「量子力学の哲学―非実在性・非局所性・粒子と波の二重性: 森田 邦久」(Kindle版)
内容紹介:
世界の描き方はひとつではない!? 知的刺激にあふれる科学哲学の入門書が登場。
私たち自身を含めたこの世界のすべてが量子力学が扱うミクロな物質から成り立っていることを考えると、ミクロの世界の「真の姿」を理解することは、私たちが日常的に生活しているこの世界を、ひいては私たち自身を理解することにもつながるであろう。本書の目的は、量子力学が私たちに示す世界像についてこれまで提案されてきたさまざまな哲学的議論を解説することである。――はじめにより。
2011年9月刊行、240ページ。
著者について:
森田 邦久
1971年、兵庫県姫路市生まれ。大阪大学基礎工学部卒。博士(理学)、博士(文学)、いずれも大阪大学で取得。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学高等研究所助教をへて、同准教授。著書に、『科学とは何か―科学的説明から探る科学の本質』(晃洋書房)、『理系人に役立つ科学哲学』(化学同人)がある。
森田先生の著書: Amazonで検索
理数系書籍のレビュー記事は本書で358冊目。
先日紹介した「量子的世界像 101の新知識: ケネス・フォード」と同様、かかりつけの歯科医院の先生からお借りした本。新書で240ページなので一気に読むことができた。
そそっかしいのは相変わらずで、初心者向けの量子力学の入門書だと勘違いして読み始めていた。量子力学の入門書は満ちあふれているのに、新しい本を出すのにどんな意味があるのだろう?何か新しいことが書いてあるのだろうか?という気持ちだった。
しかし実際のところ、本書のキーワードは科学哲学、特に量子力学の不思議さに焦点を当てた数々の解釈を紹介する本だった。
「一般向けの科学教養書で量子力学の不思議さ、奇妙さをことさらに強調するのは、そろそろやめにしましょうよ。」という流れの正反対をいく本なのだ。何をもって「哲学」とするのかは、僕にはピンとこないのだが、著者の森田先生は科学哲学がご専門である。
副題には「非実在性・非局所性・粒子と波の二重性」という量子力学の代表的な3つの奇妙さが書かれている。この本が刊行されたのは2011年9月だということを、まずおことわりしておきたい。(東日本大震災から半年後である。)
刊行当時、量子テレポーテーションの実験が成功していることは知られていたが、量子コンピュータが現在のように注目されている時代ではなかった。だから量子力学の奇妙さに焦点を当てる本が出たとしても、それほど不思議なことではない。
また量子の非局所性とは、アインシュタインが発表したEPRパラドックスのことであり、厳密な検証が2015年に行われており、「非局所性」や「量子の絡み合い(エンタングルメント)」は当たり前の事実になっている。解釈が入る余地はもはやない。本書で紹介される解釈では「非局所性」を回避するためのさまざまなアイデアや工夫がされていたことが書かれている。結局それは不必要な努力だと、今になってみればわかるのだ。
量子の非局所性の厳密検証に成功――新方式の量子コンピュータにも道
http://eetimes.jp/ee/articles/1503/24/news125.html
量子の非局所性を厳密に検証 - 東京大学工学部
~新方式の量子暗号・量子コンピューターの実現へ~
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/shared/press//data/20150401_furusawa.pdf
ところで、先月販売されていたのNewton 3月号では「シュレーディンガーの猫の問題」が特集されている。これも量子力学の奇妙さの代表例のひとつ。著者の森田邦久先生は、この特集記事にも協力されている。
「Newton(ニュートン) 2018年 03 月号」(詳細)
この特集記事の結末では、代表的な4つの解釈を紹介して記事を締めくくっている。どの解釈でも不都合な部分が残ってしまい、どれかひとつが正しいというわけではない。この終わり方に釈然としなかった読者もいることだろうし、それぞれの解釈をもっと深く知りたいと思う読者もいたことだろう。
本書は、そのような方の要求を満たしてくれるのだ。シュレ猫だけでなく非実在性・非局所性・粒子と波の二重性に関して、量子論の創成期から最近に至るまで提唱されてきた、あらゆる解釈が紹介される。
