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「八日目の蝉」 角田光代 凄く引き込まれて一気読み

2007-04-22 | 小説・漫画他

「八日目の蝉」角田光代 中央公論新社 (2007/03)
蝉は、7年土の中にいて、やっと外に出られても7日で死んでしまう・・。
その蝉と、この小説の登場人物の人生を、かぶらせて描く20数年間のお話。(まずは、その着目点が凄い・・)

私の大好きな角田光代さんの初の長編サスペンス?(新聞に連続掲載されていた作品)ということで、読んでみました。
実は、このところ、本を借りて来ても、気分がのらなくて、少し読んだものの全部読まずに返却してしまう・・って事が多くて、どうも読書意欲が湧かなかったのですが、この本の1頁目を読んで、ん?面白そう・・・、3頁、もう読まずにはおられん!どうなるんだ?!と、グイグイ引き込まれてしまい、ハマって一気に読んでしまいました。そういう魅力のある小説でした。

(内容・あらすじ)季和子は、既婚男性と不倫交際中に出来た赤ちゃんを、男からの頼みにより、やむを得なく堕したというのに、その直後、男の妻は平然と赤ちゃんを出産した・・・。季和子は、堕胎手術が原因で、子宮内癒着という状態になり、「あのとき子供を殺してしまったから罰が当たってしまった。もう子供を産めない体になってしまった」と思い込んでしまう(剥離手術を受ければ妊娠出来る可能性はあると医師に言われたのに)
その後、季和子は、その夫婦の赤ちゃんを誘拐し、転々と逃げまわる。やってはいけない犯罪ではあるものの、季和子の、その赤ちゃんへの全てをなげうってまで、命をかけて守る!、自分が育てる!という強い気持ちと深い母性愛?には、つい同情してしまい、逃げ通してくれ!!捕まらなければ良いのに!と、ハラハラドキドキしてしまった・・・(T_T)。このあたり、映画「顔」藤山直美主演を思い出しました。そして2章では 別の視点での物語が語られてゆく。

★以下ネタバレ 文字反転して下さい★
私は、犯罪人だと知りながらも、つい季和子に感情移入してしまい、妻(実母)には、なんだか嫌悪感が・・・。事件のあった直前、自分も浮気してたなんて@@、尚更幻滅というか・・・。だいたい、この男(薫の父親であり、季和子の不倫相手)のだらしなさには、うんざりする。哀しいことに、何故か薫が、大人になって自分も不倫にはまって、未婚の母になっていく・・・というのが、何とも言えずに、辛かったです。この岸田さんって男も、だらしない男!あ~あ!出て来る男2人が両方しょうもない男なんですよねぇ! 
でも、ラスト良かったです。薫(恵理菜)が、憎んでいた誘拐犯の3才までの育ての母も、そして産みの母も、両方まったく等しく母親であったと認めるところ。(334~336頁)、そして自分のこれから産まれて来る赤ちゃんをみんなで育てて行こうと思ってるところ、前向きだわー。実際そうなれるかどうかは解らないけれど、そういう処に行きつくことが出来て良かったな!って素直に思えたし・・・。
以上

昔の角田さんの小説には、宙ぶらりんなまま終わってしまう作品も結構あったと思うのだけれど、最近の作品は、前向きな部分を匂わせて〆ている処が、なんとも読んだ後味が良くて好きです!

途中の部分は、閉鎖的な宗教団体の内側など、以前読んだ「オ●ム」の教団の生活ぶりや洗脳スタディを思い出させられました。幼い頃に、そういう処に自分の意志とは無関係に入れられ、育てられた子が、一番可愛そうだ・・・と、本当に辛かったです。


小説の中の「蝉」への思い部分の変化
最初は「ずうっと土の中にいたのに、生まれてそれっぽっちで死んじゃうなんてあんまりだって、子供の頃、思ったことがあるんだよね」(うるさい位、蝉が鳴いていた夏の渦中の頃)と、言っていたのが、こう変わって行きます
   ↓
「でもね、大人になってからこう思う様になった。ほかのどの蝉も7日で死んじゃうんだったら、べつにかなしくないかって。だってみんな同じだもん。なんでこんなに早く死ななきゃいけないんだって疑うこともないじゃない。でも7日で死ななかった蝉がいたとしたら、自分だけ生き残っちゃったら、その方が悲しいよね」(もう蝉の盛りは過ぎて、夏の終わり)264頁
   ↓
「7日で死ぬよりも、八日目に生き残った蝉の方がかなしいって言ったよね・・・それは違うかもね、八日目の蝉は、他の蝉がが見られなかったものを見れるんだから、見たくないって思うかもしれないけれど、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどにひどいものばかりでもないと思う・・・ ★ちょっとネタバレ★あの女野々宮季和子も、今この瞬間どこかで、八日目の先を生きているんだと唐突に思う。 私や、父や母が懸命にそうしているように。」(もう寒い時期で蝉はいない)以上 320頁 


