
HP 50g (2006-2015)
前回の記事では1976年に発売された古いプログラム電卓のアプリを紹介したが、その後の科学電卓の機能向上と高速化はみなさんがご存知のとおりである。前回の記事にコメントをいただいた「やすさん」がこの電卓に興味をお持ちであることを知り、記事を書いてみることにした。
今回紹介するのは現時点でiOS用として手に入るものの中で最強の科学電卓アプリだ。2006年に発売開始されたHP 50gである。数式処理システムを備えたこのグラフ電卓は今年の末に製造中止になることが決まっていて、「HP Prime Graphing Calculator」という後継機に道をゆずることになる。(これは後継機とはいえHP 50gとは設計方針が違う電卓だ。グラフ描画性能(参考動画)は格段に進歩している。ちなみにAndroidスマホ用の公式アプリはここから2420円でダウンロード購入できる。詳細はこの電卓の紹介記事をお読みいただきたい。)
発売中の高級電卓であるにもかかわらず、HP 50gはiPhoneとiPadの共通アプリとして1200円で販売されているのだ。2万円近くする実機を購入する前に試してみるのもよいだろう。
画面表示は実機を忠実に再現している。スキンはいくつか用意されているのだが、iPhoneでは左の表示、iPadは実機そのままの表示が使いやすいと思う。
スクリーンショット(左:iPhone、右:iPad)


アプリを操作している様子はこの動画で見ることができる。
Androidスマホをお持ちの方には、この機種とほとんど同じ「HP 49g+」という機種のアプリが「go49g+」として販売されている。
PC用のエミュレータ(無料)は以下のページからダウンロードできる。
HP Calculator Emulators for the PC
http://www.hpcalc.org/hp49/pc/emulators/
HP 50gは最強電卓アプリであるがゆえに、使いこなせるようになるには手間がかかる。プログラミングはRPL (ROM-based Procedural LanguageまたはReverse Polish Lisp:逆ポーランドLisp)というHP社が1984年に発表した言語で行わなければならない。(ウィキペディアのRPLの説明)
製品マニュアルは次のページからダウンロードすることができる。
HP 50g Graphing Calculator - Manuals (Googleで検索)
http://support.hp.com/us-en/product/HP-50g-Graphing-Calculator/3235173/model/3235174/manuals/
HP 50g graphing calculator user's guide (887ページ): PDF
HP 50g graphing calculator user's manual (184ページ): PDF
HP 50g/49g+/48gII graphing calculator advanced user’s reference manual Edition 2 (693ページ): PDF
パソコンのモニターに美しいグラフが描ける現在、この電卓の粗い白黒の画面で描画されるグラフには何の魅力もない。それでもなお僕がこの電卓(アプリ)をお勧めするのは、電卓に備わっている機能がとても豊富で優れているからだ。
887ページもあるUser's Guideの目次には微分方程式、フーリエ変換、ラプラス変換、コーシー方程式、オイラー方程式、ルジャンドル方程式、ベッセル方程式、チェビシェフ方程式、ラゲール方程式などの項目が並んでいる。この電卓の計算機能がいかに豊富であることがおわかりであろう。
HP 50gの使い方を学びたい方は、製品マニュアルのほか次のような教材を利用していただきたい。
動画:再生リスト
Web上のチュートリアル:
HP-50g Calculator Tutorial
http://resources.thiel.edu/mathproject/CalculatorLessons/Default.htm
HP 50g calculator info
http://www.ele.uri.edu/faculty/vetter/Other-stuff/HP-calculators/HP-50g/
RPL Programming Tutorial - HP 49g+/50g
http://edspi31415.blogspot.jp/2011/10/rpl-programming-tutorial-part-1-hp.html
HP 50g Sample Programs
http://www.hpcalc.org/
日本語で読める情報としては、次のものが公開されている。
HP電卓のまとめ(HP 50g)
http://buin2gou.com/hpcalc/hp50g.html
HP 50gを使ってみて(イイよ!)
