PM7:00に2PMの事を考える

クリームソーダ的宇宙

アナウンサー!春物語 第29話 前編

2013-10-31 14:00:00 | アナ春

とある、麻布十番のスターバックス・・・。

 

社長業を追われた紀村俊はここでアルバイトしていた—。

数々のメディアに顔出しをしてきた俊だが、都心中の都心のスタバだからか、時々かけているダテメガネのおかげなのか?

幸いにも客に気がつかれ騒がれることはない。

さすがにバイト仲間は彼がサイパーの紀村であることを知っている。

名前を見れば誰でもハッとする程度には有名人なのだ。

”バイト?どうして?”

”社長から一文無し?”

社長からフリーターになった俊に投げかけられる質問は大体決まっていた。

その都度、俊は適当に笑ってやり過ごすのだが。

実は———

金には、さほど困っていない。

いや、もちろん以前のように派手に使いはしないが、社長を追われたとはいえそれなりの報酬ももらったし、

開発したシステムの権利料は永久的に入ってくるわけだし…。

ではなぜこうして時給900円のコーヒーショップでアルバイトをしているのか?

紀村俊は、単純に労働を楽しんでいるのだ。

思えば東大在学中にサイパーをたちあげ、ずっと働いてきた。

休養するなど毛頭考えていないし、

学生らしい事をしてこなかった彼にとってアルバイトはしてみたい事のひとつだった。

しかしここからが、社長。

ただのコーヒーショップをここまでのチェーンにのし上げたスターバックス社の経営理念に興味もあったのだ…。

 

そんなわけで紀村俊は今日も麻布十番のスターバックスのレジに立ち、笑顔でオーダーを受けている。

 

 ・

 

或る日、1人の客が入店してきた。

「こんにちは~」

スターバックス式いらっしゃいませ。

客は外国人の男。外国人は土地柄めずらしくない。

「ご注文お決まりでしたらどうぞ~」

「ハイー、バニラフラペチーノにチョコレィト・チップをツイカしてくださいね?

グランデでおねがいしマスね」

「はい、…ごいっしょにアップルクランベリーケーキはいかがですか?そろそろ終わりますよ?」

「おいしそですね、お願いしまスネ」

甘党だな…俊はそう思った。

サングラスの奥で外国人の目が俊を見定め、光る。

勘のいい読者ならお分かりだろう、堀辺の隠し玉――ジョージだ。

 

 

 

//////////

一方、グランド・ハイアットのフレンチキッチンの個室では、

玉澤竜二、黄桜賛成、堀辺創がビジネス・ランチをとっていた。

 

堀辺は伊藤純保と自分の関係を、プチテレビのふたりに、ほぼ、すべて打ち明けた。

純保のプライベートな話―もちろん彼には事前に許可をとった―、細かな事は伏せたが、

堀辺の父がどれだけ純保を見守っているかは充分に伝わったようだ。

賛成など、話の途中からずっと無言でうつむいている。

親友である純保の生い立ちを知り、複雑な心境なのだろうと玉澤は思った。

「つまり伊藤にとっての、なんていうか、幸せ、…のためにプチを救ったって?」

玉澤が言う。

「ええ。平たく言うとそういうことですね」

堀辺はいつも通り静かな微笑みを浮かべている。

「話が壮大すぎて、なんと言っていいか・・・」

「堅苦しく考えないでください。父は…父はやっと、純保君の役に立てたと喜んでいます。それより、今日はお返事をいただきにきました」

JYとプチの新事業の件。

玉澤は用意していた答えを堂々と口にする。

「堀辺さん。新事業、正式に進めたいと思います」

「玉さん、それ」

賛成がやっと我に返り発言する。

つまり紀村をJYプチの新事業の中核に招く。

そういう返事でいいのか?

「そうですか。ネットとの融合はこれからの時代不可欠です。玉澤社長の英断、さすがです」

堀辺は微笑む。

「ただ、こちらにもお願いがあります。堀辺さん、あなたには出資だけでなく、共にプロジェクトの実務にも参加してほしい。

僕はあなたと一緒にも仕事をしてみたいんですよ」

「なるほど。…一度アメリカに帰らなければなりませんが、前向きに考えてみましょう」

ここにJYとプチの新事業が成立した。

3人はあらためてグラスを合わせ乾杯した。

堀辺の携帯がなる。

「ああ、・・・電話だ。ちょっと失礼しますね?」

テーブルナプキンを置き席を立ち個室からでていった。

 

ふたりになり、賛成が玉澤に話しかける。

「玉さん、ほんとに大丈夫なんですか?」

「ああ、伊藤の話を聞く前から気持ちは固まってた。俺はこの新事業が楽しみでたまらない。わくわくしてるんだ。

いままでのおやすみライブだってほとんど紀村くんが仕切ってたようなもんだろ?

プチのエンタメ事業に彼が参画してくれるなら、むしろこっちが頭をさげてきてほしいくらいだ。

ネットと放送の融合。いいぞ、おもしろい。彼以上の適任者がいるか?いや、いない。」

「…それはそうですが」

「賛成?おまえが気にしてるのは別の事だろ?・・・ミーのことは気にするな。

こないだも言ったけど、全然別の話だよ?俺はミーと紀村がヨリを戻したって気にやしないさ…」

「・・なら、いいですけど?」

「おい~!妙な気まわすな!おまえはやっぱりまだまだ子供だにゃあ?

公私混同するなよ。しっかりしろ?今回みたいにラッキーな事、二度はないぞ?俺もお前も気を引き締めないと…」

「ほんとにその通りです…僕がしっかりしてないから。すみません」

「なんだ?今日はずいぶんしおらしいな」

実は賛成は、この一連の騒動を経験し、ずっと”或る事”を考えている。

まだ迷ってはいるのだが・・・。

「ところで玉澤さん、紀村さんは今どこにいるんでしょうね?」

「ああ…」

たしかに、この話をしようにも紀村の居場所が分からなければどうしようもない。

そこに電話を終えた堀辺が帰って来た。

「すみませんでした、食事を続けましょう。どうですか?ワインをもう一杯」

「ええ。もちろん。いやあ、ここのパテは絶品ですね」

「ええ、ここは野菜もうまいし。あの、堀辺さんは彼の自宅を知ってますか?」

「俊の自宅?知っていますよ?ただ、彼は既に引っ越しています」

堀辺はメインの鴨のコンフィにナイフを通しながら話した。

「だとすると、早く彼を見つけないと…」

自分で新事業を始めたり、海外にいってしまう可能性も充分にあるだろう。

「それならご心配なく。今、見つかりました。」

「え?」

「今?」

プチの二人が声をあげる。

「見つかりました。このすぐ近くです」

堀辺はにっこりと微笑んだ。

 

 

//////////////

 麻布十番スタバ。

「豆乳の人にはちゃんと豆乳のカードをわたしてください」

「はい、すんません・・・」

俊がバイトの先輩に注意されていた。

「紀村サン、今日はハロウィンなんで、レジ担当はこれを付けてくださいね」

「え!これ?!え~……はい・・・」

ここで働き初めてまだ10日とたたない。覚える事がたくさんだ。

しかしまさかこんなカチューシャまで・・・。

付け始めて数時間。

パンプキン・カチューシャにも慣れたころ、アンニュイな雰囲気の男が入店して来た。

黄桜賛成だ。

グランドハイアットからその足でここにやってきた。

「黄桜・・・」

「紀村さん。ぼくらと一緒に働きませんか?」

「なんだよ開口一番。・・・血迷ったのか?」

「プチはJYと組んで新事業を立ち上げます。エンタメをWEBと放送で融合させたニュー・ジェネレーションの新事業です。

あなたの力を貸してください。僕らと一緒に――」

「お客様、注文をどうぞ」

俊は賛成の言葉を遮りレジに誘導した。

「ご注文を」

「じゃあ、アイスコーヒーのトールで。…ねえ紀村さん、あなたの開発したPanstagramと番組を連動させて…」

「340円です」

ポケットから札入れを出しカードで支払う。

「サインレスですので~」

「来てもらえませんか?プチテレビに」

黄桜賛成、渾身の一言だった。

すべてを受け入れ、流し、新しい気持ちで俊にむかいあう。ひとりの副社長として。

その真剣な眼差しに紀村も思わず賛成を見つめ返した。

「…お願いします。一緒に仕事しましょう。このビジネスにあなたの力は不可欠です」

「次の、…お客様が待ってらっしゃいますので…」

「———紀村さん、俺、正直、一緒に働くなんてあり得ないと思ってました、ほんの最近まで。

だけど玉澤さんのプラン面白いんです。世の中をもっと明るくして、もっと好きになりたい、そんな愛に溢れています、だからあなたの力が必要なんです。

あ、マフィンもください。――また来ます」

賛成は店を出ると目の前に停めてある車に乗り込んだ。

玉澤は気分転換に自家用車を運転して移動していたのだ。

「どうだった?」

「いました。・・・手強いです。どうします、玉さん、行きますか?」

「いや・・・日を改めるよ。今日は会社に戻ろう」

 

玉澤にはなにか策があるのかもしれない。

賛成はアイスコーヒーをすすった。

「どうします?こんな時ですし…」

「いや、みんなも楽しみにしてるだろう?決行するよ。20時におまえんちだよな。

悪いが会社に戻る前に買い物に付き合ってもらうぞ」

「今年はどうするんですか…?」

「まだ迷っている…」

玉澤は運転に集中した。

「バンパイアと男爵を混ぜるのはどうだろう?」

「ドラキュラ伯爵っていいますしね。違和感ないと思いますよ…」

アクセルを踏みスピードを上げた…。

 

//////////

そして、同じ日の夜。麻布十番スタバ

 

「紀村さん!」

「伊藤くん・・・君まで!そのカッコ…!なんだよ、プチって、いったい、なんなんだよ?!」

「いや、違うんです。今から賛成の家でハロウィン・パーティなんです」

この近くなんすけど、まだちょっと時間があって・・・。

社長が気合入れて用意してるらしくって、早めに着いちゃダメって言うんですよ~。

あ、スターバックスラテとキャラメルマキアート、テイクアウトで下さい」

「まったく・・・。おい、明日は誰がくるんだ?」

俊が皮肉まじりに笑う。

「賛成にこっそり聞いちゃいました、ここで働いてるの。…みんな心配してるんです。紀村さんのこと」

「なんでだよ?俺は敵だった男だぜ?君らに心配されるような事じゃないだろ・・・」

紀村は純保の手から千円札をむしりとり、とっとと会計をすませた。

「飲み物は右手の赤いランプの所からお出ししますので…」

「紀村さんの経験が必要なんです。一緒に働きましょう?

