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混凝土に咲く花のように


海外旅行記や国内旅行記など、数々の旅行記を連載中!
        HP『我道旅人』で更新内容をまとめて掲載

2006年01月13日 | 四国ツーリング
一昨日道の駅で出会ったオッサンがくれた入浴券を使おうと秘境の湯へと行くことに決めた。
高知からは32号を北上して、再び祖谷渓へと向かう。

ポツポツと雨が降り出した頃、秘境の湯に到着した。
まだ早い時間だったため風呂は空いていた。
そのおかげでゆったりと湯船に浸かり、冷えた体も温めることができた。

気分良く出発しようと、下駄箱から靴を取り出しドアの前に立って驚いた。
雨は止んでおらず本降りとなっていたのだった。

せっかく温まったのに、また冷えてしまう。
しぶしぶと今さっきパッキングしたばかりのザックを開け、雨具を取り出した。

この秘境の湯は宿泊もできるようで、立派な外観を呈していた。
駐車場を歩く傘を差した小奇麗な人達の姿を見ていると、とても幸せそうで自分自身惨めな気持ちになる。
僕は雨に打たれながら、どこへ向かうのだろうか。

こうして軒下で雨宿りして、呆然と時間を潰してもしょうがない。
覚悟を決め雨の中バイクを走らせた。

桂浜

2006年01月12日 | 四国ツーリング
3/11

朝飯は6時半からだった。
眠っている人を起こさないように、静かに食堂へと向かう。

戻ってきても彼らはまだ眠っていた。
別れも言わずに出発するのはいつものようにとても気が引けた。
荷物をまとめていると物音がうるさかったのか起きてきた。

少し雑談を交わし8時半になると、寺を出発することにした。

「卒業式で会ったらよろしく!」

互いに声を交し合い、別れた。


室戸岬へと向かう予定だったのだが、昨晩2人がたいしたことないと言ってたのを思い出す。
そこで代わりに彼らが行きたがっていた坂本竜馬の故郷である桂浜へ向かうことにした。

海岸沿いを走ると桂浜に到着した。
観光名所だけあって、割と人がいる。
通りでアイスクリンを売っていたので、食べながら海岸沿いを歩くことにした。
何処までも続く砂浜に足を取られながら、崖の上にある鳥居へと向かう。

そういえば今回の旅で砂浜を歩いたのはこれが初めてだったな。
改めて旅を思い返し、石垣の上から海をゆっくりと眺めた。

岩本寺YH

2005年12月25日 | 四国ツーリング
当初高知市街まで行こうと思っていたのだが、思ったよりも色々なことがあり過ぎてちょっと時間的に無理そうだ。
そこで四万十川から割と近い、岩本寺YHに泊まることにした。
予約の電話を入れ、日が暮れかけた頃に到着した。

この岩本寺は四国霊場第38番札所で、お遍路さんもよく利用する場所だった。
寺泊まりの人達はほとんどがお遍路さんである。

僕はYHとして提供されている大広間に泊まることになった。
襖を開けると他に2人の宿泊客がいた。

1人は偶然にも同じ大学の4年生だった。
話してみると共通の知人もいて、とても会話が弾んだ。
夜もう1人のおっちゃんと輪になって、色々話をした。

彼らもまた旅好きで、カヌーをやりに四万十川まで来たということだった。
こういう熱い人達好きだな。
まだまだ話足りないのだが、明日もまた早いので23時過ぎで寝る事にした。

帰りのフェリーの中で食べたらいいよとチュッパチャップスをくれた。

四万十川その2

2005年12月21日 | 四国ツーリング
時折沈下橋を見に来た観光客が通り過ぎると、少年は「また観光客だ!」と叫んでいた。
その様子を見て何だか虚しくなった。

結局四万十川に『最後の清流』と名付けた人も、現地の人ではないのだろう。
彼らにとってこの綺麗な河が基準なのだから清流も何もない。

日常的な河であったり、生活のための橋をたくさんの人が覗いては「綺麗でいいわね」と言いながら帰っていく。
この場で生活をする人達の気持ちも知らずに無責任な言葉を掛けて…