http://ito-yu.cocolog-nifty.com/dialy/2010/12/hp-50g-4106.html
HP 50gメモ
http://www.kabipan.com/computer/50g/
はじめてのHP50g
http://ifolk.no-ip.info/comm_sns/index.php?topic=031dentaku
HP50gでラマヌジャンに挑戦
http://ll.jus.or.jp/2009/slide/redcarpet/HP50g.pdf#search='HP+50g'
HP 50g Graphing Calculatorとライブラリー登録方法
http://kirokur.web.fc2.com/hp/200904.html
実機購入:
ここまで読んで実機が欲しくなってしまった方は、次の画像をクリックしていただきたい。
AmazonでHP 50gを検索

商品の説明
HP 50g は単なる計算機ではなく、コンパクトな数式処理・数値解析コンピュータです。 初等数学から難解な工学/科学の問題まで、多様な分野の計算や数式処理に役立ちます。
仕様
- 数式ライブラリの拡充と、2300 以上のビルドイン関数により、学生はもちろん、プロフェッショナルにも理想的
- 入力方式は RPN, Textbook, Algebraic 形式から選択できます
- 512KB の RAM と 2MB のフラッシュ ROM で、トータル 2.5MB ものメモリを搭載
- SDカードスロットを搭載(1GBまで対応)
- USBでWindows PCと接続できます。さらに、赤外線での通信もできます。
関連記事:
HP Prime Graphing Calculator for Android
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/28672920bba216620bd6aa424010ff99
HP-67, HP-97 for iPad、HP-67 for iPhone
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/838a982f2ed2355c7a8fed4c07a7a9e1
プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, HP-67): Android携帯アプリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0ad3750a80319805913264169939ea93
プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, CASIO fx-602P): iPhoneアプリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e462acad2de19fdd92d574078ccff000
プログラム関数電卓ノスタルジア (CASIO fx-502P、fx-602P、fx-5800P): fx-602P Androidアプリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8c31d67db36639471e9bc3209f88b3de
関数電卓ノスタルジア (HP-12C, HP-15C, HP-16C)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/03e84c4fe4608f263779c5f442bf29f9
世界初のポータブル関数電卓 HP-35 のAndroid, iPhoneアプリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/13e4fc1e351e97d616fe237ba0663372
HP社の科学電卓、Windows用の無料エミュレータ(HP 35s、HP-15C)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d2028e32d4c59d3076af838cf24a4ba4
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ネットに散らばっているほぼ全ての情報をまとめて頂き、ありがとうございます。大変有用なエントリーです。
以前ボランティアで、FORTH系統の日本語プログラミング言語 mind を使って、簡単なデータベースソフトを作った以外は、逆ポーランド記法とは全く縁がなく、電卓もカシオ品しか使ったことが無いのです。
hp電卓は、さらにアセンブラに近い感じです。hp50gは、スタックに入っている値を一覧で参照できるので、それだけで敷居が大きく下がるとおもいます。ただし、プログラミングで必須の配列の扱いをとってみても、高級言語しか知らない私には、煩雑に思います。
かなり勉強して慣れる必要がありそうです。新しいことを勉強するのは好きなので、暫く遊んでみようと思います。
生産終了の前に実機を買うかどうか、判断できる程度には理解を深めたいと思います。
どういたしまして。自分でも役に立つ記事にしようと、くまなくネット上の情報を集めてみました。
高級言語に慣れている一般の読者は、なぜこういう電卓にこだわるのか不思議に思うかもしれませんね。