章立てはこのとおり。(詳細目次は記事の最後に掲載した。)
第1章:量子力学は完全なのか―量子力学のなにが不思議なのか1
第2章:粒子でもあり波でもある?―量子力学のなにが不思議なのか2
第3章:不可思議な収縮の謎を解け
第4章:粒子も波もある
第5章:世界がたくさん
第6章:他にもいろいろな解釈がある
第7章:過去と未来を平等に考えてみる
量子論がどのようにして発見されたか(ドイツの鉄鋼産業のことや、黒体輻射のこと)、ボーアとアインシュタインの論争などには触れていない。とにかく徹頭徹尾「奇妙さの解釈」をとことん解説、紹介しているのである。
だから理系でない一般の方が量子力学入門書として読めるのは、せいぜい第3章まで。ここまででデコヒーレンス理論やGRW理論は紹介される。第4章以降は話が込み入ってくるのと、状態ベクトル表示を容赦なく使って説明するから、ついていけない読者がたくさんでてくることだろう。Newton 3月号のシュレーディンガーの猫の解釈を詳しく知りたい方は第4章まで読み終える必要がある。
第5章はデコヒーレンス理論の応用。理系の人ならば、まあまあついていけるが状態ベクトルでさらに落ちこぼれてしまう人がでてくるのが、この章だ。
第6章では、さらに理系の人でも初めて耳にするような解釈が紹介される。名前だけお伝えすれば、眉唾っぽいことがお分かりいただけると思う。解釈をめぐって科学哲学がいかに迷走してきたかがわかる。
- 裸の解釈1
- 裸の解釈2
- 多精神解釈1
- 多精神解釈2
- 単精神解釈
- 一貫した歴史解釈(多歴史解釈)1
- 一貫した歴史解釈(多歴史解釈)2
- 様相解釈1
- 様相解釈2
最終章は「第7章:過去と未来を平等に考えてみる」なのだが、時間を対称化することによって解釈問題の解決を試みる。僕にとっては目新しい。相対論的量子力学を導入したアプローチ。クライン-ゴルドン方程式を使った解決案が紹介されるが、これはすぐダメだとわかる。そして次に提案されるのが「交流解釈」というもの。著者の森田先生は、この解釈の将来性、可能性を信じていらっしゃるそうだ。書かれていることは理解できたが、僕にはそれほど素晴らしいものとは思えなかった。
確かに「観測問題」、「コペンハーゲン解釈」は科学史上のできごととしてあったのは事実であるし、量子力学は初めて学ぶ方には奇妙に思えることが多い。そのような方が本書を読むと、ますます混乱してきそうである。
量子コンピュータが実現するのは遠くない将来のことであり、時代は変わりつつある。EPRパラドックスはもはや不思議ではなく現実の物理現象だと確認されたわけだし、波動関数の収縮(波束の収縮)が全然不思議でないことなど、「コペンハーゲン解釈」に関する現代の解釈について、量子情報理論がご専門の堀田先生( @hottaqu)は、この連投ツイートで解説しているので、本書をお読みになる方にはお読みいただきたい。
そして初めて量子力学に入門される一般の方には、むしろこちらをお読みいただきたいのだ。現時点ではこの本がベストな選択だと思う。詳細はこのページでご確認いただける。
「量子論 増補第4版 (ニュートン別冊)」(詳細)
そして、このニュートン別冊を読み終えた方には「アインシュタインの反乱と量子コンピュータ: 佐藤文隆」をお勧めする。
今日紹介した「量子力学の哲学―非実在性・非局所性・粒子と波の二重性: 森田 邦久」(Kindle版)は、これまで提唱された量子力学の解釈には、どのようなものがあったかということを参考までに知りたいという方がお読みになるとよいのだろう。2011年に書かれた本であり、最新の量子力学の成果を反映していないということを念頭に置いて読むべきである。
基礎物理学的な話題では、光子どうしの絡み合いに関連して、3月2日このニュースが発表されていることをお伝えして記事をしめくくろう。
光子-光子相互作用による新しい光の形態を創出 - MITとハーバード大
https://news.mynavi.jp/article/20180302-592852/
ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
「量子力学の哲学―非実在性・非局所性・粒子と波の二重性: 森田 邦久」(Kindle版)
はじめに
第1章:量子力学は完全なのか―量子力学のなにが不思議なのか1
- 量子的スクラッチカード
- 色ははじめから決まっていたか?