こいつ近所に友達がいなくて寂しいのかな。
低い背丈に小さな手足の少年を上から見つめながら考える。
少年は僕の手を取りながら、トコトコと歩き続けた。

「あと80歩で着く?」
「着かなーい!」

少年は茂みの前で立ち止り、「ここから下に降りるとあるよ」と教えてくれた。
少年とここで別れ、一人河原へと降りる。

そこには河の流れが運んできたのであろう丸い石が一面に広がっていた。
遠くには今さっき渡ってきた橋があるだけで、他に橋はなかった。

騙されたのだろうか…

僕もまたこの地に留まることなく過ぎ去っていく観光客。
彼にとってみれば皆同じなのかもしれない。
何もない河原を歩き、バイクへと戻った。

四万十川

2005年12月20日 | 四国ツーリング

山道を下りていくと、次第に車が増えてきた。
雲の切れ間から太陽の姿も確認できる。
そして何より嬉しいのが、道の駅「ゆすはら」の看板を見つけた時だ。
道の駅があるくらい山から降りてきたという事実がそこにはあった。

駐車場にバイクを停め、休憩スペースを探し歩き回る。
大きな道の駅ではなかったので、残念ながら休憩スペースはなかった。

しかし建物内に入れないけれども、山頂とは違い少し暖かい気がする。
眩しい日差しを体に浴び、やっと生きた心地がした。


下界はとても快適で、今までとは比べものにならないくらい走りやすい。
ひたすら南下して、四万十川までやってきた。

四万十川沿いには沈下橋という水量が多い時に、水面下へと沈んでしまう橋がある。
バイクを停め、橋を渡ったり、河に下りて写真を撮ったりした。

バイクへ戻ろうと岸から上がったところで、凧をぶら下げ歩いている小学生が声を掛けてきた。

「何しとっちょ?」
「観光だよ。」
「お前も観光か!」

四万十川は水が綺麗だし沈下橋も珍しいので、ここにも観光客がたくさん来るのだろう。
地元の小学生なので、そのことに不満を持っているのだろうか。

「もう1つ近くに橋あるよ。」

自分だけが知っている秘密の場所だと言わんばかりに口にした。

そして僕の手を取り歩き始めた。
凧揚げをしたり、ヘルメットを被せたりして遊びながらその場所へと向かう。

「ここはティラノサウルスが壊したんだ。」

自慢気に鼻を啜りながら話す。
ゆっくりとしている時間はなかったのだが、せっかく現地の子供と仲良くなれたのだから少し付き合うことにした。

四国カルスト その8

2005年12月15日 | 四国ツーリング
気付いた時にはもう遅い。
押し出されるようにタイヤが雪に埋まり、コントロール不能となった。
そしてジェベルは再び倒れてしまうのだった。

俺はもう何が何だか分からず、泣きたくなった。

「またやっちまった…」

これが本当に現実の事なのかと、意識が逃避し始める。
しかしいくら逃げたところで、現実は一向に変わらなかった。

冷えた手で、雪の中に埋まったハンドルを取り持ち上げる。
ジェベルを立ち上がらせるとすぐに声を出して震え始めたのだった。
不幸中にも幸いにスピードを抑えていたこともあり、被害は先程よりも少なくて済んだようだ。

サイドミラーが緩んでしまったので、再び工具を出してきつく締める。
3度転ばないように、細心の注意を払いながら走り出した。


道路上に人を見つけた。
寒くて口をうまく動かせないが、心細さもあり話し掛ける。

「こ・この先は・・雪が積もって・いますか…?」

尋ねるとカメラを持ったおじさんは「大丈夫だよ」と笑顔を見せてくれた。
これ以上先に進んでいいものか躊躇っていたので、その言葉はとても僕を落ち着かせてくれた。

その後は再び転ばないように、ギアをローかセカンドにしてゆっくりと山道を下った。
2回も立て続けに起きた出来事に、すっかりトラウマになってしまった。
雪がなくなった道を走っていても、「再び転ぶのではないか」と頭から転倒する残像が消えることはなかった。

四国カルスト その7

2005年12月14日 | 四国ツーリング
元気のある声とは言えないが、着実にエンジン音が安定してきている。
恐る恐るジェベルに跨ってみることにした。

ジェベルに跨ると、俺の体重で少し沈む。
しかしエンジンは変わらずに動いていた。

「大丈夫、平気そうだ。」

ようやくこの場所を出発できると安堵の息を吐く。
足を地面につけたまま、ゆっくりとグリップを回した。
それに合わせるように、ジェベルはのっそりと動き出したのだった。


