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風のぱれっと  (ぱれっとパート2)

きれいな色をのせてみよう
受験生の母 かけだし川柳 父と母のこと 読書 など

貧困の光景 曽野綾子著 新潮社刊

2007-04-24 20:21:12 | 読書


私はキリスト教徒ではないし、
曽野綾子さんの小説をまるで読んだことがないけれど、
曽野さんのエッセイというか、ルポルタージュというか、旅行記というか
そういう作品が好きです。

曽野さんは、とにかく私には想像できない、思いもよらない出来事
しかも全部真実、ということがらを語ってくださるので、
背筋はしゃんと伸びるし、目からウロコは落ちるし、
心が生まれ変わったようになります。

『貧困の光景』も同じ…
ここに登場する人たちが、
今この瞬間にも地球のある場所に確実にいる。
同じ人間なのに、
同じ時に生きているのに…

飢餓と病気と無政府状態、
食べ物だけでなく、
お金も教育も健康もモラルも仕事も父親も
とにかく何にも無い 

内容については  刊行記念インタビュー をご覧いただくと、
私がごちゃごちゃ言うよりよくわかります。

ぜひ一度読んでいただきたいと思います。


町長選挙 奥田英朗著 文芸春秋刊 

2006-10-19 20:14:51 | 読書


「オーナー」 「アンポンマン」 「カリスマ稼業」の短編3つと、
中篇の「町長選挙」の4作品がおさめられています。
なかでも「町長選挙」がおすすめ。

精神科医の伊良部先生は正気かどうか、
今までも何度か首をかしげたけれど、今回は確信しました。
正気の沙汰ではない、と…

小さな島が真っ二つに分かれて選挙戦を戦っているさなか、
伊良部先生が赴任してきます。
陣営のどちらにつくか、
毎日責められて神経がまいってしまった役場の新人、
伊良部先生に悩みを打ち明けたのが大間違い 

30万が100万に、100万が200万に
飛び交う札束の厚みは増すばかり…

常識も良識も節操もない、
この混乱のきわみを作家はどう収拾するのか!

なるほど、う~ん、こうきましたか 
爆笑まちがいなし、
きっとあなたも血が騒ぐ 
選挙ってなんだろうと考えてしまうお話でした。

父の威厳 数学者の意地 藤原正彦 著 新潮文庫

2006-09-27 21:21:57 | 読書


以前、「国家の品格」をご紹介した藤原正彦先生の痛快エッセイ。
現代日本に活を入れるには、
武士道の価値観を復活させることが急務、と信ずる藤原先生。

教育論、文化論など固めのテーマから
歌謡曲、高校時代の逸話までとびだして
やんちゃな先生お得意の抱腹絶倒の言い回し 

数学の試験時間が短すぎるという意見には、
ウチの息子も大いに賛成、
急に鼻息が荒くなりました。

英会話は、ペラペラになることを目指す必要はない。
肝心なのは話す「中身」。
大賛成 
ニュースを見ていると、○○訛りのオンパレード。
アラブ訛り、ドイツ訛り、中国訛り、アジアの訛り、アフリカの訛り…

藤原先生の本を読むようになって
もっと日本の文化について知りたいと思うようになりました。
あまりにも知らないので恥ずかしいかな、と…
季節の行事などもまじめに考えよう、と…
 
最後の章「苦い勝利」については
私は奥様に味方しますね。
でも藤原先生が意地をかけてご自分の意見を通されたおかげで、
ウチの息子も娘も修学旅行2週間前の意味のない検便なんぞ
やらずに済んだわけです。

都の教育長まで巻き込んだこの事件、
父の威厳は絶大でした。
断固とした姿勢に、奥様と三人の息子さんは
藤原先生をあらためて尊敬しなおされたのでしょうね。

ちゃめっけたっぷり
筋の通った話のお好きなかたに、お勧めします。

その日のまえに 重松清著 文藝春秋刊

2006-08-11 20:18:42 | 読書


まだ先だと思っていた人生のカウントダウンが、
発病とともに、突然始まってしまった人々とその家族の物語。

ひこうき雲、朝日のあたる家、潮騒、ヒア カムズ ザ サン、
えっ? これ歌のタイトルじゃないの、
それぞれが独立した短篇のような六つの話が
最後にあちこちで結びつきを持ってきました。

生れ落ちたときから、
残り時間は刻一刻と減り続けているのに
みんな知らんふりをしています。
でも「その日」が近いことを突きつけられたら…

「その日」にむけて、あるいは「その日」以後
登場人物の一人一人が、なんと優しく、なんと強くなれるのか!

もしも私が「和美」だったら…
つれあいに、和美のあの最後のメッセージを残せるでしょうか?
そうはしないような気がします。

第4話に登場する母一人子一人の高校1年生、「トシくん」がいい。

今この瞬間にも凝縮した時間を過ごしている人たちに
思いを馳せて…

とにかく私も、もうちょっと優しくなろうかしら…
あっ、これ内緒ね、
すぐつけあがる人がいるから 

あなたのまわりにいる人たちを
思わず抱きしめたくなる一冊です。


弥勒の月 あさのあつこ著 光文社刊

2006-07-17 15:36:16 | 読書


「バッテリー」のあさのあつこさんが書いた時代劇、
じゃなかった、捕り物帖?

