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風のぱれっと  (ぱれっとパート2)

きれいな色をのせてみよう
受験生の母 かけだし川柳 父と母のこと 読書 など

ディア・ライフ アリス・マンロー著 新潮社刊

2014-04-15 09:58:08 | 読書


アリス・マンローは1931年にカナダで生まれ「短編小説の女王」と評される作家。
本書は2013年 ノーベル文学賞受賞作。

全14編、短編ですからひとつひとつのお話は長くはないのですが
推敲を重ねる作家らしく
彼女が考え抜いた結果がひとつの言葉になって出てくるので
どうしてどうして“読み飛ばす”訳にはいきません。

一日に一つのお話…
言葉の意味を探る楽しさ!

読み終わると不思議な感覚に…
なぜか、子供のころのことや、母のこと
若かったころのこと、
いろいろなことが、自然に思い出されてきたのです。
それは、記憶の底からふつふつと湧いてくるという感じで
無理やり思い出そうと努力するというのではありません。

そう言えば…あんなこともあった こんなこともあった 
と、自然に、次から次へと…

当時はわからなかったけれど、
あれは、こういうことだったのかもしれない…などと

お奨めです。   











ジーノの家・イタリア10景 内田洋子著 文藝春秋刊

2013-06-03 19:59:53 | 読書


仙川にて。シンクロナイズド鴨さんズ。
「お~い」
「お~い」
この二羽はのちにつがいになったでしょうか?

更新せずに1か月、ごめんなさい
些細なことが重なって、かなり落ち込んでいました。

時は春
脳細胞がただ萎縮するのにまかせてはいけない!?
英語以外の語学でもかじってみるか…
となればNHKの語学番組はお得かも。
そういえば娘がいつか言ってましたっけ
「海外に行くならイタリアでしょう!」
なに、彼女は映画「グラディエーター」がお気に入りだということです。
というわけでイタリア語のテキストを手に取り
番組は見たけれど、3週で早々に挫折し…

あ~あ~ とため息をつきつつテキストのページをめくっていたら
タイトルの『ジーノの家・イタリア10景』 内田洋子著 文藝春秋刊の
地味な広告が目に飛び込んできて…

早速手に入れて、第一話を読んでびっくりしました。
エッセイなんですがね、実に濃いんですよ。
そのまま小説といっていいほどなんです。
第二話、第三話とどんどん読みたいんだけれど
読後の余韻の波が大きくてそうはいかない。
一日に一話、それが限界。

それもそのはず
2011年の日本えっせいすとくらぶ賞、
講談社エッセイ賞を受賞している本だったんです。
世界遺産の、パスタの、マフィアの、陽気な…
それはイタリアのほんの一面なんだなぁ
内田さんの引き出しにはもっともっといろんなイタリアが詰まっているに違いない!
もっとのぞいてみたい!

と思っていたら続編が昨年10月に出ていました。
『ミラノの太陽、シチリアの月』
内田さんのお話はこちらから。

この本もさっそく読みます。




風の中のマリア 百田尚樹著 講談社刊

2011-09-29 21:35:00 | 読書


娘が夏休みに「これ絶対面白いから読んでみて!」と置いていきました。
わたしは百田尚樹は初めて。

なんだハチの話か…
オオスズメバチにはそう興味も無く
けれど読んでいくうちにぐんぐん引き込まれていきました。

働き蜂として生まれたマリアはハンターとして抜群のセンスを持ち
「疾風のマリア」と呼ばれるようになります。
一匹の女王蜂を中心に築かれる帝国の運命と
ハンターとしてのマリアの運命。
わずか30日の寿命のハンター、マリアは
子を産めないことや狩りに倒れる仲間のこと
みずからの寿命のことなどに疑問をいだきながらも
ただ一筋にハンターとしての使命を果たしていきます。

繰り返される殺戮
命をかけた毎日。
読んでいると
マリアと一緒に広い空を飛翔しているような気がしてきます。
スピード感にあふれ、眼下に野原や山が見えてくるのです。
そしてやがて獲物を発見し、殺るか殺られるかの戦い…
すべて妹たちを育てるため。

やがてあれほど隆盛を誇った帝国も終焉の時を迎えます。
それも想像を絶するものでした。
マリアは自分の命が尽きるときを悟ります。
思わず涙ぐんでしまいました。


DNAってなんでしょう?
遺伝子って?
本能って?