辺り一面は高原のような景色でとても綺麗なのだが、僕はもう景色を楽しむ余裕などなくなってしまった。
今は人の温もりが感じられる下界へといち早く辿り着きたい。

気は焦るが、今は安全運転をするしかない。
30キロの速度でゆっくりと走る。

トンネルが見えてきた。
トンネルの中は電気がなく、外からでは真っ暗で何も見えない。

中に入ったその瞬間だった。
僕の目に映ったのは、路上一面に広がる新雪の沼地であった。
そう…悲劇は再び繰り返されたのだった。

四国カルスト その6

2005年12月13日 | 四国ツーリング

呆然と一人道の上で佇む。
いつの間にか風が出てきて、空には雲が姿を現した。

絶望に襲われた時、人は自分を惨めに感じるようだ。
潰されそうな重圧を体に受け、瞬きも出来ないくらい氷ついた。

ジェベルをその場に置き、人がいないか呆然と歩き回る。
小屋を見つけたのだが、その扉は固く雪で閉ざされていた。

やはり自力で下りるしかないのか…

再びバイクに戻り、祈るような気持ちでセルを回す。

キュルキュルキュルキュル…

キュルキュルキュルキュル…プスン

キュルキュルキュルキュル…ブルン!ブ・ブ・ブ・カシャン

まだ途切れ途切れの苦しそうなエンジン音ではあるが、ジェベルは生き返ったのだった。
感動し涙が溢れそうになる。

「頑張れ… 頑張れ…」

セルを回す手に微かな温もりが戻ったのだった。

四国カルスト その5

2005年12月09日 | 四国ツーリング
そこには緑と白のコントラストの中、不規則に岩がポコポコと頭を出している。
そして冷たく強い風を受けて、風車が回っていた。
それは放心状態の僕に優しく語りかけてくるようだった。

ジェベルを路肩に停め、工具を出して壊れた箇所を修理する。

写真を撮ったり、風景を眺めたりしながら、しばしの休息を取った。
その事によりようやく僕の心は落ち着きを見せ始めたのだった。

「さあ先に進もう。」

誰に話し掛けるわけでもなく、声に出して自分を奮い立たせる。
バイクに戻り、エンジンを掛けようとセルを回す。

キュルキュルキュルキュル…

キュルキュルキュルキュル…

何度回してもエンジンが掛からない…
虚しくセル音は風の音しか聞こえない台地に響き渡った。

キックで掛けようとしても、全くジェベルは反応しなかった。
冷気が僕にぶつかり逃げるようにして、通り過ぎる。
ジェベルは死んでしまったのか…。

焦ってあらゆる手段を試すのだが、息を吹き返さなかった。

四国カルスト その4

2005年12月08日 | 四国ツーリング
ひょっとしてかなりヤバイ状況なのではないだろうか…

こんな山奥、山頂と言えども誰一人通らない。
俺はバイクに足が挟まり立ち上がれない。
周りは雪に覆われ、凍えるほど寒い。
このままの状態で夜が来たら間違えなく凍え死ぬ…

「おいマジかよ…こいつはシャレにならないぞ。。」

何度も足を引き抜こうとするのだが、バイクはびくともしない。
多少強引ではあるが足を引きずり出すことにした。

靴が脱げ、血が少し流れる。
ようやくバイクから脱出することができた。

無残に倒れるバイクを見ると悲しくなった。
立て直そうとハンドルを掴む。
しかし路面の氷のせいでタイヤが滑ってしまうため、簡単には起こすことができなかった。
何をするのにも一苦労だ。

転んだ原因は路面が凍っていたためだった。
雪は白く道路上に残るから一目瞭然なのだが、凍っている箇所は透明でひと目見ただけでは全く判別できなかった。

痛そうに傷ついたジェベルがとても可愛そうだった。
ガソリンが漏れ、サイドミラーが外れてしまった。

「ゴメンよ…」何も話さない傷ついた相棒に謝った。

再び倒れないように、慎重にバイクを引きずり山頂に着いた。