於テ天皇大權ノ施行ヲ妨クルコトナシ
第三十二條 本章ニ揚ケタル條規ハ陸海軍ノ法令又ハ規律ニ牴觸セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス

第三章 帝國議會

第三十三條 帝國議會ハ貴族院衆議院ノ兩院ヲ以テ成立ス
第三十四條 貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十五條 衆議院ハ選與法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十六條 何人モ同時ニ兩議院ノ議員タルコトヲ得ス
第三十七條 凡テ法律ハ帝國議會ノ協贊ヲ經ルヲ要ス
第三十八條 兩議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得
第三十九條 兩議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同會期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス
第四十條 兩議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲエ但シ其ノ採納ヲ得サルモノハ同會期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス
第四十一條 帝國議會ハ毎年之ヲ召集ス
第四十ニ條 帝國議會ハ三箇月ヲ以テ會期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ
第四十三條 臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常會ノ外臨時會ヲ召集スヘシ
②臨時會ノ會期ヲ定ムルハ勅命ニ依ル
第四十四條 帝國議會ハ開會閉會期ノ延長及停會ハ兩院同時ニ之ヲ行フベシ
②衆議院解散ヲ命セラレタトキハ貴族院ハ同時ニ停會セラルヘシ
第四十五條 衆議院解散ヲ命セラレタトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選擧セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ
第四十六條 兩議院ハ各々其ノ三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第四十七條 兩議院ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決定スル所ニ依ル
第四十八條 兩議院ノ會議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ秘密會ト爲スコトヲ得
第四十九條 兩議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得
第五十條 兩議院ハ臣民ヨリ呈出スル請願書ヲ受クルコトヲ得
第五十一條 兩議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノ、外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得
第五十二條 兩議院ノ議員ハ議院ニ於テ發言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ處分セラルヘシ
第五十三條 兩議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内亂外患ニ關ル罪ヲ除ク外會期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラルヽコトナシ
第五十四條 國務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及發言スルコトヲ得

第四章 國務大臣及樞密顧問

第五十五條 國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
②凡テ法律勅命其ノ他國務ニ關ル詔勅ハ國務大臣ノ副署ヲ要ス
第五十六條 樞密顧問ハ樞密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ應ヘ重要ノ國務ヲ審議ス

第五章 司法

第五十七條 司法權ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
②裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十八條 裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
②裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
③懲戒ノ條規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九條 裁判ノ對審判決ハ之ヲ公開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ法律ニ依リ又ハ裁判所ノ決議ヲ以テ對審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
第六十條 特別裁判所ノ管轄ニ屬スヘキモノハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條 行政官廳ノ違法處分ニ由リ權利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニシテ別ニ法律ヲ以テ定メタル行政裁判所ノ裁判ニ屬スヘキモノハ司法裁判所ニ於テ受理スルノ限ニ在ラス

第六章 會計

第六十ニ條 新ニ租税ヲ課シ及税率ヲ變更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
②但シ報償ニ屬スル行政上ノ手数料及其ノ他ノ収納金ハ前項ノ限ニ在ラス
③國債ヲ起シ及豫算ニ定メタルモノヲ除ク外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ為スハ帝國議會ノ協賛ヲ經ヘシ
第六十三條 現行ノ租税ハ更ニ法律ヲ以テ之ヲ改メサル限リハ舊ニ依リ之ヲ徴収ス
第六十四條 國家ノ歳出歳入ハ毎年豫算ヲ以テ帝國議會ノ協賛ヲ經ヘシ
②豫算ノ款項ニ超過シ又ハ豫算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝國議會ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第六十五條 豫算ハ前ニ衆議院ニ提出スヘシ
第六十六條 皇室經費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年國庫ヨリ之ヲ支出シ將來増額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝國議會ノ協賛ヲ要セス
第六十七條 憲法上ノ大權ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ屬スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝國議會之ヲ廢除シ又ハ削減スルコトヲ得ス
第六十八條 特別ノ須要ニ因リ政府ハ豫メ年限ヲ定メ繼續費トシテ帝國議會ノ協賛ヲ求ムルコトヲ得
第六十九條 避クヘカラザル豫算ノ不足ヲ補フ爲ニ又ハ豫算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル爲ニ豫備費ヲ設クヘシ
第七十條 公共ノ安全ヲ保持スル爲緊急ノ需用アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
②前項ノ場合ニ於テハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第七十一條 帝國議會ニ於テ豫算ヲ議定セス又ハ豫算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ豫算ヲ施行スヘシ
第七十二條 國家ノ歳出歳入ノ決算ハ會計檢査院之ヲ檢査確定シ政府ハ其ノ檢査報告ト倶ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
②會計檢査院ノ組織及職權ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第七章 補則