ほかの生き物を大殺戮しても自分たちの子孫を残す
自然界の掟…
人間はオオスズメバチとどこが、どう違うのか?
それとも…










諜報の天才 杉原千畝 白石仁章著 新潮選書

2011-09-04 16:19:48 | 読書


かなり固い本です。
それでも面白かった…

悲しいかな現代史に疎い私は
明治、大正、昭和と続く激動の時代のことは、頭が混乱するばかりです。
次々と起きる事件を年代順に並べることなどとてもできません。
たまたまこの本の書評が目にとまって手に取りました。

「命のビザ」で有名な杉原千畝氏ですが
この本では、外交官として凄腕であったことが見事に証明されています。
昨年でしたか、駐ロシア大使が日本に呼び戻されたことがありましたが、
この本を読んだ後では納得、です。
外交官の仕事とは何かがよくわかります。


「情報と英知を用いて未来を見通し、最善の道を模索する」
インテリジェンスオフィサー(本文より)杉原。
現役時代、ソヴィエトから入国を拒否されるという前代未聞の事態までおきます。

国益を第一に考えていた杉原。
内外に問題山積みの日本。
とにかく、新しい閣僚が決まりましたが
このうち何人がプロの仕事をしてくれるでしょうか?
はなはだ心もとなく感じています。





神去なあなあ日常 三浦しをん著 徳間書店刊

2011-01-13 19:25:07 | 読書


『神去なあなあ日常』は2009年5月発売。
2010年本屋大賞第4位。

成績はいまいち。
高校を卒業したら、とりあえずフリーターでもして
食っていこうと思っていた平野勇気は
先生と母親の作戦で三重県と奈良県の県境にある
神去村(かみさりむら)に
1年間の林業実習生として有無を言わせず送り込まれ…

脱走を試みたり
恋が芽生えたり
大自然に心を奪われたり
次第に村に溶け込んで、林業の方の腕も上げ
1年経った後も、神去村に居続けたいと思うようになる…

ストーリー自体は素直なもんです。
勇気もいい子。
この話の面白さはそんなところにあるのではありません。

圧倒的な大自然の中の山の生活や
百年単位でものごとが動く林業という仕事
都会には無い、生活と切り離せない宗教
神を畏れ敬う心
これがこの話の魅力です。

そしてヨキという名の男
もしかしたら作者は「平野勇気」よりも
ヨキ「飯田与喜」を書きたかったのかもしれません。

勇気の独白を本文から引用させていただきます。

 もし、ヨキが町で生まれていたら、山仕事を知らずに育ったら、どうなっていたんだろう。もちろんヨキは、どこに生まれていたとしても、楽しくたくましく生きていくと思う。でも、女遊びばっかりして、上司の目を盗んで要領よく仕事をさぼるタイプだったはずだ。
 天才的な山仕事の能力と適正と勘を兼ね備えたヨキ。そんなヨキが神去村に生まれ、山を愛する性格だったことを、奇跡のようだと僕は思う。
 神去の神様は、ヨキを選んだ。木を切り、山を手入れすることをヨキに許した。山と森とそこに生きるすべての動植物の命運を、ヨキに託した。
 
 ヨキは神去の神さまに愛されている。
 そんなふうに感じられるほど、千年杉を伐倒してみせたヨキは、神々しい輝きを放っていたんだ。


    