そうだ、なんならパーティ来ません?紀村さん仮装似合いそうですし…」

(純保のイメージ)

 

「仮装か…うん、確かに好きだ。いや?!行くわけないだろ?」

「…出会い方によっては仲良くなれたかもしれない、、、って、言いましたよね?

俺、嬉しかったです。だから、今から仲良くなりませんか?!

いつだって、どこからだって、やり直しはきくんです、きっと…」

純保はつい自分の事と照らし合わせているのだ。

まだ堀辺の話を咀嚼しきれていないが、ただ感じる、自分がいろいろな人に愛されていることを。

愛というものの本質に触れはじめている。

愛されるより、愛したい…。

俊は答える。

「俺、自分がホントに何をしたいのか考えてるんだよ。

新事業か…。でもさ、いままでとぜんぜん違うことに挑戦してみるのもいいと思わないか?

たとえばこういうカフェとかさ?だれかの息抜きの場を提供できるなんて、最高だろ?」

「――やってるじゃないですか」

「え?」

「紀村さんはもうそれをやってるじゃないですか。いつだってあなたが作るものはだれかの息抜きになってますよ?」

紀村が開発して来た様々なSNS、おやすみライブに代表されるイベント。

そのすべてが疲れた現代人へのちょっとした癒しの場になっている。

「一緒に働きましょうよ?新事業はあなたにしか出来ない事です」

「・・・飲み物できてるぞ?」

そっけない俊を残念におもいつつ飲み物を受け取る。

店を出る時、話しかけた。

「あの、紀村サン、明日って…」

「早く行け。…パーティ始まるぞ?」

意図的に言葉を遮られたな、、純保はそう思いながら賛成の家へ向かった。

 

 

///////

そして次の日の朝。

再び麻布十番スタバ。

 

渋みばしったガタイのいい男が颯爽と入店し、真っ直ぐにレジへ向かう。

「アイスコーヒー!」

「サイズは・・あ?」

レジにはもちろん俊。顔をあげ客の顔を見ると、それは玉澤だった。

「紀村くん、元気か?」

「まったく、入れ代わり立ち代わり。暇なんだなプチテレビは。

…どうだったんですか?ハロウィンパーティは?」

「まあ、なかなかだったよ。賛成の死神とか、張本もなんかよくわからんかったが・・。

まあ俺のが一番よかったな」

 

「今日は社長として来たんじゃない。ひとりの男として来た」

「はい?」

「すまなかった。君の恋人なのを知ってて俺はミーに手を出した」

「・・・・・・」

 

「卑怯だったと思う。謝るよ」

「謝るって・・・」

「だけど本気だった」

無言のふたり。

緊張が走る。

「だけどミーは、―――ミーは君のことが好きみたいだ。

もう別れたんだ、俺たち。水に流してくれとは言わないけど、それだけ伝えておきたくてな?」

ニヒルな笑みを浮かべ紀村からアイスコーヒーを受け取りると、小銭を置いて店から出て行った。

紀村はしばし呆然としていたが、やがて正気にもどりトレイを見る。と、

350円。

グランデは380円なのだが…。

「た、足りない…!」

ため息と同時に玉澤のその憎めないキャラクターを思い出し、おもわず笑ってしまう俊だった…。

 

玉澤はアイスコーヒーを飲みながら麻布十番の街をあてどなく歩く。

いい街並だ。

都心にあってこの落ち着ける雰囲気。

広場で立ち止まるとケータイを取り出した。

ミーコは、昨日のパーティには来なかった。

少し考えるが、やはり、と思いメールを打ち始める。

(今日はミーにとって特別な日だからな…。)

なんどか文章を書き直し、送信ボタンを押した。

 

―29話後半につづく―

 

 

 

 

 

 

 

 

 


アナウンサー!春物語 第28話

2013-10-25 19:00:00 | アナ春

プチテレビ、会議室。

 

-あなたのお母さんの演奏が、それに入っています-

堀辺の発言に純保は自分の耳を疑った。

「なにを言ってるんですか…?なぜ堀辺さんが、ぼくの…」

ぼくの母の事を知ってるんだ?

純保はCDと堀辺の顔を交互に見ながら考えをまとめようと務めてみるが、気が動転し言葉が出ない。

 

純保は孤児だ。6歳の時、伊藤家の養子に入った。

実の父母のことを知ったのはつい最近だった。

 

「かけてみますか?」

堀辺はCDを手に取り、会議室に備え付けられているプレーヤーに入れ、プレイボタンを押した。

静かなピアノの旋律が流れてきた。

とても悲しいメロディーだが、なぜか優しく温く感じる。

聴いたことのある曲だが、何という曲なのかは知らない。

もしこれが本当に母の演奏だとしたら――

純保の心はちぎれそうだ。

 

”実の母は駆け出しのピアニストで、父を追ってアメリカに行くも、

父はレストランを経営するさなか火事で不遇の死を遂げた。

母は日本に帰国し純保を産むとすぐに亡くなった…”

 

純保が実の父母について知っているのは、ハルナの母、明子から聞いたこれだけの事だ。

呼吸を整え堀辺に問う。

「ほんとうに…?これはほんとうに、母の演奏なんですか?」

堀辺はうなづく。

「堀辺さんがもし、僕の父母の事を知っているのなら、…そのすべてを僕に教えてください。お願いします」

堀辺創はポツリと語り始めた。

 

 

「僕も君と同じ孤児です。

6つの時、今の父に引き取られました。

父は当時30になったばかりで、JYグループの前身であるHRBエンターテイメントがやっと軌道にのりはじめ

アメリカでそれなりの成功を収めつつありました。

父は今ではすっかり謎めいた人物と思われていますが、――そうですね、確かにあまり前に出たがる性格ではありません。

JYクループの業績が安定するとすぐに会社をホールディングスにし、事業をそれぞれの社長に任せると極力表舞台に姿を現さなくなりました。

 

成功をひた隠しにするそんな父の事を”変人”と噂する輩もいますが、それは違います。

父は表舞台に立たないことで自分を罰しているのです。

皮肉にも、派手な事を好まず努力した結果がJYを巨大企業にのしあげ、父を目立たせることになってしまっているのですが…。

 

とにかく父には、何が起きても困らないだけの資金が必要でした。

余計なことを考えず体を動かし、忙しく働くこと。

…伊藤くん、あなたに起きるあらゆることに対し、いつでも手助けできるようにしておくためにね?」

「ぼ…く…?」

堀辺は話を続ける。

「一見、偏屈と思われている父の周りには、無理を気遣い止めてくれる人は居ませんでした。

友人すら…

寄せ付けなかったとでもいうのか。

近寄ってくる女性はたくさんいましたが父はいまも独身です。

簡単に言えば、――父はずっと心を病んでいます。」

 

 ・

「僕がそれに気が付いたのは12の頃です。

何に気が付いたのか?6つで父と暮らし始めてから徐々に感じていた違和感の原因とでもいうのかな…?

優しい父ですが、僕が寝たのを見届けると自室にこもり小さな音で音楽を聴きながら、毎晩泣くのです。

子供は敏感ですからね。

声をあげずとも、彼の哀しみは色となり空気となり伝わってきました。

幼い僕はそれに気付いてからもどうしていいのかわからず、

父に理由を問う事ももちろんできず、

ただ時々、父の部屋のまえでその曲を漏れ聴いていました」

 ・

「12歳のある日、僕は父のCDを借りるためこっそりと父の部屋に行きました。

僕が好きだったのは日本のポップスです。その日は何を探していたのか

――まあ何にせよ12歳の少年の好奇心を止める事など誰にも出来ません、

父のラックからCDやカセットを探していたら、突然ある古いレコードに目が行ったのです。

それはとても古ぼけたレコードでした。

カヴァーにはサインペンで”1984、6”とだけ書かれています。

これはいわゆるサンプル盤というやつだろうと思いました。父は音楽の仕事に関わってますから、

僕も時々そのようなものを家でも目にします。

僕はそのレコードに興味を持ち、何気なくプレーヤーにかけてみたのです。

流れて来たのは――父が涙を流して聴いていた曲…

そう、それがこの曲です」

堀辺が会議室の宙に浮くメロディーを指差した。

「…これは、なんという曲なんですか?」

「”亡き王女のためのパヴァーヌ”…」

 再び回想を始める。

レコードプレーヤーの前で12歳の堀辺創は呆然と立ちすくんでいた。

「不思議なものです。いままで扉越しに微かに聴いていた曲ですが、

メロディーをきちんと聴いたとたん、僕の記憶は一気に蘇りました。

心のずっと奥の方の箱に鍵をかけてしまいこんでいたんでしょう?この曲は鍵穴にしっかりとはまり箱の中のものをすべて広げてしまいました。

 

 

・・

創の記憶。

明るいレストラン。

幼い創の目に映っているのは、食事を楽しむ人々と、ピアノを弾いている美しい女性。

食事を終えた創の両手はどちらもしっかりと繋がれている。

右手は温かくごつごつした大きな手に、左手は白くなめらかなやわらかい手に。

それは大好きなパパとママの手だ。

 

記憶は飛ぶ。

 

次の光景。

 

目の前は火の海だ。

とても熱い。

創は泣く。パパとママを呼んで泣いている。

たった1人でピアノの横に座って。

そこに突然、「危ない!」という声がし、次の瞬間、創の上に誰かが重なってきた。

 

・・

 

「火事…?」

純保は、実の父母も火事に巻き込まれた事を思い出し、思わず口にした。

「ええ。火事です。幼いはずの僕の記憶は意外なほど鮮明でした。

火事の光景と同時に父母の事を思い出しました。”父母がいたこと”、をね?

