とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

発売情報: 明解線形代数 改訂版(日本評論社)

2015年04月20日 21時33分36秒 | 物理学、数学
明解線形代数 改訂版(日本評論社)

内容紹介
定評ある教科書の改訂版。高校数学新指導要領で、行列が教えられなくなったので、行列の導入部分をより詳しく丁寧に解説。2015年3月刊行、285ページ。

目次は次を参照: http://www.nippyo.co.jp/book/6773.html



理数系(そして工学系)の大学1年生のみなさん、入学おめでとうございます。

みなさんは高校新課程で学んで大学に入学したはじめての学生ということになります。つまり高校で「行列」を学んでいない方々です。

数学科に限らず、理学や工学系の学部の教養課程で線形代数や微積分は必須科目ですし、経済学部や経営学部などの文系学部でも数学は教養課程で教えられます。


4月も半ばを過ぎ、そろそろ授業が始まっていることでしょう。今日は比較的やさしい線形代数の副読本を紹介させていただくことにしました。

線形代数を学ぶためには「行列」の知識が必須です。けれども、これまでに刊行された教科書は高校で行列を学んでいることが前提なので、この部分の説明が不足している本がほとんどなのです。

このような状況の中、昨年末から今年にかけて「行列」を解説している線形代数の本が出版され始めました。中でも特に僕がお勧めしたいのがこの1冊です。

もし大学で使っている教科書が難しいとお感じになったら、ぜひお読みになってください。

明解線形代数 改訂版(日本評論社)




あと、線形代数と微積分の両方を揃えたいのでしたら技術評論社の2冊がよいでしょう。この線形代数の教科書も行列の解説から始まっています。

1冊でマスター 大学の線形代数:石井俊全」(Kindle版
1冊でマスター 大学の微分積分:石井俊全

 

内容紹介
1冊でマスター 大学の線形代数:石井俊全」(Kindle版
講義と演習で効率よく確実に力がつく!
大学数学の必須科目「線形代数」を1冊でマスターできます。
高校で扱わなくなっても理系では必須である行列、掃き出し法などを
計算過程を省かずにていねいに解説します。
線形代数の初歩から実践まで
参考書と問題集を兼ねた構成でじっくり学ぶことができます。
物理・工学系で役に立つ固有値、敬遠されがちな単因子、ジョルダン標準形などももちろん取り上げています。
別冊(見開き完結型の演習問題と確認問題)とあわせてホップ、ステップ、ジャンプ
の流れで順を追って問題を解いていくことで定着度もアップします。
さらに別冊については問題部分のみを抜粋したPDFをホームページにて用意しています。
2014年12月刊行、320ページ。

目次やサポートページは次を参照: http://gihyo.jp/book/2015/978-4-7741-7037-4


内容紹介
1冊でマスター 大学の微分積分:石井俊全
講義と演習で効率よく確実に力がつく!
大学数学の必須科目「微分積分」を1冊でマスターできます。
高校の復習から大学生を悩ませるε-δ論法まで懇切丁寧に解説。
図とグラフを多用した説明と豊富なパターンの問題を解いていきます。
単なる解説ではなく、どうしてそう考えるのか、どうとらえるとよいかといった
実際に学ぶ人の視点を意識した構成になっています。
さらに付属の別冊(見開き完結型の演習問題と確認問題)でよりスキルアップを図ることができます。
2014年7月刊行、304ページ。

目次やサポートページは次を参照: http://gihyo.jp/book/2014/978-4-7741-6545-5


ここまでに紹介した3冊は、かなりやさしいので数学科の学生はいちど立ち読みしてから購入するかどうか決めることをお勧めします。


それから前にも紹介しましたが、線形代数や行列を学ぶのならば次のような本もお勧めです。

高校数学でわかる線形代数―行列の基礎から固有値まで (ブルーバックス)」(Kindle版




もし高校のチャート式で学ぶのであれば、この参考書の「行列」の範囲で学ぶとよいでしょう。

チャート式 数学C




参考ページ:

数学の変化~高校数学はこんなに変わる~
http://sankousho.info/exp/exp-math.php

高校数学学習支援【数学C】
http://naop.jp/sien/sien_c.html

高校数学の基本問題(ページ下のほうの「(参考)旧教育課程」を参照)
http://www.geisya.or.jp/~mwm48961/koukou/index_m.htm

Wikibooksの「高等学校数学」の中の「数学C_行列」を参照


関連記事:

大学で学ぶ数学とは(概要編)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/07137c47d16d95ddde8f5c4cb6f37d55

