みちくさをしながら

いろいろあって、生活を見直している日々。

化石から環境に思いを馳せてみる

2006-11-30 19:44:29 | 鉱物雑感
前回、腕足類の化石について記事を書きましたが、今回は黄鉄鉱化という面に注目してみました。
「腕足類(Brachipod)」2006-11-16の記事

紹介した化石は、殻の表面が黄鉄鉱化しています。
黄鉄鉱化した化石はアンモナイトなどにも多く見られます。
まあ、材料となる硫黄も鉄もありふれた物質なので多いのも当たり前のように思うんですが、黄鉄鉱化するにはちょっと特殊な条件が必要となります。

その条件とは、無酸素状態の堆積物。

海底に堆積した泥はしばしば無酸素状態になることがあります。
こういう泥の中では嫌気性細菌が硫酸塩を還元して硫化水素を作り出し、これが鉄と結びついて硫化鉄となり、さらに硫化水素と硫化鉄が反応して黄鉄鉱になり生物の組織と置き換わって結晶化するんです。

無酸素状態の泥、これ、我々には結構なじみのものかもしれません。
夏場などによく見られる、卵の腐ったような悪臭を放つ真っ黒いヘドロ、これが実は硫化鉄を含む泥なんです。
堆積した有機物をバクテリアが分解するために酸素を消費します。大量の有機物があればそれだけ酸素も消費するわけで。
さらに閉鎖的な内湾などでは、外海からの酸素を含む新しい水が供給されなかったりするんですね。
で、完全に酸素が消費され尽くしちゃったりする。
そこでは、先ほど書いた嫌気性細菌うんぬん…という状態になります。
卵の腐ったような臭いが硫化水素です。
もちろん、こういう場所では酸素呼吸をする生物は生きていけません。
嫌気性細菌にしちゃあパラダイスでしょうが、普通の魚介類にとっては「死の海」です。

現在では、このような貧酸素水塊が発生するのはやはり人為的な影響が大きい。
生活廃水、工業廃水などの流入による富栄養化や、人工物による湾内の潮流の変化なども発生の要因となります。
※諫早湾の例>>「堤防周辺は『死の海』に」(日本自然保護協会のデータベースから)

100万年後の世界、「生物の大量絶滅があった第四紀末期の地層からは、黄鉄鉱化した二枚貝の化石が大量に発見される」なんて言われてなければいいのですがね。

ただいま「あんも」作成中

2006-11-23 12:26:08 | 日常の出来事
ただいま、せっせとアンモナイトを編んでいる…んじゃなくて、手編みでおチビの帽子を作ろうと奮闘しています。

ご近所の保育園が子育て支援センターも兼ねてまして、時々そこにおチビを遊びにいかせているんですが、そこに顔を出している編み物の得意なお母さんがみんなに教えてくれることになりまして。
そこで、ウン十年ぶりに編み物に挑戦してみたんです。
一緒に習っていたお母さんたちもみんな久しぶりって人ばかりで、「◯◯ちゃん、ごめんね~、帽子できないかもしれないよ~」なんて弱音をはきはきやっていたんですが、そのうちみんな黙々と手を動かすように。
まるで殻付きのカニを食べるときのようにみんな黙っーて真剣に編んでました。
久しぶりにやったけれど、編み物はいいね。単純作業が心地よい。無我の境地ってやつですかね。

まあ、本音を言えば、ほんの1時間でもおチビを他の人が見てくれる時間があったことがありがたいってことです。
このところおチビの自己主張が強くて、お母ちゃんはストレスがたまりがち。ちょいとお疲れです。

腕足類(Brachipod)

2006-11-16 19:22:49 | 化石標本
⇔約3.6cm/産地:アメリカ
デボン紀(3億8千年前)

腕足類の化石です。種類は不明。
購入したときについていたラベルには、「Pyritized Brachiopod(黄鉄鉱化した腕足類)」と。
腕足類というのは、分類としては『門』にあたるので(腕足動物門)、おおざっぱな説明ではあります。
『門』より上の分類となると、動物か(動物界)植物か(植物界)菌類かってなっちゃう。
(ちなみに人間は真核生物、動物界、脊索動物門、脊索動物亜門、哺乳類綱、霊長目、ヒト科、ヒト属、サピエンス種)
まあ、腕足類の細かい区別なんてよくわからないので、素人のコレクションとしては充分とも言えましょう。