それまで僕の記憶に父母はいませんでしたから…。

手をつながれていた感触、幸せに満ちた気持ち、同時に怖さと哀しさをも思い出し、それらの感情を受け止め咀嚼するのに必死でした。

そして更に―その光景のどこかに、みつけてしまったのです。

若かりし養父の姿を…」

「…お父さんの…?」

「そのまま日が暮れて部屋が真っ暗になったことにも気付かず立ち尽くしていたようです。

帰って来た父が僕に声をかけ椅子に座らせるまで、どのくらいの時間が経っていたのかわかりません。

父は…僕の様子と、プレーヤーにかけてあるレコードを見て僕がなにを思い出したのか、すべてを悟ったのでしょう。

とても、落ち着いていました。

そうして僕は父に尋ねました。

”お父さん、ぼくのお父さんとお母さんはどこにいるの?”と」

純保が訊く。

「僕の父が経営していたレストランに誰かが放火をしたと聞いています。

怪しい東洋人の男によるものだとも…。もしかして、それがあなたの養父…?」

「いえ、…それは違います」

 

1984年6月、アメリカ、LA。

とあるレストランで大きな火災があった。

火事の原因は当初はっきりしなかったが、一説にはつけ火だとも、タバコや厨房の火の不始末だとも言われた。

のちに、火事自体はさして大きなものではなく、

厨房のガス管の腐敗によるガス漏れが爆発を併発し被害を拡大したとわかった。

犠牲となったのはこのレストランの経営者の日本人男性と、レストランの客だった、日本人の夫婦。

計3人。

 

 ・

 

話をこの火災の数時間前に戻そう。

レストランは営業時間を終え店じまいをしていた。

店に残っていたのは、この店の常連の3人家族――父、母、3つになる男の子。

そして経営者兼コックである純保の父・保之とレストランを手伝いながらピアノを弾いている純保の母・純子だ。

「さあ、もうお店の閉店時間よ?帰りましょう?」

客の女性が言う。

「ああ、それにしても残念だな?創の誕生日だっていうのに、ケーキ屋が日にちを間違えるだなんて…」

愛息子・創の3歳の誕生日だ。

この後ケーキをピックアップし、家でお祝いをする予定だった。

「仕方ないわ。創も我慢できるわよねえ?」

創と呼ばれた小さな男の子はにこにこと笑っていた。

「ああ、本当に創は天使だね」

そんな話をしていると、店のオーナー・保之がテーブルにやって来た。

「いつもありがとうございます。創くん、今日が誕生日?」

「保之くん、そうなんだよ。それなのにケーキ屋が日にちを間違えててさ…」

創の父は残念そうだ。

「良かったら…僕が今からケーキを作りましょうか?」

「ほんとかい?」

「あなた、悪いわ?もうお店は終わってるのよ?」

「奥さん、水臭いこと言わないでください。

簡単なものならすぐにできるし、ねえ創くん?美味しいケーキを食べたいでしょう?」

「うん!」

創が元気に答える。

「よし、じゃあおじさんが作ってあげるからね!」

保之は厨房に向かう、その時、入り口に立つ背の高い男に気がついた。

それは近頃音楽ビジネスを始めたという、堀辺という日系人だった。

保志は堀辺に声をかけた。

「堀辺さん、入ってください」

「いや、あの…」

「わかってますって、もうあなたが純子にちょっかい出さないのは。

こないだ録音してくれたでしょう、純子の演奏。…僕ら感謝してるんですよ?」

「ええ、その…」

もちろんこの男が後に堀辺創の養父となる男だ。

彼は半年ほど前、この店を偶然訪れ、ピアノを演奏する純子に一目惚れした。

夫がいるともしらず純子にアタックし、当初はけむたがれていたのだが、

今、堀辺の純子への想いは男女のそれではなく、ピアニストとしての才能へと向かっていた。

純子をピアニストとしてデビューさせたい――今やそれが堀辺の願いだ。

 

そうして先週、保之と純子の同意を得、純子のピアノ曲を録音した。堀辺が心を奪われた“亡き王女のためのパヴァーヌ"を。

 

純子が二人に気が付きやってきた。

「純子さん!こ、こんにちは」

きょどる堀辺。

「こんにちは。なにか弾きましょうか?さあ、入ってください」

「そ、それじゃお言葉に甘えて、”亡き王女のための・・・”…」

「パヴァーヌね?フフ、堀辺さん、ほんとにそれ好きよね…。あなた、いいかしら?」

「ああ。後で子供が喜びそうなのも頼むよ。バースデイソングをな?」

純子は微笑んで頷くと、ちょっと着替えてくる、と言い店に入り2階に上がっていった。

堀辺は照れくさそうに店に入ると、適当な椅子に座りタバコをふかした。

小さな男の子が一人ピアノの横に座って遊んでいる。

「パパとママはどうしたの?」

「あっち!」

男の子が厨房を指差した。

保之が笑って堀辺に言う。

「この子の3歳の誕生日なんですよ、いまからケーキを焼くんです。パパとママも手伝ってくれるのかな?

堀辺さん、創くんを抱っこしてあげてて?」

「え?あ、・・・え?あああ」

保之は微笑んで厨房へ消えていった。

堀辺はタバコを灰皿に置き、不器用な手つきで創を膝に抱えてみる。

子供は苦手だ。

しかし創が無邪気に微笑むと、堀辺の顔もゆるんだ。

その時―――

然厨房から爆発音がした。

「キャーー!!!」

悲鳴と同時に火が一気に燃え上がる。

堀辺は創を膝から降ろし危なくないよう床に座らせ厨房の方へ向かう。

その時テーブルにぶつかり、灰皿においていたタバコが火のついたまま絨毯の上へ落ちたのには気が付かなかった。

 

厨房は激しい煙と火に包まれ、近寄れない。

燃え盛る火と煙の中から、火傷を負った保之がでてきた。

「ゴホ!ゴホ!うっ」

「や、保之さん、なにが?!ふ、ふたりは?!純子さんは?!」

「だ、めだ、…純子は2階…!」

「僕が上を見てきます。だから保之さん、早く外に!ひどい火傷だ!」

「つ…創くんは?」

「大丈夫です、あっちは全然」

「いや、ガスだ…すぐ引火する。早く創くんを、外に…」

保之は創のいるピアノの方へふらふらと進む。

堀辺は急いで2階に通じる階段にむかった。下の爆発音に驚いた純子はすでに階段を下りてきていた。

「なにがあったの?!一体!」

その時だ、漏れたガスは更に充満し2度目の爆発が起こった。

 

火は燃え広がりピアノの横で泣く小さな創の頭上に、火のついた柱が今、燃え落ちようとしていた。

「危ないっ!」

そういって保之が創の上に覆いかぶさるのと、柱が燃え落ちるのが、同時だった――。

「キャー!あなたーーーー!!」

「保之さんーーー!!」

保之の背中に燃えさかる柱が圧し掛かった。堀辺はなんとかそれを退けようと近づく。

しかし…

「ほり…いいから…この子を‥はや、く…」

堀辺は保之の下から必死に創を引出すと、夫に近寄ろうとする純子の手を取り外へ脱出した。

 

見物人に創と純子を預けもう一度店内に戻ろうとする。

しかし中に一歩入った瞬間、迫り来る炎や煙で目をやられ、それでも戻ろうとするところを見物人の何人かに引き止められた。

「行かせてくれ!中にまだ!」

「もう無理だ!消防が来るまで待て!」

「だめだ!間に合わない!行かせてくれーーーー!!!」

そうしているうちに入口は燃え落ち、堀辺はなすすべもなくその場にへたりこむと、燃え盛る店を見続けるしかなかった。

 

 ・

「あとで分かったことですが、僕の両親は、最初の爆発で致命傷を負っていました。

ガス管からガスが漏れていたのが一番の原因です。

僕のケーキを作るために火をつけ、運悪くガスが漏れていてそこに発火しました。

養父となる堀辺も火傷を負い、3か月ほど入院しました。

復帰して僕の両親と保之さんの死を確認し、生き残った純子さんは既に日本へ帰国した後でした」

それから1年ほどして、やっと日本を訪れることのできた創の養父堀辺は純子を探した。

しかし純子は既に灰となり土の中に葬られたあとだった。

寺の住職に聞き、純子が保之の子を産んだ事、そしてその子が施設に預けられている事を知ったという。

「父はあなたを引き取ってアメリカに帰ることも考えたそうですが、

そこまでの財力はその時の父にはまだありませんでした…」

「失意のままアメリカに帰国した父は、僕を思い出しました。

あの火事で生き残った3歳の男の子。

創という名前を頼りに、2年かけてニューヨークの孤児院に預けられていた僕を探しだし、養子にしたのです。

それから父は僕をいつくしみ育ててくれました。

充分すぎる愛情です。

だってね、そうでしょう?

僕は、…本当は父が、あなたにかけたかった愛情をも受けて育ってきたんだから…二倍の愛情をですよ」

 

そうしてすべてを思い出し、真相を知った創は、父と共に伊藤純保を見守る決意をした。

「父はいつもあなたのことを気にしていました。

あの子は幸せだろうか?

なにか困ってはいないだろうか?

あなたが養子に行ったあとも心配は変わらなかったと言っていました。

新しい家で愛されているだろうか――幸いにも伊藤家のご両親はあなたを慈しみ育ててくれましたね。

それでも、あなたに何かあればいつでも助けられるように、その思いで父は懸命に働いたんです。

あの時、日本へ行った28年前、自分に財力がないばかりにあなたを引き取る事のできなかったことが

父の労働の原動力だったんです。」

創が16になるころには、JYグループは全米でも屈指の巨大企業となりその資金力は強大なものになっていた。

「そんな…」

純保は、なにも言葉にできない。

 

「父は今、体を悪くしてまして…

今回の騒動をとても心配し、その心労もありまして…僕が父の代わりに問題の終結を引き継ぎました。

ここにいるジョージと一緒にね?」

いつのまにかヒゲの外人が部屋の隅にいた。

「ジョージは父と僕の片腕です。僕にとっては母親の様な存在です」

ジョージは照れくさそうに笑った。

「不思議なものです、縁というのは。

僕はあなたを遠くから見守っていましたが、近づく気などまったくありませんでした。

18になった頃でしょうか…。

ユニセフの活動でタンザニアに行った時、玉澤竜二という日本人と会いました。

彼は東京のプチテレビでアナウンサーをしているという。

僕は彼を良く覚えています。屈託のない明るさ-大人だというのに子供の様に無邪気な笑顔をするひとだな、とね?

