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PM7:00に2PMの事を考える

クリームソーダ的宇宙

アナ春アナザーストーリー『Heartbreaker』後編 byクリーミィ・メルモ

2013-08-10 12:00:00 | アナ春サイドストーリー

何分、何十分…いや、何時間?自分がぼーっとしていたのかわからなかった。

そしていつの間にか涙が頬を伝っていた…自分で気づいてなかったし。

大丈夫か、私…そこそこ自信がついてから鼻っぱし折られるの、キツいわ…。

こんなに誰かに甘えたいと思ったのはいつぶりだろう?

 

 

「…大丈夫ですか?」

 

顔をあげると…あの彼がいた。

弱っている私には眩しい笑顔…吸い込まれそうだ。

 

「先日は…あの…あなたに僕、ぶつかってしまって…すみませんでした。急いでいたんですよね?   

 本当にごめんなさい。」

「あ...あぁ…いえ、大丈夫よ…ところであなたは?」

「あ、すみません、僕はプチテレビの伊藤純保と言います。まだ研修期間なんですけど…。」

やっぱり大学卒業したてか…てことは、私の5こ下…うぅ…。

「あの…お名前、伺ってもいいですか?」

「あ、ごめんなさい、私は高村美香。サイパー.comの営業よ。」

「それで僕の会社と取引があるんですね。納得しました。」

「…」

「…あの、大丈夫ですか?」

「え?」

「ちょっと…泣いてるみたいだったから。」

 (げ、バレてる…)

「そ、そんなことないわ…ちょっと疲れてるけど。」

「…ならいいんですけど。」

 

彼がおもむろにペンと紙を取り出し何かを書き始めた。

「これ。僕の携帯です。失くさないで、この番号を。必要なその日が来るまで。

 (代償なんて、なにもいらない。Anytime, anywhere、駆けつけるから…)

 …じゃあ。一人の方がいいですよね。また…。」

そう言って彼は出て行った。

 

若いって、自信あるのね…電話番号を渡されても…私からかけられるわけないじゃん!

「はぁ…私も会社戻ろ…」

 

 

 

会社の入り口でちょうどジム帰りの社長とばったり会った。

「お、高村、お疲れぃ!」

「社長、相変わらず健康的ですね〜、っていうか、派手ですね!!」

「いいだろー、俺のファンにもらったんだよー」

「ファンって何ですかファンって!」

「はっはっは〜!」

 

この人が我らがサイパー.comの社長、紀村俊。

24歳という若さで今や業界ナンバーワン大手のIT企業を立ち上げ、代表を務めている。

凡人では考えられないような大きなプランを次々と手がけ、

バリバリ仕事もこなすのに部下に対しては気さくで、社員からの信頼も厚い。

そしてさっき社長がファンと言っていたのもあながち嘘ではなく、

まだ独身ということもあり、他社の女性ファンから毎年、バレンタインには山のようなチョコが届く。

最近は長期プランでの大きな買収を考え始めたようだけれど…それはまだ社長のみぞ知る話。

私より年下の社長だけれど、全信頼をおいている。

私が以前務めていた会社とサイパーが取引があり、私の仕事っぷりを気に入ってヘッドハンティングしてくれたのだ。

 

…さて、と。

デスクワークばばっとやったら今日は華金だし、ケイでも誘ってご飯行くかー!

 

 

 

うーん…やっぱり、すぐには電話こないよな…。

勢いで携帯番号を渡してみたけど、淡い期待は崩れ去りそうだ。

キミの声 聴かせて欲しいよ 他になにもいらない その声が僕を突き動かす…

I can’t stop loving you Baby…

もうずっと彼女のことを考えてばかりだ。

あの後は大丈夫だったかな…普段強そうな人が泣いているとたまらない。

離れていても目を閉じたら僕はうかぶ?今は誰と泣きそうな空の下に居るんだろう…

 

 

 

そんな彼の想いは露知らず、私はケイに伊藤純保との話をキムチチゲをつつきながら話していた。

「…というわけで、携帯番号、いきなりもらったんだよね。」

「年下なんでしょ!!?しかもイケメン?いーじゃん!やるねー美香も!!」

「いやいや、やるも何もまだ何も始まってないし!てか、電話かける理由もない」

「まぁ、冷静に考えたら何もないよね…何か口実ないの?仕事とかさぁ」

「これが、全くないよね!彼、まだ新人だしさ」

「そっかー。」

私は最寄り駅が一緒で仲良しのケイと、いつもの韓国料理屋に来ていた。

ここへは週2、週3で来ており、来るたびに何かサービスしてくれる。

「まぁそのうち、電話することが出てくるかもしれないしね!」

「…そんなこと、今後、あるかなぁ?」

いつものようにケイと深夜まで喋り倒してから私たちは家路についた。

 