次の記事では後継機(?)の「HP Prime Graphinc Calculator」とそのAndroidアプリの紹介をする予定です。情報収集を始めたばかりですが、プログラム電卓という観点から見たときHP 50gとの違いがどのようなものか興味があります。ちなみに僕は電卓アプリを試すためにiPhoneスマホとAndroidスマホの両方を使っています。
電卓へのこだわり、私が最近のカシオのプログラム電卓に深く興味を持つ理由は、構造化Basicを搭載していて、繰り返し計算を利用した各種換算プログラムや数値計算以外の実用プログラムが極めて簡単に作れる点にあります。
すると、PCでは真似の出来ない起動時間でプログラムが使えるので、大いに利便性があります。意外に知られていないと思います。この意外性の発見が、十分に楽しい電卓を使った趣味になっています。
この延長線上に、hpやTIの電卓がある、これが私の今の状況です。
自分なりに意外性のある価値の発見、多分これが動機です。なので、他の多くの人と同じ使い方をするだけなら、単なる道具で、使い慣れた物を使い続けるだけで、わざわざ高価で、使い勝手が全く違う海外製品には興味を持たないと思います。
... 私の場合です。
電卓プログラミングへのこだわりについてご説明いただきありがとうございます。
「構造化ベーシックを搭載」とお書きになっているのはCASIO fx-5800Pのことですね?僕もこの電卓を持っていますが、使い込めていません。
> PCでは真似の出来ない起動時間でプログラムが使えるので、大いに利便性があります。意外に知られていないと思います。
僕もそう思います。これは自分でプログラミングしないと分からないことですね。説明書やサンプルプログラムを漠然と眺めていても気がつかないと思います。
TIの電卓も紹介しようと考えましたが、肝心のアプリのほうが実機を持っていることが前提になっているものがほとんどのため、とりあえずHP電卓から紹介しています。
今後、CASIOのハイエンド電卓もアプリが開発されるといいですね。
構造化Baisc搭載機は、fx-5800Pだけではなく、最近のグラフ関数電卓は全て搭載されています。
カシオ機のプログラミング言語の変遷を調べてゆくと、開発陣が何を考え、何に成功し、何に失敗した結果、現在があるのか...について勝手ながら推測ができるで、面白いです。
fx-5800P の1つ前に発売されたグラフ関数デンタクで、現在の構造化Basicにほぼ近い形で実装されました。そこからグラフ機能(グラフィックス機能)とI/O機能を落とし、構造化Basicとしての完成度を上げたものが fx-5800P に搭載されました。
これと並行して、グラフ関数電卓のBasicはさらに進化を続けています。
私の定義では、新世代 Casio Basicとは、構造化Basicであること、そして リアルタイムキー入力検知を行う Getkeyコマンドと あらゆるデータ型の引数を取れる Locate コマンドが実装されたものです(仕様上データ型はありませんが、即値だけでなく、変数、関数やコマンドの戻り値を引数にできると言う意味です)。
分岐やループのコマンドでの条件判定では、0 = FALSE、0以外=TRUE と言う仕様になっているのも、まおもなBasicとして使えるゆえんです。
電卓搭載言語のくせに、PC の Basic (Microsoft の small basicが最も近い)に匹敵するところが、実用プログラムを楽に作れる要因だと、私は分析しています。
ネット上のQ&Aへの回答、ホームページ、ブログなどでは、最近のカシオ機の搭載言語をunder estimate しているものが極めて多いのが現状です。PCのプログラミング経験の少ない人が評価しているの可能性があります。一方で、PCで一定以上プログラミング経験がある人は、電卓プログラミングなどに見向きもしていないので、実際に使ってみる前に決めつけている可能性もあります。とても勿体ないことだと思っています。
そもそも、カシオ自身が自社のホムページで Basic Like言語といっている時点で、私には理解に苦しみます。欧米では、Casio Basicという言い方が定着しているのにかかわらず...です。極めて貧弱なプログラミング言語を搭載した機種(fx-72F) をfx-5800Pと同等価格で並行して販売している(利幅が大きいのでしょう)から、戦略上 fx-5800Pを持ち上げられない、といった営業上の大人の理由があるとしか思えないのが、正直なところです。
とねさんを含めた他の方の評価を非難するつもりはなく、そうなる理由があってのこと、との私なりの現状認識です。
最大の原因は、メーカーであるカシオがプログラミング言語に関するまともな情報を出していないことにあると思っています。
Casio Basicを使い込むのは、宝探しに似ています。だから楽しいのです。
誤解を与えるような書き方で、失礼致しました。思わず熱くなってしまいました。
CASIO fx-5800Pを筆頭にCasio Basicのことを詳しく解説していただき、ありがとうございました。使い込んでいないため、それほど有用なものだとは思っていませんでした。この記事(そしてコメント)をお読みになる読者の方にも大いに参考になると思います。
> PCのプログラミング経験の少ない人が評価しているの可能性があります。一方で、PCで一定以上プログラミング経験がある人は、電卓プログラミングなどに見向きもしていないので、実際に使ってみる前に決めつけている可能性もあります。
おっしゃるとおりだと僕も思います。
> 誤解を与えるような書き方で、失礼致しました。思わず熱くなってしまいました。
まったく誤解はしていませんよ。ご安心ください。熱くなっていただければいただけるほど、CASIO高級プログラム電卓やHP電卓の素晴らしさが、よく伝わると思うのです。