社長は僕に気がついていないようですが、フフ。

あなたがプチテレビのアナウンサーになった事も驚きましたが、

後に、玉澤さんに憧れてアナウンサ―を目指したと聞いて、僕は嬉しくなったものですよ」

 

「紀村社長――俊、ともそうです。

デイヴィッドに紹介されたとき、まさか彼がこんな風に君やプチテレビと関わるなんて思ってもいなかった。

まあ、それはすこし哀しい関わり方でしたが…」

 

 

「ああ、それともうひとつ。

僕は賛成さんのことも昔から知っています…でもまあそれは次の機会にでも。

ねえ伊藤君、縁ってほんとに面白いですね?」

 

「あなたが高校へ入り、大学へ進み、プチテレビに入社し…。

いま、あなたの出る放送を見ながら父は言います。

”本当にお父さんとお母さんに良く似ているね”、と。

父はもう解放されてもいいでしょう、それでも父はこの曲を聴きながら泣く事を止めようとしません…」

 

「父は自分のタバコも火事の原因なのではないかと思い続けています。

――それは妄想です。

あれはガス漏れが原因の事故です、責めるならガス会社を責めるべきことです。

多分父にもそれはわかっているんですよ?

でも、そうやって自分を責めることで、空虚な心の隙間を埋めるしかなかったんでしょう。

本当にかわいそうな人だ。

伊藤くん、どうか、父を…許してやってください」

 

「許すも、許さないもー、」

純保はそこまで言って言葉に詰まった。

 

許すも許さないも僕にそれを下すことなんてできない。

だけど僕が簡単に”許して”しまったら、本当の父と母はどう思うんだろう——?

何も言えなかった。

「時間が、必要ですね?」

「堀辺さん、僕、僕は…」

涙がながれ胸が痛い。なにひとつ言葉にならない。

創は立ち上がり純保の近くに行くと、そっと肩を貸し、その震える背中を優しく叩いた。

そのままの姿勢で堀辺が話し出す。

「ねえ伊藤くん、JYグループの名前の由来を知っていますか?

Jは純子。Yは保之。あなたのご両親の名前です。

父の贖罪の気持ちだとずっと思っていましたが、今日話していて気がつきました。

たぶん父はそこまで-あなたのお母さんを深く愛していたんですね。

それが報われない愛だとわかってからも、そして保之さんを愛している純子さんをもまるごと、ぜんぶ…」

ピアノの演奏がおわり、静寂となった室内に純保が慟哭をこらえる音だけが流れた。

哀しくも優しく温かい涙だった。

 

 

////////////////

プチテレビ、社員用ラウンジ。

「え!!なんですかそれ!きーーームっ」

「シ!絶対に内緒!ハルナ、シ!!!」

レイがハルナの口元を手で塞ぐ。

休憩時間が重なり、偶然ラウンジであった二人はコーヒーを飲みながら話していたのだが…。

レイが内緒で話したことに驚いたハルナの大声が、ラウンジ全体に響いた。

「ンぐ…ややや!すみませんおとなしくします!

でもレイさん!それってありえなくないですか?!私の事からかってません?」

途中から小声になるハルナ。

「でもね、あの堀辺創?そこにすっごいこだわってるらしいのよ。

やっぱ思考がアメリカ人っていうのかな?あり得ないような事言ってきても、不思議はないでしょ?」

「やあ、でもー、無茶苦茶ですよね?だって原因が原因だし、それにあの2人はミーコの・・」

「なになに何の話ですか?」

ハルナとレイは後ろを振り向いた。

そこにミーコがいた!

「ミーコ!!」

「なんですか?」

「いつからそこにいた?!」

「うーん、思考がアメリカ人…?で、私がなんなんですか?」

「うん・・・」

「だからね・・・」

二人とも言いにくそうだ。

「なんですか!内緒にしないでくださいよ!」

ハルナとレイが顔を見合わせて頷きあった。

「うん、あのね」

レイはミーコに耳打ちし、ハルナに話したことと同じ内容を伝えた。すると…。

「えええええええーーーー!!!!俊をーーーー!!!プチテレビに!!!???」

 今度はミーコの声がラウンジ全体に響き渡った。

 

そしてその頃、社長を退任しサイパーを去った紀村俊は、スターバックスで働いていた。

 

-29話につづく-

 

 

 

 


アナウンサー!春物語 第27話

2013-10-23 14:00:00 | アナ春

休日の昼下がりのゴールドジム。

 

「賛成・・・ウッ、どう思ウッ?」

玉澤はハードなトレーニングをしながら、となりでダンベルをあげている賛成に問いかけた。

「いや・・・フっ・・・正直・・・フっ・・・よくわかりま・・・フっせんね!」

「だよな?…フゥ。俺もダンベルにしよっと。

堀辺クンはどういう意図であんなことを言い出したのか…。

やっぱり裏があって…ウッ、キツイな…、プチに近付いてきたのかな?」

「裏、ですか…?」

想像しようにもJYファンドに怪しい所はなく、自分らが考えすぎなだけな気もする。

「うん…ク!」

ドンッ!玉澤がダンベルを落とした。

「あー、キツイ!もうやめやめ!賛成、今日はこの辺にして飲みにいこう!」

「はい、今日は結構疲れたなあ。最近忙しくて来れてませんでしたもんね?

でももうちょっとだけやっていきます!

玉さん、先にあがっててください。すぐ出ますんで!」

 

久しぶりの休日、昼間からジムで汗を流し気分転換、のはずが、会社のことが頭を離れない。

ロビーで賛成を待つ間も吉田からのメールをチェックする。

吉田にはJYファンドについて調べさせているが、特にこれといった進展はないようだった。

メールの〆の一文、

”社長、無理かもしれませんが休日くらいはプライベートをお楽しみください。

僕もこれから日帰りで温泉に行ってきます…”

(プライベート、か。フリーになっちゃったしな…。いまは恋愛する気力もないぜ…フ)

そんなわけで玉澤は四六時中プチの事を考えている。

そう、俺は社長だから!

 

玉澤と賛成はジムを出ると、近くのハードロックカフェでビールと軽いブランチを取った。

「ひゃあー!運動のあとのビール!」

「くぅぅぅ!痺れるぜ!!!」

「ぷはぁあ!最高っすね!!」

「にしても…堀辺の提案には驚きました・・・」

フライドポテトをつまみながら賛成がそういうと、玉澤も一気に仕事モードに戻った。

「ああ・・・。ほんとだよ。紀村君をうちに―なんてさ?やっぱ思考がさ、アメリカ人なんだろうな?」

堀辺の提案、それは―――、

新プロジェクトに紀村俊を参加させる、という衝撃の提案だった。

「紀村君だってやりにくいだろー?普通はそう思って口にすらしないよな?」

「…玉さん、新プロジェクトの話、ご破算にすることもできますよ?」

 

賛成の言いたいことは玉澤には充分伝わっている。

玉澤が提案したエンタメビジネスだ、別にホワイトナイトの条件なわけではない。

この話はナシで、と一言いえば済む話だ。

「…ああ、分かってるよ、でもさ、俺が言い出した事なんだよ?」

言いだしたことを引っ込めることは玉澤の主義に反する。それに、新しいことにチャレンジしてみたいのだ。

「まあそうですけど・・・そしたら俺、堀辺さんに聞いちゃっていいですか?

玉さんのこと知ってるはずなのにそんなそぶり一切見せなかったし、やっぱ釈然としないんすよ、なにか隠してるような・・・」

「俺もあえて聞かなかったが、もしタンザニアで面識があったのなら、それはそれで気になるよな…」

「やっぱり思い出せないんですか?」

番組のロケとはいえ、タンザニアでボランティアとは強烈な思い出だと思うのだが。

「うん…テツコさんに日本人の少年を紹介されたような気はうっすらと…。

でもあん時はテツコさんの事で手一杯だったからな。記憶があいまいなんだよ」

玉澤のその言葉と目に少しだけ、なにか甘いものが含まれていたのを、賛成はめずらしく見落とさなかった。

「え?!え?!」

まさか?!

賛成はビールを噴出した。

「にゃ?」

「玉さん・・・・まじすか・・・・・・まじでテツコさ・・・さすがっすね・・・・・・」

「んー?んふふー?俺も若かったからな~。すみましぇ~ん!ビールおかわりください!ジョッキ二つね!」

そうして日曜日のハードロックカフェで男二人のコイバナが始まったのだった。

 

//////

同じころ堀辺もまた、ホテルのジムで汗を流していた。

ジョージからすっとタオルが差し出される。

「ああ、ありがとう。ジョージ、父さんの様子はどうだ?体調が良くなさそうだけど」

「ハイ、でもプチテレビの事がイッケンラクチャクしたので安心されてます。

車椅子でですが庭にも出たりするよになりましたシ…」

外の空気を吸いたがるのは良い傾向だ。

「ジョージ、僕はね、プチテレビの人たちにすべてを打ち明けようと思うよ。本当に信頼できるいい人たちだし。

ただね、ぼくの友人のことだけが心配なんだ」

「ハイ、キムラさん、デスネ?」

「ああ。さすがジョージだな。すべてお見通しってわけだ?」

「イヤそれほどでも…」

ジョージは創にほめられ少し照れた。

「すべてをウチアケルことはアナタにとっての解放でもある…そうですねMr.H?」

「自分勝手な理屈だけどね…」

どちらにせよ友人である俊の今後。そして玉澤や黄桜に話す前に話さなければならない人がいる。

「明日プチテレビに行くよ。そして話してくる」

創の決意にジョージは優しく微笑んだ。

 

 

 

////////

クリスタルベリクリニック、サヤ子の診察室。

日曜日は休診だが、用事があり病院に来ていた。

 

昨日の深夜、スーパードクターから”右太郎の膝の手術を受ける”という嬉しい返事があったのだ。

病院に置いてある右太郎のカルテやCTをまとめて送る為、病院に寄った。

ドクターのもとへ発送する手配を終え、サヤ子はコーヒマシーンでコーヒーを淹れる。

椅子に腰かけ一息つく。

誰もいない休日の病院はとても静かだ。

机の上にはリラックマのペンやメモがたくさんあった。

右太郎が病院に来るたびにサヤ子や看護師に菓子と共に差し入れるのだ。

こんな子供じみたものは好まなかったのに――サヤ子は黄色い小鳥のペンを見ながら微笑んだ。

右太郎とは順調だ。

しかしサヤ子はふと、思い出していた。

 ・

数日前、

成田空港に右太郎が現れた日。

 

