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風のぱれっと  (ぱれっとパート2)

きれいな色をのせてみよう
受験生の母 かけだし川柳 父と母のこと 読書 など

女神記 桐野夏生作 角川書店刊

2009-02-15 20:36:18 | 読書


『女神記』 サブタイトルに『新・世界の神話』とあります。
カバー絵は、加山又造作『花明り』(部分)


桐野夏生さんは、どうも心穏やかに読めないし
しかもこのカバー絵では内容が思いやられる…
恐る恐る読み始めたのですが、なんのなんの
 いにしえの南の島の人々の信仰や生活 
不思議な力で私をグイグイと物語に引き込んでいったのです。

一つ違いの姉妹、カミクゥとナミマ、陽と陰の対の巫女
島の掟、自分の運命を受け入れられないナミマは
禁を犯して島を抜けます。
しかし彼女は娘、やよい(夜宵)を産み落としてまもなく
訳のわからぬまま愛する夫、マヒトの手にかかって亡くなり
黄泉の国へやってくるのです。

そこはイザナミ様の国
イザナキの命に裏切られたイザナミの命の恨みつらみは尋常ではありません。
お二人は、別れのときに売り言葉に買い言葉で仰ったお互いの言葉に
その後何百年、いや千年もの間縛られ続けていくのです。
イザナミの命は1日に千人の命を奪い
イザナキの命は1日に千五百人の命を与える…

ナミマは、何故自分がマヒトによって殺されたのか
その後マヒトと夜宵がどうなったのか知りたくて
ついにスズメバチの姿を借り、故郷の島へ。

しかしそこで知った事件の真相は
ナミマにとって許しがたいものでした…

一方、大昔にイザナミの逆鱗に触れてしまったイザナキの命が
ついに気がつくときが来ました。
忠実な可愛がっていた従者と引き換えに
不老不死の肉体を脱ぎ捨てて人間になったのです。

不思議な縁に導かれて命が向かったのは
あのカミクゥとナミマの島。

明日は上陸という夜、命たちの舟の前に
身投げをしたものがいました。
なんと大巫女のカミクゥが石を抱いて飛び込んだのです。
カミクゥの遺体が遺志に反して上がってしまったので
夜宵の運命が急転回しました。

毒を仰いで自死することを求められた夜宵
おびえる夜宵とイザナキの脱出行…

しかしイザナキの命が夜宵を娶れば
夜宵はイザナミの命に生命を奪われてしまいます。
イザナキの命はイザナミの命に会いに行くことを決心します。
大昔にただ一度そうしたように…

生と死、男と女、恨みや怒り…
淀んだやりきれない空気の中で
カミクゥの心が救いです。
いつもナミマに優しかったカミクゥ
夜宵の殉死を避けたいと願っていたカミクゥ
夜宵はその後どうなったのでしょうか?

『古事記』の世界と『島』の世界がなんとも自然に絡み合って
惹きこまれてしまいました。
スリルとサスペンス、スピード感にあふれた新しい神話。
決してかび臭くありません。
『古事記』の内容をご存じでなくても大丈夫。
物語の中で稗田阿礼が語ってくれます。
面白いです。お奨めです。

    


ハリーポッターと死の秘宝

2009-01-19 20:20:46 | 読書


ご存知ハリーポッターの最終巻です。
J.K.ローリング著 松岡佑子訳 静山社刊。

17歳になったハリーは家を出て その瞬間
それまでハリーの身を護ってくれた母親の呪文は力を失ってしまいます。
そればかりか、魔法省もヴォルデモ―トの支配下に!

はたしてハリーは闇の帝王の野望を阻止できるのか?
生き残るのはハリーか? ヴォルデモ―トか?

第1巻からずっと読み続けてきて
はらはらどきどき 面白くて
魔法界の常識には脳みそをかき回されどうしでした。

ところが最終巻を読みすすむうちに
(これは表向きはハリーの物語ではあるけれど、
 どうしてどうして スネイプの愛の物語ではないの!)
と 気がついたのでした。

いつもハリーを嫌って、不当に厳しかったスネイプ
実はヴォルデモ―トの配下ではないかという疑いさえあったスネイプ
ハリーの父親のグループに敵意を抱いていたスネイプ

そのスネイプの
生半可ではない
そんじょそこらにはない
命を懸けた、壮大で深い愛の物語…
ローリングさんらしく、ひとひねりもふたひねりもある…

そう思ったら
ダンブルドアがスネイプに寄せる絶対的な信頼も
腑に落ちたのです。

ハリーポッターシリーズはスネイプが面白い 

阪急電車 有川 浩著 幻冬舎刊

2008-12-02 11:20:47 | 読書


有川浩さんの本はこれが初めて。
あっという間に引き込まれて読み終えてしまいました。

関西の私鉄、阪急今津線を舞台にした連作で
乗ったり降りたり次々と主役が入れ替わって
けれどもず~っと繋がっている…

この本、『いい女』のお話、です。
美人とかSEXYとかではなくて、いい女。

めちゃくちゃお酒に強いユキ
純白のドレスと最高のメイクで
恋人を寝取った女の結婚式に出席した翔子
決して孫に甘くない時恵
DVに苦しんでいるミサ
バカだけど優しい彼氏のいるえっちゃん
初心な美穂
価値観の違う仲間との付き合いに疲れた康江
誇り高い小学生のショウコ