- 電子を使って考えてみよう
- ミクロの世界には私たちが知らない「なにか」があるのか?
- 1つ目、2つ目の課題
- 余分な仮定
- 3つ目の課題
第2章:粒子でもあり波でもある?―量子力学のなにが不思議なのか2
- 光は粒子なのか波なのか
- 光は波?
- 光はやっぱり粒子?
- 結局、光は粒子なのか波なのか
- 粒子か波かを選択できる?
- 4つ目の課題
- 標準的な解釈とは?
- なにを見るかでなにが見えるかが決まる
- 相補性をどう考えるか
- 各解釈の概要
第3章:不可思議な収縮の謎を解け
- シュレーディンガーの猫
- そもそも測定ってどういうこと?
- ヘタな鉄砲も数撃ちゃ当たる?
- 目盛りの一で測定したい場合は?
- 収縮の生じるメカニズム
- 環境との相互作用が大事
- デコヒーレンスはどのようにして起こるか
- GRW理論 vs.デコヒーレンス理論
- 測定による収縮は実験で証明できるか
第4章:粒子も波もある
- ふたたび、粒子か波か
- 粒子は波に乗って
- NO-GO(ノー・ゴー)定理
- 軌跡解釈と状況依存性
- 軌跡解釈と非局所性
- 軌跡解釈と相対性理論
第5章:世界がたくさん
- 状態は収縮しない
- デコヒーレンス理論を応用しよう
- 状態ベクトル
- どの状態で分解するのかはどう決めるのか?
- 確率にどのような意味があるのか
- 確実に金持ちになれる方法があるのだけど...
- 人工頭脳を使って正しさを証明できるか
- ふたたびどの状態で分解するかの問題
- 時間を反転できる「スーパーマン」がいたら?
- 多世界解釈で実在性と局所性は守られたか
第6章:他にもいろいろな解釈がある
- 裸の解釈1
- 裸の解釈2
- 多精神解釈1
- 多精神解釈2
- 単精神解釈
- 一貫した歴史解釈(多歴史解釈)1
- 一貫した歴史解釈(多歴史解釈)2
- 様相解釈1
- 様相解釈2
第7章:過去と未来を平等に考えてみる
- 未来が原因となって現在が決まる
- どのようなときに逆向き因果があるのか
- 因果の向きは主観的か?
- クライン-ゴルドン方程式に注目する
- 未来と過去が握手をする
- 交流解釈でミクロ世界の謎は解決するのか
- 方程式は対称なのに現実は非対称
- 量子力学を時間的に対称にする
- 非局所性をどのようにして避けるか
- 他の解釈の問題点
- 時間対称化された量子力学と多世界解釈
- 従来の量子力学と時間対象化された量子力学
- ハーディーのパラドクス
- マイナス1の確率
読書案内(量子力学の哲学に関する本)
索引
内容紹介:
世界の描き方はひとつではない!? 知的刺激にあふれる科学哲学の入門書が登場。
私たち自身を含めたこの世界のすべてが量子力学が扱うミクロな物質から成り立っていることを考えると、ミクロの世界の「真の姿」を理解することは、私たちが日常的に生活しているこの世界を、ひいては私たち自身を理解することにもつながるであろう。本書の目的は、量子力学が私たちに示す世界像についてこれまで提案されてきたさまざまな哲学的議論を解説することである。――はじめにより。
2011年9月刊行、240ページ。
著者について:
森田 邦久
1971年、兵庫県姫路市生まれ。大阪大学基礎工学部卒。博士(理学)、博士(文学)、いずれも大阪大学で取得。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学高等研究所助教をへて、同准教授。著書に、『科学とは何か―科学的説明から探る科学の本質』(晃洋書房)、『理系人に役立つ科学哲学』(化学同人)がある。
森田先生の著書: Amazonで検索
理数系書籍のレビュー記事は本書で358冊目。
先日紹介した「量子的世界像 101の新知識: ケネス・フォード」と同様、かかりつけの歯科医院の先生からお借りした本。新書で240ページなので一気に読むことができた。