確かにあの日、サヤ子はスーパードクターに会うために成田空港に行った。

“龍ヶ崎とモナコに行かなかった” それももちろん事実だ。

しかし―――

 

(・・わたしは、先生に、会ったの)

 

最後だと思った。

最後にどうしても先生に会いたくなった。

成田で落ち合い、先生が乗ってきたリムジンに乗りこんだ。

先生のフライトまで数時間。

先生はもう、サヤ子に”来い”とも”やり直そう”とも言わない。

一緒に来ない事はわかっているから。

リムジンのシートに少し距離を置いて座るサヤコの頭に先生は手をのばすと、強引に自分の方へ引き寄せた。

右太郎とは正反対の強引さ。

こちらの意志などおかまいなしのこの行動に――サヤ子の心のどこかがまた震えた。

サヤ子はまさか自分が涙を流すなんて予想もしていなかった。

それでも、先生にもたれるとやはり様々な出来事が走馬灯のように押し寄せ、胸が痛い。

哀しさではなく切なさ。

切ないという感情を今地球上で一番感じているのは絶対に自分だ。

 

先生はサヤコの頬を両手で救うように包むと、髪から、ひたいから、まぶたから、

順番に口づけをしていった。

僕の作品、サヤ子。

永遠にその事実だけは消えない。

そしてこれは最後の、二人の秘密だ。

 

先生のフライト時間まで一緒に過ごした。

 

成田に着くとサヤ子は車から降りた。

先生のほうを一度だけ振り返り微笑む。

先生は、窓から顔を見せにっこりと微笑み返すが、すぐにリムジンのウィンドウを閉めてしまった。

黒い窓がその笑顔を遮る。

あの窓の向こうで先生が今どんな顔をしているのか。

サヤ子はそれを考えないように、バッグから右太郎のカルテの入った封筒を取り出すと、

スーパードクターとの待ち合わせのレストランへ足早に向かっていった。

 

 

右太郎に対し申し訳ないと思う気持ちがない私はどこかおかしいのだろうか――。

 

その時、机の上に置いていた携帯がメールを受信した。

”もうすぐ病院の前に着くよ。何食べようか?ウタ(^_-)”

もうすぐウタが来る。

愛しいウタが。

私は龍ヶ崎と会ったことをウタに打ち明ける気はない。

なにもかもをさらすことが愛だとは思わない。

それでも私は右太郎を愛していると断言できる。 

サヤコはコーヒーを飲み干すとウタに”イタリアンがいいな!”とメールを返信した。

 

//////

あくる日のプチテレビ副社長室。

賛成と堀辺が会っている。

「堀辺さん、新事業のプランです」

賛成がまとめた書類に堀辺はざっと目を通す。

「ん!さすがエンタメの雄・プチテレビですね。おもしろい!放送とPanstagramの連動も斬新だ。彼がますます必要です!」

「――紀村俊?」

「ええ」

やはり。

彼の紀村推しは尋常ではない。

「堀辺さん、それについては社長と共にじっくりと検討しています。

そのためにも、ひとつ聞いてもいいですか?玉澤社長、紀村俊、その二人とあなたの関係について…」

「ええ、僕もそろそろ話したいと思っていたところです。ただ――」

「ただ?」

「先に伊藤くんと話をさせてもらえませんか?」

「伊藤?アナウンサーの伊藤純保ですか?」

「そうです、彼です」

「・・・ええ・・・わかりました」

わけがわからない賛成だ。

 

//////

伊藤はハルナとスタジオにいた。

本番が終わり、アナウンス室へ帰るところだ。

「ハルナ、いまから言おうとおもうんだけど…」

そう、彼らは上司に婚約を報告するつもりだ。

ハルナはうっとりとした顔で純保を見つめた。

「先輩…」

そのときディレクターが純保に声をかけてくる。

「伊藤くん、副社長から伝言で、収録が済んだら第2会議室へ来るようにって」

え?賛成?

「なにかな…。ハルナ、ちょっと行ってくるね」

「はい!先輩、アナウンス室で待ってますね!あ…ちょっと待って!」

ボタンが外れてますよ、とハルナは純保の第2ボタンを閉め始めた。

至近距離になったハルナに純保がささやく。

「…ハルナ?報告しちゃったら、結婚、やめられないよ?」

「先輩こそ、前みたいに気が変わったとかナシですよん?」

フフフ。

二人は笑い合った。

「行ってくるね?待ってて…」

「はい、待ってます!」

純保は第二会議室へ入る。

窓辺にだれかが立っていた。逆光でよく見えないが、きっと賛成だろう。

「賛成?レイちゃん出社してたね?」

その声に反応したシルエットがこちらを振り返る。逆光でよくみえなかった顔が、徐々に見え始めた。

「あ…」

 

それは賛成ではなく、テレビでみたホワイトナイトこと堀辺創だった。

「あの、副社長に呼ばれてきたんですが…」

「はい、ぼくがお願いしたので」

堀辺は純保に椅子に座るよう、うながした。

初めて間近でみる堀辺はテレビの印象以上に優しい雰囲気で、そのほほえみは天使のようだと純保は思った。

子供の頃に孤児院の礼拝で想像していたエンジェルが、そのまま成長した姿のようだ。

-いや、天使は成長しないしな?

そんなことを大の男のひとに対して想像してしまった自分が、少し恥ずかしかった。

 

会議用の白いテーブルを挟んで二人は向かいあって座る。

「初めまして。堀辺創です」

「もちろん知ってます。伊藤純保です」

「はい、ぼくも知っていますよ?」

「え?」

そんなに有名かな、俺。

このひと日本に来たのは最近だって思ってたけど…。

「伊藤くんの事、よく知っていますよ。君が僕を知る、ずっと前からね」

「はあ・・・」

どういう意味なんだろう?

「これをあなたに渡したいんです」

堀辺は包みに包まれた何かを純保の前に差し出した。

たいした大きさのものではない。純保はいぶかしげにその包みを開く。

なかから出てきたのは一枚のCDだ。

普通の、よくある、CD−Rだ。透明のケースでCDの白い面にも何も書かれていない。

「あの、これは…?」

そう質問した純保に、堀辺はゆっくりと返事をした。

「…あなたのお母さんの演奏が、それに入っています」

純保の鼓動が一瞬静止し、そのあと激しく音を立てて脈打った。

「え…?」

 -28話につづく-


アナウンサー!春物語 第26話 

2013-10-22 12:00:00 | アナ春

湾岸、プチテレビ。

大会議室。

ここで今から堀辺創の会見が行われる。

 

”ホワイトナイト!白馬の騎士!”

急な告知にも関わらず、テレビ・新聞・ネットニュース・・・ありとあらゆるマスコミ各社がプチテレビに集まってきた。

ホワイトナイトに名乗りを挙げたのは、

予想だにしなかったアメリカの投資会社の、しかも噂によると若きイケメン経営者。

それはドラマティックなこの騒動のクライマックスにふさわしい出来事だ。

会場に堀辺が入ってきた。

記者たちがざわつきフラッシュが一斉にたかれる。

”顔が小さいな”

”イケメンだな”

堀辺創は慣れた様子で席につくと、マイクに向かい第一声を放った。

『こんにちは、堀辺創です。

私が代表を務めるJYファンドは、さきほどプチテレビ上層部との話し合いを終えました。

正式にホワイトナイトとしてサイパー.comがプチテレビに対し行っている

敵対的TOBを回避する手助けをいたします。』

 

この様子はもちろん、PNS(プチ・ネットワーク・システム)を通じ28局のローカル局を繋いで全国に生中継されている。

進行の張本右太郎。

「では質問にはいります。質問のある方、挙手でお願いします。」

 

 

記者からは様々な質問が浴びせられる。

”具体的な投資金額や資金援助について”

”経営にどう関わるスタンスなのか”

”サイパーの紀村とは接触したのか”

−−−質問は延々と続き、なかには不躾な質問もあったが、堀辺はその都度、言葉を選び、誠実に丁寧に答える。

 

「…えー、では時間も少なくなってきましたので次を最後の質問とさせていただきます。

じゃあ…ええーーとーーー後ろの方の、蝶ネクタイのかた、どうぞ」

「はい、東経新聞の城之内といいます。」

「堀辺さん?あなたはJYファンドをプチテレビの為にわざわざ立ち上げたましたね?その理由をおきかせください。

そしてもう一つ、あなたと紀村社長、そして玉澤社長は旧知の仲ですよね?プチを救うのには何か裏があるのでは?」

城之内の発言に会場内がざわついた。

堀辺創が、両社の社長と旧知の仲———?

彼の表情が一瞬変化したように見えた。しかしすぐに冷静を取り戻しマイクに向かう。

「城之内さん。おっしゃる通り、私はプチテレビを救うためにJYファンドを作りました。

JYグループはご存じの通り幅広い分野でビジネス展開していますが、これまで金融部門、と

りわけファンドには触手をのばしていませんでしたから、あなたが疑問に思われるのもわかります。

しかし僕は見ての通り僕は日系人ですから?ハハハ。日本の情報は常にチェックしていますよ?

この騒動にも以前から注目していましたし、プチテレビに何の縁もないというわけではありません。

特に張本さんのニュース22は良くチェックしていますしね?」

右太郎の方を見て微笑む。

 

 

堀辺は続ける。

「二つ目の質問ですが…僕が誰と面識があるか?具体的な事はプライベートなので話せません。

しかし、ひとつだけ言わせてください。

・・・私はいつでも困っている人を助ける人間でありたいと思っています」

なんて美しい回答。

しかし城之内にとっても、会場にいるマスコミ全体にとっても、こんな回答は肩すかしだ。

「それはーー」

城之内は質問を重ねようと立ち上がる。

しかし、

”張本、ここで〆ろ!!!”という無言の圧力が、

会見に立ち会っている吉田常務から進行役の右太郎に目で訴えられた。

プチテレビは堀辺の機嫌を損ねるわけにはいかない。

吉田の目つきに右太郎は速攻で会見を終わらせた。

「こここで会見を終わります。以上です」

記者からはブーイングが起こり、城之内は吉田に誘導されながら会場を出る堀辺に質問を投げつづける。

「堀辺さん!二つ目の質問の答えになっていませんよ?!

