みちくさをしながら

いろいろあって、生活を見直している日々。

道徳によって国が動かされるということ

2007-05-03 02:09:22 | 雑記
既にあちこちで語られているんで、今さら私ごときが何か書いても仕方ないかと思ったんですが、やはり、なかなかのインパクトだったんで、自分のメモとして言及しておこうと思いました。

教育再生会議:親向けに「親学」提言 母乳、芸術鑑賞など(毎日インタラクティブ)
具体的な提言としては以下の11項目
◇「親学」提言のポイント
(1)子守歌を聞かせ、母乳で育児
(2)授乳中はテレビをつけない。5歳から子どもにテレビ、ビデオを長時間見せない
(3)早寝早起き朝ごはんの励行
(4)PTAに父親も参加。子どもと対話し教科書にも目を通す
(5)インターネットや携帯電話で有害サイトへの接続を制限する「フィルタリング」の実施
(6)企業は授乳休憩で母親を守る
(7)親子でテレビではなく演劇などの芸術を鑑賞
(8)乳幼児健診などに合わせて自治体が「親学」講座を実施
(9)遊び場確保に道路を一時開放
(10)幼児段階であいさつなど基本の徳目、思春期前までに社会性を持つ徳目を習得させる
(11)思春期からは自尊心が低下しないよう努める

各項目のバカバカしさは、もう何も言う気にならんのですが。

それにしても、委員が認識しているこの国の教育の問題点は「母親が母乳をあげないこと」だなんて言うつもりなんでしょうかね?
理想を言えば、政策立案にあたっては現状の分析と問題の把握が必要だと思うのですが、議事録で各委員の発言を見る限り、各々が勝手に「自分が問題だと思うこと」を述べているにすぎないんですわ。
それも、現状分析ではなく自分の見聞やワイドショーのニュースに脊髄反射したような「問題意識」だったり。
そもそも、委員の間で「教育問題」や「教育行政」について共有した認識があるのかどうかすら怪しい。
だから、現実と乖離したワイドショーのコメンテーターの発言のような提言になっちまうのだろう、と。

この提言自体は、結局、毒にも薬にもならんだろうと思っています。
所詮、有識者会議などというものは議論を尽くしたと国民にアピールするためのアリバイにすぎないものですし。
しかし、底流に流れる雰囲気、といいますかニオイはなかなか侮れない。これは安倍政権を担う人々に共通するものなのですけれど。

それは国民に対する強烈な不信感と自分たちに対する選民意識なんですよ。
教育が荒廃したのは、力量のない教師がはびこるからだ、子どもを顧みない親のせいだ(「我々」のせいではない)。
現状はどうなのか、社会環境はどうなのか、行政は何をしてきたのか、そもそも教育は本当に荒廃しているのか、この人たちにとってそんなこたぁどうでもいいんです。
大切なのは、「我々」が国民を導くこと。※1
だから、政策が限りなく「道徳」に近づいてゆく。どんなに現実と乖離していても、です。

「道徳」によって政策が左右されるということは、現実と政策または法律が乖離したときに、現実に生きている人々の幸せよりも「道徳」が優先されるということなんですね。
それがどんな結果をもたらすかと言えば、先日の「民法772条=300日問題」(離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定規定を見直すという問題)が、よりによって法相が持ち出した「貞操観念」でつぶされてしまったことでも明らかでしょう。※2
「道徳」はイデオロギーと言い換えられるのですがね。

ついでに言うのなら、「人権メタボリック症候群」発言は伊吹文科大臣によるものでしたわね。
この人にとって人権は義務を果たさなきゃ与えられないものらしい。※3
で、この義務ってぇのは、「我々」の導きに従って粛々と行動すること、なんでしょうか。

で、もって、「道徳」と「法律」の区別のつかない法相や「人権」を義務の対価であるかのような発言をする文科相のいる政権が、今、最高法規である憲法をいじろうとしているんですよ。
たちの悪いブラックジョークにしか思えんのですが。

※1)安倍政権における「我々」と「彼ら」という認識についてはこちらのブログ(Dead letter Blog)のエントリに詳しい。
http://deadletter.hmc5.com/blog/archives/000091.html(一つのアンチノミー)
http://deadletter.hmc5.com/blog/archives/000106.html(「我々」と「彼ら」のポリティクス)

※2)この問題で与党プロジェクトチームの一員であった自民党早川議員のブログ
安倍総理には、女性の生活再建支援のために、女性のみに課せられている再婚禁止法制の見直しに取り組むというメッセージをそろそろ出していただきたい。
何の罪科もない子供達にささやかな救いの手を差し延べていただきたい。
(中略)
前夫との離婚調停や裁判が起こせないような状況にある女性や、生まれた子供に対して、何故暖かい支援の手を差し延べることを拒否するのか。私には全く納得できない。

とあったが、全く同意である。

※3)人権とは基本的人権または自然権ともいい、人が本来持っている絶対的な権利である、っていうの学校で習いますよねぇ。
ものすごーく簡単に言うと、人は生まれながらに自由で幸せに生きる権利を持っていて、それが制限されるのは他の人の自由や幸せを奪う場合だけなんだよー、ってこと。
世界人権宣言の谷川俊太郎訳があったので参考までに
(http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=694)
こちらも参考になりました。
情報学ブログ(http://informatics.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_1fa0.html)

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