大学で学ぶ数学とは(実用数学編)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/975ad3faa2f6fd558b48c76513466945


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明解線形代数 改訂版(日本評論社)



第1章 数ベクトルと行列
1.1 平面ベクトルのスカラー倍と和
1.2 平面ベクトルの幾何学的な意味
1.3 複素数
1.4 n 項数ベクトル
1.5 行列の演算
1.6 行列のブロック分割
1.7 正則行列
1.8 第1章付録

第2章 連立1次方程式と行列
2.1 基本変形
2.2 逆行列の計算
2.3 連立1次方程式
2.4 行列の階数
2.5 第2章付録

第3章 行列式
3.1 はじめに
3.2 置換
3.3 行列式の定義と展開
3.4 行列式の性質
3.5 よくでてくる行列式の例
3.6 第3章付録

第4章 行列式の発展
4.1 多項式
4.2 固有多項式
4.3 階数と小行列式
4.4 行列式の意味を理解するためのコース
4.5.1 多重線形生と行列式
4.5.2 ベクトルの外積

第5章 数ベクトル空間と線形写像
5.1 線形写像と行列
5.2 線形写像の像と核
5.3 線形写像と部分空間

第6章 ベクトル空間と線形写像
6.1 ベクトル空間と部分空間
6.2 線形独立性と基底
6.3 ベクトル空間の次元
6.4 部分空間の和と直和
6.5 線形写像
6.6 商空間と同型定理
6.7 発展:双対空間と双対定理
6.8 計量ベクトル空間
6.9 第6章付録

第7章 固有値と固有ベクトル
7.1 正方行列の固有値と固有空間
7.2 正方行列の対角化可能性
7.3 線形変換の固有値と固有ベクトル
7.4 半単純な線形変換

第8章 幾何学的な応用―2次曲面の分類と回転対称
8.1 対称行列の符号
8.2 2次曲面の分類
8.3 直行行列と回転

第9章 ジョルダン標準形
9.1 広義固有空間
9.2 ジョルダン分解
9.3 ジョルダン標準形

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12 コメント

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Unknown (ふくちゃん)
2015-04-20 22:28:19
>これまでに刊行された教科書は高校で行列を学んでいることが前提なので、この部分の説明がない本がほとんどなのです。

それはさすがに言いすぎだと思いますが。
むしろ、多くの教科書は数ベクトルと行列を解説してから、
線形空間の話に入ってるという印象があります・・・
(行列の説明が無い教科書って、具体的にどの本がありますか?)。

行列と行列式を学ぶなら、個人的には、共立出版の
『連立方程式から学ぶ行列・行列式』
がおススメですね~。
これ一冊では全然足りませんが、丁寧さと、
初学者への配慮は抜群だと思いますよ。
返信する
ふくちゃんへ (とね)
2015-04-20 23:31:10
ふくちゃんへ

コメントありがとうございます。
> それはさすがに言いすぎだと思いますが。
少し言いすぎましたので「この部分の説明が不足している本が」という表現に直しておきました。

いま手元には石村園子先生の「すぐわかる線形代数」しかありませんが、冒頭はm×nの行列の定義、和やスカラー倍、積の定義などから始まっています。たしかにこれを2x2にすれば高校の範囲の行列になりますね。ただしベクトル(線形空間)の話が始まるのは全5章のうち第4章からです。

> 共立出版の『連立方程式から学ぶ行列・行列式』がおススメですね~。

この本のことですね。
http://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320110632

なるほど。この本もよさそうです。刊行されたのが昨年の2月ですし、目次を見る限りこのブログ記事の要件も満たしているようです。よい本をご紹介いただき、ありがとうございます。

第1章 行列式とは何か
1.1 連立方程式の解の状態は?
1.2 連立方程式の判別式=行列式

第2章 行列とベクトルとは
2.1 行列とベクトルの定義
2.2 ベクトルの和・差と実数倍
2.3 ベクトルの内積とその性質
2.4 行列の和・差と実数倍
返信する
Unknown (ふくちゃん)
2015-04-21 00:55:51
>たしかにこれを2x2にすれば
なるほど、「この部分」というのは、2×2行列の話だったのですね。
確かに、2×2に限った(具体的)話を丁寧にしてくれる本は、
あまり無いかもしれないですね。
すみません。

>よい本をご紹介いただき、
こちらこそ、このブログをちょくちょく参考にさせてもらっています。ぼくは数学が専門で、物理の本とかはあまり知らないので、特に。

実は、今年度は工学部の新入生に線形代数を教えることになったのですが、
教科書選びと授業計画にすごく苦労しました。
ということで、この記事に食いついてみたわけです(笑)
返信する
ふくちゃんへ (とね)
2015-04-21 01:11:56
ふくちゃんへ

