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「蛍」感想 吉村昭  映画「休暇」原作

2009-09-27 | 小説・漫画他

死刑執行時の「支え役」を引き受けると1週間の休暇をもらえる・・という内容の映画「休暇」を見て、原作はどうだったんだろう・・と興味を持ったので読みました。

本のタイトルは「蛍」9つの短編が含まれています。吉村昭さんの本はこれが初めてでしたが、凄く良かったです。どれもピリっとした感じというか・・鋭い視点と洞察力というか・・・私の好きなタイプの小説でした。4つ☆~4つ☆半

「休暇」
映画のタイトル作 とても短い短編です。
映画と小説とほぼ同じですが、主人公の男(映画では小林薫演じる)が35才になるまで、死刑囚とかかわる刑務所勤めということで、なかなか結婚が決まらず、晩婚になってしまったこと、母の葬儀や土地処分の手続きなどで公休を使い果たしてしまったことが解りました。また、この職場の男性はほとんど晩婚だったりすること。鉄格子の中で女を渇望する男達にふれてきたが逆に自分は所外で数多くの女の姿を目にすることが出来るが、当然のことながら大半は鉄格子の中の男たちが思い描く存在とはほど遠い。そうした一種の冷却作用が、女に対する感心を薄目させることにつながっていたのかもしれない。(11P)

5年前に指名されて初めて支え役を引き受けた時の事を今も引きずりつつ、2度目だから最初よりは少しは慣れも有り、なんとかなるんじゃないか・・・と思っていること。結婚相手の連れ子の少年を少し邪魔だ・・と思っていること、結婚相手の外見に一目惚れしたこと、新婚旅行中の2晩目に、映画同様妻側から息子の布団だけ隣の部屋に移動して1人で寝る様にしたこと、その晩の彼女の様子、よくる朝、主人公が満足しこれから上手くやって行ける気がすると前向きに思っていることが解ります。この後、似たような話の「夏の流れ」丸山健二も読みました。
 →丸山健二「夏の流れ」初期作品集 感想


他の短編は、
「眼」死んだ人間から角膜をもらうというお話。かなりグロかったけれど、凄く引き込まれました。

「霧の坂」温泉宿に胸の病気で長く滞在している自分が、貧しい雇われ女と子供が過酷な労働により自殺に走る経緯を見ていた。

「蛍」幼い兄弟が夜の川で遊んでいる最中、弟が川に落ちて死んでしまう・・
「時間」癌で死に行く兄・・
「光る雨」肺の凄く痛い手術を局部麻酔で5時間だか我慢した過去(実際本当に吉村さんが体験したことのようですね(T_T))と、ずうずうしい住み込みのお手伝いさんの話。ムカっと来ました。あまりにずうずうし過ぎる!!!
「橋」強姦に慣れている男だったのに、今回は出来なかった話
「老人と柵」ある老人の家の回りに謎の柵を建てた人たちがいて・・
「小さな欠伸」戦争時、焼けた家から姑の骨だけを持ち出して逃げた若妻が・・

小説の中で、これは吉村さんご自身の実体験なのかな?って思われるエピソードが幾つもありました。
後で調べて見たところ、本当にご両親それぞれを、若くして失ったこと、胸郭成形手術を受け、左胸部の肋骨5本を失い療養生活を経たことなどが解りました。すんごい痛そうな手術で「痛くない」と何度も叫んで時間を過ぎるのを耐えたなんて本当に可哀想だ~ あの来たとたんすぐ病気になってしまった若いお手伝いさんの話も本当なのだろうか?
ウィキ吉村昭


蛍 吉村昭 (1989-01) 1974の作品
内容(「BOOK」データベースより)
たしかな生の軌跡を刻む人びとからは離れて、ひっそりと、危うく、生きつづける人間たち。その彼らさえ見逃しはしない、人生の出来事。遅い結婚生活をはじめた看守の特別休暇を描く「休暇」、角膜移植手術に全神経を集中させる、医師の不思議な日常を追う「眼」、幼い弟を川で事故死させた少年の内心をみつめる「蛍」など。ささやかな生活のなかに潜む非現実をとらえて、心にしみ透る、忘れられない小説9篇。

映画「休暇」の感想

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