繁盛している小間物問屋遠野屋の若おかみ、おりんが川へ飛び込み自殺をした。
納得のいかない夫の遠野屋は、
北定町廻り同心、木暮信二郎に、「今一度の御探索」を強く願い出る。

こんなクセのある同心、初めてお目にかかりました。
謎解きよりも、信二郎と遠野屋のやりとりの面白さに引張られて
最後まで読んでしまいます。

遠野屋の正体を暴くことに執着する信二郎は、
たかったり、脅したり、挑発したり… 
信二郎の手先の岡っ引、伊佐治ならずともハラハラドキドキ!

伊佐治はもともと信二郎の父親に仕えていた岡っ引で
信二郎の代になって、手札を返上しようかとも考えているところ。

そんな伊佐治が、信二郎の暴走?を親のようにたしなめながら、
次第にツーカーの間柄になっていきます。

私には最後の謎解きが唐突過ぎました。
ここで種明かしするわけにはいきませんが、
こういう犯人は珍しいですね。
アガサ・クリスティの「カーテン」を思い出しました。

ところで、帯に「人は人を救えるのか?」とありますが、
伊佐治も遠野屋も救われたのではないでしょうか。
臨時廻りの吉田敬之助の場合は、残念ながら…

おすすめです。

ハリー・ポッターと謎のプリンス J.K.ローリング著 静山社

2006-06-04 22:18:16 | 読書


ご存知、ハリー・ポッターです。
6年前、この本の第1巻のページをめくることになったのは、
なんと私の母が娘にプレゼントしてくれたからでした。

それから毎年、発売されるとまず娘が読み、次に私が読み、
二人でキャーキャー騒いでいるのを聞いて、息子が読む。
前の人が読み終わるのが待ち遠しいことといったら…

昨年までは新刊が出る前に復習していました。
つまり、第2巻が出る前に第1巻を、
第3巻が出る前には第1巻と第2巻を、
第4巻が出る前には第1巻と第2巻と第3巻を読み直していたのです。

今年はそれができませんでした。
復習しなくちゃ、とは思っていたのですが…。

目の前に新刊があるので、
えいやっとばかり第6巻を読み始めてしまいました。

不安的中!
J・K・ローリングは余計な説明をしない作家なので
さっそく登場人物?!ならぬ 登場魔法使いの名前で混乱し、
前巻の出来事をしっかり思い出せずに
あれ、どうだったっけ? と首をかしげることたびたび。
復習は大事です。

J.K.ローリングのお話のうまさには感心します。
脱帽です。
上下2巻あっという間に読んでしまいます。
第6巻は確かに暗いですが、それでもしっかり面白い 

ハリー・ポッターを読み終わると、
しばらくは身の回りを見回して、
あの人は本当は魔法使いではないかしら? とか
お料理する時にロンのおかあさんの真似をして
野菜と鍋に呪文を唱えたりしてしまいます。
これが結構うまくいくんですよ 

あ~あ、また長~い1年を待たなくてはなりません。
もっとゆっくり読めばよかった?

最後の願い 光原百合著 光文社

2006-05-17 18:52:55 | 読書


たぶん、光原百合さんに嵌ってしまいました。

劇団Φ、ファイと読みます、をたちあげるべく奔走する
若い男性二人、度会と風見。

1話進むごとに、謎をひとつ解決し、
その結果、劇団に必要な人材をひとりずつ確保していくという筋立て。
作家だったり、女優だったり、美術担当だったり…

テンポのいい会話、活きのいい話の運び、こうでなくっちゃ 
読んでいるうちに、こちらまでノってきて、
いつの間にか若返っているという寸法。
光原さんは尾道大学の講師をなさっているそうなので、
話に登場する若い人たちが生き生きしているのもそのせいかしら?
と、ひとり納得しています。

探偵役は、度会と風見の二人が交代で、というところも面白い。
光原さんの本は、ポアロでなくて、ミス・マープル。
血なまぐさくなく、性過剰でないところが安心。

劇団の内情も垣間見えます。
渡会と風見はもちろん、登場人物のひとりひとりが魅力的 
それぞれが主役になれそう!

