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ブタがいた教室

2008-12-02 02:03:36 | 映画2008
 手塚治虫の『ブッダ』を読ませれば答えに近づけるかもしれない・・・

 6年2組の担任となった新米教師星(妻夫木聡)が、「1年間クラスでブタを育てて最後にみんなで食べよう」という大胆な計画を生徒たちに発表した。1990年に大阪の小学校で実際に行われた実践教育。当然のことながら賛否両論を引き起こし、大反響となった事実の映画化だそうだ。ドキュメンタリーも見たくなった・・・

 “命”や“食のありがたさ”を考える教育を打ち出した若き教師であったが、生徒たちがブタに“Pちゃん”と名前を付けたことから事態は変わる。ペットとして愛着がわき、食べるなんてとんでもない!食べるためには殺さなくてはならないのだし、残酷・・・豚肉を食べることができなくなるとか、トラウマとなり子供たちのためにもならない等々、批判は想像以上に大きいものだった。

 「食べる」「食べない」という究極の選択を生徒たちに議論させ、生徒たちに結論づけさせようとする先生。しかし、答えは永久に見つかりそうもない・・・クラスの人数26人の意見は真っ二つに割れてしまったのだ。他の先生たちが最終的には教師が判断するべきだと進言し、星先生が最後の一票を投じることになるのだが・・・

 6年生という子供たちには白紙の脚本が渡されていたため、彼らの議論は純粋で真摯で、そして白熱する。「Pちゃんだってクラスの一員なんだし、食べるなんてできるはずがない!」「育てたのは僕らなんだから最後まで責任持たなくちゃならない!」。肯定派・否定派とも大粒の涙を流し、映画を観ている大人ですら心を揺さぶられるのです。

 こうした特殊な課外授業を完全に肯定するわけにはいかないのかもしれません。だけど、“命”について真正面から取り組んだ先生の熱意は評価できるし、それによって生徒たちの自主性が育まれたことは間違いないのです。食のありがたさというテーマはいつの間にか責任問題というテーマにすり替わったかもしれないが、それが生きた授業だとも言えるのかもしれません。

 教育問題としての評価はさておいて、映画としての特殊技法が光っていました。教師や親たちだけには脚本があることから、セミ・ドキュメンタリーと言えるのだろうか・・・なんとなく是枝監督の『誰も知らない』を思い出してしまいました。どうやって子供たちが涙を流しているんだろう?と驚きもしたし、思わずボロボロともらい泣きも・・・

★★★★★

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7 コメント

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実際は (黒猫)
2008-12-02 05:06:57
はじめまして。
いつも拝見しています。

大阪の小学校では、1年の飼育ではなくて「3年」だったようです。
(3年も世話したら、完全に情が移ってしまってただろうに、トラウマになってしまった子供はいないのかな?)と心配になりました。

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上映 (シネマ大好き娘)
2008-12-02 08:24:20
早いですね~~こっちは、まだです~
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来年ですけど (ぱたた)
2008-12-02 15:51:10
1/10からですがイオン三川でも公開のようです。
恐らく降雪中だと思いますが是非観たいと思います。
+++
うちのおちびを観察して分かったのですが、
子供の涙って体に合わずホントに大粒。
抱きつかれて泣かれるとシャツとかぐっしょり。

本映画を観たらさすがに年齢的に粒にはならないけど
つつーっと涙目になるでしょう。。
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ぶたぶたこぶた (kossy)
2008-12-03 08:41:50
>黒猫様
はじめまして。
実際に授業を受けた子たちの現在がどうなってるのか興味のわくところですよね。命の大切さは学んだと思うけど、ペットを飼うことができなくなるとか・・・過剰なまでに動物愛護に走ったりとか・・・
当時のドキュメンタリーを見たくてしょうがなくなりました!3年も飼ってたら、かなりでかくなったと思うけど・・・

>シネマ大好き娘様
あまり公開館が多くなさそうですね~
こちらでも遅い方だと思ってたのに・・・

>ぱたた様
来年になってからですか~
俺的には絶対お勧め!
ただ、yahooのレビューではかなりの賛否両論。たぶん、実戦教育として間違いであるとかないとか、そんな議論になっているかと思います。

そんなことより、映画の中の子供たちのリアルな反応が最も感動できるところなんです。
ぜひお子様とご一緒に!
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過去にこれほど泣いた事がないほど涙し感じた映画でした (PGM21)
2008-12-04 06:32:21
何時もお世話になっております。

色々批判もあったという実話ですが、私としては実に素晴らしい授業をされた方だと思います。
台本のない議論では本当に色々考えさせられましたし、実際に子供たちの視線からだったからこそ気持ちが伝わってきたんですよね。
私たちのように大人になってしまうと確り割り切ってしまいますが、愛情を持って育てた動物を簡単に食べてしまうというのは人間としてなかなかできなくなってしまうものなんですよね。
私はちなみに食べる目的なら食べる派ですし、飼う目的なら食べない派です。
1度決めた状況において意思を貫く必要性も学んだと思います。
そうですね。
私もこれほど泣いてしまった映画は過去にないほどでした。
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遅れ馳せながら (クラム)
2009-01-18 20:40:36
前から観たかったのですが、だいぶ遅くなってしまいました。
自分のところの記事は、映画の感想というよりは教育への不満に傾いてしまいましたが、
kossyさんおっしゃるとおり、本作では子供が素晴らしかったですね。
ここを見て、あれが子供たちの素の演技だったと知り驚きました。

「トラウマにならないか?」と心配されるコメントがありますが、
フォローをするのは親なり周りの者が引き続き担う役目です。
「トラウマは、事件そのものよりも、
誰からも救いの手が差し延べられなかったことに起因する」
と言われています。
冒険を怖れていては、そもそも何も得られません。
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ブタに泣かされる (kossy)
2009-01-25 10:06:01
>PGM21様
授業が1回きりじゃないところもいいですね。ちゃんとしたシナリオがあるわけじゃなく、生徒の意見によって変化する、まさしく生きた授業!
大人になってみると、合理的に考えられるようになりますが、子供時代に戻って目線を合わせられますよね。
動物愛護という考えも、捕鯨の問題とかを考えるとますます難しくなるような・・・

>クラム様
俺も教育問題について考えてもみたのですが、映画では理解のある保護者の方が多かったので不満が出てきませんでした。予告編を見る限りでは丸投げ状態になるかと思ってたのですが、結論がはっきり出ないからこそ教育なんですよね、きっと。

「トラウマは、事件そのものよりも、
誰からも救いの手が差し延べられなかったことに起因する」・・・なるほど、これも教育の中で解決できそうな問題だったわけですね~
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