 

 

…その後、私は社長が企画した大きなプランのプロデュースを任され、

ロンドンに飛んだり、カンヌに飛んだりという生活が続き、彼のことはすっかり忘れて仕事人生を駆け抜けていた。

あーあ、当分、結婚はもとより、彼すらできそうにない…ま、仕事も楽しいしいっか…。

 

そうして年月は過ぎ去り…

 

 

 

 

 

…あれから5年。

テレビを観て彼がプチテレビの人気アナウンサーになったことは知っていた。

芸能人と肩を並べて”抱かれたい男”ランキングでも4位になっているらしい。

 

まさか、あの彼がね…ほんっと惜しいことしたよね、私。

ほんっとに惜しい!今や人気アナウンサーの彼女だったかもしれないのにっ!

…後悔先に立たず。痛むよ、胸が。

 

そんな中、例年、サイパーが巨額の出資をしているプチテレビの湾岸合衆国、おやすみライブの季節がやってきた。

ここ数年、私は海外担当だったので、今年は久々に何かしら企画の担当をすることになるだろう。

ここにきてプチテレビの仕事かぁ…彼に会えるかな…明日は先方で打ち合わせがある。淡い期待を抱いてしまう…。

 

 

翌日。

事業局で打ち合わせがあり私はプチテレビ社内にいた。

あれ?あの人…。

 

「キミ、どこかで…」

「いや、お会いしたことは…ただ、数年前に銀座のカフェで私が一方的にお見かけしたくらいかと」

「あぁ、あのガラス張りのカフェね。覚えてるよ。僕は綺麗な人は一度見たら忘れないからね。」

「…はぁ?」

「ふふ。これ僕の名刺。いつでも電話して。」

「…。」

そう言うと玉澤は「I LOVE U♪ U LOVE ME♪」と何やら口笛を吹きながら去って行った…。

 

あの日、彼と一緒にいた先輩がプチテレビの看板アナウンサー、玉澤竜二だと知ったのはしばらく経ってからだ。

それにしても完全に遊びなれてるな…私はあーゆータイプに最も引っかかり易い…気をつけよ!

 

玉澤さんの名刺をしまっているその時、長い渡り廊下の向こうに有賀シュウコがいるのが見えた。

女性初の室長として、またプチテレビのお局アナとして名の知れたアナウンサーだ。

 

そしてその隣には…

有賀シュウコと楽しそうに談笑する伊藤純保がいた…。

 

…やばい、どうしよう!え?どうしようとかいって、どうせ覚えてないよね?私のことなんて。

冷や汗だか脂汗だかわからない汗が背中を流れ始める。

でも、彼は近づいてくる…そして。

 

「…!?」

ヤバい!目が合った!逃げたい!でも今さら逃げられない!わー、どうしよう!!

彼が有賀シュウコに一言、二言、なにか言って別れた後、満面の笑みを浮かべて私に近づいてきた。

 

「美香さん!うわー、お久しぶりですね!お元気でしたか?」

「覚えてくれてたんだ…」

「当たり前ですよ!僕、電話待ってたのに、全くかけてくれなかったですね!

 正直、期待してたんですけど…」

「…え?いや、ごめんなさい!なんか、かけることなくて…いや、悪い意味じゃなくって!」

「あはは、いや、いいですよ、またこうして会えたんだし。今日はお仕事ですか?」

「そうなの。今、湾岸合衆国の仕事してて」

「そうなんですね!

 …美香さん、名刺でいいから、連絡先教えてください」

「あ、失礼しました…改めまして」

「ありがとうございます!今度は僕から連絡します」

「えぇ…」

「じゃあ僕、この後、打ち合わせなんで…必ず連絡します!」

そういうと彼は爽やかに去って行った…。

会ってしまった…とうとう…どうしよう、一気にまた気になり始めちゃったよ…。

いい歳して、年下にハマったらどうしよう…。

 

 

 

会ってしまった…。

離れていても目を閉じると君が浮かぶ 言い聞かせるんだ 同じ空の下に居ることを…

あれから5年。美香のことは忙しい毎日の中で、たまに思い出しては淡い期待を胸に秘めてきた。

Let me love you いつまでも止められないこの想い Only one…

ここのところ僕はずっと新人アナウンサーのハルナが気になっていたんだけれど…。

だめだ、またスイッチが入ってしまった。

いつ電話しよう…。

「…とりあえず電話しなきゃ始まらない、か」

純保は意を決し…。

 