コメントにはそのような背景があったのですか。大学1年生用の教科書や副読本は需要が大きいこともあり、似たような「良書」がたくさんあるから選ぶのが難しいですよね。

長谷川浩司先生の「線型代数[改訂版] 」で、これも日本評論社の本です。

http://www.nippyo.co.jp/book/6704.html

かくいう僕もはるか昔の大学時代にどの線形代数の教科書を使ったのか思い出せません。(微積分の教科書はかろうじて思い出せました。)

優秀な学生ならば齋藤正彦先生の「線型代数入門 (基礎数学1)-東京大学出版会」あたりを読むのでしょうね。

http://www.utp.or.jp/bd/4-13-062001-0.html
返信する
Unknown (やす)
2015-04-21 12:47:50
高校で行列を教えなくなっていたことを、知りませんでした。

積分と同様、理解を進めるには多分に感覚的なものが必要な気がしている(少なくとも私はそうでした)ので、高校で準備運動をやっていないと大変と感じる学生さんが出てきそうです。

工学部出たばかりの学生さん(化学系)が、行と列(縦と横)が分からないと言うのに直面したことがあります。ろくに勉強していないのは確かなのですが、それでもここまで....と驚きました。

数学科や物理科へ進む学生さんはそうでもないのかも知れませんが...
返信する
ソーヤー (はやぶさ)
2015-04-21 12:50:07
ご無沙汰しておりました。
とねさんらしい思い遣り溢れる記事ですね。
そうですか、高校の課程から行列が消えたのですか。少し寂しい気がします。
最近ソーヤーの「線形代数とは何か」(岩波)という工学部の学生向けの教科書を読みました。数学、物理を専攻する学生も、まずこの本で直感を掴んでから、斎藤、松坂等の定理ー証明型の厳密な教科書に進むと良いのではないかと思いました。
しかし、この本は絶版で、古書か図書館でのみ入手可能です。残念ですが名著ですので一読の価値ありです。
では。
返信する
やすさんへ (とね)
2015-04-21 20:54:11
やすさん

> 行と列(縦と横)が分からないと言うのに直面したことがあります。

行と列がごっちゃになっている人には「小学生のとき朝礼で列をつくって並んだでしょ?朝礼台から見て縦にならびましたよね。だから列は「縦」で、行が「横」と覚えましょう。」と伝えればよいですね。

あとExcelの行は横方向、列は縦方向というのもまた別n覚え方です。
返信する
Re: ソーヤー (とね)
2015-04-21 21:01:55
はやぶささん

斎藤先生、松坂先生の「線形代数」の教科書はそれぞれ知っていましたが、ソーヤーの教科書のことは知りませんでした。中古で安く買えますね。

線形代数にまで特に立ち戻って学ぼうとは思っていませんが、こうやってコメント欄を通じて談義していると、また読んでみたくなるものです。
返信する
高校で行列? (hirota)
2015-04-22 11:44:31
はて、高校で行列やったんだっけ?
全然おぼえてない!
行列は親が買ってきてくれた「矢野健太郎・新しい数学」と大学で入学した時に買った教科書しか記憶にないや。
授業の記憶は固有値とか対角化とかやってたから高校じゃないなー
高校までの数学は、微積分,順列組み合わせ,数列,三角関数公式,立体幾何の記憶がある。
複素数はあったような気もするけど、自分で買った本の印象が強過ぎて分からん。
確率なんて立ち読みした本の印象が強いし…立読みに負ける授業て何?(授業であったらの話だけど、順列組み合わせがあって確率ないとも思えん)
返信する
Re: 高校で行列? (とね)
2015-04-22 14:16:02
hirotaさん

はい「行列」は今回の指導要領改正で数3Cから削除され、そのかわりに「統計」が重視されるようになりました。

僕は1981年に高校を卒業していますが、2x2の行列や行列式、一次変換そして微積分だけでなく変数分離形のような簡単な微分方程式も教科書にありました。ただし卒業年度によってはその時点での指導要領の変化により教えられなかった可能性があると思います。hirotaさんは僕より年上ですよね?

たとえば次のようなことが過去にあったそうです。

平成元年度の指導要領で「複素数平面」が導入されましたが、「一次変換」が削除されました。
平成10年の指導要領で「一次変換」は復活しましたが、逆に「複素数平面」が消滅しました。
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