わたしのお気に入りはミサと翔子。
時恵の孫娘の亜美が物語の進行にうまく絡んで唸らされます。

笑いたい人、泣きたい人
人情の機微を味わいたい人
いい女に遭いたい人はどうぞ、お奨めです。 

シクスティーズの日々 久田恵著 朝日新聞出版刊

2008-11-05 21:02:13 | 読書



左が単行本、右が文庫本です。
2002年7月から1年間
朝日新聞に掲載されていたコラムをまとめて加筆したもの。
副題に『それぞれの定年後』とあります。

作者は1990年『フィリッピーナを愛した男たち』で
第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

決して遠くない60歳
つれあいのこと、息子のこと、母のこと
経済的なこと、健康の問題…
いつ爆発するかもしれない火種を抱えております。
普段は「なかったこと」にしてあります。
そうしないと身がもたないので…

目次をさっと眺めてみましょう。
    あっ、いたんだ、一番近くにこの人が
    もうママをあてにしないで
    家に帰らねばならないだろうか?
    お願い、あなたはひとりで先に逝って
    メッシーくんの快楽に目覚めてしまったから
    母の長生きのおかげで間に合った
                       などなど…

普通の60代男女44人が
この年代だからこそ向き合うことになった様々な問題
例えば、夫婦、親子、介護、エトセトラと
どうかかわって、何を思ったかを聴き取ったルポです。

読んだからといって
自分の抱えている問題がめでたく解決するというわけにはいきませんが
同胞の奮闘ぶりを知ることで
これからの人生に立ち向かう元気が出てきます。


仏果を得ず 三浦しをん著 双葉社刊

2008-08-12 20:56:47 | 読書


 「風が強く吹いている」 の三浦しをんさんの本です。
伝統芸能の太夫さんたちが芸を磨き、成長していく話。
演じているのは人形なのに、生身の俳優さんが舞台に立っていると思う
『文楽』って不思議…

はずかしながら文楽についてはほとんど知らないので
読もうかどうかちょっと迷っていました。
各章の名前もすべて文楽の演目の名前になっていますし…

心配は無用でした。
三浦しをんワールドを存分に楽しめます。

主人公は世襲なんぞとはまるで縁の無い30歳の健太夫。
いろいろ訳あってラブホテルを住まいにしている浄瑠璃語りです。
師匠は人間国宝銀太夫。
もう70歳の円熟期ながら、実に奔放にふるまうので
健をはじめまわりがオタオタふりまわされてばかり!
健の相方は兎一郎、いわくありげにして超一流の腕の持ち主。

一つ一つの公演をやりとげることで
一段また一段と芸のステップを上がっていく健。

浄瑠璃には今の時代では!?がつくような話がいくつもあって
例えば自分の息子の首を討って主君に差し出したり…
そういうところに健は私たち同様毎回ひっかかるのです。
文楽では若い人が次々育っているんだなぁと感心した次第です。

タイトルの「仏果を得ず」
仏果を得て成仏するらしいのですが
それを拒否した勘平の死に様については
最終章の「仮名手本忠臣蔵」をどうぞごらん下さい。

胃が痛い

2008-04-25 19:01:29 | 読書


散歩道のシバザクラです。

おかげさまで、娘は先輩や同級生に恵まれて
無事新生活のスタートを切ることができたようです。
ちょっと一安心 ホッ…

ところが、娘の受験で1年間抑えていたのでしょう。
長年の息子とつれあいの確執?が再燃

胃が痛い毎日 

時の旅人 アリソン・アトリー著 岩波少年文庫

2008-03-06 21:37:26 | 読書


アリソン・アトリーの『時の旅人』
読書好きの娘が「一番好き」と言いました。
もともとは私の母が娘に薦めたのです。

ちょっと健康を害した少女ペネロピーが
母方のおばさんの住む荘園サッカーズですごすうちに
16世紀のサッカーズと現在とを行き来する物語。

ご先祖さまとその時代に出会い、
その人たちとともに喜び、悩み、
次第に過去の人たちを愛するようになります。

とにかく作者が少女時代をすごしたところが舞台になっているだけあって
自然や農場のくらしの描写が豊かです。
物語の展開が気になって先へ先へと気持ちが焦るのですが
そこをちょっと抑えて落ち着いて読んでいくと
まさに自分がサッカーズにいて
ペネロピーといっしょに呼吸しているような感覚。