 

 

「そろそろ帰ろうかな…うーん」伸びをしながら時計を見ると21時だった。

「今日はみんなNRか…」

閑散とした社内で独り言ちながら帰り支度をしていると、携帯が鳴った。見覚えのない番号。

 

「もしもし?」

「僕です、伊藤です。こんばんは。」

「あ…こんばんは…」

「美香さん、まだ仕事中ですか?会社ですか?」

「うん…今から…帰るところだけど…」

「良かった!美香さん、外で待ってるから。」

「え?!」

「早く出てきてね!」

…嘘でしょ。

 

 

慌てて支度をし外に出ると…

本当にいた…。

ドアを開けて待っている…私を…信じられない…。

「お疲れ様!」

「どうしたの急に…」

「入ってた予定がなくなっちゃって、すぐに美香さんのことを思ったんだ」

「え…」

「ご飯まだでしょう?さぁ、乗って!」

私はただ黙って乗り込んだ…。

 

 

その日は彼の行きつけだという飾らないお店でいろいろな話をしながらご飯を食べ、

最後は家まで送ってもらったんだけれど、お店を出た後…。

 

 

ビルの地下駐車場に着くと

「…さぁ、乗って」

「…え?」

「ほら、乗って。」

私は訳が分からないまま、彼が指定した後部座席へ乗り込んだ。

 

 

「...この瞬間をずっと待ってたんだ…もう分かるでしょ?僕が今 君にすることを…」

「!?」

「どれだけ愛してるか話せることなら 本当は愛してないんだ…だからBaby 証明するよ」

…私は目を閉じた。

 

 

 

その翌週の木曜日。

朝、通勤電車に乗り、ふと中吊りを見て…この目を疑った。

 

 

“抱かれたいアナウンサー” 初スクープ!

美女とムフフ♡ 車中愛、撮った!

 

「…!!!!!!!!!!!」

 

まさか…週刊文秋に撮られていたなんて…嘘でしょ?!

私の顔はモザイク加工されているけど…彼が…彼が大変なことになる…どうしよう…

社長に相談しなきゃ…あぁ…やってしまった…この大事なイベントのタイミングで。

 

 

出社すると早々、社長に呼び出された。

「社長、ご迷惑おかけしてすみません…」

「いや、別に高村が誰と恋愛しようが問題ないよ。お前も週刊誌デビューか〜。ウケるな!」

「社長〜〜〜、ウケるとか言ってる場合じゃないですよ…重要な取引先ですし…本当に何てお詫びしていいか…」

「大丈夫だろ〜。相手が有名だからって、お互い大人だしなぁ。

 そうそう高村、プチテレビの話が出たついでだけど、湾岸合衆国、今年は取りやめだ」

「えぇ!?どうしたんですか急に…って、私のせいですよね…?すみません!」

「いや、関係ないよ。今年はやめたんだ。既に手伝ってもらってたこともあるのに、悪いな。」

「いえ、それは構いませんが…大丈夫ですか?あの、本当に私のせいじゃ…」

「いや本当に関係ないからお前の件は…ったく…脅しじゃねえから聞け崩壊寸前…」

「…え!?」

「あぁ、ごめん、なんでもないんだ。悪い。とにかく、お前のせいじゃない。俺の決断だ。」

社長は険しい顔をしてそのまま黙り込んでしまった。

「…すみませんでした」

私はそっと部屋を出た。

 

 

結局その後、なんの風の吹き回しか、プチテレビ事業局の(社長の好みドンズバな)ミーコという女性が

社長の24時間専属アシスタントになってから結局、湾岸合衆国に例年通りサイパー.comが出資することが決まった…。

 

 

 

 

あれから…彼とは連絡を取っていない。

彼から何度か着信があった…でも、私は出なかった。

留守電にも特に何も入っていなかったけれど、

しばらくして、彼が同じプチテレビの新人アナウンサー、ハルナと恋人宣言したというニュースは見た…。

 

彼も、5年ぶりの再会で、ちょっと気持ちが盛り上がっただけなのだ。

…仕事をしていれば急速に時間は過ぎてゆく。仕事も、プライベートも。

 

「僕に恋しないで 未来はないから Woo, I’m Heartbreaker

 先を見なくても 今を楽しもう Woo, 夢 見させてあげる…」

 

昔、龍ヶ崎がよく口ずさんでいた歌を急に思い出した。

 

目を閉じたら キスして Goodbye…

そう…「どうして」なんて聞かないで 分かってたでしょ 最初から…

 

〜完〜

 

 