第七十三條 將来此ノ憲法ノ條項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝國議會ノ議ニ付スヘシ
②此ノ場合ニ於テ兩議院ハ各々其ノ總員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多數ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第七十四條 皇室典範ノ改正ハ帝國議會ノ議ヲ經ルヲ要セス
②皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ條規ヲ變更スルコトヲ得ス
第七十五條 憲法及皇室典範ハ攝政ヲ置クノ間之ヲ變更スルコトヲ得ス
第七十六條 法律規則命令又ハ何等ノ名稱ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ總テ遵由ノ效力ヲ有ス
②歳出上政府ノ義務ニ係ル現在ノ契約又ハ命令ハ總テ第六十七條ノ例ニ依ル


告文

 わたくし(明治天皇)は、皇祖皇宗(神武天皇および歴代天皇)の御神霊へ謹み畏まってお告げ申し上げます。
 わたくしは、永遠なる広大な計画に従い、御神霊の皇位を継承し、伝統文化を保持し、決して失墜することの内容に致します。
 (また、歴史を)かえりみて、世の中の進運(進歩・向上していく機運や傾向)、人倫の発達を皇祖皇宗の遺訓としてこれを明らかにいたします。
 皇室典範と憲法を制定しその条章を明示し、皇室では子孫がこれにより従うところとし、臣民には天皇を補佐する道を広めて永遠に憲法に従わせるようにして、益々大事業(国家統治)の基礎を強固にして臣民の幸福を増進いたします。
 そのためにここに皇室典範および憲法を制定するのであります。
 深くかえりみるに、これはみな皇祖皇宗が子孫に遺し給われた統治の模範に従うことに他なりません。そうして、朕自身の番となって時に及んで(統治を)とり行うことができるようになったことは本当に皇祖皇宗および我が先帝(孝明天皇)の威光に頼ってきたおかげでないわけがありません。
 わたくしは仰いで皇祖皇宗および先帝のお助けを祈願し、あわせて朕の現在および将来に臣民に率先してこの憲章を実行してこれを誤ることの無いようにすることをお誓いいたします。
 願わくば神々よ、私を(この誓いに照らし合わせて)見守って下さい。


憲法発布勅語

 朕は、国家の隆盛と臣民の幸福とをもって喜ばしい光栄なことの中心とし、朕の祖宗(皇祖皇宗と同義)から受け継いだ大権によって、現在から将来にわたって臣民に対し、この不滅の大いなる法典を広く公布する。
 深く(歴史を)かえりみるに、朕の祖先(神武天皇)、歴代天皇は、わが臣民の祖先たちの協力・補佐により我が帝国を建国し、それを後世まで永遠にお与えになった。
 これは我が神聖なる祖宗の権威・徳力、ならびに臣民の忠実さ勇武さによって、国を愛し公に従い、この光輝ある日本史に足跡を残してきた。
 朕は、我が臣民が、すなわち祖宗の忠実・善良なる臣民の子孫であることを思いめぐらし、朕の意志に身を挺し、朕の事業をすすめ従い、心を一つに力を合わせて、ますます我が帝国の光栄を国の内外に広く知らしめ、祖宗の遺業を永久に強固にするという希望を同じくし、その任の分担に耐えられることを疑わないものである。