この劇団の話のつづきを読みたいなぁ 
光原さん、つづきを書いて  
 

国家の品格 藤原正彦 著 新潮新書

2006-03-30 23:07:35 | 読書


拍手!拍手!
えっ、そうだったの! と驚きながら
そうだそうだと頷きながら、
一気に読んでしまいました。

3日間で3回も読んでしまったのですから、
藤原正彦さん流にいえば、
「物好きにも程がある」 というところでしょうか。

私がビックリしたのは、
第二章 「論理」だけでは世界が破綻する
第三章 自由、平等、民主主義を疑う です。

本の中の文章を引用させていただくと、

「論理を徹底すれば問題が解決できる」という考え方は誤りです。

もちろん民主主義、自由、平等には、それぞれ一冊の本になるほどの美しい論理が通っています。
だから世界は酔ってしまったのです。

論理とか合理を否定してはなりません。これはもちろん重要です。
これまで申しましたのは、「それだけでは人間はやっていけない」ということです。
何かを付加しなければならない。
その付加すべきもの、論理の出発点を正しく選ぶためにひつようなもの、
それが日本人の持つ美しい情緒や形である。

もののあわれなどの美しい情緒、
そして武士道精神から来る慈愛、誠実、惻隠、名誉、卑怯を憎む、などの形です。
現代を荒廃に追い込んでいる自由と平等より、
日本人固有のこれら情緒や形の方が上位にあることを、
日本は世界に示さねばなりません。
 (中略)
まず日本人それぞれが情緒と形を身につけることです。
それが国家の品格となります。
品格の高い国に対して、世界は敬意を払い、必ずや真似をしようとします。
それは、文明国が等しく苦悩している荒廃に対する、
ほとんど唯一の解決策と私には思えるのです。

藤原さんのユーモアあふれる文章でのおかげで、
固いテーマにもかかわらず、時に爆笑するはめになります。

「古池や 蛙飛び込む 水の音」
ご存知の芭蕉の句について述べているくだりでは、
ショックでしばらく立ち直れませんでした。

普段なんとなく違和感を持っていたこと、
欧米諸国の大きな態度や、
事故っても絶対謝らない習慣など
なるほどテキの正体は見えたぞと思いました。

私が買った本なのに、息子は先に読んで
「この本は一家に一冊ではなくて、一人一冊持つべきだ」と申しました。
是非一度お手に取ってご覧ください。
「お前はこんなにいいところをたくさん持っているじゃないか」
と誉められていい気分になれます。

息子が膝の上に本を広げて歯を磨いているのを注意したら、
「もうちょっと」などとグダグダ言うので、
「ならぬことはならぬものです」と言ったら、
効果てきめんでした。

おりしも小学校で、
英語の授業を増やすことが決まったようです。
英語やコンピューターの授業など小学生にはいらないと思います。
そんなことより、
詩を暗誦したり、漢字を書いたり、
インターネットではなくて、図書館を利用して調べ物をさせるべきです。

ずいぶん長くなりました。
読んでくださった方、ありがとうございました。
お疲れ様でした。
                      

星月夜の夢がたり 光原百合 著 文藝春秋 刊

2006-02-08 21:10:46 | 読書


鯰江光二さんの挿絵が、収められたお話の優しさによく合って
夢のかけらの輝きをなおいっそうひきたてています。

158ページに32編のお話、
短いけれど、凝縮されたドラマのかずかず…
つくづく、光原さんって少女の気持ちをずっと持ち続けていらっしゃるんだなぁと、感心しました。
というより、女はいくつになっても、(男も?)心は少年少女のまま、なんでしょうね。

キーワードは「初々しい心」

とはいうものの、きれいごとは登場しませんぞ。
厳しい失恋や、世間の荒波、償いきれないあやまち…
そして、ニンマリから爆笑まで、笑えるお話もたくさん。

私が特に気に入ったのは、
「天馬(ペガサス)の涙」
「遥かな約束」
「カエルに変身した体験、及びそれに基づいた対策」
「地上3メートルの虹」
「トライアングル」
「チェンジ」
あらら全部になりそう。

さて、この本の中には、昔話の後日談が6編入っていまして、
これがなかなかです。
元のお話は、「三枚のお札」「絵姿女房」「かぐや姫」
「耳なし芳一」「大岡裁き」「天の羽衣」
是非、ご覧くださいませ。



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2005-12-15 23:23:51 | 読書


写真は、行きつけの歯医者さんです。
先日はずれてしまったかぶせ物は、
おかげさまで、めでたくもとの位置におさまりました。

まだ読んだことのない本のページをめくる時の心のときめき、
未知の世界への期待、
やがて押し寄せてくるカタルシス…

娘や息子が本を読んでいるのを見ると、うらやましく思います。
特にホームズやクリスティは…
『オリエント急行の殺人』って面白い?
『ハロウィーン・パーティー』ってどんな話?

そうなんです、彼らの特権は、
私がすでに読んでしまった本をこれから読むことができる、
お楽しみがまだまだ残っている、ということ。
うらやまし~
そこにこだわって、
ポアロの最後の作品 『カーテン』を読まないでいたら、
息子がこともあろうにハードカバーを買って来て読んだといいます。
母さん、読んでいいよと言われても、
読んでしまえば、ポアロものはおしまいになってしまいます。
頑として読みませんでした。

でも2年ほど前のある日、つい読んでしまって…
それまでのポアロのイメージととてもかけ離れていたので、
複雑な心境でした。

それ以来、『ミス・マープルの最後の事件』は封印したままです。
この調子だと、『ハリー・ポッター』も第6巻まで読んで、
第7巻は読めないことになるかもしれません。