とね日記

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発売情報: 経済数学の直観的方法: 長沼伸一郎

2016年11月15日 22時37分40秒 | 金融工学、金融数学


経済数学の直観的方法 マクロ経済学編:長沼伸一郎」(Kindle版
経済数学の直観的方法 確率・統計編:長沼伸一郎」(Kindle版
2冊まとめた合本版が発売:(Kindle合本版

内容紹介:
理系学生伝説の参考書『物理数学の直観的方法』の著者による、画期的な経済数学の入門書。

現代の経済学は、物理学に基づく高度な数学を取り入れているため、難解なイメージがあります。本書では、理系と文系の中央位置から、双方を視野に入れる独自のアプローチを取っているため、直観的な理解の道を拓くことができます。

経済数学の二大難解理論である「動学的マクロ均衡理論」「ブラック・ショールズ理論」。この2つの理論の頂上部分を直観的に理解することで、今まで難物だった他のこまごまとした数学技法を、ちょうど一番高い2つの山からそれより低い山を見下ろす要領で、精神的に呑んでかかって楽に理解できるようにします。

「マクロ経済学編」では、二大難解理論の一方で、経済学の最重要理論である「動学的マクロ均衡理論」を一気に理解することを可能にします。

「確率・統計編」では、現代の金融工学の礎となる「ブラック・ショールズ理論」を身につけます。70点に及ぶ図・グラフを中心に、「正規分布曲線が生まれるメカニズム」「標準偏差、分散の意味」「最小2乗法の基本思想」「中心極限理論の不思議」「確率過程とランダム・ウォーク」「ブラウン運動とブラック・ショールズ理論」「伊藤のレンマと確率微分方程式」「測度とルベーグ積分」など、重要テーマの本質的理解を試み、教養としてのブラック・ショールズ理論を身につけていきます。

本書では、専門課程の学生のための本格的な数学的部分を後半部分に集中させることで、前半部分は一般読者でも読めるように工夫されています。そのため経済学部の学生が本書を数学の難所突破の特効薬として使うのはもちろん、一般読者の方々も、本書を数少ないこれらの一般向けの解説書として使うこともできます。

2016年9月、11月刊行。

著者について:
長沼伸一郎(ながぬましんいちろう): http://pathfind.motion.ne.jp/
1961年東京生まれ。1983年早稲田大学理工学部応用物理学科(数理物理)卒業、1985年同大学院中退。1987年、『物理数学の直観的方法』の出版により、理系世界に一躍名を知られる。「パスファインダー物理学チーム」代表。


あの伝説の書の著者、長沼伸一郎さんが30年ぶりに本格的な本をお出しになった。今回はなんと経済数学の本である。経済学部の学生はもちろん、経済学には興味のない物理学徒であっても読みたくなる気持ちが僕にはよくわかる。物理数学の難所を克服するための『物理数学の直観的方法』で学生を救ったのと同じスタイルで、今度は数学に苦しむ経済学部の学生に救いの手を差し伸べたのだ。

そもそも長沼さんがなぜ経済数学の本をお書きになったのかは、長沼さんによる説明をお読みいただきたい。

難解な「経済数学」を直観的に理解できるスゴい本が現れた!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49722

この2冊で上級経済学で、もっとも難解とされる2つの理論「動学的マクロ均衡理論」、「ブラック・ショールズ理論」を攻略してしまおうというわけだ。

経済学を網羅的に学ぶための本ではないし、経済数学全般が学べるわけではない。それらを学びたいのであればアマゾンで「経済学入門」や「経済数学入門」のキーワードで検索してヒットする本をお読みになったほうがよい。


経済数学の直観的方法 マクロ経済学編:長沼伸一郎」(Kindle版)(正誤表



詳細目次(画像):   