上諭

 朕は、祖宗の功績を受けて万世一系の帝位をふみ、朕の親愛なる臣民はすなわち朕の祖宗が恵み、愛し、慈しみ、養ったところの臣民であることを思い、その幸福を増進し、その立派な徳と生まれながらの才能を発達させることを願い、またその補佐によって、ともに国家の進運を助けてくれることを望む。
 そこで明治十四年十月十二日の勅命を実践し、ここに大いなる憲法を制定して、朕に従ってくれることを示し、朕の子孫および臣民とまたその子孫によって永遠に命令に従い実行してくれることを知らしめる。
 国家を統治する大権は朕がこれを祖宗より受け継ぎ、また子孫へと伝えていくものである。朕および朕の子孫は将来、この憲法の条文に従って政治を行うことを誤ってはならない。
 朕は我が臣民の権利および財産の安全を貴び重んじ、またこれを保護し、この憲法および法律の範囲内においてその享有を完全に確かなものだとしてよいと宣言する。
 帝国議会は明治二十三年をもって召集され、議会開会の時をこの憲法が有効となる期日とする。
 将来、この憲法のある条文を改正する必要が出たときは、朕および朕の子孫はその改正を発議し、これを議会に提出して、議会はこの憲法に定められた要件にしたがってこれを議決するほか、朕の子孫および(そのときの)臣民は決してこれを掻き乱して変えようとすることがあってはならない。
 朕の朝廷に勤めている大臣は朕のためにこの憲法を施行する責任を有し、朕の現在および将来の臣民はこの憲法に対し永遠に従順の義務を負わなければならない。

御名御璽
 明治二十二年二月十一日

  内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
  枢密院議長 伯爵 伊藤博文
  外務大臣 伯爵 大隈重信
  海軍大臣 伯爵 西郷従道
  農商務大臣 伯爵 井上馨
  司法大臣 伯爵 山田顕義
  大蔵大臣兼内務大臣 伯爵 松方正義
  陸軍大臣 伯爵 大山巌
  文部大臣 子爵 森有礼
  逓信大臣 子爵 榎本武揚


第1章 天皇

第1条 大日本帝国は、万世一系の天皇によって統治される。

第2条 皇位は皇室典範の定めに従って、皇統の男系の男性子孫が継承する。

第3条 天皇は神聖であり、侵してはならない。

第4条 天皇は国家元首であり、統治権を統合して掌握し、憲法の規定により統治を行う。

第5条 天皇は帝国議会の協賛により立法権を行使する。

第6条 天皇は法律を裁可して、その公布と執行を命じる。

第7条 天皇は帝国議会を召集し、その開会・閉会・停会および衆議院の解散を命じる。

第8条 ① 天皇は公共の安全を保持し、またはその災厄を避けるため緊急の必要があり、かつ帝国議会が閉会中の場合において、法律に代わる勅令を発す る。
② この勅令は、次の会期に帝国議会に提出しなければならない。もし議会において承認されなければ、政府は将来その勅令の効力が失われることを公布しなければならない。

第9条 天皇は、法律を執行するため、または公共の安寧と秩序を保持し、及び臣民の幸福を増進する為に必要な命令を発令するか発令させる事が出来る。ただし、命令で法律を変更する事は出来ない。

