とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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多次元空間へのお誘い(4):絡まるとはどういうことか?

2015年06月17日 01時21分33秒 | 理科復活プロジェクト
絡まったイヤフォンケーブル


絡まるとはどういうことか?

前回の記事では3次元から6次元までのそれぞれの空間の中で、どのような物体が絡まるのか紹介いたしました。

そもそも「絡まる」とはどういうことなのでしょうか?

あまりにも日常的な現象なので、あえて考えてみたことがない人がほとんどでしょう。この記事をきっかけにして、ぜひ考えてみてください。


まず、これが絡まっていない状態です。



そして、これが絡まった状態です。



青いひもが絡まるためには、赤いひもに巻きつく方向に曲がるだけでなく、赤いひもが伸びている方向に「ずれて」、自分自身または赤いひもと「交差」しなければならないのです。この写真で青いひもは自分自身と交差しています。そしてひもが交差することによって、ひもの「ループ(輪)」が生じます。そのループが絡まる相手(自分自身のこともある)の周囲を囲むことになります。

そうするとひもは3次元の空間が許すどの方向(上下、左右、縦横)に移動させても、ループとぶつかってしまうので、ループを切断しない限りひもはそれ以上自由に移動できません。

ただし、まったく自由に移動できなくなるわけではありません。交差しない元の状態に戻すようには動けます。これが「絡まりをほどく」ということです。

つまり「交差してループができて相手(または自分自身)を囲むこと」が「絡まること」の本質なのです。そうなるためには、そのひもが2つの方向に曲がらなければなりません。そして、ひもに限らず2次元以上の物体でも同じことがいえるのです。

また、物体が交差した結果にできたループに物体の一部が入ってから反対側に出てしまった状態を「結び目」と呼びます。


たとえば、このように横に伸びたひもがあります。



このひもはこのように縦方向に曲げることができます。



そして、3次元空間では上方向に曲げることもできます。




その空間の中で物体が曲がることのできる方向の個数を「曲がりの自由度」と呼ぶことにしましょう。この数が2だとその物体が絡まることができるのです。

3次元空間の次元数の3からひもの次元数の1を引くと2になります。この2は曲がりの自由度をあらわします。

曲がりの自由度=3-1=2


次に布の場合を考えてみましょう。布をこのように置きます。布は2次元の物体です。



この布はこのように1方向にしか曲げられません。曲げられるのは上方向だけですから。やわらかい布だけでなく、下敷きのように硬い物でも同じように曲げることができます。



曲がりの自由度を計算してみましょう。空間の次元数から物体の次元数を引けばよいのでした。

曲がりの自由度=3-2=1

3次元空間の中で、布や下敷きのような物体を曲げられる方向が1つであることが、この計算で示されたわけです。そして曲がりの自由度は2ではありませんから布や下敷きが3次元空間で絡まないことも示されたことになります。


3次元の物体のときは、もうおわかりだと思います。このような物体はどの方向にも曲げることができませんよね。空間は3次元です。



曲がりの自由度=3-3=0

このようにして3次元空間の中では3次元物体を曲げられないことが計算できました。曲がりの自由度も2ではありませんから、この物体は3次元空間では絡むことができません。


これまでのことを表にすると、このようになります。




同じ方法を使って2次元空間(平面)で1次元のひもが絡まないことも計算できますね。曲がりの自由度は空間の次元数2から物体の次元数1を引いて1が求まります。1本のひもだけでなく2本のひもも絡むことはありません。上方向に曲がれないので、ひもが交差できないからです。




さて、前回の記事では多次元空間で絡むことができる物体の次元数を紹介しました。その組み合わせとはこのようなものでした。

3次元空間では1次元のひもとひも、もしくはひも自身が絡まります。



4次元空間では2次元の面と面、もしくは面が自分自身で絡まります。



5次元空間では3次元の立体と立体、もしくは立体が自分自身で絡まります。



そして6次元空間では4次元の超立体と超立体、もしくは超立体が自分自身で絡まります。


それぞれについて曲がりの自由度を計算すると、この表が出来上がります。




曲がりの自由度はどれも2ですね。多次元空間でこれらの次元の物体が絡むことを計算で示すことができました。

2次元物体や3次元物体がどのようにしたら2方向に曲げることができるかについては謎のままだと思いますが、これはまた後日説明させていただきます。


今日の記事をまとめると次の3つになります。

1)絡まるためには物体が「交差してループができて相手(または自分自身)を囲む」ことが必要

2)そのためにはその空間で物体が2方向に曲がることが必要

3)物体が曲がる方向の数(曲がりの自由度)は空間の次元数から物体の次元数を引いて求める


さて、次回の記事では「ひもが絡まるのは3次元空間だけでおきる」こと、そしてどんなに複雑に絡まったひもでも4次元空間では簡単に解けてしまうことを説明いたします。


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2 コメント

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微小移動 (hirota)
2015-06-17 11:43:03
一番上の2本のヒモは微小移動で通過できない状態ですね。
微小移動をキーとすれば、2次元平面上の点とヒモも微小移動で通過できない状態になります。
3次元空間の2枚の曲面も接触すれば微小移動で通過できない状態ですから、絡む状態と自由状態の間に「微小移動で通過できない状態」が考えられます。
返信する
Re: 微小移動 (とね)
2015-06-17 19:43:34
hirotaさん

はい、おっしゃるとおりです。
2枚の曲面も微小移動で通過できない状態になります。けれども交差してループを形成することはできません。
返信する

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