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「さよなら田中さん」鈴木るりか

2019-01-15 | 小説・漫画他

だいぶ前にリクエストしていた本が忘れた頃、回って来ました。
西原さんのイラストの表紙だったのですが、雑草の様に、笑い飛ばしながら強く生きる人を、ローティーンが書いた小説でした。
花ちゃんのお母さんとか、アパートのおばちゃんとか、ガハハ笑いとか話す事が、まさにサイバラ節。
凄く読みやすく、面白く、楽しかったです。4つ★半

登場人物が、殆どみんな良い人なのも安心して読めますね。
印象に残った脇役としては、激安堂の社長。
なんだかんだと、店のお菓子をくれるんだけど、もらう側が負担に思わない様に、今度店に置くお菓子を味見してみようと言って一つだけ取って、あとはくれるとか、もうこの缶へこみがあるからもらってくれる?とか、気をつかった言葉を言ってくれるんですよね。

あと、担任の木戸先生もユニーク。前世で英国紳士だと思い込んでの発言とか、妙に人生を悟ったかのようなウンチクとか。

周りの友人も花と環境は違っているのに親しくしており、華やかな女子たちが、携帯もなく貧困家庭の少女と仲良くしているって、ありえないかも・・・って少々思ったりもしたし、主人公の花実ちゃんは、出来過ぎとも思える女の子で、正直、こんないい子おらんよー?って、薄汚れてしまっている私なんかはちょっと思ったのだけれど、鈴木さんは憧れの人ってイメージで書いたとのことで、納得。
私もこういう子がいたら良いなあ・・・って思います。

本作は、鈴木さんご自身の体験ではなく、近所に母子家庭の親子の方が引っ越してこられたので設定だけ借り、お父さんのいない家庭ってどんなだろう? と膨らませていた想像を、今回の小説に反映させたそうです。

『Dランドは遠い』は、書いたときは、9歳だったそうです。
恐ろしい・・・。
とにかく、読みやすくて、可笑しい処も散りばめてあって、ほろっとする処もあって、いやはや、これを小・中学生の子が書いてしまうというのがビックリです。

インタビューを読んだら、勝手に登場人物が話す・・って言っており、会話のかけあいが生き生きと楽しいんですよね。
かつて有川浩さんの小説を読んだ時にも、そういう感じを受けたのだけれど、小説を読んだり書いたりすることが大好きな人ならでは、なんだろうなーって。将来、きっと凄い作家さんになるに違いないですね。楽しみです。

最終章のタイトル作「さよなら田中さん」だけは、同級生の男の子の小説でした。
中学受験するも全落ちしてしまう、ちょっと気の弱い男の子。

「悲しい時、腹が減ってると、余計に悲しくなる。辛くなる。そんなときは飯を食え。もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえず飯を食え、そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。それでまた腹が減ったら、一食食べて、その一食分生きるんだ。そうやってなんとかでもしもいで命をつないでいくんだよ。」
って花ちゃん母が三上君に言ったところでした。
「その食べ物をくれる人には感謝しなくちゃいけない。それは命をいないで、生かしてくれる人だ・食事を作ってくれる人とか、食材を買うお金を稼いでくれる人とか、な」

これは、作者の鈴木さんのおじいちゃんが言っていた言葉だそうです。凄く良い言葉ですねえ・・・。

★以下ネタバレ★
最初のお話では、学校の周りをウロウロしていたのは同級生のお父さんでした。一緒に食事に行った後、彼が会社のお金の使い込みで逮捕されたり、お母さんのお見合い相手のおじさんが、もしかしたら保険金狙いだったかも・・・というオチがありました。
でも決して完全なる悪人として描かれず、優しい人でもあった事も両面を描いているのが、とても良いなと思いました。
また最終章で、息子が全落ちして、ノイローゼ気味になったお母さん。かなり酷い事を姉に話しているのを立ち聞きしてしまう三上君。ショックで街をさまよい、橋から飛び降りようとしたところに田中親子に声をかけられ、一緒に夕食を取るんです。
結局田舎にある全寮制の学校に、なかば強制的に息子を通わせることに。でも、それに逆らうわけでもなく、三上君は、そのまま入学するんですよ。。。 弟を不憫に思った兄の優しい発言や態度は、うるっと来ました。
以上

「さよなら田中さん」鈴木るりか 2017年10月
友人とお父さんのほろ苦い交流を描く「いつかどこかで」、
お母さんの再婚劇に奔走する花実の姿が切ない「花も実もある」、
小学4年生時の初受賞作を大幅改稿した「Dランドは遠い」、
田中母娘らしい七五三の思い出を綴った「銀杏拾い」 amazonより

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