第10条 天皇は、行政機構の制度および文武官の俸給を定め、文武官を任免する。但し、この憲法、又は他の法律で特例を規定した場合は、その条項に従う。

第11条 天皇は陸海軍を統帥する。

第12条 天皇は陸海軍の編成と常備軍の予算を定める。

第13条 天皇は宣戦布告を行い、講和条約を結び、その他の条約を締結する。

第14条 ① 天皇は戒厳を宣告する。
② 戒厳の要件及び効力は法律によって定められる。

第15条 天皇は爵位、勲章およびその他の栄典を授与する。

第16条 天皇は、大赦、特赦、減刑及び復権を命令する。

第17条 ① 摂政を置くのは皇室典範の定めるところによる。
② 摂政は天皇の名において大権を行使する。


第2章 臣民権利義務

第18条 日本臣民であるための要件は法律の定めるところによる。

第19条 日本臣民は法律命令の定める資格に応じて等しく文武官に任命され、及びその他の公務に就くことが出来る。

第20条 日本臣民は法律の定めに従って、兵役に就く義務を有する。

第21条 日本臣民は、法律の定める所により、納税の義務を有する。

第22条 日本臣民は、法律の範囲内で居住と転居の自由を有する。

第23条 日本臣民は法律によることなく、逮捕監禁審問処罰を受けることはない。

第24条 日本臣民は、法律に定められた裁判官の裁判を受ける権利を奪われる事は無い。

第25条 日本臣民は法律に定めた場合を除き、その許諾無しに住居に侵入されたり、捜索されたりする事は無い。

第26条 日本臣民は法律で定められた場合以外は、通信の秘密をおかされる事は無い。

第27条 ① 日本臣民は、所有権を侵される事は無い。
② 公益の為に必要な処分は法律で定める所による。

第28条 日本臣民は、安寧秩序を乱さず、臣民の義務に背かない限り、信教の自由を有する。

第29条 日本臣民は法律の範囲内で言論・著作・印行・集会及び結社の自由を有する。

第30条 日本臣民は敬意と礼節を守り、別に定めた規定に従って、請願を行う事が出来る。

第31条 本章に掲げた条規は、戦時又は国家事変の場合において天皇大権の施行を妨げるものではない。

第32条 本章に掲げた条規で、陸海軍の法令又は規律に抵触しない物に限って、軍人にもこの章に准じて行う。


第3章 帝国議会

第33条 帝国議会は、貴族院と衆議院の両院で成立している。

第34条 貴族院は貴族院令の定める所により、皇族・華族及び勅任された議員をもって組織する。

第35条 衆議院は、選挙法に定める所によって公選された議員により組織する。

第36条 何人たりとも、同時に両議院の議員になる事は出来ない。

第37条 全ての法律は、帝国議会の協賛を経る必要がある。

第38条 両議院は、政府の提出する法律案を議決し、及び法律案を提出する事が出来る。

第39条 両議院の片方で否決された法律案は、同じ会期中に再び提出する事は出来ない。

第40条 両議院は、法律又はその他の事件について、各々その意見を政府に建議(意見申し立て)する事が出来る。但し、政府が
採用しなかった建議は、同じ会期中に再び建議する事は出来ない。

第41条 帝国議会は毎年召集する。

第42条 帝国議会は会期を三ヶ月とする。必要が有る場合には勅命で延長することが有る。

第43条 ① 臨時・緊急の必要がある場合は、常会のほかに臨時会を召集すること。
② 臨時会の会期は勅命により定める。

第44条 ① 帝国議会の開会・閉会・会期の延長および停会は、両院同時にこれを行わなければならない。
② 衆議院の解散命令が出た場合は、貴族院も同時に閉会しなければならない。

第45条 衆議院の解散を命じられたときは、勅命をもって新たに議員を選挙させ、解散の日より五ヶ月以内に召集すること。

第46条 両議院はそれぞれ、その議院の総議員の三分の一以上出席しなければ、議事を開き議決する事が出来ない。

第47条 両議院の議事は(出席議員の)過半数で決まる。可否が同数であるときは、議長の可否で決まる。

第48条 両議院の会議は公開とする。ただし、政府の要求またはその院の決議によって、秘密会とする事が出来る。

第49条 両議院は各々天皇に上奏する事が出来る。

第50条 両議院は臣民より提出された請願書を受け取る事が出来る。

第51条 両議院は、この憲法及び議院法に掲げられているもののほかに、内部の整理に必要な諸規則を定める事が出来る。

第52条 両議院の議員は議院において発言した意見及び表決について、院外で責任を負うことはない。但し、議員自らがその言
論を演説・刊行・筆記及びその他の方法で公布したときは、一般の法律により処分される。

