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仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

あってはならないこともある5

2010年06月24日 13時43分10秒 | Weblog
「ふー。」
東名は渋滞もなく、快調に走れた。
「なんか久しぶりだな。東名、走るの。」
「そう。」
「ヒデオさんと伊豆の現場に行ったとき・・・・。」
「ヒカル、偉いよな。肉体労働はちょっと想像できないもんなあ。」
「マサルだって、農場やってるじゃん。」
「ひえー、ヒデオさんやヒカルの仕事に比べたら・・・。」
ヒカルは車窓の先を見ていた。
「車で走るのって、いいよね。」
「今日は渋滞してないしね。」
「それもあるけど、自分で移動してるって感じがするよ。」
「運転してるのは僕ですけど。」
「もう。仕方ないだろ。」
「ヒカル。俺もあんまり、人と付き合うのとくいじゃないから、「ベース」って・・・、「ベース」で居場所ができたような気がするんだ。金もさあ、オヤジが親としてメンツで出してるみたいなところもあって、だから、みんなで世田谷に売りに行ったときの金とは違うって、そんな気がしてきた。」
「ミサキが、働くことを教えてくれたような感じなんだよ。最初は死ぬかと思ったけど・・・。でも、今回、ミサキの家に行って、なんか圧倒さえちゃって。」
「だからさ、金の意味が違うんだよ。」
「て、言うか。どうして、ミサキはあんな暮らしができたんだろ。ほんとうにあんな貧乏暮らしを・・。」
「ヒカルだってできたじゃん。肉体労働が、さ。だから違うんだよ。ミサキと二人でいるってことがさ。今だから言うけど、初めて、駒場のアパートでミサキを見たとき、ドキドキしたよ。」
「なんだってえ。」
ヒカルが大げさに反応した。
「ミサキと、どうにかなりたいって・・・・。でも、それがキッカケでハルやマーと会えたんだ。」
「はは、なんか、不思議だね。」
「何が。」
「皆で一つになったことがさ、誰とかさ、何者とか言うのじゃなくて、一つになれたことがさ。もし、マサルとミサキが二人きりで、どうにかなっていたら、今、ここにはいないもんね。」
「はは、そうだな。」
 しばらく、言葉がなかった。ベンベーみたいにスピードのでない宣伝カーがちょうど良かった。のんびりと時間が過ぎた。
「どうして「ベース」に行ったのかなって、どうしてって、思ったときがあったよ。スペイン坂の「ベース」で刺されたし、親には、チンピラにやられたって、言ったけど、どこのチンピラだってうるさかったけど、結局、そこまでで。

また、「ベース」に行ってた。

ヒカルをどうして誘ったか。ほんとのことを言うとわからないよ。でも、最近、「ベース」に入り浸るようになって、参加するようになって、キヨミさんが新しい仁を生んで、なんとなく、そこに行くことが、自分の理解とはちがうところで決まっていたような気がするんだ。
 キヨミさんとはずっと一緒だった。小さいときにうちに来て、ずっと、面倒をみてくれた。だから、仁と、仁さんと消えたとき、すごいショックだった。
 セクスに意味があるなんて思ったことはなかった。小さい頃からキヨミさんと遊んでたから。
 でも、キヨミさんが仁と戻って、新しい仁が生まれて、なんか、生まれるんだって。人は生まれてくるんだって、思ったんだよ。あんなふうなセクスを経験したから、キヨミさんが言っていた全ての男が父親で、全ての女が母親だった世界を、頭じゃなくて、肌の感覚でわかったような気がしたんだ。そして、それを受け入れられる奴らが、今の「ベース」に集まってきたんじゃないかって・・・・。」
「マサル。」
「ミサキも言ってただろ、また、「ベース」に戻れるって。」
「うん。」
「ヒカルもおなじ感覚の人間だと思うんだ。だから、待ってる。たぶん、みんな、待ってる。ミサキも、ヒカルも「ベース」に戻ってくるって。」
「マサル。」
ヒカルの声が震えた。

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