第1章 初級編
1.経済学は物理の思想からどう影響を受けて発達したか
2.「二大難解理論」以前のケインズ経済学
3.米国の経済思想と動的マクロ理論の登場

第2章 中級編
1.フェルマーの原理に隠された動的理論の本質
2.「最速降下線」によるさらに高度な部分の理解

第3章 上級編
1.動的マクロ理論の各モデル
2.各モデルの具体的内容
3.ラグランジュ乗数とハミルトニアンの関連性

第4章 経済学部で知っておくべき微分方程式の基本思想

第5章 固有値の意味

第6章 位相・関数解析

発売から2カ月しか経っていないにもかかわらず、アマゾンには15件ものカスタマーレビューが投稿されている。レビュー記事やこのブログ記事にいただいたコメントによると、長沼さんは本書を書くにあたって「上級マクロ経済学:デビッド・ローマー」をメインに「現代マクロ経済学:加藤涼」、脇田成先生の「マクロ経済学の本」を参考にされたようだ。同じ分野の本では「マクロ経済学―動学的一般均衡理論入門: 林貴志」もよさそうである。また著者は「マンキューマクロ経済学 I入門編、II 応用編 第3版」も参考にしている。

そして金融工学の代表的な教科書である「フィナンシャルエンジニアリング」の第9版(1408ページ)も今年の6月に発売された。ちなみに第1版は439ページ、第3版は782ページ、第4版は1036ページ、第5版は1150ページあるようにページ数は増加の一途をたどっている。

物理数学の直観的方法』は発売された当時は数学的厳密性を欠いた異端とみなされていた。経済学に詳しい方のレビューを読むと、本書は異端とまではいかなくてもこれまでに出版された経済学書と一線を画した内容を含んでいることがわかるだろう。(しかし数学的厳密性を欠いているのは本書も同様である。)


経済数学の直観的方法 確率・統計編:長沼伸一郎」(Kindle版)(正誤表



詳細目次(画像):   

第1章 初級編
1.確率統計を理解するための根本思想
2.われわれの世界の確率統計はどう成立したか
3.補足的な基礎知識

第2章 中級編
1.最小2乗法の本質
2.中心極限定理の不思議
3.ブラウン運動とブラック・ショールズ理論
4.教養としてのブラック・ショールズ理論

第3章 上級編
1.伊藤のレンマと確率微分方程式
2.実際のブラック・ショールズ理論

第4章 測度とルベーグ積分

ブラック・ショールズ理論にフォーカスしているが、僕がこれまで読んできた本では「増補版 金融・証券のためのブラック・ショールズ微分方程式:石村貞夫、石村園子」と「Excelで学ぶデリバティブとブラック・ショールズ:藤崎達哉」がお勧めである。

Kindle版もじきに発売されるだろうし、経済学を学ばれた方がどのようなカスタマーレビューをアマゾンにお書きになるか楽しみだ。


関連記事:

物理数学の直観的方法 第2版
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3f0691787cd4b47a715f3d0e2c409f76

物理数学の直観的方法〈普及版〉 (ブルーバックス):長沼伸一郎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ab9396e295687179ac3a71553b8165a1

世界一やさしい金融工学の本です:田渕直也
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/fb8ba61b788ced32e58b826d6f0b8c73

増補版 金融・証券のためのブラック・ショールズ微分方程式:石村貞夫、石村園子
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4601dda9ae0833c273d5d04aa83424d7

Excelで学ぶデリバティブとブラック・ショールズ:藤崎達哉
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0ba1e4ccd6d4c416090d4ec7f1e473ac

確率論:伊藤清
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/676542cb57c5c67ec511257b44c73c82

入門確率過程:松原望
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9f7b642bdcb72477e9654fce08ef1bd3

ルベーグ積分入門:伊藤清三
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/686a82d413fe6668cb776488820b1b39

ルベグ積分入門:吉田洋一
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b48ebd53c2e741330526f5d3ff71586f

はじめよう位相空間:大田春外
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/98d355dcb790031607d752984929fe3d

解いてみよう位相空間:大田春外
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/008e49c402513499938c41f8e7083d7a


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8 コメント

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マクロ編 (通りすがり)
2016-11-16 00:35:39
ブラックショールズ理論は金融工学の範疇で、ミクロ経済と呼ぶのはやや違和感が。