この、自分のおける状況の推移によって変わっていく、蝉への思いの表現、凄いな~って思いました☆ やっぱり角田さんは、すごいなー!!って思わせられる小説でした。これは女性向けの小説かな・・・。


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角田光代さんの小説色々感想まとめ
「薄闇シルエット」凄く共感、良かった 角田光代
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22 コメント

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Unknown (藍色)
2007-04-23 01:15:59
latifaさん、こんばんは。
引き込まれましたよね。
前半、赤ん坊を連れて逃げる希和子の、
母親になりたい痛い気持ちがリアルに伝わってきました。
読んでいて捕まらないかハラハラでした。
そして後半の「薫」の行動も胸に迫りました。
前向きに変われてよかった。
愛情を知ったので、大丈夫って応援したくなりました。
タイトルの意味がすごく深かったですね。
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藍色さん☆ (latifa)
2007-04-23 14:22:11
藍色さん、こんにちは!
普段あまりサスペンスものとか、推理ものとか読まない方なのですが、これは、ハマりました。
女性登場人物らの心理描写が、凄かったですよね。

藍色さんのレビューでも、捕まっちゃわないか、ハラハラした・・・って書かれていて、同じ!って嬉しくなりました。悪いことやってる人なのだけれど、つい、捕まらないで逃げ通して、って願ってしまいました・・。
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こんばんは! (エビノート)
2007-05-16 20:00:13
私も同じです。
犯罪だってわかってるんだけど、逃げとおしてほしいと思っちゃうんですよね。
季和子の強い思いに感情移入せずにはいられませんでした。
薫視点の物語も良かったです。
蝉への思いの変化、前向きな終わり方に希望が見えました。
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エビノートさん☆ (latifa)
2007-05-17 08:40:45
エビノートさん、こんにちは!
ほんとにね・・・。
犯罪者で、かつ、本当の産みの母じゃなくても、
あんなに強い愛情を注ぎ込む彼女に、つい
肩入れしてしまいました。
最近もnewsなどで、実の子を虐待とか、殺人とか・・そういうのを聞くと、辛くなります。
返信する
予約しました (牧場主)
2007-05-26 18:37:11
少し前、さあ、角田光代フェアに入ろうと思ったんです。
その時、しをんさんと角田さんが対談をなさっていたんです。
風呂に入らないことを威張るしをんさんに、角田さんが言うことには、
「恋愛初期はむしろ積極的に入らないな」
あなた、それは、風呂に入らんでも私は結婚できたっていう慰め?先輩なら、いや、風呂くらい入ろうよ、恋愛に対しても物陰カフェやってそうだけど、負け犬街道、飽きたら、結婚してみたら?割と面白いし、作家として、引き出しが増えるかもよ?だから、まず風呂入ろうよ、結婚しなくてもいいから、風呂、入ろうよ、弟さんが泣いてるよ?
くらい言って欲しかったので、フェア中止になりました。
でも今日「八日目の蝉」お勧めみたいだから、図書館で予約しました。
多分、3ヶ月後にフェア再開です
風呂、何がいかんのでしょう
作家としての資質が泡と共に流れるとでも?
返信する
牧場主さん☆ (latifa)
2007-05-26 19:05:55
こんばんは~牧場主さん
あっ!結婚後に、しをんさんと、角田さん対談していたんですねー。私も読みたかったな!!
私が以前この2人の対談を読んだ時は、確か、まだ、角田さんが結婚される前だったんです。

>風呂に入らないことを威張るしをんさんに、角田さんが言うことには、「恋愛初期はむしろ積極的に入らないな」
 って、角田さんが、言ったんですね?^^
そういえば、角田さんの小説に、何日も風呂に入らず臭い匂いを発する女性にうんざりしてる男性が出て来る話がありました(確か、「太陽と毒ぐも」って小説だったと思いますが・・・ちょっとさだかじゃなくてスイマセン)。
他の小説でも、やっぱり、ズボラで風呂に入るのが面倒、なになにするのが面倒、、、って人が結構出て来ます☆
なので、私としては、なんとなく、角田さんが、その発言したというのは、納得・・という気もしないでもないです。