第53条 両議院の議員は、現行犯の罪又は内乱外患に関する罪を除くほかは、会期中にその院の許諾なしに逮捕されることはない。

第54条 国務大臣及び政府委員は、いつでも各議院に出席し、発言する事が出来る。


第4章 国務大臣および枢密顧問

第55条 ① 各国務大臣は天皇に助言を施し、その責任を負う。
② 全ての法律・勅令・その他国務に関する詔勅は、国務大臣の副署が必要である。

第56条 枢密顧問は枢密院官制の定める所によって、天皇の諮問に応えて重要な国務を審議する。


第5章 司法

第57条 ① 司法権は天皇の名において法律によって裁判所が行使する。
② 裁判所の構成は法律によって定める。

第58条 ① 裁判官は法律で定めた資格を備える者を任命する。
② 裁判官は刑法の宣告、又は懲戒処分による場合以外は、その職を罷免される事はない。
③ 懲戒の条規は法律で定められる。

第59条 裁判の対審・判決はこれを公開する。但し、安寧と秩序及び風俗を害する恐れがある時は、法律により又は裁判所の決議により、対審の公開を停止する事が出来る。

第60条 特別裁判所の管轄に属すべきものは、別の法律によってこれを定める。

第61条 行政官庁の違法処分により権利を侵害されたという訴訟で、別に法律をもって定めた行政裁判所の裁判に属するべきものは、司法裁判所において受理するものではない。


第6章 会計

第62条 ① 新たに租税を課し、及び税率を変更するには、法律で定めなければならない。
② ただし、報償に属する行政上の手数料及びその他の収納金は、前項の限りではない。
③ 国債を起債し、及び予算に定めたものを除くほかの国庫の負担となる契約を結ぶ時は、帝国議会の協賛を経なければならない。

第63条 現行の租税は、更に法律をもって改めない限りは、旧の法律によって租税を徴収する。

第64条 ① 国家の歳入歳出は、毎年予算を帝国議会の協賛を経なければならない。
② 予算の項目の額から超過した時、または予算のほかに生じた支出がある時は、後日帝国議会の承諾を求める必要がある。

第65条 予算は、先に衆議院に提出しなければならない。

第66条 皇室経費は現在の定額を毎年国庫より支出し、将来に増額を必要とした場合以外は、帝国議会の協賛を必要としない。

第67条 憲法上の大権に基づく規定の歳出、及び法律の結果により、又は法律上政府の義務に属する歳出は、政府の同意がなければ帝国議会がこれを排除または削減する事は出来ない。

第68条 特別な必要に迫られたとき、政府は予め年限を定めて、継続費として帝国議会の協賛を求めることが出来る。

第69条 避ける事の出来ない予算の不足を補うため、又は予算外に生じた必要な費用に当てるために、予備費を設けなければならない。

第70条 ① 公共の安全を保持する為、緊急に必要がある場合に、内外の情勢によって政府は帝国議会を召集することが出来ない時は、勅令によって財政上必要な処置を行う事が出来る。
② 前項の場合には、次の会期において帝国議会に提出し、その承諾を求める必要がある。

第71条 帝国議会において、予算が議決されず、又は予算が成立しない時は、政府は前年度の予算を施行しなければならない。

第72条 ①国家の歳出入の決算は、会計検査院が検査、確定し、政府はその検査報告とともにその決算を帝国議会に提出する。
② 会計検査院の組織と職権は法律によって定める。


第7章 補足

第73条 ① 将来にこの憲法の条項を改正する必要がある場合は、勅命をもって議案を帝国議会の議に付さなければならない。
② この場合、両議院は各々総議員の三分の二以上出席しなければ、議事を開く事は出来ない。また出席議員の三分の二以上の多数を得られなければ、改正の議決をする事は出来ない。

第74条 ① 皇室典範の改正は、帝国議会の議決を経る必要はない。
② 皇室典範によって、この憲法の条規を変更する事は出来ない。

第75条 憲法及び皇室典範は、摂政を置いている間は、これを変更する事は出来ない。

第76条 ① 法律・規則・命令又は何らかの名称を用いているものも、この憲法に矛盾しない現行の法令は、全て効力を有している。
② 歳出上、政府の義務に関わる現在の契約または命令は全て第六十七条の例による。