アナ春アナザーストーリー『Heartbreaker』前編 byクリーミィ・メルモ

2013-08-08 20:30:00 | アナ春サイドストーリー

 


 アナウンサー!春物語 アナザーストーリー

 Heartbreaker  

  by クリーミィ・メルモ    

 ※今作は、「アナウンサー!春物語」からインスピレーションを受けた作者クリーミィ・メルモ氏の創作作品です。


 

…毎日、毎日、どーしてこうも時間に追われて走ってloonだろう。

はやく出られるように準備しても絶対、ギリギリになる。

あーあ、プライベートもSo bad

いい男に出逢う暇もなく仕事、仕事で走り続けてきちゃって。

いつから仕事を優先する人生を選んだんだ私は…。

 

午前中から銀座の取引先での打ち合わせが終わり、次は午後2時から有楽町にある取引先でまたミーティング。

微妙に時間、あくな。帰社する時間はないし。

最近、ウィンドウショッピングする暇さえなかったな…ちょっとぶらぶらするか...と思ったけど、暑いんだよなー。

やっぱりどっか入ろ。

 

適当に入ったカフェはあまり人がいなくて静かだった。最高。本でも読もう。

本当は白ワイン片手に読みたいくらいなのに。

 

 

…しばらく経ってから、斜め前に新入社員らしき爽やかなスーツを着ている男が座ったのが目に入った。

先輩?らしき男と一緒だ。

 

 

先輩の方はあまり顔が見えないんだけど、両方タイプだな絶対…若いこの方は私より年下か…。

 

会話が漏れ聞こえてきた。

 

「伊藤、さっきのアレはないだろ、アレはー」

「玉澤さん、すいません…」

「クライアントが怒ってもしょうがないぞ」

「…」

「新人だからって勢いで言っていいことと悪いことがある。

 折りをみてお前一人で謝ってこい」

「はい…」

「まったく…俺は先に帰るから、ここで頭冷やしてから社に戻れ」

「はい…本当にすみませんでした」

 

…怒られちゃったんだねー、かわいそうに。先輩が帰り、一人おいていかれた彼は、

頼み直した暖かいカフェラテが手のひらでそっと冷めていくまで、ずっと1点を見つめていた。

…やばい。彼に気を取られていたらまたギリギリになっちゃった。

責任取ってよもー…って、知ったこっちゃないよね。

 

軽いため息をつきながら私が席を立つと、彼が我に返り一瞬、目が合った。

 

まじタイプ……でも、時間がない…いやいや、でもっていうか、声かけらんないし!

なんとなく彼がそのまま私を見ている気がしたんだけど…彼が座るテーブルの脇をすり抜けて私はお店を出た。

 

 

 

数日後。

私はまた時間に追われていた。

どーしてこーいつもいつも走ってloonだ私は!

 

会社の入り口を飛び出そうとして誰かにぶつかり、その拍子に手に抱えていた資料をぶちまけた。

自分も悪いのはわかってたけど、急いでいたから怒りの矛先が相手に…キッと睨んだ先にいたのは…あのカフェにいた彼だった。

 

「大丈夫ですか!ごめんなさい!」

「…!」

「…!」

 

急いでいた私はとりあえず資料をザザッと書き集め、そのままろくに会釈もせず駆け出した。

 

彼が一瞬、目を見開いたのだけはわかったんだけど…。

 

あーあ…もしかしたら、何か話せたかもしれないのに。

こうやって時間に追われてまた、ひとつの出逢いがすり抜けていく…。

はぁーぁ…。

 

 

 

…さっきぶつかった女性、あの日、僕が玉澤さんと入ったカフェにいた女性だ。

U never know?初めて会えた時がSo step!君との始まり感じた時さ。

彼女が店を出る時、僕に近づく君を感じ意識飛ぶようなpower!

どうすりゃいいか?これから!あれからずっと考えてばかり…君を。

 

あの日、彼女と目が合って…落ち込んでいた僕の気分が一瞬で変わったんだ。

サヨナラ…僕の挫けそうな今に。君に出逢って生まれ変わるんだって。

次に会えるのはいつ…?