余韻の残るお話です。
ぜひ一度どうぞ。

夏の庭 The Friends

2010-08-10 20:22:28 | 読書


「夏の庭 The Friends」  湯本 香樹実 著 新潮文庫
いろいろ受賞していて、映画にもなりました。
平成4年に福武書店刊行、新潮文庫になったのは平成6年。
ちょうど子育て真っ最中で当時は絵本ばかりに目が行っていましたっけ。
今めぐり合えてよかった!
もうご存知かとも思ったのですが、
面白かったのでご紹介します。

小学校6年生の木山、山下、河辺の3人は
塾もサッカークラブもいっしょの3人組。
山下が疎遠だったいなかのおばあさんのお葬式に行ったことから
人の死について興味を抱いた3人は
もうすぐ死にそうなおじいさんの情報を得る。

死んだらどうなるんだろう?
それでおしまいなのかな、それとも…
第一発見者になって、死んだ人ってどんなふうだか見よう…
本人には絶対迷惑をかけないってことで…

ばれないようにと心がけてはいるものの
3人の見張りはすぐにおじいさんに感付かれ
短気な河辺がついに叫んでしまいます。
「ちっくしょう! じじい、よく聞け! オレたちはおまえを見張ってたんだよ!
 おまえが死にそうだっていうから、見張ってたんだ! 
 おまえがどんな死に方をするか、オレは絶対見てやるからな!」(本文のまま)

こそこそ隠れることがなくなって
おじいさんと3人組の距離はぐっと縮まり
洗濯、草取り、スイカ、家の修理、庭の種まきなど
おじいさんを見張っているのだか、おじいさんにこき使われているのだか!

それまでなんにもしないで
ただ少しの食品の買出しと、テレビを見ていただけのおじいさんは
みごとに「復活」した…みたいです。

花火師だったおじいさん
南方の戦地で戦ってきたおじいさん

おじいさんはもう「今にも死にそうな知らない人」ではなくて
サッカーの合宿であったいろんなことを聞いてもらいたい人になっていました。

そして、3人が合宿から帰ってくると…

警察やお葬式や、いろいろなシーンで、
親戚付き合いも全然していなかったおじいさんの死を
心底悲しんでいるのは3人組です。

自分の遺言を3人組に託したおじいさん…
おじいさんにとっても
このひと夏の子供たちとの「友情」は
忘れがたいものとなったにちがいありません。

語り手の「木山」の心の描写が、ていねいで、的確で
気持ちがいいです。
3人それぞれがよく書き分けられています。
笑い所も多く、テンポもよくて一気に読めます。 

夕立、スイカ、花火、合宿
夏が溢れていて、面白いですよ。  


きりきり舞い・諸田玲子 著・光文社 刊

2010-01-27 19:11:51 | 読書


年が明ければ十九、年増、嫁き遅れ、嫁かず後家…
小町娘と言われるほどの器量よしで踊りもうまい「舞」は
あの有名な十返舎一九の娘。

舞自身、数ある縁談に真面目に向き合ってこなかったけれど
常軌を逸した父親が話をぶち壊してきたのも一因。

それに引き換え、幼馴染の六歳年上のお栄は
あの器量で、家事もできず絵ばかり描いていて、嫁に行った。
もっとも、今は舞のとなりで寝ている。
夫婦喧嘩の末にころがりこんできたのだ。

お栄の父親は葛飾北斎。
引っ越し魔で、女房でさえ居場所をつかめない
変人奇人ぶりでは十返舎一九にひけはとらない…

そこへ十返舎一九の弟子と称して
今井尚武という怪しい侍までころがりこんできた。
この男に一九は舞を嫁にやるという。
もちろん舞にはとんでもない話なのだが…

舞が首尾よく嫁にいけるかどうか
一九と舞、北斎とお栄
常軌を逸した父親たちの娘への熱い思いは
やはり常軌を逸した形で表れる?

