彼と知り合ったのはつい1時間前だった。
きっかけはなんてことはない。
彼が僕に話しかけて来たのだ。
それから1時間、駅のホームにあるベンチで、彼は一方的に話し続けていた。
最初は天気の話だっただろうか、それから彼は色々な話をした。
サッカーの日本代表の話、政治の話、好きなお菓子の話。
僕も人の話を聞くのは嫌いじゃないので苦にはならなかった。
彼がひたすら話し、僕がひたすら聞く。
それはピッチャーとキャッチャーの関係のようだった。
それでもボールは投げ返されることはない。
おそらく僕が本当にキャッチャーだったら、周りにおびただしい数のボールが転がっていただろう。
話というものが実体の無いものでよかったと心から思う。
ふと、彼が電車の話をした。
僕の乗る電車を知りたいらしかった。
僕の電車はまだ来ない。
しかし僕は嘘をついた。
あと10分で電車が来てしまう、僕はそれに乗らなくてはならない、と。
彼はとても悲しそうな顔をした。
一人だけ迎えの来ない幼稚園児のような顔だった。
そして彼は言った。
自分は生きた人間ではないのだと。
すでに体は存在していなくて、俗に言う幽霊のようなものなのだと。
僕は少々驚いた。
しかしそれは彼が幽霊だったからではない。
彼がそのことを自分から話したことにだ。
残念ながら僕は会った時から彼がすでに死んだ人間であることに気づいていた。
気づいていて彼の話を聞いていたのだ。
おそらく彼には話したい話がたくさんあるだろうと思った。
そして僕はそれを聞くことにしたのだった。
そしてそれでも僕はそれを知らなかったかのように振る舞った。
そして彼に向けて微笑んだ。
彼もとても嬉しそうに微笑んだ。
実は僕が彼に優しく接するのには理由があった。
僕は彼の寂しさがよく分かるのだ。
なぜなら、
僕もすでに死んだ人間だからだ。
きっかけはなんてことはない。
彼が僕に話しかけて来たのだ。
それから1時間、駅のホームにあるベンチで、彼は一方的に話し続けていた。
最初は天気の話だっただろうか、それから彼は色々な話をした。
サッカーの日本代表の話、政治の話、好きなお菓子の話。
僕も人の話を聞くのは嫌いじゃないので苦にはならなかった。
彼がひたすら話し、僕がひたすら聞く。
それはピッチャーとキャッチャーの関係のようだった。
それでもボールは投げ返されることはない。
おそらく僕が本当にキャッチャーだったら、周りにおびただしい数のボールが転がっていただろう。
話というものが実体の無いものでよかったと心から思う。
ふと、彼が電車の話をした。
僕の乗る電車を知りたいらしかった。
僕の電車はまだ来ない。
しかし僕は嘘をついた。
あと10分で電車が来てしまう、僕はそれに乗らなくてはならない、と。
彼はとても悲しそうな顔をした。
一人だけ迎えの来ない幼稚園児のような顔だった。
そして彼は言った。
自分は生きた人間ではないのだと。
すでに体は存在していなくて、俗に言う幽霊のようなものなのだと。
僕は少々驚いた。
しかしそれは彼が幽霊だったからではない。
彼がそのことを自分から話したことにだ。
残念ながら僕は会った時から彼がすでに死んだ人間であることに気づいていた。
気づいていて彼の話を聞いていたのだ。
おそらく彼には話したい話がたくさんあるだろうと思った。
そして僕はそれを聞くことにしたのだった。
そしてそれでも僕はそれを知らなかったかのように振る舞った。
そして彼に向けて微笑んだ。
彼もとても嬉しそうに微笑んだ。
実は僕が彼に優しく接するのには理由があった。
僕は彼の寂しさがよく分かるのだ。
なぜなら、
僕もすでに死んだ人間だからだ。