そそっかしいのは相変わらずで、初心者向けの量子力学の入門書だと勘違いして読み始めていた。量子力学の入門書は満ちあふれているのに、新しい本を出すのにどんな意味があるのだろう?何か新しいことが書いてあるのだろうか?という気持ちだった。
しかし実際のところ、本書のキーワードは科学哲学、特に量子力学の不思議さに焦点を当てた数々の解釈を紹介する本だった。
「一般向けの科学教養書で量子力学の不思議さ、奇妙さをことさらに強調するのは、そろそろやめにしましょうよ。」という流れの正反対をいく本なのだ。何をもって「哲学」とするのかは、僕にはピンとこないのだが、著者の森田先生は科学哲学がご専門である。
副題には「非実在性・非局所性・粒子と波の二重性」という量子力学の代表的な3つの奇妙さが書かれている。この本が刊行されたのは2011年9月だということを、まずおことわりしておきたい。(東日本大震災から半年後である。)
刊行当時、量子テレポーテーションの実験が成功していることは知られていたが、量子コンピュータが現在のように注目されている時代ではなかった。だから量子力学の奇妙さに焦点を当てる本が出たとしても、それほど不思議なことではない。
また量子の非局所性とは、アインシュタインが発表したEPRパラドックスのことであり、厳密な検証が2015年に行われており、「非局所性」や「量子の絡み合い(エンタングルメント)」は当たり前の事実になっている。解釈が入る余地はもはやない。本書で紹介される解釈では「非局所性」を回避するためのさまざまなアイデアや工夫がされていたことが書かれている。結局それは不必要な努力だと、今になってみればわかるのだ。
量子の非局所性の厳密検証に成功――新方式の量子コンピュータにも道
http://eetimes.jp/ee/articles/1503/24/news125.html
量子の非局所性を厳密に検証 - 東京大学工学部
~新方式の量子暗号・量子コンピューターの実現へ~
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/shared/press//data/20150401_furusawa.pdf
ところで、先月販売されていたのNewton 3月号では「シュレーディンガーの猫の問題」が特集されている。これも量子力学の奇妙さの代表例のひとつ。著者の森田邦久先生は、この特集記事にも協力されている。
「Newton(ニュートン) 2018年 03 月号」(詳細)
この特集記事の結末では、代表的な4つの解釈を紹介して記事を締めくくっている。どの解釈でも不都合な部分が残ってしまい、どれかひとつが正しいというわけではない。この終わり方に釈然としなかった読者もいることだろうし、それぞれの解釈をもっと深く知りたいと思う読者もいたことだろう。
本書は、そのような方の要求を満たしてくれるのだ。シュレ猫だけでなく非実在性・非局所性・粒子と波の二重性に関して、量子論の創成期から最近に至るまで提唱されてきた、あらゆる解釈が紹介される。
章立てはこのとおり。(詳細目次は記事の最後に掲載した。)
第1章:量子力学は完全なのか―量子力学のなにが不思議なのか1
第2章:粒子でもあり波でもある?―量子力学のなにが不思議なのか2
第3章:不可思議な収縮の謎を解け
第4章:粒子も波もある
第5章:世界がたくさん
第6章:他にもいろいろな解釈がある
第7章:過去と未来を平等に考えてみる
量子論がどのようにして発見されたか(ドイツの鉄鋼産業のことや、黒体輻射のこと)、ボーアとアインシュタインの論争などには触れていない。とにかく徹頭徹尾「奇妙さの解釈」をとことん解説、紹介しているのである。
だから理系でない一般の方が量子力学入門書として読めるのは、せいぜい第3章まで。ここまででデコヒーレンス理論やGRW理論は紹介される。第4章以降は話が込み入ってくるのと、状態ベクトル表示を容赦なく使って説明するから、ついていけない読者がたくさんでてくることだろう。Newton 3月号のシュレーディンガーの猫の解釈を詳しく知りたい方は第4章まで読み終える必要がある。