 

 

 

…最悪だ。

思ったより手強いクライアントだった。行きに資料をぶちまけたのはこれの警告だったのか。

はぁぁぁぁぁ…ツライ。ツラすぎる。こんなにコテンパンにプレゼンをダメ出しされたのは入社したての頃以来だ。

 

そしてそんな時に限って帰り際に見かけた若い女を連れて歩くあの男…忘れもしない、アイツ…。

 

龍ヶ崎光志…美容整形の大手、ギャラクシークリニックの院長。

私が以前、付き合っていた男だ…当時は寝ても冷めてもあなた一色 考え過ぎて壊れそう…でも…

 

「体はいくらでも君の物だけれど 僕の心はあげられない 分かる?Honey」

「わかってたでしょ、最初から…僕に恋しないで 未来はないから」

 

いつもそう言って私を抱いたまま「You’re my love」と囁くくせに、

でも朝には「僕を待ってる人がいるんだ…目を閉じたらキスしてGoodbye」と帰るあの男…

結婚してるのに、未だに悪いクセは直っていないみたいね。

当時は絶対泣かない、これ私のPride、ウワサで聞けばSaid I’m looking fine

本当なら一発殴ってやりたい…でも会いたくもないって思ってた。

はぁ…最悪な事って、重なるよね…二度と会いたくなかった…思い出したくなかったのに。

 

気づいたらこの前のカフェまで来ていた...入ろう。

 

 

 

あー…キツかった。

 

先日怒らせたクライアントに玉澤さんに言われた通り、一人で謝りに行った。

幸い、先方は許してくれたけれど、しっかりお灸を据えられてしまった。

社会人になり仕事が楽しくて、ついつい生意気言っちゃったんだよな…ちゃんと新人という立場をわきまえないと。

 

この前玉澤さんと来たカフェの前を通ったら…ガラス張りの店内にあの女性がいた。

しかも…え?まさか……泣いてる?

 

I’m your SOS man 呼んでくれよgirl 必要ならば駆けつけるから…。

僕は後先考えず、いてもたってもいられなくて中へ入った。

 

 ―to be continued―

 


アナ春アナザーストーリーHeartbreaker(なぜそれは公開されるに至ったか)

2013-08-08 11:00:00 | アナ春サイドストーリー

201X年

タ文科省

李ゼミの2,3級試験の採点を終え、ニャン・チャンソンと、試験担当課長コ・チュニャンは暗くなっていた。

※ニャン・チャンソン先生近影

 

 

※試験担当課長コ・チュニャン近影

 

 

この合格率の低さ…

「ちょっと難しかったかな?」

ニャン・チャンソンが答案用紙をいくつか見ながら深いため息をつく。

「ニャン先生、そんなことはありません。李ジュノのファンなら当然、応えられる問題ばかりです。それに…」

「ああ、そうだね。2級も3級も、ラストにサービス問題を設けてある。

ここで独創的な記述をしてくれれば、合格点に満たなくても合格にすると書いてあるのに…」

 

 

3級の問6=言い足りないことがあれば下記に記入せよ

2級の問10=ジュノへ伝えたいことがあれば下記に綴れ

 

答案用紙を見ながらコ・チュニャンが回答を読み上げる。

 

 

「”ジュノサランヘ”

”ジュノテバク”

”ちゃんぬの”

”目を閉じて、やばい!”

”ぺーん”

”366ききたい”

”イチブトゼンブ、好きになっちゃいました”

”最近、無駄にペンギン柄が気になります”

”池尻にも猫カフェがあります”

…これでは合格点はあげられませんよね~…」

 

 

「そうですね…ところで、師範試験は来月でしたかね?」

昆布茶を啜りながらなにやら思案するニャン・チャンソン。

「はい、師範試験は、志望理由と面接と作品だけの受験ですから、2、3級の試験合格者でなくても受験できます。

ただ、もともと合格率が低いうえに、今年は更に低レベルな予感が…」

厳しい表情のチュニャン。

―フ。こんな自分の欲望をさらけ出すだけの回答しかできない人間に、師範試験に受かるだけの作品を書く力はあるとは到底思えない。

「ふむ。チュニャンさん。去年、秀逸な作品があったでしょう?」

「それは…もしかして…”クリーミィ・メルモ”さんの作品の事ですか?」

チュニャンの表情がぱあっと明るくなる。

クリーミィメルモ。

彼女の作品は、チュニャンが愛している”アナウンサー!春物語”という物語のサイドストーリーだったのだ。

「あれを、師範試験の合格レベル作品だと発表してはいかがでしょう?読めば、受験者も気合いを入れなおすと思いますよ?」

それはニャイスだ!

「ニャン!早速とりかかります!」

「おねがいします。ぼくはこれから2,3日、李君が大阪で訪れたお店に行ってきます。

たねやでお土産買ってきますよ。それでは…今夜はお月がきれいでしょうね…」

ニャン・チャンソンが去った後、チュニャンはデータベースを検索した。

 

”h-e-a-r-t-b-r-e-a-k-e-r"

 

久しぶりにクリーミィメルモの昨品を読み返しはじめた…

 

―続く―