http://www.kyodo-center.jp/ugoki/kiji/070216armitage.htm
「世界規模の不確実性と移行の時代において、米国の揺るぎない利益のために求められるのは、これからの挑戦と現れつつある世界秩序をベストの形に仕上げる潜在的なチャンスを把握するための地平の先を見る明敏な認識だ。アジアは、世界人口の半分、世界経済の3分の1の力を擁し、国際システムにおいて経済、金融、技術、政治的な重要さを増しており、米国の利益をもっとも増進する安定し繁栄した世界秩序のカギを握っている。」
【意訳】
アメリカの利益のために儲かっているアジアから搾取する。アジアはアメリカの狩場だ。
「この点で、アジアを正しく方向付けるとは、米国の価値をこの地域で押し付けることを意味しない。そうではなくむしろ、地域の指導者たちが自らの国の成功を米国の政治的、経済的目標と一致するように定義するような環境を整えることである。それは、市場原理、自由で開かれた貿易、知的所有権の保護、労働基本権、環境を基礎とした経済的繁栄である。それは、いまこの地域が享受している経済的成功を強める自由な諸制度をともなう、より大きな政治的自由である。」
【意訳】
無理やりアメリカの要求を押し付けるのではなく、自動的にアメリカのメリットが得られるようなシステムをこの地域で作ってしまうことである。
「米日同盟に背を向けたり、日本に対するわれわれの期待を低めたりすることは、地域の安定と地域における日本の役割に否定的な影響を与えるだろう。2020年の国際システムを支える日本の代わりに、日本は、せいぜい「中程度の力」に安住する国になるかもしれないし、御しがたく、厄介で、最悪の場合には国家主義的な国になるかもしれない。」
【意訳】
米日同盟をやめれば日本は欧米にとってにとってやっかいな国になる。「御しがたく」と言ったのは日本は常にアメリカがたずなを握った馬車馬であるべきだからだ。国家主義に傾けば日本はアメリカのコントロールできない国になるかもしれない。
十分先の将来においても、米国と日本は、アジアにおける経済繁栄と安定のカギを握っている。われわれ2カ国は、アジアが主要な牽引となっている国際経済システムに対して指導力と賢明な管理者役を行使するという第一義的な責任を持っている。同様に、われわれは、それぞれの経済的、構造的、戦略的な課題を首尾よく克服するようお互いを援助する方法を考える必要がある。国際貿易交渉のドーハ・ラウンドが混乱しているなかで、われわれにとっては、単に経済だけでなく国家戦略にもしっかりと目を向けながら、経済パートナーシップの緊密さと深さを広げる方法を考えることがますます重要である。米国と日本は、2国間の自由貿易合意に向けた交渉を立ち上げることで、自由貿易と経済統合の力の促進と確保に向けてすばやく行動することを必要としている。これは、アジアで出現しているFTAのネットワークの拠点になるだろうし、世界経済全体にエネルギーを提供するだろう。
自由貿易の交渉のための基盤がまだ存在していないと主張する人もいるかもしれない。実際、日本の規制制度を政府が約束しているグローバル・スタンダードに一致するようにし、その代わりに外国人と日本人企業家にとっての市場アクセスを高めるようにするには、多くの予備作業がまだなされなければならない。製薬、電話通信、医療サービス、農業、情報技術、エネルギーといった部門においては、効率性を高め、アクセスを広げるために削減することができるたくさんの具体的な障壁がある。金融サービスといった顕著な進展がみられる分野でさえも問題はまだ残っている。とりわけ、日本郵政システムの民営化が進むなかで、そのシステムを通じて商品を売買し、最終的には資産を購入するための外国人のアクセスに関しては、問題が残っている。
同時に、自由貿易の良い兆候を示す強力な内部圧力も働いている。たとえば、日本の農業部門における人口統計の変動だけでも、保護主義的政策の根本的な変化を強いている。日本の農業部門は低下しており、そのGDPへの貢献は1990年の2.4%から2004年の1.2%以下へと半減している(GDPへの農業の貢献は、工業の20分の1に過ぎない)。農民の圧倒的多数は、パートタイムであり、「農業世帯」が農業から得ている収入は彼らの収入全体の4分の1にすぎない。さらに、農業人口は急激に減っており、今日の290万人から2015年には210万人という低さにまで減るという見通しである。65歳を超える農民の割合は、15から64歳の間の農民のおよそ倍である。数の上で増えつつある農民人口の唯一の部分は、70歳を超える部分である。信じられないことだが、2015年の日本における農業労働者の平均年齢は65歳を越え、老齢者はとりわけ過酷なコメ栽培部門に集中しているだろう。要するに、日本は農業において人口統計的な危機に直面しているのである。
