小関順二公式ブログ

プロ野球、アマチュア野球、野球史

私的・都市対抗ベストナインを紹介

2012-07-24 22:58:12 | 2012年社会人野球観戦

 第83回都市対抗は、JX-ENEOSが通算10回目の優勝を飾り、閉幕した。決勝進出10回目にして負けなしの10連勝にはただただ恐れ入るばかり。伝統とか何とか目に見えないものに頼るのは好きではないが、こういう記録を目の前に突きつけられると信じないわけにはいかなくなる。
 対戦相手・JR東日本の連覇を食い止める力になったのも伝統。1961、62年にJX-ENEOSの前身、日本石油が都市対抗2連覇を果たしているが、これは50~52年に全鐘紡が達成した3連覇に次ぐ、30~31年の東京倶楽部、38~39年の藤倉電線、46~47年の大日本土木に並ぶ2番目の記録。
 試合後の優勝監督インタビューで大久保秀昭監督は、「JR東日本が優勝すれば2連覇は日本石油以来50年ぶりになるので、阻止したかった」と語っている。「伝統」は「執念」と言い換えてもいい実際的な力となり、チームを支えたのである。
 さて、全日程を終え、私が東京ドームで見た18試合をもとに、個人的な今大会のベストナインを紹介させてもらう。大会で活躍した・しないは二の次にして、あくまでプロ向きか否かの一点を基準に据えて選んだ。投手は野手とのバランスを取り5人選んだが、1人だけ選べと言われたら吉田一将(JR東日本)を選ぶ。
 ホームページhttp://kosekijunjihomepage.com/ の観戦記には「躍動感というと月並みである。投げるのが楽しくて楽しくて仕方がない、という風情である。来年のドラフト候補が1人誕生した」と書いた。正確には来年の「ドラフト上位候補」である。興味のある方は読んでいただきたい。

■私的都市対抗ベストナイン
(捕)小林 誠治(23歳・日本生命)
(一)石岡 諒太(20歳・JR東日本)
(二)宮崎 敏郎(24歳・セガサミー)
(三)瀧  諒太(27歳・東芝)※三菱重工横浜からの補強
(遊)渡邉貴美男(24歳・JX-ENEOS)
(外)井領 雅貴(23歳・JX-ENEOS)
   田中宗一郎(25歳・パナソニック)
   松島 圭祐(24歳・伯和ビクトリーズ)
(指)井上 晴哉(23歳・日本生命)
(投)三橋 尚文(33歳・JFE東日本)
   吉田 一将(23歳・JR東日本)
   東明 大貴(23歳・富士重工業)
   北原 郷大(24歳・JX-ENEOS)
   大城 基志(25歳・JX-ENEOS)


井納翔一(NTT東日本)につけたい注文

2012-07-21 21:43:22 | 2012年社会人野球観戦

◇7月21日(土曜日)
都市対抗2回戦/東京ドーム
NTT東日本7-2トヨタ自動車

 2回までの攻防で試合が決まった。トヨタ自動車自慢の若手本格派右腕、祖父江大輔(25歳・右投左打)、川尻一旗(25歳・右投右打)、上杉芳貴(24歳・右投右打)がことごとく打ち込まれ、7点を失ってしまったのだ。これでNTT東日本の先発、井納翔一(26歳・右投右打)は楽に投げられた。
 ストレートの最速は146キロと目をむくほどの速さではないが、コンスタントに145キロ台中盤を計測し、打者手元での伸びも十分。さらにカットボール、縦・横2種類のスライダー、カーブ、チェンジアップを効果的に織り交ぜ、付け入るスキを見せなかった。
 3回に縦系の変化球が狙われると4回にはそれまであまり投げなかった横変化のスライダーを多投して、というように、捕手・上田祐介(29歳・右投右打)のリードも冴えたが、注文をつけたいのは続け球の配球。3回の初失点は2球続いた外角ストレートを秦健悟に打たれたもの。得点にならなかったが、7回には吉田承太に117、8キロのカーブを2球続けて左前打を打たれている。
 NTT東日本バッテリーは緩急・内外の出し入れの鉄則を破ることによって打者の裏をかこうとしたのかもしれないが、打者はそこまで考えていない、とは往年の名捕手・伊東勤氏(元西武)から聞いた言葉である。これは主に上田の問題だが、井納も危ないと思えばボールゾーンに逃がすなど、自分で判断する習慣をつけないと大きなケガをする。


NTT東日本・井納翔一の試行錯誤

2012-06-04 09:29:15 | 2012年社会人野球観戦

◇6月2日(土曜日)くもり
都市対抗予選・東京第1代表決定戦/神宮球場
NTT東日本9-4セガサミー

 横浜スタジアムで行われた都市対抗・西関東予選を見てから移動してきた。もっと早く神宮球場に着く予定だったのがぎりぎりの到着になったのは、西関東の第1代表決定戦が延長16回、試合時間4時間19分に及ぶ大熱戦だったためだ。
 この東京第1代表決定戦はNTT東日本が元巨人の上野貴久(30歳・左投左打・177/82)、セガサミーが新人の浦野博司(23歳・右投右打・178/70)の先発で始まった。私がNTT東日本の先発に予想した井納翔一(26歳・右投右打・188/84)はまだチームから信頼を得ていないようだが、リリーフの場面は早い回に訪れた。
 上野が1回表に3失点して、その裏にNTT東日本の越前一樹(24歳・右翼手・右投右打・180/78)が3ランを放ち同点になった2回、井納の登板がアナウンスされた。井納のことはホームページの観戦記(4/25)に次のように書いた。
(http://kosekijunjihomepage.com/)

<まず驚くのはマウンドからホームまでの距離(18.44メートル)が短く見えることだ。球が速いこともあるが、腕を振ってからあっという間にボールがキャッチャーミットの中に収まっている印象がある。(中略)
 18.44メートルが短く見えるのは、左肩の早い開きがないのに加えて、真上から腕の振りと左側面から打者に向かっていくフォームのためである。打者は、188センチ、84キロの巨体が一気に視界に迫ってくるような錯覚を覚えるのではないか。>

 この日の投球は4/25とは異なる。まず「真上」からの腕の振りだったのが、少しヒジを下げて腕を振っていた。4/25は最初から3イニングの予定だったので真上からぐいぐい腕を振って投げることができたが、この日は長イニング投げる可能性があったのでスタミナを考えてヒジを下げて、力8分くらいの腕の振りで投げていた、ということだろう。
 力8分はいいとして、投球フォームを変えて短イニング用、長イニング用、と使い分けるのはどうかと思う。常に同じフォームでスタミナ配分し、直曲球を投げ分けることこそ技術である。
 この日の結果は<6回3分の0を投げ、4安打、8三振、0失点>と悪くない。ストレートの最速は確認できただけで147キロ。プロのスカウトがどのように見たか、非常に気になるところである。