とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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ファインマン経路積分:L.S.シュルマン

2011年01月24日 19時22分12秒 | 物理学、数学
ファインマン経路積分:L.S.シュルマン」高塚和夫訳

風邪もようやく治り、いつもの調子に戻ったので、ようやく読み終えることができた。

年末から紹介してきた「量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス」や「量子波のダイナミクス:森藤正人」が経路積分への入門書であるのに対し、中級者向けのノウハウ本だ。経路積分の原理は独創的でシンプルであるのだが、実際の問題に適用しようとなると、いろいろな解析学のテクニックや工夫が必要になる。

1965年にファインマンが世に送り出した「量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス」は名著であるが非常に難しい。実際にさまざまな問題を解くための解説書がずっと待望されていた。このような状況の中で1981年に出版されたのが本書(英語版)なのだ。高塚和夫先生により翻訳され1995年に日本語版が出版された。

日本語版では小さな活字で320ページあまりの大著。読み始めてすぐわかるのだが、生き生きした文章はシュルマン先生のユーモアがあふれ、原文の良さは上手に日本語版に再現されている。

本書はたった一人の著者が書かれたこと、そして翻訳もたった一人で行われたことには驚かされる。教科書というよりエッセイに近く、やさしいものではない。それぞれの問題に対する取りかかり方や考え方、解き方のテクニックが次々に展開されているので、読む側も相当な理解力と計算力を必要とする。「手取り足取り」の入門書ではない。

本書が執筆された時点で数学的に解決しつくされていない問題や研究段階の問題はいくつもあり、他の研究者の論文も含めて多くの論文や書籍が紹介されている。

読後、あらためて「量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス」をながめてみると易しく感じた。錯覚かもしれないが。(笑)

本書は初心者向けではないが、今もなお多くの学生に必要とされる本だと思った。僕のように全部読むものいいだろうし、必要な章だけ解法のリファレンスとして拾い読みするのもよいだろう。

残念ながら日本語版は絶版なので、1700円ほどで購入可能な英語版のほうをお勧めする。1981年に出版されて以降、何度か誤植訂正され現在販売されているのは2005年版である。英語版には紙数の都合で日本語版には入れることができなかった2章が含められている。

Techniques and Applications of Path Integration :L.S.Schulman


日本語版の復刊にご協力いただける方は、以下のリンクから投票をお願いします。

復刊ドットコム
ファインマン経路積分(ロ-レンス・S.シュルマン)
http://www.fukkan.com/fk/VoteDetail?no=43339


関連リンク:

シュルマン先生のHP:
http://people.clarkson.edu/~lschulma/

経路積分とは何か?(Applet同梱版)
http://homepage3.nifty.com/iromono/movingtext/pathintegral1.html

現代物理と仏教を考えるページ
~ファインマンの経路積分量子化と華厳経を中心に~
http://www6.ocn.ne.jp/~kishi123/
(僕は仏教については一般常識以上の知識を持ち合わせていないので、物理学と仏教の関係について意見できる立場にはないが、岸さんのこのサイトはファインマンの経路積分を物理学的な側面から詳しく、きちんと解説されているので紹介させていただいた。)

経路積分こと始め(1)
http://blogs.yahoo.co.jp/kafukanoochan/64130680.html

量子力学と経路積分:R.P.ファインマン、A.R.ヒッブス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2b9d934a542cf04be54cbede8b16ecde

量子波のダイナミクス - ファインマン形式による量子力学 -:森藤正人
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/20dea8ac600f55f0c79934c6342e8c5c


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ファインマン経路積分:L.S.シュルマン」高塚和夫訳


序文
日本語版への序文(原文)

第1部:入門編
1章:経路積分、その導入と定義
2章:経路に沿っての確率と確率振幅
3章:経路積分の古典極限(発見法的アプローチ)
4章:ベクトルポテンシャルと経路積分公式のもう1つの証明
5章:伊藤積分とゲージ変換
6章:積分の実行:自由粒子と2次のラグランジアン
7章:グリーン関数の性質:ファインマン-カッツ公式
8章:汎関数微分と交換関係
9章:ブラウン運動とウィーナー積分;Kacによる証明
10章:摂動論とファインマンダイアグラム

第2部:応用編
11章:漸近解析
12章:変分理論
13章:WKB近似と非調和振動子への応用
14章:WKB近似の詳細
15章:コースティクス近傍のWKB
16章:コースティクスとユニフォーム近似
17章:半古典近似の振幅項に現れる位相因子
18章:エネルギーの関数としてのプロパゲータとその半古典論
19章:散乱理論
20章:幾何光学
21章:ポーラロン
22章:スピンとそれに関連する問題
- 直接法:積積分または時間順序積
- スピンの連続モデル
23章:多重連結空間での経路積分
- 円上に拘束された粒子
- ホモトピー理論の初歩
- ホモトピー理論の経路積分への応用
- 対称演算子の拡張
24章:曲がった空間の量子力学
25章:相対論的プロパゲータとブラックホール
26章:統計力学への応用
27章:経路積分のコヒーレント表示
28章:臨界液滴、またはインスタントン、および準安定性
29章:補遺、各論、および私的見解
- 場の理論
- 不完全平方
- ゴム:ランダムウォークとしての高分子の汎関数積分
- 剛体球気体と第二ビリアル係数
- コンピュータによる経路和
- 経路積分による摂動展開
- ポテンシャル ax^2+b/x^2 に対する経路積分の厳密解
- 超流動
- フェルミオン
- 経路積分に関する本および総説

訳者あとがき
訳者による追加文献
人名索引
事項索引
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