人口統計に駆り立てられて、日本は農業をよりいっそう自由化するための非常に強力な理由を持っているが、実行可能な代替案はほとんど持っていない。コメを含むすべての部門を交渉対象として、農業は米国と日本のFTAの中心になれるし、なるべきである。しかし、そうしたFTAは、日本の農民の感情と「コメ文化」を慎重に考慮する必要がある。自由化の課題のすっきりした解決策は、農民の引退と農業人口の減少を円滑かつ効果的に結合しながら、今後10年にわたって、関税引き下げを段階的にすすめることにあるだろう。同時に、日本国民は、自由化が日本における農業の抹消を意味するものではないことを認識する必要がある。リンゴ、牛肉、オレンジのようなすでに自由化が行われた部分に見られるように、野菜や果物、コメの農家は間違いなく、有機栽培のような高品質の得意分野に転換するだろうし、規模の経済を通じて効率性を高めることだろう。自由化は、農業においてさえも、日本にとってはウィン・ウィンの提案になりうる。
【意訳】
日本の従来型の農業を速やかに終わらせ、有機栽培などの一部の分野だけに限定させ、あとは米国から輸出したものでまかなえるようにする。
どうせ農業は高齢化がすすんでいるのだろう、だまっていても2020年までには衰退する。高齢者には農業は過酷なんだからあとはアメリカに甘い汁を吸わせろ。
こうした理由から、米国と日本は、包括的な自由貿易合意についての交渉をできるだけ早く始める意図を宣言すべきである。貿易促進権限法が近々期限切れを迎えることで、FTA合意は2008年の選挙の前にはありそうもないが、米国と日本の指導者らは、それにもかかわらず、この目標を視野に入れておくべきである。この合意は、関税と税関手続きを調整するだけではなく、太平洋の両側において生産性を著しく向上させるという目標を持って、規制と投資環境の一致を目指していっそう深い内容に到達するだろう。ドーハの義務と両立するFTAは、日本の市場における外国人と新規参入者のための機会を顕著に促進しながら、条件を公平化し、全体的に透明性を高めるだろう。また、正しく行われるFTAは、間違いなく日本での米国の投資へより広く門戸を開放するだろうし、そのかわり、高齢化する社会に直面しているなかでさえも構造調整の課題を日本が達成することを支援するだろう。今後20年以上にわたり、米日FTAは、日本の対内直接投資のレベルをGDPの2.1%からGDPの14%という米国のレベルへと引き揚げることを目指すべきである(そうなったとしても、GDPの20%というG7平均を下回っている)。
最後に、そして決定的な点として、WTOと両立する2国間自由貿易合意は、この地域の市場経済のネットワークの拠点として役に立つことができる。特に、米日FTAは、米国がシンガポール、オーストラリア、韓国、マレーシア、タイと結んでいるかあるいは交渉しているFTA網の一部分となりうるだろう。これは、中国がWTOの義務を果たすための力強い誘因になるだろうし、重要なことに、この質の高いFTA網の部分ともなるだろう。
要するに、包括的な米日自由貿易合意の直接的な経済利益は相当なものになるだろうということである。しかしながら、アジア太平洋州の共同体のすべての構成員にとっての政治的、戦略的な利益は、さらに大きなものになるだろう。米国と日本にとって、経済同盟の合意に署名すること――それは米日安全保障条約を基礎付けているものとまったく同様に強力な共通の核心的原則に基づいている――は、この地域と世界に著しく強力なシグナルを送るだろう。それは、経済的かつ政治的に、われわれ2カ国が国民の未来と世界の安定、繁栄のために同じ夢と願いを共有しているということを示すだろう。
アーミテージは以下のことを無視している。
日本の食料自給率が4割を割り込んだまま回復のめどが立たない。
食料自給率の低下で懸念されるのは、国際紛争など万一の際に海外から供給が途絶えることだけではない。多くの食品の原材料である穀物価格が高騰すると、幅広い食品に値上げの影響が広がりやすくなることだ。
2012/8/22 <輸入小麦>価格3%引き上げ 米干ばつで相場高騰。
うどん、菓子用の米国産など2銘柄が8%引き上げられる。
日本は小麦、大麦など麦の需要の約9割を輸入に頼っている。
穀物価格が今後も高値で推移すれば、小麦の輸入価格がさらに引き上げられる可能性がある。
TPPに入る→食料の依存率が高くなる(自給率がさらに低下)→米に干ばつなどが起きる→輸入価格が上がる。→食料品が高くなり、嗜好品などの買い控えが起きる。企業利益も減る。→経済の低迷