第5章はデコヒーレンス理論の応用。理系の人ならば、まあまあついていけるが状態ベクトルでさらに落ちこぼれてしまう人がでてくるのが、この章だ。
第6章では、さらに理系の人でも初めて耳にするような解釈が紹介される。名前だけお伝えすれば、眉唾っぽいことがお分かりいただけると思う。解釈をめぐって科学哲学がいかに迷走してきたかがわかる。
- 裸の解釈1
- 裸の解釈2
- 多精神解釈1
- 多精神解釈2
- 単精神解釈
- 一貫した歴史解釈(多歴史解釈)1
- 一貫した歴史解釈(多歴史解釈)2
- 様相解釈1
- 様相解釈2
最終章は「第7章:過去と未来を平等に考えてみる」なのだが、時間を対称化することによって解釈問題の解決を試みる。僕にとっては目新しい。相対論的量子力学を導入したアプローチ。クライン-ゴルドン方程式を使った解決案が紹介されるが、これはすぐダメだとわかる。そして次に提案されるのが「交流解釈」というもの。著者の森田先生は、この解釈の将来性、可能性を信じていらっしゃるそうだ。書かれていることは理解できたが、僕にはそれほど素晴らしいものとは思えなかった。
確かに「観測問題」、「コペンハーゲン解釈」は科学史上のできごととしてあったのは事実であるし、量子力学は初めて学ぶ方には奇妙に思えることが多い。そのような方が本書を読むと、ますます混乱してきそうである。
量子コンピュータが実現するのは遠くない将来のことであり、時代は変わりつつある。EPRパラドックスはもはや不思議ではなく現実の物理現象だと確認されたわけだし、波動関数の収縮(波束の収縮)が全然不思議でないことなど、「コペンハーゲン解釈」に関する現代の解釈について、量子情報理論がご専門の堀田先生( @hottaqu)は、この連投ツイートで解説しているので、本書をお読みになる方にはお読みいただきたい。
そして初めて量子力学に入門される一般の方には、むしろこちらをお読みいただきたいのだ。現時点ではこの本がベストな選択だと思う。詳細はこのページでご確認いただける。
「量子論 増補第4版 (ニュートン別冊)」(詳細)
そして、このニュートン別冊を読み終えた方には「アインシュタインの反乱と量子コンピュータ: 佐藤文隆」をお勧めする。
今日紹介した「量子力学の哲学―非実在性・非局所性・粒子と波の二重性: 森田 邦久」(Kindle版)は、これまで提唱された量子力学の解釈には、どのようなものがあったかということを参考までに知りたいという方がお読みになるとよいのだろう。2011年に書かれた本であり、最新の量子力学の成果を反映していないということを念頭に置いて読むべきである。
基礎物理学的な話題では、光子どうしの絡み合いに関連して、3月2日このニュースが発表されていることをお伝えして記事をしめくくろう。
光子-光子相互作用による新しい光の形態を創出 - MITとハーバード大
https://news.mynavi.jp/article/20180302-592852/
ブログ執筆のはげみになりますので、1つずつ応援クリックをお願いします。
「量子力学の哲学―非実在性・非局所性・粒子と波の二重性: 森田 邦久」(Kindle版)
はじめに
第1章:量子力学は完全なのか―量子力学のなにが不思議なのか1
- 量子的スクラッチカード
- 色ははじめから決まっていたか?
- 電子を使って考えてみよう
- ミクロの世界には私たちが知らない「なにか」があるのか?
- 1つ目、2つ目の課題
- 余分な仮定
- 3つ目の課題
第2章:粒子でもあり波でもある?―量子力学のなにが不思議なのか2
- 光は粒子なのか波なのか
- 光は波?
- 光はやっぱり粒子?
- 結局、光は粒子なのか波なのか
- 粒子か波かを選択できる?
- 4つ目の課題
- 標準的な解釈とは?
- なにを見るかでなにが見えるかが決まる
- 相補性をどう考えるか
- 各解釈の概要
第3章:不可思議な収縮の謎を解け
- シュレーディンガーの猫
- そもそも測定ってどういうこと?