玉澤社長とはどういう話をされたんですか?なにか秘密裏に進んでるんですか!釈然としません!

あなたと紀村社長は——!」

しかし彼の声はむなしく空に放たれただけで行先はない。

「まあ仕方ないさ。個人情報だっていわれちゃあな?」

となりの記者が城之内の肩に手を置きなぐさめた。

(すっきりしないな…)

謎は多く残っているが多額の資金提供をしてプチを救おうという堀辺に

これ以上なんの疑問を問いかけることができようか。

 

/////

その頃。渋谷のサイパー.com本社前。

多数のマスコミが押し掛けている。

 

社長・紀村のコメントを求めてだ。

記者、カメラマン、その他軽く3,40人は集まっているだろうか。

公式取材にサイパーが対応する気配はなく社屋から紀村が出てくるチャンスを待つしかない。

 

伊藤純保はロケからそのままディレクターとカメラマンに合流し3人態勢で待機していた。

「伊藤君さ、紀村社長と仲良ったよね?どうにか話せない?」

ディレクターが軽口をたたく。

「無理すよ…仲いいったって、玉澤社長と一緒にカラオケしただけですもん…うっ」

「どうした?」

「いや、この前やってたスイカロケでちょっと食べすぎまして…」

(※一分間にスイカ何個割れるかな?からの二分間にスイカ何切れ食べられるかな?)

 

「そうかあ。スイカはむくみにいいんだぞ?にしても…まったく、コメントのひとつでもくれりゃあなあ?」

その時ディレクターのケータイがなった。なにか動きが有ったのだろうか?

「おい伊藤君、プチでホワイトナイトの会見が始まるぞ!」

この時ばかりはそこにいるすべてのマスコミすべてがワンセグに見入った。

 

 

「よし!これでプチは買収を免れたな。ますます紀村社長のコメントがほしいよ」

ディレクターの声は明るい、自分の勤め先が危機を乗り越えたわけだから、あとは紀村のコメントをとり視聴率をあげたい。

それが彼の仕事だ。

 

純保は多くを語らない。

 

それはー。

自分がこの一連の出来事のすべてではないにせよ、発端の一角である・・・という自覚があるからだ。

バタフライエフェクトだと思う。

”蝶のささいな羽ばたきが、そこから離れた場所の未来に想いもよらぬ影響を及ぼすこと——。”

人生とはそんなささいなことの積み重ねで、ほかの知らない誰かを幸にも不幸にもしてしまうのだろうか。

自分の意志とは関係なくー。

自分の羽ばたきが影響するなら、できれば良い影響を及ぼしたい。

そんなことは夢想でしかないのだろうか?

その時、記者の1人が大きな声をあげた。

「おい!だれか出てきたぞ!」

サイパーの玄関からぞろぞろと男たちが出てくるところだった。

「誰だ?!あれ?!」

「なんだなんだ?!」

群れをなす男たち―――。

「ディレクター、見た事ありますね?特に真ん中の…眼光の鋭い男」

「ああ伊藤君、あれは紀村と学生時代から一蓮托生でサイパーを作ってきた初期メンバーだ・・・

今はたしか自分で会社を作り、サイパーとは顧問という形で関係しているはずだ!」

「そんな人が、なぜ?」

記者たちはいっせいに彼らにカメラを向けた。

眼光の鋭い男が話し出す。

「えー、たった今サイパー.comで臨時株主総会が開かれました。

満場一致で紀村俊は社長を退任することになりましたのでここにお知らせします。

そしてサイパー.comはプチテレビへのTOBから一切手を引きます」

ざわ・・・

「どういう事ですか?紀村社長の退任はホワイトナイトが現れた事を受けてからの決定でしょうか?

それとも以前から用意してきたことですか?」

「サイパー、イコール紀村俊ですよね?

サイパーのIT関連のシステム構築はほぼすべて紀村社長のアイデアだと思いますが

その権利についてはどうなるんですか?」

いくつもの質問が矢継ぎ早に飛び交う。

 

眼光の鋭い男は冷静に答えはじめる。

「もちろん、いくつかの権利については紀村個人のものです。

ただサイパーとして作ってきたシステムについては——

たとえば日本版FaceBookといわれるNoLoBookなどですが、

サイパーの財産として登録されていますので今後は権利とともにサイパーが運営していきます」

NoLoBook の権利は会社のものに・・・

利益は全て会社のものになり、紀村の個人資産にはならない。

「紀村社長には、それなりの報酬は与えられるんでしょうか?」

純保の質問だ。

「え?…もちろんです、もちろんですよ、ははは、さあ、あとはまた後日!さあ退いてください。さあ!」

眼光の鋭い男はマスコミを押し分け、到着した黒塗りのベンツに乗り去った。

一同、茫然としていた。

「…おい伊藤君、中継しめて?」

「あ…はい…」

純保はマイク片手にカメラに向かった。

「えー、サイパー.comで臨時株主総会が行われ紀村俊社長が退任したということです。

繰り返します・・・・・・・」

「紀村俊氏は社長を退任、プチテレビのTOBに・・・」

(俺は———)

複雑な感情をおさえ事実を国民に伝える。

それが自分の仕事だから。

「繰り返します。サイパー.comの紀村俊が、さきほどの臨時株主総会で社長を退任しました。

ホワイトナイトの出現と同時のこの事態ですが、どのような経緯か現在取材中です。

新しい社長はいままで別会社を経営し、サイパーの外部顧問だったヤ———————」

(紀村社長は身ぐるみはがされたのかもしれない・・・

俺が…俺があんな写真さえとられなきゃ・・・)

純保の後悔を置き去りに中継はそのまま続いていった。

 

/////////////////////////

ホワイトナイト会見後のプチテレビ社長室。

 

玉澤、黄桜、そして堀辺が引き続き話し合いをしている。

「堀辺さん、こんな好条件で、なぜ?」

JYファンドからの書類をあらためて見返しながら玉澤が堀辺に訊ねた。

読み終えた書類はとなりの賛成へと渡ってゆき、賛成も目を通しながら思う。

(ふむ、プチにとってはありがたすぎる条件だ。

経営参画を狙っていた八頭ノ小路の条件とも全く違う——

これで堀辺はいいのか?ただビジネスをわかっていないだけか?)

 

賛成は書類を読み終えると顔をあげ堀辺を見た。

(この男にはひょっとして見えている優しげな顔とは全く違う裏の顔があるのかな?

こんな好条件に乗ってしまってホントにいいんだろうか・・?)

裏の顔。

そんな穿った見方をしてしまうくらい、プチにとっては好条件の援助なのだ。

 (いや、そんな風にはみえないな。まるで天使だ…白馬の騎士以外のなにものでもない…)

 

ビジネスとして損もしないが得もしない、それでいいのか?

賛成は知らぬ間にいぶかしげに堀辺を見ていたようでそれが堀辺にも伝わった。

「黄桜副社長、裏などありませんよ?」

気持ちをみすかした堀辺はソファから立ち上がり窓辺に立った。

社長室から空をーいや、どこか遠くを見ている。

「あなたがたの言いたい事はわかります。僕の提案では資本主義経済の根本がそもそもなりたちませんからね?フフフ」

「ええ、これじゃまるで寄付ですよ?」

寄付という玉澤の発言に賛成はユニセフの写真を思い出した。

「いえ、玉澤社長。寄付ではありません。長期的な投資です。」

そういわれた玉澤は決意した。信じよう、それしか道はない。

「・・・わかりました、この条件、プチとしては何の不都合もありません。

よろしくお願いします。ただ・・・」

「ただ?」

「どうでしょう?これを機にJYグループと我がプチで新事業を組んでみませんか?僕はあなたとビジネスをしてみたいな?」

玉澤は自分とは全く違うタイプのこの男に興味を持ちはじめていた。

そしていずれは真意を探ってみたい。

「うむ…」

堀辺が思案する。

「事業。いいと思います。僕は日本のショービジネスの世界に興味が有ります。

ただ玉澤社長、ひとつだけ条件を出しても?」

「なんでしょう?なんなりと」

堀辺は玉澤と賛成の顔を交互に見つめた。

「それは————」

 

 

堀辺の出した条件に玉澤と賛成は唖然とした。

 

 

//////////////

渋谷、サイパー.com社長室。

 

外はもう暗いというのに部屋の灯りはついていない。

紀村俊は暗い部屋にひとりぽつんと座っていた。

東京の夜は鈍く光る。

開きっぱなしのブラインドの隙間から、渋谷の、都市の、鈍い光りが部屋に射しこんでいた。

 

 

彼はもう社長ではない。

いま俊の心は落ち着いていた。

なぜだろう、こうなることが分かっていたのか?

誰かが止めてくれる事を期待していたのか?

 

サイパーを学生時代に起業したころからの仲間の手によって彼は社長から退任させられた。

しかし仲間とて、俊を憎んで社長の座から引きずり降ろしたわけではない。

会社をつぶす訳にはいかない。

そのための判断が冷静に下されただけだ。

 

ぽつねんと座る俊の足下にオードリーが寄ってきた。

俊を見上げている。

(…この部屋、早く出ないとな)

自宅は他にあるが、この社長室でほとんどの時間を過ごしてきた。

だからここが彼の世界の全てだった。

 

会社の前に集まっていたマスコミはもう諦めて帰ったようだ。

俊は立ち上がると部屋の灯りをつけ、私物を整理し始める。

しかしふと思う。

PCも洋服も、さして重要なものではない。

惜しいのは音楽の機材だが、それも今、どうする気力もなかった。

本当に大切なものはそこには何も無いのだ。

 

彼は結局何も持たずにオードリーだけを抱えると部屋の灯りを消した。

部屋を出る時一度だけ振り返りじっくりと部屋を見渡した。

その目はいま何を見ているのだろう。

新しいITのシステムを思いついて仲間と抱き合ったあの日?

オードリーがパンダのぬいぐるみと遊んでいたあの日?

