LHFトーク"GONDLA"

LHFの二人のだらだらトーク。

ゆれる陽炎

2008年11月10日 | 過去の記事
「そうか、西武が勝ったか」
 黒縁メガネの男はそう言うと、静かに電話を切った。
「残念だったな、越智君」
 黒縁メガネの男はそう呟くと、その黒縁のメガネを外しハンカチで丁寧に拭き始めた。
 駅前のハンバーガー屋に座る彼からは、レジの店員が見える。まだ幼さを秘めたその顔で、彼女は無料の笑顔を振りまいている。注文したメロンソーダは氷が溶けて薄くなっていた。まるで自分のようだ、と彼は思った。自分に溶けた冷たさは、自分のその味を奪っていった。もうすでにそれは水に近い。あるのは微かな違和感のみ。
 携帯電話が振るえ、着信を知らす。
「私だ。ああ、優勝おめでとう。早速準備にとりかかる。12時にあそこで待ってる」
 黒縁メガネの男は電話を切ると、大きく息を吐きながら、静かに呟いた。
「やっとすべてが終わるぞ……ボカチカ」
 レジに目をやった。店員は無料の笑顔を振りまいている。