さて、腕足類ですが、これは古生代に栄えた生物で多くの化石種が発掘されています。
しかし、現存するのはシャミセンガイなどわずか350種ほどです。
とはいえ、同時代に最も栄えていた三葉虫は全滅してしまったのですから、運は悪くないのかもしれません。

ついでにいうなら、腕足類の形は二枚貝にそっくりですが、貝とは全く別モノです。
二枚貝は『軟体動物門、二枚貝綱』、つまり『門』から違う。
『門』が違うということは、体の基本的なボディープランが違うということなんですよね。
単純化していえば、「ヒト」と「貝」が違うくらい違うってことなんですが。
ちなみに、イカ・タコは『軟体動物門、頭足綱』…。
う~ん、海のモノって、今ひとつ違いが分からんよなぁ(笑)

霧笛

2006-11-12 17:25:19 | 本・映画など
最後の有人灯台が自動化 女島、年内に無人施設に(共同通信) - goo ニュース

関係者の皆様、おつかれさまでした。

それにしても最後の有人灯台。
言葉の響きが何となく物寂しげに感じるのは、レイ・ブラッドベリの『霧笛』を連想してしまうからかなぁ。

『霧笛』は、読むたびに泣いちゃうんだよ~。
人里離れた湾の灯台、霧の中に響く霧笛…って、これだけでも寂寥感たっぷりなのに、仲間を求めて深海からやってくる地上最後の恐竜(恐竜じゃなくて首長竜だと思うが)…。
もうこの設定聞くだけで涙腺ゆるゆるですがな。

萩尾望都が漫画化していたけれど(『ウは宇宙船のウ』の収録)これは、絶対文章で読んだ方がいい。恐竜の孤独が胸を締め付けるぞ~~~。

『霧笛』は早川文庫『太陽と黄金の林檎』に収録されていますが、私としては新潮文庫『恐竜物語』がオススメ。
恐竜の話ばかり6編を収めた本で、イラストもメビウスら有名どころを揃えているので、眺めているだけでも楽しい。
しかも、序文がレイ・ハリーハウゼン。恐竜映画好きにはたまらんでしょう!
でも、この新潮版はもう絶版なんだよなぁ、残念です。

ベルギー王立美術館展に行ってきました

2006-11-06 19:14:05 | 日常の出来事
連休中に、国立西洋美術館で開催しているベルギー王立美術館展に行きました。
ベルギー王立美術館が所有する16世紀から20世紀までのベルギー絵画を紹介した展覧会です。

今回は、同じ上野でダリ回顧展大エルミタージュ美術館展、さらに世田谷でルソー展と、同時期にビックネームの展覧会が重なったため、うまく見学者が分散したようで、休日にも関わらず割合ゆっくり見ることが出来ました。

中でも、ルーベンスの「聖ベネディクトゥスの奇跡」が面白かったな。
この絵は未完なんだが、そのために画家の制作過程がよくわかるようになっている。さらにフランスロマン主義の画家ドラクロワによる模写が並べて展示してあったので、17世紀と19世紀の油絵技法の違いが見えてとても面白かったです。
なお、ルーベンスは「フランダースの犬」でネロが一目見たいと願い続けたアントウェルペン大聖堂の祭壇画を書いた人ですよん。

あと、20世紀シュールレアリズムの作家ポール・デルヴォーの「ノクターン」という作品で、背景の火山について
彼が子供の頃、楽しんで読んだジュール・ヴェルヌの『地底旅行』から取られたものである。
とあったのには、ちょっとびっくり。
考えてみれば、ジュール・ヴェルヌの『地底探検』は1864年の作品なんだよね。1939年の絵画に影響を与えていても不思議はないんですけれど。
でも、こんなところでSFの父の名前にお目にかかるとは思っていませんでした。
SFとシュールレアリズムって結構、接点があるのかもね。

他にもポスターにもなっているピーテル・ブリューゲルの「イカロスの墜落」(真贋論争があるそうだが)など、見所の多い展覧会でした。
ちょっと疲れたけれど、充実した気分になれましたよ。