私は、しをんさんも、角田さんも両方好きなのですが、男に対しての考え方が、2人では全然違う気がするんです。
角田さんは、恋人がいないという状態が耐えられない人らしいんです。確か、、物心ついてから、彼がいなかった時期って3ヶ月くらいしかなかったとか・・?
とにかく、誰でもいいから(というのは表現悪いですが、レベルを出来るだけ甘くして、許容範囲を広げるというか)恋人にする・・みたいな事を言ってました。
かたや、しをんさんは、理想がかなり高そうだし、男っけが無いというか(男っけない処を強調してる)人という印象です。

八日目の蝉、牧場主さんの感想、楽しみにしています☆
私は、個人的に、角田さんは、身近なこと(家族内のこと、友達のこと)を描くのが、すごく上手だと思います。
私が面白かった作品は、対岸の彼女、薄闇シルエット、この本が存在することに、presents 等かな
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風呂入って欲しい (牧場主)
2007-05-27 10:49:59
角田さんは人気で、なかなか図書館にないんですよね。
私は勝手に疲れた女の為のサプリ小説の匂いがキャッチコピーから漂っているな、と思ったんですね。
だから、今まで、手に取らなかったんだと思いますが、食わず嫌いはいけませんもんね。
「対岸の彼女」は借りられたので、そのうちまたお邪魔しますね。
「春太の毎日」は借りました。
編集者から、「最後の恋、というテーマでひとつよろしく」といわれてこれかい!どうせ、ヴィゴとかオダジョーで頭が一杯で、苦し紛れにこの娘は・・・!!猫に逃げんな!(勝手に産んだような気がしている)とこめかみを拳固でグリグリしたくなるほど面白かったです。
「世間の注目も、原稿の注文も(恋愛)のことばかり、やれやれ、勝手にしやがれ、なら、とことん書いてみようじゃないの」というコピーのしをんさんの新刊「きみはポラリス」(・・・)も予約しました。
ああ、もう、読むのが一杯で・・・
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牧場主さん☆ (latifa)
2007-05-27 13:00:17
そうですか、図書館に無いっていうのは、貸し出し中って事かな?
疲れた女のためのサプリ小説、そういう印象だったんですね?いや、、、むしろ、角田さんの小説は体調良い時読まないと、結構キツイ内容というか・・・痛いというか・・毒が結構ある小説だと私は思っています。そういう部分が読んでいて、グサッと来るけど、クセになるというか、角田さんらしさ?だと勝手に私は思っているし、好きな理由の一つです。
彼女の小説によくある、平和そうな家族の中に潜んでいる毒みたいなのが、凄く上手だと思います。

春太の毎日、お読みになられたんですねー!
面白くて良かったです!
これが、私の初しをんさん作品だったんです☆

しをんさんの新刊、私も楽しみです。
まだ家のもよりの図書館では、購入してくれてないみたいです。新刊を買ってくれるの、少し遅いんです
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やっと読んだわ (みみこ)
2007-07-27 01:19:24
夜分、お邪魔します~~
先日はコメントありがとう・・・。
うれしかったです。今後ともよろしくね。
私、角田さんの作品を、長編として読むのは
これが初めてなの。だから作風とか、今までの
比較が出来ない分、↑の感想読みながら
いろいろな発見があったわ。
そうか・・・そういう方なんだなって・・・。
これを機会にまた挑戦してみようかな・・・・。
latifaさん、角田さんに強いから参考になるわ
で・・・私はね、希和子にね、逃げ延びて欲しいという気持ちもあったけど、親の気持ちもちょっと考えてしまったところもあって複雑だったわ。
確かにしょうもない母なんだけれど、
子どもに再会した時のうれしい気持ちは
本当だったしね。
女性心理が詳細な分、
色んな感想をもつことができる作品だったよね。
題名の意味も深いしね・・。いい作品だったわ・・。
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みみこさん☆ (latifa)
2007-07-27 09:28:43
みみこさん~こんにちは
いやいや、私こそ、これからもよろしくです~

私、さっき、みみこさんちで、早とちりしちゃってたかも。角田さんの「長編」読まれるのが初めてだっただけなんだよね♪ そうだよね、みみこさん、以前にも角田さんの本を読んだことあったよね。確か初期の、誘拐・・と言っても、実のお父さんと2人でどっかに行く話だったっけか?そういう、青少年ものだった様な。私は、角田さんは、青少年ものよりも、こういう大人~同世代ものを書くのが上手いと思うし、好きなんだ。結構痛いことを、ズバズバと書く人って印象なのだけれど・・・。

ところで、この本、みみこさんのレビュー読んで、良かったーって思いました。ほんとよ。
やっぱり、色々な人の意見を読めるって幸せだし、楽しいな~って思った。
みみこさんの冷静な目でもって読んだ、この本のレビュー読まなかったら、私なんかは、つい、感情に流されてしまうところだったかも。
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