諸田さんの筆はなめらか。
村上豊さんの装画が楽しい。

       

フリーター家を買う 有川浩著 幻冬舎刊

2009-11-29 20:40:59 | 読書


二流大卒、入社三ヶ月で退社した「俺」武誠治が
母親の深刻な鬱病をきっかけに
自身を猛反省して就職し
並行して武家が再生していく物語。

すべりだしはいきなり鬱病とか
フリーターとか暗くて重いのですが…
有川浩さんらしいじつにテンポのいい作品。
予想を越える展開がどんどん繰り出され
で、次は? 
それから? と
一気に読んでしまいます。

誠治の就職に関しては
こんなにうまくいくものか?
と疑問を持つ人もいるかもしれませんが
今現在、就活中のかたには
いいヒントになるのではないかと思いました。
身内にも似たような就職をしているものがいます。

誠治の姉の亜矢子が秀逸。
こんなふうにみごとな啖呵がきれたら良いなと思います。

道路工事のバイト先のおっさんたちも
存在感はとても大きくて
誠治に親身なアドバイスをしてくれます。

有川浩らしく
不器用な恋人たちのエピソードでも
気をもませます。

(フリーターに家など本当に買えますか?)
と、タイトルに乗せられて買った本ですが
なるほど、こうやって買うのね! と
最後に納得。

「鬱病」のことなど書かれていますので
面白いというのは憚られますが
お勧めです。
        

赤めだか 立川談春著 扶桑社刊

2009-07-04 21:39:59 | 読書


立川流落語家 立川談春が
自身の入門のいきさつから真打になるまでの修行時代を振り返ったもの。
平成20年度の第24回講談社エッセイ賞を受賞しました。

談春本人が主人公なのはあたりまえですが
この本にはもうひとり主人公がいます。
師匠の立川談志。

中学卒業間近に上野鈴本で初めてその毒舌に驚き
高校で初めて聞いた談志の落語「芝浜」にショックを受ける。
で、卒業を待たずに入門するのですが
入門してからは「談志」にイエモトというルビがつきます。

落語協会を飛び出した談志が
その後どのように弟子を育てていたのか
まったく知りませんでしたが
この本は「談志語録」で埋めつくされているといってもいいでしょう。

「談志」に惚れて入門した談春
イエモトの一言一句、一挙手一投足が
身体に染み付いているに違いありません。

預かった坊やを一人前にしようとイエモトも必死なのでしょう。
時には爆笑、時には涙
甘えの入る余地の無い、師匠と弟子の真剣勝負…

談志の語る芸道修行の極意は人生修行に通じます。
談春のイエモトへの熱い思いにあふれた一冊

一読をおすすめします。

告白 湊かなえ著 双葉社刊

2009-05-12 20:55:36 | 読書


2009年本屋大賞第1位の『告白』を読みました。
著者は湊かなえさん、双葉社刊です。

六つの章からなっていて
語る人はそれぞれ違っているけれどすべてモノローグ。
そのうちの第一章「聖職者」が
第29回小説推理新人賞を受賞しています。
二~六章はその続き、長編のミステリーになりました。

お話は面白いです。
中学校の女性教師が、3学期が終わる日にホームルームで
彼女の4歳だった娘が学校のプールで「殺された」
犯人はこのクラスの生徒… と発表。
話が進むにつれ、クラスの全員に、だれが犯人なのかが分かってきます。

あっという間に読了。
何回ものどんでんがえし
四つの殺人事件に別々の四人の犯人…
(四件目は誇らしげにほのめかしている段階ですが)
五件目は自殺と言う形になるのか?
それとも新たな…
最後まで予断を許さない展開です。
     

でも… う~ん
このお話はありえない、と思いました。
第一章の女性教師のホームルームでの話を聞いた生徒たちが
誰一人として
それについて一切外部にもらさないということがあるでしょうか

いやいや、読み始めたら
そんなことを考えるヒマはないでしょう。
どうぞお楽しみください