- ヘタな鉄砲も数撃ちゃ当たる?
- 目盛りの一で測定したい場合は?
- 収縮の生じるメカニズム
- 環境との相互作用が大事
- デコヒーレンスはどのようにして起こるか
- GRW理論 vs.デコヒーレンス理論
- 測定による収縮は実験で証明できるか
第4章:粒子も波もある
- ふたたび、粒子か波か
- 粒子は波に乗って
- NO-GO(ノー・ゴー)定理
- 軌跡解釈と状況依存性
- 軌跡解釈と非局所性
- 軌跡解釈と相対性理論
第5章:世界がたくさん
- 状態は収縮しない
- デコヒーレンス理論を応用しよう
- 状態ベクトル
- どの状態で分解するのかはどう決めるのか?
- 確率にどのような意味があるのか
- 確実に金持ちになれる方法があるのだけど...
- 人工頭脳を使って正しさを証明できるか
- ふたたびどの状態で分解するかの問題
- 時間を反転できる「スーパーマン」がいたら?
- 多世界解釈で実在性と局所性は守られたか
第6章:他にもいろいろな解釈がある
- 裸の解釈1
- 裸の解釈2
- 多精神解釈1
- 多精神解釈2
- 単精神解釈
- 一貫した歴史解釈(多歴史解釈)1
- 一貫した歴史解釈(多歴史解釈)2
- 様相解釈1
- 様相解釈2
第7章:過去と未来を平等に考えてみる
- 未来が原因となって現在が決まる
- どのようなときに逆向き因果があるのか
- 因果の向きは主観的か?
- クライン-ゴルドン方程式に注目する
- 未来と過去が握手をする
- 交流解釈でミクロ世界の謎は解決するのか
- 方程式は対称なのに現実は非対称
- 量子力学を時間的に対称にする
- 非局所性をどのようにして避けるか
- 他の解釈の問題点
- 時間対称化された量子力学と多世界解釈
- 従来の量子力学と時間対象化された量子力学
- ハーディーのパラドクス
- マイナス1の確率
読書案内(量子力学の哲学に関する本)
索引
まあ、物理の物は自然、理は哲学からきているので、哲学の一種なんでしょうが、究極わからんので、究極の仮定である原理を引いて哲学と科学の分離させるのでしょうね。
その意味で、アインシュタインの相対性原理と不確定性原理が相容れずその究極じゃないから、反乱したと理解してます。
というか、そういう風に書いてる本をみたことないんです。
慣性の法則なんてスゴく不思議でしょ?
慣性の法則は結果を受け止めるしかありませんが、スペクトルが直線なのに色覚が色相環になってることくらいなら人の色覚が3原色なのが原因と分かっています。
爬虫類だと4原色なので色相球ですが、更に多い魚類では高次元色覚なんでしょう。
宇宙には高次元色覚を持って生まれながらに高次元を認識できる知的生命が居るかも知れませんが、人類とコミュニケーションできるかなー?
色で記述された論文を見せてもらっても全然分からん!
(話がズレてしまった)
人の感覚の制約で不思議が生じるという結論でした。
(無理に話を戻した?)
> 物理の物は自然、理は哲学からきているので、哲学の一種なんでしょうが、究極わからんので、究極の仮定である原理を引いて哲学と科学の分離させるのでしょうね。
なるほど。わかりやすい説明ですね!
すごくhirotaさんらしさが出ているコメントだと思いました。
> 「古典力学は不思議じゃないんかい!」と言いたくなってしまいます。
> 慣性の法則なんてスゴく不思議でしょ?
そうなんですよね。でも、これって古典力学をひととおり学んでから気が付くのが普通の人だと思うんです。力学を始めて学ぶ高校生とかは、科学雑誌Newtonやら、教科書に書いてあることを鵜呑みにするから当たり前に思っているのですよね。
慣性の法則を第一法則としたニュートンは偉いです。高校生のころ、このシンプルな法則をわざわざ第一法則としたのか、その意義の深さを僕はまったく理解していませんでした。
ところで、いただいたコメントの後半はSFになっていますね。ww