ミーコがソファに座ったあの日?

彼がここにくることは、もうきっと、ない。

 

会社の受付にはもう誰もいなかった。

残業している社員たちは作業に没頭し紀村には気が付く様子はない。

--NoLoBook、Panstagram、Jtunes。

(みんな、あとは頼んだよ)

つくりあげてきた様々なものが今、俊の手から離れていった。

 ・

玄関を出ると・・・

「紀村社長!」

玄関横のちょっとした植え込みスペースにひっそりとプチテレビの伊藤純保がいた。

「君か。…みんなもう帰ったんだろ?しつこいな?ハハ…」

わざとそんな風に言って笑う。

「伊藤くん、一人か?」

「はい。紀村社長、あの・・・そもそも僕の写真がキッカケなんです。だから」

「俺はもう社長じゃないぞ?」

「あ・・・」

すみません。

風が冷たい、もう夏は終わったのだ。

「だれが原因なのか?そんなことはもうどうでもいいんだよ。ホントだぜ?

なぜかすごくスッキリしてるんだ。だから泣くな。」

いつの間にか流れていた純保の頬に流れる涙を、紀村がぬぐった。

「ねえ伊藤くんさ、きみの夢ってなんだ?」

「夢、ですか?…えと・・・アナウンサー、ですね」

「へえ」

紀村の顔に笑みがこぼれた。

「夢をかなえてるんだな。俺はね、サイパーが夢ってわけじゃなかった。

必要にせまられて大学生の時にこの会社を作って、突っ走ってたら結構おっきな会社になっててさ?

——毎日楽しかったな。新しい社会の仕組みを作ってるんだっていう高揚感があったんだよ。

でも気がつけばそんな高揚感もう何年も感じてなかったな…」

「紀村さん…」

「もっかい夢でも見てみるよ。どうせ時間はあるんだ。」

「はあ」

「君とはもう会う事はないだろう、…もっと仲良くなれたかもしれないな?」

俊はそう言って純保に背を向けると坂を下っていってしまった。

純保はその背中が見えなくなるまで見送った。

 

 

////////

BAR LEGEND

玉澤。

 

久しぶりの来店だ。

「玉さん、いつもの?」

気のいいマスターがスコッチの瓶を傾け、玉澤が目でそうだ、と答える。

「お連れ様は、何になさいます?」

「それじゃあ、赤ワインをください…」

玉澤の隣にミーコがいる。

透明なワイングラスに深い赤が注がれた。

 

「大変、だったでしょ?」

「ああ、やっと一段落だ」

買収は回避され、今日は玉澤以下、プチの上層部にとって何週間かぶりの安堵感を感じた記念すべき日だ。

「ミー、まだまだ交渉が続くからしばらくは忙しいけど冬に入る前には落ち着くと思う。

そうしたらどこかへ遊びにいこう?どこがいい?」

「…ん…」

ミーコにはずっと考えている事がある。

そして答えは出ていた。

それを伝えなければならない。

しかしなかなか口に出せないまま目の前のグラスのワインを見つめている。

「紀村君は社長を退任したよ」

玉澤がスコッチをあおる。

「・・・あいまいさは罪だよ?」

ミーコが目線をあげ玉澤をみると、その黒く強いまなざしが真っ直ぐに自分を見つめていた。

その目は哀しみに縁どられていた。

「玉澤さん…ごめんなさい…」

フゥ

玉澤の大きなため息がスコッチの香りとともにはき出される。

このままどこにも進めない事は玉澤にもとっくにわかっていたから。それでも考えたくなかった。

「俊の力になりたいんです」

玉澤は無言だ。

「いいですか?私・・・俊の所へ行っても、いいですか・・・・」

ミーコの目から一筋の涙がおちた。

玉澤はグラスに残っているスコッチを一気にあおった。

「…ああ、行け…!」

「・・・ありがとう!玉澤さん、ありがとう…!」

ミーコが席をたつ。

その瞬間玉澤は反射的にミーコの手を掴む。

ミーコを胸に寄せ抱きしめる。

「玉澤さ、、ホントにごめんなさい…」

腕のなかのミーコは涙で震え、それ以上の言葉はでない。

髪をなでる。この子が愛おしい。手放したくない。だけど…。

「ミー、君が・・・・・好きだった・・・・。ほんとに・・・愛してた・・・」

そうして10秒ほどだろうか、

玉澤は抱きしめたその腕を緩め、ミーコを解放した。

 ・

ミーコがBARから出てゆくと、残された玉澤は目の前に残されたミーコのワイングラスを見つめた。

マスターが気を遣い玉澤のスコッチを注ごうとする。

「いや、今日はやめとくよ…?」

マスターは無言で頷く。

口を付けなかったミーコのワイン。

あの日ミーコのドレスに散った赤い液体。

ふたりが始まったその時の色。

深い深い、紅。

それを見つめながら玉澤は思う。

――欲しいものは君だけ。なりたいのは君のオンリ—ワン。

「僕のオンリーワン…」

ワイングラスのワインは満たされたままもう減ることはない。

 

///////////////

レイのマンション。

賛成が来ていた。

 

食卓に座りDURALEXのグラスに注がれた赤ワインを二人で飲む。

ホワイトナイトが現れ一息ついたお祝いだ。

特に賛成にとっては、TOBと共に併発した八頭ノ小路縁組の一件から完全に解放された記念すべき日と言えるだろう。

レイは明日から出社するという。

「ワイングラスも買わないとね?」

「これで充分よ?」

「そう?」

賛成は立ち上がり、リビングの隅にある机の上から婚約指輪を持ってきた。

そしてレイの手からグラスを取り、左手をとると薬指に指輪をはめる。

「レイ、結婚しよう。1日も早く」

「賛成、それなんだけど…やっぱりお義母様が許してくれるまで、結婚するのはよさない?」

「母さんの事を気にする事はないんだよ?買収の心配はないし、君は今日だって…母さんにひどいこと言われたんだろう?」

良子に”お義母様と呼ぶな”、と言われ、黄桜家を出た瞬間まで、レイはどう反対されようと賛成と結婚しようと思っていた。

しかし…

「このまま結婚してしまうのは違う気がしてるの。」

賛成は浮かない表情だ。レイはそれに気が付き弁明する。

「賛成?私、もういなくならないよ?絶対に」

レイは賛成の手を握った。

「じゃあ半年。もし半年待っても母さんが変わらなければ、僕らは籍をいれ式を挙げよう?指輪は絶対に外さないで?」

「うん…」

「うんって言ったね?言ったよね?」

賛成はレイを椅子から立ち上がらせ腰に手を回し抱き寄せる。

抱き寄せられると同時に唇を重ねられ、その柔らかさにお互い目を閉じて陶酔する。

再会した夜は会えた事だけで胸がいっぱいになりすぐに眠ってしまった。

こんなふうに長く甘い口づけをかわすのは久しぶりだ。

賛成の唇がなかなか離れようとせず二人はしばらく立ったまま、重なり合っていた。

二人は唇を離しても至近距離で見つめ合ったまま、やがて、レイは自分の両足を賛成の両足に乗せた。

賛成の足に乗ったレイは自分の体を預けた形になり、そのまま賛成に抱えられるとベッドまで運ばれふたりは倒れ込んだ。

ベッドでは賛成の上にレイが乗る形になっている。

レイは賛成の大きな体に体を預けうつ伏せていた。賛成の香りがしてその体の温かさと鼓動の音に安心する。

やがて賛成の手は、レイのニットの裾から背中に入り、手を這わせはじめる。

「賛成・・・ろくに寝てないんでしょ・・・?今日は・・・」

「レイ」

言うやいなやベッドの上で体制を変えられ、レイの上に賛成が覆いかぶさった。

「なに言ってもムダだよ?今日はレイを抱きに来た」

――さあ、目を閉じて数を数えてごらん?

―――one,two,three,four・・・

(ここからBGM:All night longでお願いします)

 

・・・・・

ミーコはBARを出た足でサイパーへ向かう。

そこに俊はいない。

電話を鳴らしてもでない。

応答はない。

ミーコは深い深い喪失感に襲われ、ただただその場に立ちすくむ。

 

・・・・・

純保とハルナは手をつなぎ恵比寿を歩く。

純保の引っ越し先のガーデンプレイスへ向かっているのだ。

すこしだけ元気のない様子の純保にハルナは気が付かないふりをしている。

何も言われたくない日もある。

だから今日はゆっくり癒してあげよう。

 

・・・・・

右太郎はニュース22--いつもより終了後のミーティングが長かった――をやっと終え帰宅している。

久しぶりにサヤ子の品川のマンションだ。

成田では結局バタバタしていたからゆっくり話そう。

買っておいたキルフェボンのタルトとシャンパンを持ちサヤ子のもとへ勇み足だ。

 

・・・・・・

玉澤はBARを出てふらふらと歩き

吉田常務は銀座のクラブで祝杯。

ニューヨークのシュウコはプチのニュースに目覚めのコーヒーも美味。 

 

 

そう。

それぞれの夜。

幸せなもの、寂しいもの、ふたり、ひとり。

ALL NIGHT LONG・・・

 

 

 

 ・・・

堀辺創の泊まるホテルの部屋のチャイムが鳴った。

ドアを開けると…

「ああ、ジョージ、着いたのか」

「ハイ。持ってきました、レイノモノ…」

堀辺はジョージから包みを受け取る。

「そうだな、伊藤くんに全てを明かす日が来たようだ…」 

 

 

 

-27話につづく-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


玉社長のスーパープレゼンテーション(Eテレ)

2013-10-16 23:00:00 | テギョン玉さま

皆さんはこの番組をご存じだろうか・・・・・・・・

 

わたくしEテレって結構好きでして。

この番組も見るとはなしに見てるんですが。

 

”スーパープレゼンテーション”という番組名のとーり、

スーパーなプレゼンテーション(えーご)を紹介する語学教養番組・・・。

 

そして・・・

 

ここにひとつ、

放送をすべきなのに、

なんらかの事情で、

放送できなかった、

スーパープレゼンテーションが、

あるらしい・・・


そう、それは

 ハイ真ん中ちゅうもく~!!

 

THE OKCAT 

LIVE−

PRESENTATION!

