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「14歳、明日の時間割 」感想 鈴木るりか

2019-07-23 | 小説・漫画他
鈴木るりかさんの本は、これで2冊目ですが、今回も面白かったです。
色々な中学生の日常を描いた短編が入っていて、とても読みやすいです。
中でも一番長いお話の「体育」は読みごたえがありました。

本を読んだ後、るりかさんのインタビューを見たら、「体育」が一番先に出来て、最後の「放課後」および国語の先生の処は書くのが難しくて時間が凄くかかった、って言ってましたね。編集者さんからのアドバイスで、大人の人を書く事をすすめられたとのこと。
やっぱり「体育」が一番良かったもんなー。

運動神経抜群で勉強も出来て、優しくてコミュ力も有る中原君が、全部のお話に登場する。
こんな出来過ぎ君が、存在するのか?!

鈴木さんの小説には、エロ、グロ、殺人、どす黒い感情、ファンタジー、実在しない物は出て来てません。
普通の日常を描いているのに、面白く読ませる力がある。
まだすごく若いのに、すごいな、これからも頑張って欲しいし、将来が楽しみ。
これから、色々な人生経験を重ねて、どんな風な作品を見せてくれるのかな?

世に出ている小説の殆どは、大人が想像で書いた中学生なんですよね・・・。
リアル中学生が書いた同世代の本っていうのは、とても貴重だし、本物感がありますよね。
そして、物凄い年下の子でもある、中学生が書いた本を、大人の私が読んで感動したり、楽しんだりできる、ってなんだかとても嬉しいです。


装画は、矢部太郎さん(カラテカ)。小説への描き下ろしイラストは初だそうです。

短編小説を学校の時間割に見立て、7つの物語が展開されます。

★以下、ネタバレであらすじ・感想を書いています★


<1時間目 国語>
前作の雰囲気と若干似たタイプの家族像。創作じゃなくて作者本人のエッセイじゃないか?と錯覚してしまいそうになる。
内容は、短編小説が入賞し、作家としてデビューした中学生の少女の中学校の国語の先生が自分も小説家を目指していて、是非読んでみてくれと自作の小説を渡される。
そして、少女のコネで、彼女の担当の編集者の人にも、読んでもらうように頼む・・。

この先生の書く小説の内容が、あまりにしょうもない。
読み進めて行って、この先生の事は忘れていましたが、思いがけず最終章の「放課後」で、この先生が主役のお話が入っていました。

<2時間目 家庭科>
いきなり卓球部をやめて、家庭科部に入部してきた男の子。
家庭科の先生になろう!という共通の目標をもち、一緒に下校したり、手作りのマフラーを交換したり、仲良くなっていたのに、突然彼は転校してしまう。お母さんが四国のホスピスに行く為だった・・・。

途中で元卓球部の男子に嫌がらせを受けてクッキーを落とした処に、中原君が現れて、落ちたクッキーをさっと食べて・・ってところが、すごいカッコよかったなあ。

<3時間目 数学>
東京への転校が決まっていて、受験を目前にして、焦る少年。
ここ神奈川の田舎の地区なら、そこでのトップ校に進学するのは、そんなに大変な事じゃないが、東京となると、とても難しい。コツコツ定期テストなどで点数を取るのはやさしいが、学力テストとか模試など、範囲が広く、応用をきかせないといけないテストでは点が取れない(これ、良くわかるよー)
やさぐれてる彼に、中原君が、自分ちに一緒に住んでも良いよ、って言ってくれるんですよね(すごいよね、これ)

<4時間目 道徳>
母の彼氏?謎のヒモ的な男がある日、家にやってきていつく。
そしてある日、母が書置きを残して、行方知れずになる。
居候だった男は、実は料理も家事もうまく、自分の部活の試合まで見に来てくれるのだった・・。

<昼休み>
子供の頃から、ずっと友達がいない少女。彼女の両親もそうみたいだ。
文学少女ならば、教室でいつも一人で本を読んでいてもおかしく思われないだろうと、そう生きて来た。
彼女に何か面白い本は無いかな?と声をかけてきた中原君。 
彼女にとっては、彼の何の気ない「友達がすすめた本」の友達という言葉に激しく心を揺さぶられるのだった。

<5・6時間目 体育>
体育が大の苦手な少女。マラソン大会目前で、本当に憂鬱だ。
少しでもましになるように、走る練習をこっそり始めると、偶然中原君と遭遇し、教えてもらったり、彼のお兄ちゃんとも顔見知りになるのだった。彼のお兄ちゃんはかつてスターランナーだったが、その後挫折し、精神を病んでしまったようだった。
マラソンしている時に起こる「デッドゾーン」と「セカンドウィンド」の言葉を、お兄ちゃんに重ねた表現で締めくくられていて、明るい未来を感じさせられてとても良いですね。

彼女の家には、もう先が長くない祖父がいるのですが、祖父の言葉も深くて、本作は一番抜きんでた作品だったと思います。

<放課後>
最初のお話で登場した国語の先生のお話。

14歳、明日の時間割 (2018/10/17)
鈴木るりか


鈴木るりか
「さよなら田中さん」
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2 コメント

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素晴らしい (Todo23)
2019-08-08 17:16:09
この記事を読んで気になり、前作「さよなら、田中さん」を読んでみました(「14歳、明日の時間割」は図書館に無かったもので。。。

面白いですねぇ~、何か森沢明夫さんとか小路幸也さんなどを読んでる気になりました。
中学生作家というフィルターなしに充分に楽しめました。

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Todo23さん☆ (latifa)
2019-08-08 19:10:15
Todo23さん、こんばんは!
うわーーい この記事を読んで下さって・・・って経緯で、だなんて、凄く嬉しいです。

鈴木るりかさん、誰も読んでいる人がいなくて・・・。
Todo23さんも面白かったと思われたとのことで、分かち合えて、やったー!って感じです。

>森沢明夫さんとか小路幸也さん
確かに、そんな感じもありますね。
とっても品の良いサイバラさんって感じもあるし。
将来がホントに楽しみです。
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