とね日記

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はじめて学ぶリー環: 井ノ口順一

2018年12月23日 13時27分00秒 | 物理学、数学
はじめて学ぶリー環: 井ノ口順一

内容紹介:
本書はリー環のなかでも微分幾何学や理論物理学で使われることの多い古典型複素単純リー環の初歩(の初歩)を解説する。
線型代数を学べばリー環論の初等理論は手の届く位置にある。とは言うものの独学でリー環を学ぶとき線型代数とのギャップで戸惑う読者も少なくない。この本は,リー環論の入門書と「初歩の線型代数」の間のギャップを埋めることを目的に書かれた。やさしめに書かれた線型代数の教科書では学びにくい双対空間,対称双線型形式,一般固有空間分解などが(単純)リー環を扱う上で活用される.このような学びにくい(あるいは学び損ねた)線型代数の知識についてページを割いて丁寧に解説した点が本書の特徴である.この意味で,本書は「本格的にリー環について学ぶための線型代数の本」とも言うことができる。また,戸田格子や幾何構造についても紹介している。
2018年2月刊行、280ページ。

著者について:
井ノ口順一(いのぐちじゅんいち):教員情報
千葉県銚子市生まれ。東京都立大学大学院理学研究科博士課程数学専攻単位取得退学。福岡大学理学部、宇都宮大学教育学部、山形大学理学部を経て、筑波大学数理物質系教授。教育学修士(数学教育)、博士(理学)。専門は可積分幾何・差分幾何。算数・数学教育の研究、数学の啓蒙活動も行っている。日本カウンセリング・アカデミー本科修了、星空案内人(準案内人)、日本野鳥の会会員。

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理数系書籍のレビュー記事は本書で382冊目。

本書は昨年9月に読んで紹介した「はじめて学ぶリー群: 井ノ口順一」の姉妹書ということなのだが11月24日に読み始めたのだが、読了するまで約ひと月かかったことからおわかりのように相当難儀した。前著の「はじめて学ぶリー群」よりずっと難しく感じた。

リー環に関しては7年前に紹介した「連続群論入門 (新数学シリーズ18):山内恭彦、杉浦光夫」の中にほんの少しだけ触れられていたのを読んだのと、同じ頃に読んだ「群と表現:吉川圭二」の次の章で本書で学ぶ、随伴表現、カルタン計量、ルート系、ルート図、ディンキン図ウェイトと既約表現分類定理などを数学的な証明抜きで速習していた。

第8章「単純リー代数とその表現」
第9章「SU(3)」
第10章「単純群リー代数の分類」

本書は、このあたりのことを証明つきで詳しく解説する数学書なのだが内容紹介によると「初歩(の初歩)」だということ。章立てはこのとおり。

第1章 線型代数速習
第2章 リー環入門
第3章 随伴表現
第4章 ルートとウェイト
第5章 抽象ルート系
第6章 複素単純リー環の分類
第7章 無限次元へ
附録A 線型代数続論
附録B 標準化定理
附録C 順序関係
附録D 幾何構造
附録E 演習問題の略解


証明の細かいところは、いくつか理解できずに飛ばしてしまったが、随伴表現、ルートウェイト、そしてディンキン図を使ってどのように複素単純リー環がそのように分類されるのかは理解した。本全体の筋書きがきちんと追えたのが良かった点。

物理学の勉強に役立てるという観点から考えると、ここまで詳しく学ぶ必要はないと思うが、一般教養として理解しておくに越したことはない。天下りな記述を鵜呑みにせず、なぜそのように分類されるようになったのかを知っておくと安心して学んでいける。


2冊まとめてお買い求めになる方は、こちらからどうぞ。

はじめて学ぶリー群: 井ノ口順一」(紹介記事
はじめて学ぶリー環: 井ノ口順一
 


同じ分野の教科書では、佐武先生がお書きになった次の2冊が有力候補になるのだろう。「線型代数学(新装版) (数学選書) : 佐武一郎」を読んでから取り組みたい。

リー群の話 (日評数学選書) : 佐武一郎
リー環の話 (日評数学選書) : 佐武一郎
 
 

関連記事:

はじめて学ぶリー群: 井ノ口順一
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f789b3291f8fd6cd09bee94f1a5e1422

連続群論入門 (新数学シリーズ18):山内恭彦、杉浦光夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/71f347a51bbd16f3c72bb9116d23f597

群と表現:吉川圭二
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/35c16a71ff26b71d6ffc8c2c4730439f

線形代数と群の表現 I :平井武
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3e510783ca6272470f4c9b04f239c425

線形代数と群の表現 II:平井武
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1711924db691840bf740aa39dc1d37d1


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はじめて学ぶリー環: 井ノ口順一


第1章 線型代数速習
- 線型空間
- 双対空間とスカラー積
- 鏡映
- 直交直和分解

第2章 リー環入門
- リー環
- イデアル
- *部分群と部分環の対応
- リー環に対する操作
- 実験

第3章 随伴表現
- *不変内積
- 実験
- キリング形式
- 半単純リー環

第4章 ルートとウェイト
- 広義固有空間分解
- 冪零行列
- 行列の対角化とは
- 実正規行列の標準化
- 実験
- カルタン部分環
- ルート系の性質

第5章 抽象ルート系
- 抽象ルート系の性質
- ルート系の例
- ワイル群
- 単純ルート
- 既約ルート系
- カルタン行列
- ディンキン図形
- 具体的な表示

第6章 複素単純リー環の分類
- 複素単純リー環とルート系
- A型単純リー環
- C型単純リー環
- B型単純リー環
- D型単純リー環
- 例外型単純リー環
- 複素単純リー環の分類
- コンパクト実形
- まとめ
- *スピノル群

第7章 無限次元へ
- 非負行列
- カルタン行列の一般化
- 戸田格子とその一般化
- ループ群
- *微分同相群

附録A 線型代数続論
- 交代双線型形式と外積
- 線型変換の三角化
- 広義固有空間分解

附録B 標準化定理
- *ユニタリ行列の標準化
- *直交行列の標準化
- *ユニタリ・シンプレクティック行列の標準化

附録C 順序関係
- 大小関係の見直し
- 順序付線型空間
- 単純ルート

附録D 幾何構造
- G構造
- ホロノミー群

附録E 演習問題の略解

参考文献
索引

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2 コメント

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文字 (hirota)
2018-12-24 12:51:45
昔はリー環と言えばドイツ文字で、これ何て読むんだろう?と首をひねって結局勉強しませんでしたが、その後ドイツ文字は使われない方向に行くとか聞いたけど今は何で書いてるんでしょう?
だいたい、普通に使うフォントにギリシャ文字やロシア文字も用意されてるのにドイツ文字は無いってのは何でしょうね。
返信する
Re: 文字 (とね)
2018-12-24 14:01:37
hirotaさんへ

この本では一覧表としてリー群とリー環の文字が載っていましたが、そこではドイツ文字が使われていました。ただし本文では普通の欧文小文字が使われています。入力しやすいからでしょうね。

ドイツ文字はフラクトゥールと言うのですね。ウィキペディアによると亀の子文字、亀甲文字、ひげ文字などとも呼ばれることを知りました。LaTeXで表示できるようです。試してみました。表示テストはChromeだとなぜか白黒反転して表示されますが、Firefoxだと白字に黒文字で表示されます。

フラクトゥール(ウィキペディア)
http://u0u1.net/OKSH

LaTeX でドイツ語特殊文字をなんとか出す
http://jibun-yo-memo.ldblog.jp/archives/13740139.html

ドイツ文字をOnline LaTeX Equation Editorで表示テスト
http://u0u1.net/OKTE
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