 

いやあ冗談はさておき、

われらが玉澤社長ことオクテギョン様がオクキャット事業を本格的に始動。

ツイッター上プロフィールにおいても、

”シンガーソングライター”という最新情報に続き

”オクキャットCEO”という肩書が加わったことは

ホッテストのみならず世界の人々の知るところだと思います。

 

 

彼は確か東京ドームでこんな発言をしましたね?

「オクキャットを世界の隅々まで行きわたらせるのが夢」

この一言、私を一瞬にして童心に—空き地でレンゲを摘んでいたいたいけな少女の頃ーを思い出させてくれまして。

なんというかほんっとうに宇宙からのありがた—い贈り物。

ギミラの日本プロモーション時には、パンケイヒョンとビジネスパートナーになりたいとか(のーらぶ猫)・・、

とにかくオクキャットをキャラクタービジネス化する気満々、まあ伏線だよね?とは思っていたんですけどね。だから予想はしてたんですよ?色々と。でも。。

今回ふたを開けてみればなんというか・・・

私がPMに求めている事って実は玉様一人でやってくれんじゃねえの?ガーン!!

っていう感じなんですよ!!!

※この場合の求めてる事って言うのは、遊びの部分の話です。

 

だってさ

まずCEOって言っちゃうところとか好き!

そして勿論さ!想定の範囲内だけどさ!!!

オクキャットソングとか創ってくれたし!(あ、堀辺仕様で創るという漢字をつかわせていただきます)

極めつけがこのぷれぜん。動画15分37秒でアップされたこのプレゼンテーションですよ!!!


ぷれぜんてーしょん!!!

無駄に言いたい!!!!ぷれ 

 

ツイッターでわたくしメのフォロワさまもおっしゃってましたが、

それはもう「スティーブジョブズばり」のプレゼン。いや!ごもっともです!!!

 

 

ただ・・・またしても韓国語の分からない不調タモンニ、あ、負傷、ちがう不肖。

でもまあ不調だし負傷だからまあなんでもいいんですけども、

ジョブズまとめはできない!ジョブズについてもたいして語れない!!

なのでわたしにできる範囲で・・・・

そう・・・

 

玉澤社長(所属・プチテレビ)がやってる体でこのオクキャプレゼンをブログにアプるよ!!!!

何の意味もねえ!それがこのブログ!!!

みんな無理せずYOUTUBEの動画見なされ!!

※ちなみに玉澤社長(所属・プチテレビ)つうのは不肖わたくしタモンニが

しつこくアップし続けている「アナウンサー!春物語」という物語の登場人物で

実際のオクテギョンとは何の関係もございません※

 

ただただとにかく見てるうちにアプせずにいられなくなった私がだらだらとキャプりまくっておもしろおかしくだけど誠実に愛をこめて書くだけです。

な/の/で/

あなたのノワール同様言ってること=韓国語、1%しか理解してないから全部妄想です、もしこのまま読んでくれるならそこんとこヨロシコ!!

じゃ行きます!!


タマらない…玉様の魅力。

わたしはチャンソンのペン。

でも今日だけは…赦して…

玉様への忘れちまう愛の形をSHOW ME HOW!あゴメここチャンソンのパートだったわ!あは!チャンソンのラップいいね!

・・・とっとと行きます!

 

 

玉社長のスーパープレゼンテーション!!!

~俺(玉)があいつ(猫)であいつ(猫)が俺(玉)で~

 //////////

プチテレビ、大会議室

続々と集まってくるマスコミ各社の記者たち。

なぜだろう・・・・・・皆、女。よじゃよじゃよじゃ・・・。

 

いや、それは仕方ない。

だって今日はプチテレビのイケメン若社長:玉澤さんがみずから総指揮をとる

プチ初のキャラクター事業のプレゼンなんだから(^o^)!

 

 

「こんちゃ!玉です!」

パチパチパチ…(以下ピンクの字、記者)

「お忙しい所、ありがとうございます。

えっとですね、今日はスライドを使ってプレゼンしますが

あれ、これでいいのかな?ミーコ君、どこ押すの?あ、ここね?

はい、よろしくお願いしますね~」

わーー

パチパチパチ拍手

 

ピッ

「あ、できた。あと、今日は実際にOKCATも来てくれたんで・・・おーいオクキャ~おいでぇぇにゃああ」

玉の猫撫で声に記者ら困る。

オクキャ、登場。

「はーい」(以下緑字、オクキャ)

「どもーOKCATでーす」

へー

ふーん

あれがぁ?

かわいいっていうのかなあ?

さあ?

「じゃ説明しちゃいますね?えっとお」

 

「まずね、これがきっかけなんす!ぼくが今回OKCAT事業に乗り出したのわ!!」

 

ピッ

 「これ、ネットの掲示板なんですけどね?

僕がたまにオクキャのイラストとか描いてるのみたファンがね?書き込んでたんですよ。

”玉さまのあの緑のネコ、だいすきですう

あれってぬいぐるみとかないんですか???きゃ!!”

 このファンからの書き込みが、ぼくにオクキャを世界に広めたいと思うきっかけをくれました!

ファンはぼくの生きる理由です!」

おお~

いいこと言うね。

「そこで!!こちら!!」

ピッ

「OKCATとはなんぞや!!じゃじゃーん!!」

ふんふんふん、、、

なんだろうね

オクキャって・・・・

ざわざわ

(じっさいのプレゼンに来てる人たちの後ろ頭も全部女だね!!!!)

「えっとオクキャ、最初はイラストでした!」

へえ・・・

これが・・・・ざわざわ

「左は日本用です、右はカカオ用。(これカカオのなにかを模してると思うけどよくわかん!あの,ももみたいなキャラ?タマネギにしか見えない!)

で次!

次は砂浜に書いたんです、チェジュドの浜に、・・・ふ、おれのオクキャがnatureにデヴューした瞬間です」

わあーーー・・

くすくすくす

 

「それから僕はドリハイというドラマに出たんですが、そこでも描いてぼくのツイッターにアップしました。

オクキャのメディア・デヴューはこの時です。」

へえ

かいてるね

ドリハイだって・・・

みたみた・・・

あれは良かったよね・・・

 

「そして・・・ファンイベントでファンの顔にペインティング。」

「そして、こんなこともできます。

立体的なオクキャットの顔の下に肉体を描く・・・3Dアート的な」

・・・・。

「それらはすべてツイッターにより世界の僕ファンに届けられました。」

なるほどー

ついったーときたかー

ちょっと写めっとこ。

パチッ

「そしてついに、、、この人も協力してくれました・・・!!

そのおかげでチェジュドより大きな海岸にオクキャを描けました。」

この人ってだれ?

え?もしかして?

ざわざわ

 

あ!・・

ちゃんそん・ふぁん!!

※いきなり出てくるからタモンニびびったよ(^o^)/好き!

 

 ・

 

「どんどん進めましょう!」

ピッ

 

”REAL OKCAT”!!!

 

「ボディにペイントしてみました。アビバの時ですね。

ああ、やくそけっちゃなの時、皆さんチャンソンを見ると思いますが僕もかなり胸動かしてるんですよ?

ぴくぴくしてオクキャが生きているように見えてました、この時。くぷ」

 

「つづいて立体物制作・・・もちろん装着しました・・・初めてのかぶりかな?」

きゃあー!

玉社長かわゆす

やっぱいいね!

今日来てよかったわ私・・。

ざわざわ

「みてくださいこれ。このなめらかなキグルミの動き。」

「どうですか?」

あいっらびゅ 

ゆっらっみ

 

いいわね

ちょっとでもこれって巨大ね?

 

「次行きます。」

ピッ

 

”FAN ART”!!!

「ファンの皆が描いてくれたオクキャです。」

「ジュノもいますね、チャンソンも。ニックン!いいですねえ!

これなんて髪の毛生えてますよ(みぎした)!!」

 

「こっちは僕ですね。こんなに頬こけてますかね?こけてますね?ははは!」 

 

「・・・・そしてここからが・・・

今日皆様をわざわざお呼びした、理由です。」

 

ピッ

”BRAND NEW OKCAT”!!!!!


ざわざわ

パシャパシャ

なんやろブランニュって・・・

とりあえず写真・・

  

 

これがぶらんニューオクキャだ!!

 

ブランニュオクキャの登場、曲でいうと多分サビ。ういんたーそんぐsでいうとジュノ真ん中んとこ。ここ大事。このプレゼンで言いたい事はブランニューオクキャ!!

 

 

 

 

 

 

 

まえ、よこ、うしろ!!

あいっ、らっ、びゅっ!!

 

 

 

 

 

りったーーーーーーい!!

こんなーにとーきめーきー!!

 

 

 

 

”あああああーーーーーー

たのしーーーーーー!!俺!たのしーーーーーーーー!!!” 

 

 

 

 

・・・・

玉社長輝いてますね。もう言う事無いです。

そしてここでグッズの紹介。

パスケース、小物入れなど。

さて、

それはどこで買えるのか?フアユならぬ

”WHERE TO BUY?”

勿論考えていますよ?!

 

国内でも海外でも買えます。

ぬかりはない!

だってグッズ売らないとビジネスじゃねっから!!

だからここ!

曲でいうと2番のサビ!

もしくはサビの後半じゅんけのとこ!!

超大事!



ぐぷ

ピッ 

 

 

「このサイトで買えます。国内はOKCATモール。そして海外ではここ!です」

 

 

10/15からププププレオーダー!

なにさま!?オクキャさま!!!


 

 

もちろん現代の常識ツイッタとFB完全完備。

 

「そんなわけでプレゼンを終了いたします。」thanks!

 

満 足 !



このあと質疑応答があったと思うんだけど、動画はここまで!残念!でもね・・・


 

こんなに楽しそうなテギョンの笑顔見せられちゃ、

なんも言えませんね~(^o^)!!

ほんとテギョンもオクキャットも大好き!


私今回思いましたけど、なんか・・・面白いよね、

こんなに楽しそうにプレゼンするテギョンだけど、アイデアだしてそれを形にしたスタッフがいた訳で、

なんだあ事務所センスあるんじゃんって思いました。

私はやっぱりこういうの好きだなあ、愛を感じる。

なのでアナ春の続きの前にこっち書きました。

テギョンありがとう!!なんか泣けてきたよ。



完チャンソン