サッカーズで何百年という時を流れてきたグラント川…
過去の人たちの命をかけた企てと
その結末を知っているペネロピーの苦悩…
ペネロピーに捧げられた愛の歌『グリーンスリーブス』
忘れられない歌になりました。

決して『子供向き』だけの本ではありません。
深い余韻の残る本です。
傑作です 






龍の棲む家 玄侑宗久著 文芸春秋刊

2008-01-17 18:50:43 | 読書

『龍の棲む家』
作者の玄侑宗久さんは『中陰の花』で第125回芥川賞を受賞した臨済宗のお坊さんです。

妻を亡くした兄の哲也と離婚したばかりの弟の幹夫
二人の父親がボケてしまった。
母親もすでにいない。

話の発端は暗くて
この先えんえんとこの調子が続くのかと不安になりましたが
佳代子という介護のプロの登場によって雰囲気が変わります。
(彼女も離婚していて仕事にもつまずいているのですが…)

それぞれが家族の団欒という『珠』を探して悩んでいるのです。
父親が認知症になったことで
家族が崩壊してしまうのではなく
反対に新しい関係を紡ぎだしていった
未来に希望のもてる展開になります。

認知症の方が巻き起こすいろいろな問題に、どう対応したらいいか?
佳代子さんにいろいろ教えてもらいました。
徘徊したときには…
財布を盗んだと思われたら…

よく『人が変わってしまう』という言葉を聞きますが
そんなことはありえないという気持ちになりました。

認知症の方にたいしてだけではなく
誰にでもその心に寄り添っていけたら素敵だと思いました。

もっとも、昼夜逆転してしまっても落ち着いていられるかどうか
自信はありませんが… 
この本を思い出すようにしたいと思います。
                          

風が強く吹いている 三浦しをん著 新潮社刊

2007-12-17 22:38:39 | 読書


Lemon-Jamは連日の忘年会でダウン寸前!
再起不能! 
な~んて声が聞こえてくるので
それが現実になる前に更新しておきましょう…

で?
そうです、この表紙はいま評判のイラストレーター 山口晃 さんのもの。
一度ゆっくり作品を拝見したいという思いは
いつになったら叶うのか! ああ!

装丁のことはさておき、今日のところは本の中身のおはなし。
三浦しをんが直木賞受賞後に発表した作品です。
企みの張本人清瀬灰ニ(ハイジ)が捜し求めていた走りを体現する蔵原走。
いわくありげなこの二人以外はシロートばかりの10人が
箱根駅伝出場をめざすというが…

ほんとに出られるの?
ムリムリ…

ハイジがどうやってみんなをその気にさせるか
力をつけさせていくかが面白い。

私には「走る」感覚はわからないけれど
そのあたりのことも具体的に書かれていて
自分もいっしょに走っているかのようです。

いわゆるスポコンものではありません。
教訓めいてもいません。
面白くて一気に読んでしまいました。
オススメです。             


夜は短し歩けよ乙女

2007-07-08 21:15:02 | 読書

「夜は短し歩けよ乙女」は 森見登美彦 著 角川書店 刊。
先日、第137回直木賞にノミネートされました。

矛盾するようですが、
リアリティが充分あるなかで、なんとも奇想天外なお話が展開いたします。
とにかく痛快  楽しい 

「おともだちパンチ」をご存知でしょうか?
「電気ブラン」というカクテルは?
はたまた「偽電気ブラン」は?
「潤肺露」(ジュンパイロ)という風邪薬は

「先輩」が「彼女」(一目ぼれしたクラブの後輩)の外堀をどのようにして埋めたか…
「先輩」の1年間の奮闘ぶりを
二人がかわるがわる語っていきます。

主役はあくまでも「彼女」
ただし本人はいっさいそのことに気がついていない…
「先輩」はいつも「路傍の石ころ」なのです。なむなむ…

二人はいつも大真面目なのに
独特の文体が予期せぬ爆笑を誘います。
二人以外の登場人物?のあまりに非日常的なことといったら
いつのまにやら、自然体の「彼女」に好感を持ち、
なかなか報われない「先輩」を応援したくなるから不思議  

「夜は短し歩けよ乙女」
「深海魚たち」
「御都合主義者かく語りき」
「魔風邪恋風邪」 の4章。

この本のオモチロサは尋常ではありません。