それから直観的方法は、メインとしてはおそらくローマーの『上級マクロ経済学』を参考にしてると思います。
そこに加藤と脇田らの上級マクロ本を適宜参考にした感じですか。
あと経済史関連もいくつか読んでますね。

私は、アマゾン書評、ネガティブなものには暗い私情を感じました(ポジティブなものにも変なのありましたが)。
縄張り意識のような。
個人的にはむしろ理系の人はこうみるのか、と面白かったです。
ま、網羅的でないからいわゆる教科書的には使えませんけどね。そのあたりは物理数学本と同様でしょうね。

物理と経済学の思想的類似性は、きちんとしたアカデミズムでも言われてることですし、初級編で多少脱線気味のところ(著者は読者サービスのつもり?)はありましたが、本編部分はまともな教科書を参考にしてるわけでそこまで「異端」でも「奇書」でもないと思います。

返信する
Re: マクロ編 (とね)
2016-11-16 01:01:00
通りすがり様

貴重なアドバイスをいただき、ありがとうございました。この分野は初心者ですので、とても助かります。ご連絡いただいた内容に合わせて記事を修正しておきました。

> 私は、アマゾン書評、ネガティブなものには暗い私情を感じました(ポジティブなものにも変なのありましたが)。縄張り意識のような。

同感です。物理学書に対する書評はおおむね同じような感想がほとんどであるのに対し、本書の書評はそれぞれ意見や考えが違うこと、高評価と低評価のばらつきが大きいと思いました。「こうあるべき」ということの拡がりが物理学系と経済学系ではずいぶん違うものなのですね。



返信する
参考にしようかな^^ (よし)
2016-11-16 07:31:38
利根さんども、
僕は、理系出身でオプショントレーダーを長くやっていたので感じるのかもしれないけど、経済学でも金融工学でも「位相」という概念がかなりネックになってる人が多い気がしますね。
たまに銀行員や証券会社、金融システム系の方々に講義することがある身としては面白そうな本だと思います。特に位相について持ってきてるところはいいですね(好みの問題だけど)参考になるかな。
物理数学は、面白かったですね。
返信する
Re: 参考にしようかな^^ (とね)
2016-11-16 09:55:14
よしさん

コメントありがとうございます。

「位相」でネックになっているとしたら、ルベーグ積分以前のはなしですね。しょっぱなから位相だけ学ぼうとすると経済学や金融工学とどうつながっていくのかは全く見えないと思いますからモチベーションがあがらないと思います。

ぜひプロの目から見たこの2冊の感想をお聞きしたいものです。お時間がとれるようでしたらで結構ですけども。
返信する
正規分布 (hirota)
2016-11-16 11:41:38
「理論を当てにしたヘッジファンドが損をしたのは正規分布じゃなかったから」というようなネタは入ってないのかな?
中心極限定理で正規分布に収束するには条件があるのは常識だけど。
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Re: 正規分布 (とね)
2016-11-16 12:04:23
hirotaさんへ

全体をざっと見てみましたが「理論を当てにしたヘッジファンドが損をしたのは正規分布じゃなかったから」のような具体的な事件は書かれていないようです。

ただ、確率・統計編の116ページから始まる「最後に笑うのは正規分布」の項に現実に合わせるために確率分布理論の修正や金融破綻についての解説があります。でも最後に笑うのは正規分布だとまとめているわけですが。
返信する
安定分布 (hirota)
2016-11-17 13:08:58
すると「現実の経済では正規分布に収束しないかも知れない」という話を聞いたけど、どうなったのかな?
正規分布じゃない収束先の安定分布としては密度関数
(1/π)/(1+x^2)、分布関数で書けば
(1/π)arctan x なんてのがあるけど、この分布は平均値,期待値が存在しなくて困るんですよねー。有限個のデータだけだと平均が存在するように見えるが当てにすると裏切られるし…
返信する
Re: 安定分布 (とね)
2016-11-17 14:59:35
hirotaさんへ

この本を読む時間がまだとれていません。

hirotaさんがお書きになっているような、いろいろな分布についての解説や、現実の経済ではどうなのかということを具体的に書いている箇所は(ざっと見るかぎり)ないようです。
返信する

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